おじさん、ポケモンの事なら何でもするんですよね?   作:石転法師

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ジャモ氏のコイルを持ち逃げしたコイルに悲しき過去…は特にありません


なんでも屋さんとナンジャモさん(4)

「おどろかす!」

『カアッ!』

 とにかくまずは足止めから! 

 ボールから飛び出たナカヌチャンが、背後から飛びかかって大声を上げる。ビクッと怯んだレアコイルは狙い通り渡河を止め、標的をこちらに定めた。ナカヌチャンVSレアコイル、戦闘開始。問題はここからだ。

 

「とりあえず、捕まえちゃいますか⁉ 退化とかは持って帰ってから……」

「いや、それはちょっと面倒な可能性がある」

 というのも、もしアレが本物のコイルだった場合、ナンジャモのコイルを捕獲する事になってしまうからだ。

 言うまでもないが、他人が捕獲済みのポケモンにボールを投げるのはタブー中のタブー。俺も悪どい自覚はあるが決して悪の組織ではない。

「とりあえず確認したい。だからこいつだ!」

 レアコイルがナカヌチャンと睨み合っている隙を突き、ボールの代わりに文字通り一石を投じる。

 

『イッ⁉』

 投げつけた石は中央のコイルにヒット。石だから、痛いに決まっている。だがそれ以外の反応は無く、落ちた石はパチパチと静電気を放っている。やはりそうだったのだ。

「あれってかみなりの石ですよね⁉ 進化させようとしたんですか!」

「するならレアコイル、しないならコイルだ」

 つまりあれはコイルがコイルっぽい物を2個くっ付けているだけ。まあピンクと水色のコイルなんて自然には存在しないし、まさかナンジャモも着色して髪飾りにしようとは……思うかもしれないが、流石に実行はしないだろう。当然と言えば当然の話だが、万が一もあったので。

「いやいや、進化しちゃってたらどーするつもりだったんですか⁉」

「いいだろ別に、ジバコイルを頭に乗せれば……」

「良くないです!」

 まあコイルだったので結果ヨシ。最大の懸念は解決したのであとは取り返すだけだ。

 

「とりあえず叩き落としちまえ!」

「あーもう、後でお説教ですよ! ヌーちゃん、はたきおとす!」

『チャン!』

 ナカヌチャンが自慢の棍棒を片手にダッシュで迫る。ここまでじっと充電して待ち構えていたコイルもフルパワーのスパークで迎え撃つ!

 しかし悲しきかな。あのコイルは言ってみれば、鉄球というデメリットアイテムを2個持っているようなもの。その動きは鈍く、一方で鋼ポケモンという格好の獲物を見つけたナカヌチャンはとても張り切っていた。

 電気を纏った体当たりを跳躍で回避し、狙うはオプションのコイルっぽい物2つ。がら空きとなった背面に棍棒のスイングを一発、返す刀でもう一発!

 見事にクリーンヒットした二発はコイルの吸着力に勝り、それを空高く打ち上げた。

「回収、急げぇ!」

「ラジャー!」

 俺は水色、あっちはピンク。2個の落下点に素早く移動した俺達はそれをしっかりと抱えた。わりと、重量感がある。アイツ、キャラ付けの為だけにこんな物をずっと頭に付けているのか。

 

『ボ、ボクノヨメ、イチゴウ、ニゴウガ……』

 叩き落とされたコイルが物凄く動揺しているように見える。無理もない、奴は自分をレアコイルだと思い込んでいただけのコイルだったのだから。

「分かったろ、こいつは本物のコイルじゃねえんだ。だからな、ちゃんと真の相棒を見つけような?」

『ネ、ネ、ネトリヤンケー‼』

『ヌチャー⁉ 寝てから言えー!』

 やはり説得が効く相手では無かったか、コイルは怒りにブルブルと震え、所構わず放電する。至近距離での電撃にはナカヌチャンも堪らずノックアウト。

 非常に危険な状態である。傷心のところ申し訳ないがこのまま放置しては帰れない。

「気の毒だがあの奪われコイルはぶん殴って分からせるしかない。ヒメカ、ドオーだ」

「これは女の子の勘ですけど、いろいろ間違っているような……」

 かもしれないが、人なんて間違いを積み重ねて歴史を作るものだ。疑問は後にして奪われコイルを鎮めなければならない。ヒメカも首をかしげながらドオーに交代する。

 

『ボクノホウガ、サキニスキダッタノニー!』

 俺の持つ水色コイル目掛け、奪われコイルが奇声を発しながらスパークする。その前に立ちはだかるのはドオー。その突撃を正面から受け止める!

『ド……オ!』

 電気の効かない地面タイプのボディだが、執念の籠った一撃はタイプすらも覆すのか、ドオーののんびりした顔も苦痛に歪む。

「お返しだよ、マッドショット!」

 だが、ドオーは極めて鈍重なのと引き換えに豊富な体力を持っている。コイルの突進一つで沈むヤワではない。その接触してきた所を逃さず、ドオーの打ち出した泥の塊がコイルの目玉にクリーンヒット。電気で鋼タイプのコイルには致命の一撃、さらに目潰しのおまけ付きだ。決めるなら、まさに今!

 

「捕獲!」

「はいっ!」

 ヒメカ、大きく振りかぶって一球!

 ピッチャー経験でもあるのか、綺麗なオーバースローで投じられたモンスターボールは見事コイルに命中。放電しすぎて既にバテていたであろう彼は大きな抵抗もせず大人しくなり、ヒメカの新たな手持ちとして加わるのだった。

 

「はぁ~……終わった。本当に、見つかって良かったですねえ」

「全くだ。匂いを辿れなかったら終わってた」

 今回もまたガチグマのお手柄だ。無論、飛んで貰ったギャラドスも電磁砲を無駄撃ちさせたジバコイルも労わなきゃならないし、ヒメカの手持ちも頑張った。食事代、覚悟しなくては。

「……というか、おじさんがまともな仕事に就かない理由が何となく分かりましたよ。計画性が無いんでしょ!」

「ふ、バレちゃしょうがねえな……」

「いい歳なんだからもっと考えて動いてください!」

 カッコつけてごまかしは無理だった。ヒメカが俺の肩をグーでボスボス殴る。わりと痛い。

「というか、それはこっちの台詞でもあるがな。お前だってこのバイトの前はずっと配信業だったか」

「う……それはまあ、ちょっと」

 応募の時に提出した履歴書で、この地方でないスクールを出た事は分かっている。その後がふんわりした表現になっていたが、それはこちらもなのでその時突っ込まなかったのだ。

「……この話は止めるか。とにかく、帰って一休みしてジム戦だろ」

「そうですね、そうしましょう。小腹が空いてきちゃいましたし、おやつタイムの後もうひと頑張りという事で……」

 という事で帰ろうとした、その時だ。

 

『ロトロトロト……』

 ポケットの中からスマホ姿のロトムが飛び出してきた。もしや奴からの進捗どうですかの問い合わせかと身構えたが、そういえば着信拒否していたので来るはずはない。じゃあ別件で依頼かと思いきや、そもそも画面に新着通知はないのだった。

『マスター。普段は何も言わないデスが、コイル族はボクの盟友なので、フォローしてもいいデスか?』

 ロトムはスマホの機能を利用して人語での会話が出来るので、他のポケモンの通訳も可能だ。じゃあ普段はなぜしないのかと言えば、それを前提にしたコミュニケーションをしたくないのと、単純にテンポが悪いから。

 そのロトムという種族名はモーターが由来で、モーターと電気回路のコイルは切っても切れない関係。だから今回だけは気持ちを代弁したいらしい。

 

「許可なんて必要ない。大事なら言いな」

「うん、教えて。この子はどうしてこんなに怒ってたの?」

『このコイルは、思い込みの激しい性格だったようデスが……』

 ロトムは語るのだった。戦闘中に叫んでいた事が全てだったコイルの、聞くも涙、語るも涙、なんて事は全くない悲しい事情を──。

 




ピンクの方をアカネチャン、水色の方をアオイチャンと名付けて愛でていたとかいないとか
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