それ以上でもそれ以下でもないです。
五条悟は総監部に呼び出されていた。
呼び出された理由は親友である夏油傑の精神的安定度合いを報告するため。
夏油傑は羂索と名乗る呪術界の癌たる『害脳』と呼ばれる呪詛師に夏油付きの補助監督と名乗られ連れ回され、洗脳紛いの言動と非術師の醜さを詰め込まれた架空の任務を熟して精神的に追い詰められていた。
「夏油傑に対する非術師への大量殺人の教唆に加え、任務拒否と我が側近への無礼により貴様から特級術師の権利と与えていた研究施設及び資金を剥奪する事とする。持ち逃げなど考えるなよ?貴様を殺すのは五条も賛成の立場だ、まともに働かず権利と金は欲しいなど厚顔無恥な事を続けるからだ愚か者め」
夏油傑を追い詰めたのは『害脳』だが、危険思想に染めたのは味方である特級術師九十九という頭の痛い事態。
そもそも九十九が仕事をしないから五条と夏油に負担がかかり、負担をかけておいて対処療法より原因療法とぬかす図太さは特級レベルだろう。
その沙汰が今現在下っていた。研究がしたいなら結果を出して資金を出させるのが普通であり、術師をしたいなら仕事をするのが当然の義務である。両立したいなら術師として稼ぎ、資金を研究に注ぎ込む手もあったが九十九は拒否。
元星漿体として呪術界に後ろめたさがあったから十年前後自由にさせたが、今回はもはや庇いきれぬと切り捨てた。
(そもそも星漿体としての引け目も在野のゴミ術師が事情も知らずにやってた事だし、長も大変だな)
星漿体の仕組みは500年前から様変わりしている。必要なのは天元と相性の良い肉体と魂であり、500年前に星漿体に選ばれた者を参考として呪詛師の肉体を魂経由で調整する術式で改造して送り出している。
因みに倫理観等は呪術界には無い。
もはや犠牲になっているのは生きる価値の無い呪詛師のみ、九十九はソレを知らない木端術師の被害者だ。今は周知されているので誰も同じ目には合わないうえに星漿体本人を殺しても同化を阻止はできない、なので現在は星漿体を重要視する輩は居ない。
ブツッと携帯電話の通話が切れる音がする。
「五条待たせてすまぬな、夏油の容態は?」
「一時期両親まで殺そうとしてたぐらい追い詰められてたけど、今は夜蛾センが被害者の双子の世話を最優先させて時間稼ぎかな…あっ…時間稼ぎしております。」
「フハハッ口調など気にせんと言うておろうが、何なら呼び名などクソジジイでもよい。……しかしやはり害脳のゴミは、粒ぞろいのこの世代で殺すのが最善。天元に無理をさせ五条と夏油と儂で滅するが理想か」
総監部のトップである男の術式は『不滅』
死なず殺されない術式は拡張術式により自分以外に3名まで効果を及ぼす
一人目は天与呪縛により下半身と右腕に触覚等を奪われた故に手に入れた広大な術式範囲で日本全土に呪霊を派遣して発生した瞬間に呪霊を向かわせ祓い日本を護る『呪霊操術』の女
二人目も天与呪縛にて両足と片目に触覚を奪われた代わりに莫大な呪力量を手に入れ、術式である『転送』を使い呪術師を派遣し危機が迫れば持たせた呪具により手元に戻す事も可能にする男
この二人が呪術界の要であり『不滅』の加護を受けるに価すると誰もが認めている
「冗談よしてよ長さん、ほら二人も睨んでる。話し戻すけど傑…夏油の事は任せてよ、あと害脳と九十九の討伐は絶対呼んでね?」
悟の内に秘める殺意に長は笑いながら快諾する
「だができれば九十九は半殺しにしておけ、雁字搦めの縛りで十年は馬車馬の如くこき使う。代わりに五条と夏油の暇ができる、青春時代から呪霊討伐ばかりだったのだ。色々な物を見て色々事を考えて、自分のやりたい事を見つける期間だと思いなさい。呪霊は儂らで何とかして見せる」
「…ッ…これだから爺ちゃんは…分かったよ、普通の学生生活楽しみまくってやるからさ!……ありがとう」
五条の素直な礼等という珍事中の珍事に爆笑する長に背を向けて五条は退出する。
笑われているのはムカつくが、長への感謝も本当なので許してやると感情の整理をしながらズカズカ歩く。
建物から出た時に見た青空は澄んでいて、この景色は一生忘れないと確信できる程に感情と景色が結びついたのを自覚した。