ブルーアーカイブ -キヴォトス消防学校活動記録- 作:フェデラルジオグラフィック
キヴォトス警察は(有能であるかはともかく)存在とキャラが明確にあるのに、消防組織についてはひとつも書かれていないな
ということに気付き、なら書こうか、というノリで一本。
続くかどうかは未定。
キヴォトスで最も勇敢な者
キヴォトス、無数の学校とそれが管理する自治区によって構成される世界。その学校間でも決定的な関係悪化もない外交的には平和なこの世界においても、時として人々が命の危険にさらされることがある。そういった際は発生した地域を管理する学校が対応する。自治権には自治区の問題はそこを管理する学校が対処する義務と表裏一体だからである。
キヴォトスにおいて市民の危険となるものの一位と二位は銃と爆弾である。この対処に当たるのは多くの場合は各校の治安維持組織だ。ゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会が代表的な例であろう。連邦生徒会直轄のD.U.であればヴァルキューレ警察学校がそれだ。
しかし市民の脅威となるのは銃や爆弾だけではない。不慮の火災や建物の倒壊といった様々な事故、悪天候や竜巻といった自然災害もまた脅威なのである。そしてそれらの脅威に対しては銃や爆弾は無駄どころか悪化させることの方が多いので、専門の知識を持ったチームが対処するのが理想である。
ファルコン緊急事態管理学園は「キヴォトスで最も勇敢であれ」を合言葉に自らの自治区とD.U.域内、委託を受けた学校の自治区にて生じた事故や災害に対応する専門チームの養成と運用が主な任務である。また連邦生徒会の系列組織として他の学校で起こった災害にも応援出動することもある。ただしどこぞの特殊部隊とは違い相手先の学校側からの要請を以って活動するのが原則である。
任務を消防と救助に限定したヴァルキューレとSRTを一緒にしたものだと考えれば大体あっている。
わたし「
ある日の午後、当直全員で昼食を済ませ待機室で下らない世間話に現を抜かす。遠目で爆発音や銃声が響いても気にしない。キヴォトスではありふれているしなによりヴァルキューレが対応するべき事案だからだ。わたしたちが応じなければならない音は、建物すべての部屋のスピーカーから鳴る音である。
ピーピーピーピーピーピー
航空第3大隊
救助ヘリ31 捜索救助31
D.U. 135区域 4502
ヴァルキューレ警察学校矯正局 当位置
中高層建物火災 救助特命出場
その音が聞こえるや否や待機室の穏やかなしゃべり声はあわただしい足音へと入れ替わる。待機室の中が衣擦れとブーツの音で満たされる中、外ではターボシャフトエンジンがうなりを上げ、巨大な扉が金切り声を上げ始めていく。
真っ先に装具を整えたわたしは「RH-31」と書かれたエプロンで離陸の準備を進めるEC225ヘリコプターに駆け込む。最後に乗った隊員がドアを閉めると同時にエンジン音が一段高くなり一瞬だけ重力を強く感じる。
現場への飛行中に隊長から状況説明と指示を受ける。
「ヴァルキューレ警察学校矯正局がテロリストに襲撃され、囚人が脱走した。テロリストと脱走犯は逃走したが職員と囚人に要救助者が複数残っている。出動隊が地上から大部分を救助したが、はしご車が届かない建物の屋上部分に要救助者が一名確認された。我々の任務は当該要救助者を収容、並びに上空から目視にて他の要救助者の捜索と救助。降下者はヒタチとタイカ!ハーネス*1及びライフゼム*2装着!」
「了解!」
『まもなく
パイロットの声とともに心を改める。窓には白と黒の煙をあげる矯正局の施設。黒煙の隙間から手を振る人影が見えた。
「要救助者発見!」
『要救助者発見!』
パイロットも同時に見つけたのか報告が輻輳する。
ヘリコプターは矯正局の真上を一度通過した後旋回し、風上から再度アプローチする。その中でわたしともう一人の降下者はハーネスを最終確認。確認が一通り終わると同時にヘリコプターが動きを止め隊長が側面ドアをスライドさせる。直下の煙の中でこちらを見上げるヴァルキューレ生を視認してからハーネスをザイルに取りつけ上半身を機体の外に乗り出す。
「左ヨシ!右ヨシ!カラビナ安全環ヨシ!降下地点ヨシ!降下準備ヨシ!」
「降下!」
隊長の号令を復唱し機体を蹴って空へ舞う。ロープがうなり熱と煙が濃くなるのを感じるが面体越しに着地点を見据え続け着地する直前まで減速することなく屋上に降り立つ。駆け寄ってくるヴァルキューレ生を一旦手で制止しつつヘリに向けてハンドシグナルを送る。わたしが下りるときと同じザイルを使ってタイカが下りてくる。
降着、というタイカの号令を待ってからヴァルキューレ生の様子を確認する。煤けてはいるが外傷はなさそうだ。
「ファルコン消防隊です!あなたの名前は?」
「中務ケホッキリノです…」
「キリノさんですね……ヒタチより
これより吊り上げを…と言いかかけたとき、キリノに袖を引っ張られる。
「待ってください…まだ最上階に人が…」
「なんだって!?……ブレイク*5、ヒタチより捜救31、対象より本建屋最上階に別の要救助者ありとのこと」
『捜救31、
「スタンバイ……何人残っているか分かりますか?………ヒタチより捜救31、要救助者は一名とのこと」
『捜救31、建屋内に要救助者一名。なお現在の対象の収容を優先しホイストを送る』
「ヒタチより捜救31、
タイカがヘリにハンドシグナルを送ってホイストを下ろしてもらっている横で、わたしはキリノに救助用のハーネスの取り付けを進める。
「残ってる人の名前は分かりますか?」
「ヒビキ…合歓垣フブキです…たしか最後に見たのはあの階段の手前で…ケホッ…」
「分かりました。ヒビキさんのことは我々に任せてください。今からあなたをヘリに吊り上げます。落ち着いて、じっとしていてくださいね!」
ホイストと一緒に降りてきた隊員とタイカにキリノを任せ、先に彼女が指差した外付けの非常階段の様子をうかがう。屋上から見て一番手前のドアが開け放たれ薄い黒煙が立ち上っている。
「ヒタチより捜救31、要救助者の最終位置にあっては建屋西側非常階段付近、現在建屋進入路は確保されているも少量の煙が生じている」
『捜救31、10-4。行動継続可能か?』
吊り上がるホイストが揺れないように地上から支えるタイカの圧力計を確認してから返答する。
「ヒタチ、タイカ、共に残圧よし*7、行動継続可能」
『行動継続可能。追加人員の降下を確認次第建屋に進入し要救助者を捜索せよ』
「10-4」
無線の通り追加人員が降下するのを確認する。最近入ってきた二年生だ。彼女をバックアップとして屋上に留まるよう指示しタイカと共に非常階段を下りる。ボンベの残圧から考えて活動できるのは10分。それ以降は地上から上がってくる部隊に任せることになる。
開いている扉が何かの拍子で閉まらないようにドアノブと階段の手すりをロープで結んでから進入。
進入してから要救助者を見つけるまではそれほどかからなかった。姿勢を低くして廊下を見ればそれなりの距離はあるが人が倒れているのが見えたからだ。ただし動いている様子はない。
要救助者発見!とタイカに伝えてから倒れている人に近づく。非常灯の緑色に照らされた顔は苦しんだ状態で固まっている。急いで搬出しなければならない。タイカが両脇、わたしが骨盤を担いで急いで出口を目指す。
非常階段の出口に着いたとき、背中が凍る感覚を覚える。タイカと要救助者を横に突き飛ばす。さっきまでいた廊下の方へ振りむこうとして、左腕に熱と光が迫り――――――
『メーデーメーデーメーデー!タイカより各隊、