ブルーアーカイブ -キヴォトス消防学校活動記録-   作:フェデラルジオグラフィック

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続きました。原作だと本編プロローグに相当する話になります。


始発点は病室

 

 窓の外は青い空、白い雲、眩しい太陽。暖かい陽気に包まれている。ガラス一枚隔てたこちら側には青い入院服、白いシーツ、眩しいパイプフレーム。消毒薬の匂いに包まれている。

 

 その匂いの中でわたしはテレビをつける。内容は勿論……

 

『昨日、ヴァルキューレ警察学校矯正局が襲撃された事件の続報です。連邦生徒会は襲撃により複数の生徒が脱走したと発表しました。その中には非常に凶悪な者も含まれているとのことで……』

 

 ニュースの声にかぶさるように扉が開く音がした。わたしは音の下方向に顔を向ける。

 

「隊長」

 

「起きていたか。ああ、そのままでいい」

 

 ベッドから出ようとするわたしを隊長は手で制止する。

 

「どうだ、調子は」

 

「痛みはないですが、体にややなまりを感じますね」

 

「フラッシュオーバーの炎をもろに浴びて一晩で回復する生徒は君ぐらいだろう」

 

 そこまで言うと隊長は言葉を濁す。

 

「……大変言いにくいことなのだが、君の回復能力をもってしても今回ばかりは完全には復活しなかったようだ」

 

 首をかしげるわたしに隊長は懐から鏡を取り出す。そこにあったのは左側の大部分が黒ずんだ私の顔があった。

 

「医師が言うにはここの施設ではこれ以上の回復は見込めないそうだ。またその傷のおかげで面体をつけることが出来ないとも。頬に凹凸があってどうしても隙間ができてしまう」

 

「そう……ですか……。ではSARUは続けられないのですね。退院したら教官でしょうか?」

 

「その件なんだが、君には災害保安隊付となる」

 

「保安隊…ヅキ?なんですかそれは?」

 

 災害保安隊はFEMA*1の治安組織だ(トリニティの正義実現委員会に相当する)。戦闘に自信のある生徒が基本的に配置されるが今のわたしのように教官職と並び怪我等で消防士を続けられなくなった生徒の受け皿的組織でもある。しかし引っかかるのがその後ろに付いた「ツキ」という言葉。普通の保安官ならわざわざそんな末尾にはならないからだ。

 

「少し長い話なのだが、連邦生徒会長の件は聞いているな?」

 

「ええ」

 

 箝口令が敷かれているのでここで明言こそしないが連邦生徒会長は数週間にわたって行方不明になっており、SARUも「訓練」の名目でしばしば捜索にかり出されていた。

 

「どうやら連邦生徒会長はこの事態を予期していたのか、自分の後任に当たる組織を用意し、そこの顧問としてキヴォトス外から人を呼んでいたようだ」

 

 連邦捜査部・シャーレ。隊長が目の前に置いた書類には連邦生徒会長のサインと共にそう書かれていた。わたしは書類を手に取りページをめくる。

 

「隊長、これ正気ですか?下手をすれば連邦生徒会……いやキヴォトス全体を支配する独裁政権ができますよ」

 

「そうだ。書面上はそれだけの権限を持つことになる存在だ。ゆえに本格稼働時点から我々FEMAとの接点が必要であると上は判断した。本来はシャーレ担当で当番制を構築する必要があるが、昨日の件で火災や救助事案が増加していて直近は人を割り当てることが難しい。そこで当面の間はリハビリも兼ねて君がシャーレ担当を専任し、当番制が確立したら教官などの他の仕事についてもらう予定だ。一応は治安機関と思われるので保安隊からの出向という体裁をとることになっている」

 

「当番制はいつ頃できますか?」

 

「それは明言できない。現在事案が多すぎてFEMA全体がそれを構築する余裕がない状況だ。少なくともそれがある程度収まるまでは難しいだろう。ただシャーレが連邦生徒会長の期待通りの働きをすれば期間は短くなるはずだ」

 

「シャーレ担当の後は決まっていますか?」

 

「それも分からないが、君は技能が優秀だから教官職だと私は思っているぞ」

 

 分からないことばかりで全く納得できない扱いではあるが、ここで不服を言っても学園全体が案件増加で対応に追われる中では到底聞き入れられないであろうと察し、「その後」の扱いについておいおい交渉したほうがよさそうだと打算する。

 

「そうですか。その顧問の方がいらっしゃるのはいつ頃でしょうか?」

 

「三日後だ。サンクトゥムタワーで顔合わせを行う予定だ。しかしいいのか?」

 

「言っても聞いてくれないでしょうから」

 

「……そうか。必要なモノや言いたいことがあれば連絡してくれ。こちらで便宜を図れるかかけあうことはできるぞ」

 

 隊長の精一杯の配慮に感謝の弁を述べると、隊長はわたし宛の書類以外を鞄に詰めて病室を出て行った。

 

 

 


 

 

 

 二日後に退院して家を整理した翌朝、サンクトゥムタワーに向かってみたのはいいものの……

 集合場所として支持されたレセプションルームは明らかに招かれていないであろう客の方が多かった。というより落ち合うべき七神リン代行はその客でできた人垣の向こう側にいる。連邦生徒会長がいなければはっきりとした行動をとることが極めて難しい組織であることは周知の事実なので、しばらくすれば群衆のほうが根負けして散会するだろうと思いしばらく様子を見てみる。

 

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょう!」

 

 怒声から判断するに人垣の最先鋒はミレニアムのセミナーのようだ。

 

「……この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

 あれはミレニアムのエンジニア達が宇宙船用レールガンとやらの試射を行ったときに外部電源に繋いだままだったせいで送電網の電圧と周波数を吹っ飛ばしたからでは…?

 

 ミレニアムを皮切りにゲヘナの風紀委員やトリニティの正義実現委員会も自分たちの置かれた状況を競うように述べ始める。トリニティ単独で武器の不法流通が20倍にもなってたら、監視の目がないブラックマーケットなんてどんな惨状にっていることやら。当面の間ブラックマーケット近郊への出動には保安官をつけるように報告書には書いておくことにしよう。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

 言うに事欠いているのは分かるがこっちが箝口令敷いてまで秘密にしてることをこの場でバラしていいものか。

 案の定、レセプションルームは大荒れになる。めいめい勝手に言葉を発するせいでもはや雑音の坩堝と化して……ピタリと止まった。私が?という男性の声が聞こえる。あれ?あの人垣の中に男性がいるのか?その後のやり取りから察するにその男性がシャーレの顧問らしい。

 

 その男性……もとい「先生」がシャーレに着任するにあたってヘリを手配しようとする代行。30キロ程度しかない外郭地区であれば車のほうが早いだろうに。待てよ、来るときに運転していた公用車の無線機が「外郭地区にて騒擾事案発生」の報を上げていたような……。

 

 そんなことを考えていると代行は先生と思しき男性と生徒何人かを引き連れて足早にレセプションルームを出ようとしていた。慌てて後を追う。メンバーから察するにおそらく彼女たちの力でもってシャーレの建物を奪還するつもりだろう。

 

 ミレニアム、ゲヘナ、生徒会、トリニティの順番で組まれた車列が外郭地域へ突き進む。わたしはそれを公用車で追う。道すがら外郭地域への進入許可を要請したが司令からは「騒擾事態発生につき部隊進入不可」とのことで却下され、途中で折れて外郭地域の手前にある消防隊の集合場所にて待機することになった。

 

 車列のメンバーでシャーレ周辺の不良生徒を排除し、連邦生徒会が建物のコントロールを掌握したことで騒擾が沈静化を確認したことにより、司令から消防隊の進入が許可されるのを待ってからシャーレへと向かう。

 

 シャーレ前に着いた時には事が落ち着いたのか、建物の入り口前で代行と先生が三大校の生徒と会話をしていた。硝煙の匂いがあたりに充満こそしているが、雰囲気はそれなりに和やかである。最初に来た時の剣幕はどこへやら。

 

「すみません、ファルコン緊急事態管理学園の舞洲ヒタチです。シャーレへの連絡員として派遣されました」

 

「あれ?FEMAがなんでここに?ってその顔!ケガをしたの!?」

 

「ユウカさん、落ち着いてください。あれは火傷の跡です。最近の怪我じゃありません」

 

 会話に割って入るように挨拶をするとミレニアム生が慌ててゲヘナ生がそれを諫めるというなかなか見られないことが起きる。それにあまり気にする素振りもなく先生と呼ばれていた男性はわたしに問いかける。

 

「"ファルコン緊急事態管理学園?警察?"」

 

「警察はヴァルキューレ警察学校です。ファルコン緊急事態管理学園は消防を担当する学校です。両者は混同されるのを嫌いますから今後は気を付けてください」

 

「"あ、そうなんだ。こめんなさい、ヒタチさん"」

 

 正義実現委員会の副委員長がすかさずフォローする。そういえば先生はキヴォトス外の人間だったな……。

 

 先生にわたしの自己紹介を軽く済ませた後、三大校の生徒はそれぞれの学校へ帰っていった。そのあと代行はわたしの着任書類にサインをするとこれまた連邦生徒会に戻っていく。残されたのはわたしと先生だけ。

 

「"さて"」

 

 先生は一連の出来事が落ち着くと気を改める。

 

「"新しい職場で早速仕事をしようか。手伝ってくれる?"」

 

「はい、わたしはそのために派遣されましたから」

 

「"よし、じゃあ最初の仕事だ!"」

 

 こうしてわたしのシャーレ派遣員としての最初の仕事が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内容は先の襲撃で滅茶苦茶になった仕事場の整理である。

 

 

*1
ファルコン緊急事態管理学園:Falcon Emergency Management Academy の略





要望があれば続きを書きますのでよろしくお願いします。

パヴァーヌ、エデン、カルバノグ辺りではネタの見当はついてます。
あとは水着イベントの派生ネタとか、本編ともイベントとも独立した話とか。
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