おじさん、ポケモンの事なら何でもするんですよね?   作:石転法師

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キャラ崩壊(いつもの)


ガチガチパニック!(5)

――きつい。ここまで全力でアスレチックみたいな場所を走るのは久々だ。

 そして同時にワクワクしている。こんなデカくて強いポケモンがまだ潜んでいただなんて。これを見て何もしないで帰るなんて、トレーナーとしても怪獣マニアとしても有り得ない。

 

『だぁぁぁあ! りぃぃぃぃんッ!』

 

 アカツキはまたあのとんでもない咆哮を上げながらこちらに迫っている。狙い通りの誘い出しには成功だ。後は奴に捕まって殺される前にキャンプまで戻れるか。

 小回りが利かないだけで、ガチグマの最高スピードは遅くないどころかむしろ速い。要するにレースゲームで言うところのカメの大王とかゴリラとかあの枠だ。チンタラ走っていたら速攻で追いつかれる。

『オロー……!』

 ヤバい空気の中、その空気を読まずに(逆に読めているのか)老木ポケモンのオーロットが立ちはだかった。

 森を荒らす者は許さんと言いたげな顔で俺に鬼火を飛ばしてくるが、流石にそれは後ろのアレのせいだと罪を押し付けさせていただく。

 

「ラン、ふぶきだ!」

『くぉおおおん!』

 草には、ついでに地面には氷タイプ。そこで選んだのはアローラキュウコン!

 吹きすさぶ雪風は鬼火をかき消し、オーロットの体も一瞬で凍結させた。気の毒だがその内溶けると見てこのまま素通りさせてもらう。今は後ろの方がお化けよりよっぽど恐ろしいのだ。

「後ろにも、こごえるかぜ!」

『はい! 女同士、同情しますが……主人の命令ですので!』

 続けて動きを鈍くする冷風も後ろに放つ。アカツキが俺のガチグマと変わらず同じタイプならば尚更よく効くはずだ。

『ぐぅっ……女狐が!』

 アカツキは雪風で大きく身悶えして足を止めた。大技のブラッドムーンに氷弱点、やはりタイプは原種と同じか。きもったまっぽい特性は予想外だったが、ノーマル・地面に強いポケモンで固めて正解だったようだ。

 

『……お前たち、ニオイで分かるよ。この里のヤツらじゃないな。遠くからわざわざ私の邪魔をしに来たか!』

『落ち着いてください。確かに里から依頼は受けていますが、主人はアカツキさんにも一家に加わってほしいだけでして……』

『それが気持ち悪いってんだよ!』

『お気持ちはまあ、その、分かりますが……こう見えて思いやりのある良い人ですから!』

 

 ポケモン同士、アカツキとキュウコンが吠え合って何かを訴えているようだ。

 こんな時は何を言っているのか分からない我が身がもどかしいが、まだここは薄暗い森の途中だ。立ち話は程々に急がねばならない。

『逃がさないよ! くたばれ、ロリコン野郎!』

『ロリコンって……アカツキさんおいくつなんですか?』

『3歳だよ!』

『私より、圧倒的に年下……!』

 キュウコンが気圧されているが無理もない。そしてまたもアカツキの額に赤い光が宿っている。

 来るか、あのブラッドムーンが。

 

「オーロラベール! そんでそのまま逃げるぞ!」

『いいですか、主人はロリコンでもポケモン性愛者でもありません。それだけはご理解を……』

『ウソつけ!』

 地面も弾け飛ぶ高エネルギーの赤光!

 それはキュウコンのオーロラベールもぶち抜き俺の足元を抉った。最初から逃げの体制だった事、そしてベールでの軽減も重なり何とか当たらずに済んだが、それが無ければどうなっていたか。

 しかし、もう原っぱが木の隙間から見える所までは来れている。逃走劇も直に終わり、一転攻勢の時間が訪れるだろう。

 ブラッドムーンはデカハンマーと同じ、ならば連発こそ出来ないが反動はない。

 つまり、アカツキはもう全力ダッシュでこちらに近づいてる!

 

 そしてそんな時だ。視界の先には二つの人影。

「おじさん、こっちー!」

『ニャー!』

 

「ッツ! あのバカ、ここまで……!」

 ヒメカと、マスカーニャ。心配のしすぎかフワライドから降りて迎えに来てしまったようだ。後ろから猛獣が来ていなければ少しは感謝したものを。

「そこでジャーンプッ!」

「ハッ⁉」

 何でとかの前に緊急時なので、言われるがままに跳躍。跳んだところで特に何もなく、俺とキュウコンはそのままひた走る。

 そして俺達の跳躍点をアカツキも踏んで、通り越した。

 

「そこだよ!」

『グあっ⁉』

 ずでん!

 後ろでアカツキが思いっきりすっ転んだ。あの四足歩行でそんな事がと注視すれば、そこに伸びていたのは不自然な蔓。

 これは、くさむすびだ。マスカーニャも当然覚えられる草タイプの技。俺がアカツキから逃げてくるルートに、あいつは独断でトラップを仕掛けていたのだ。

「……バカっつったのは取り消す! 良くやった!」

「へへーん! さあさあ、もうちょっとですよ!」

 あの巨体ならばくさむすびのダメージも最大威力で入っただろう。奴が怯んだ間に俺達二人と二匹は全力でひた走り、そしてついに薄暗い森を抜けたのだ!

 

 

「……反転! 来るぞ、お前はちょっと後ろに居ろ!」

 キャンプに戻ったところで座って休む暇もない。森の中から、倒木が弾け飛ぶような音がする。まずはさっき俺の身代わりになったヤバソチャを元気のかたまりで復活だ。

「怖いけど、私も一応戦えますけど……」

「気持ちはありがたいが、ハイパーボイスで吹っ飛ぶのがオチだ。それよりアレくれ、モーモーミルク」

「ほいほい、どうぞ!」

 ヒメカがリュックから素早くビンを取り出し投げ渡す。まずはここまで一緒に走ってきたキュウコンに半分与え、俺も残りをぐいっと一気飲み。美味くて、素早い栄養補給に最適。朝の目覚めや風呂上りにも毎回これだ。

 

『私に、恥をかかせたな……!』

 そして飲み終わると同時に森から飛び出てきたのは、言うまでもなくアカツキ。先程のダメージで怒りのボルテージが最大に達したか、地鳴りのように低音の唸り声を上げている。

「ラン、戻って休め。ここからはガチグマ同士のタイマン勝負と行こうじゃねえか」

 俺の手持ちはガチグマ、キュウコン、ヤバソチャ、カイリューに加えて、ヤドラン、さらにヘラクロスもいる。

 タイプ有利なポケモンで固めた中でそうではないガチグマ対決。合理的とは言えないのにあえてそれをやる理由は単純で、俺が怪獣マニアのポケモン馬鹿だからだ。

 

「野生のポケモンとは一味違うところを見せてやんな、ジュウゴ!」

『がんばる!』

 ボールから飛び出たガチグマがアカツキと対面して、互いを敵と認識した。

「す、凄いプレッシャー……!」

 茶色い巨体同士の対戦に、後ろのヒメカの声も震える。これだ、この光景が俺は見たかったのだ。

「よし、ここは一つ、根性も見せてやらねえとな!」

 俺のガチグマに真っ赤な玉を投げ渡す。ガチグマの特性はこんじょう。ただでさえパワフルなガチグマが、火傷などの状態異常になる事でさらに攻撃力を増す。普段はダメージを負ってまで使う価値のない相手ばかりだが、今回は本気だ。

 

『……ポカポカしてきた。いくよ、アカツキさん!』

 ガチグマがアカツキに吠える。

 そしてアカツキも、ガチグマに向かって静かに吠えた。

 

『……あのさ、好きな食べ物はなに?』




次回、ガチグマ同士の熾烈な戦いがたぶんありません
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