ブルーアーカイブ -キヴォトス消防学校活動記録-   作:フェデラルジオグラフィック

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ご無沙汰してます。仕事に忙殺されて仕上げがほったらかしになってました。


ミレニアムタワー襲撃作戦

 

Side ヒタチ

 

「……つまるところミレニアムタワーにある『鏡』とやらを奪還しようとしているから建物の専門家として意見を出してほしいってことですか?それって強盗の片棒を担げって言ってますよね?」

 

 ヴェリタスの部室に連れてこられ、ことの次第を聞かされたわたしの質問に先生は肯定する。こういう局面で一番マシな人格をしているエンジニア部のマイスターたちはわたしがどういった提案をするか興味津々な目である。

 

「これは『シャーレとして』の案件ということでよろしいですか?」

 

 先生は再度肯定する。それに対しわたしは近くのコピー用紙を取って先生に突き出す。

 

「では証跡を下さい」

 

 待つことしばし、先生の直筆での書面の文面を確認したうえでわたしはエンジニア部、ヴェリタス、ゲーム開発部と向き合う。

 

「さて、進入プランを考える前にいくつか確認を目標の『鏡』が押収物保管庫にあるという情報は確かですね?」

 

「それは大丈夫です。ハッキングで下見してますし、盗ちょ……別口の情報収集で裏も取れています。本物が押収物保管庫にあることは間違いありません」

 

 録音機を持った生徒が事も無げに話す。

 

「押収物保管庫はミレニアムタワーの最上階ですね?」

 

「それは間違いない。タワー設備のメンテナンスで何度か入ったことがある」

 

 エンジニア部の部長が断言する。

 

「でも屋上からの進入は難しいと思う。屋上には空調のための人が通れない程度の大きさの通風孔しかないし、だからといって爆薬で突入したくても、ミレニアムタワーの屋上は高いし目立つから人間がそこまで爆薬を担いで上がるのが難しい」

 

 白髪のやや顔色の悪いハッカーが補足する。

 

「人間じゃなくて『ドローン』ならどう?」

 

「ドローンなら目立たないだろうけど、大したものは運べないと思う。通風孔の大きさは限られているから……」

 

 確認した内容を踏まえながらハッキングで手に入れたミレニアムタワーの内部構造図を見てみる。そしてわたしの眉が動くのを周りは見逃さなかった・

 

「何か思いついたのかい?」

 

 エンジニア部部長に促されるまま話を進めることにする。

 

「お互いに職業倫理をぶん投げる覚悟があればですが……セミナー生に押収物保管庫まで道を開いてしてもらいましょう」

 

 はあ!?という声が部室内にこだました。

 

 

 


 

 

 

Side ユウカ

 

 ミレニアムタワーのオペレーションルームに警報音が鳴り響く。

 

「何がありましたか?ユウカさん」

 

「ちょっと待って……最上階で火事!?」

 

 アカネに声を掛けられると同時にオペレーションルームにある警報装置の表示に促されて監視カメラを操作するユウカ。そのモニタには煙が充満する最上階の各フロアが映っている。

 

「こんな時に火事!?」

 

「おかしいですね、最上階は昨日私とユウカさんで確認したはずですが……」

 

 こうなると最上階にはC&Cも単独では入れない。火災時には防犯を兼ねた頑丈な防火シャッターが降りてきて閉じ込められるからだ。下手をすれば窒息や中毒の危険が出てくる。しかも生徒会メンバーの指紋認証がなければ開けることは難しいのである。

 

「ああもう!とにかく早く消防に連絡を……」

 

 ユウカは慌てながら火災警報装置に備え付けられた電話を操作し消防署へ電話する。

 

 

 ほどなくしてミレニアムタワーに一台の消防車が到着。中から四人の消防士が降りてくる。ヘルメットの色が他と違う消防士がわたしに問いかけてくる。

 

「消防隊です!ここの責任者は?」

 

「私です!」

 

「通報したセミナーの早瀬ユウカさんで間違いありませんか?」

 

「そうです!最上階で火災警報がなって……」

 

「わかりました、最上階ですね。防火シャッターは?」

 

「閉まっています」

 

「最上階へのアクセスは?」

 

「専用のエレベーターがあります」

 

「専用エレベーターの場所は…………了解しました。ではユウカさんはわたしと一緒にミレニアムタワーの制御室へ、残りは専用エレベータ前で待機!」

 

 了解!という声と共にエレベータへ駆ける隊員たち。こういう時こそファルコンは頼りになる。一人だけややぎこちない動きをしているように見えるが気のせいだろう。

 

 

 

 消防士と共にオペレーションルームに入る。モニタ内の煙はより濃くなっているようだった。

 

「ユウカさん!」

 

「アカネさん、もう大丈夫。消防隊がエレベータ前で待機してるわ」

 

「エレベータは動かせますか?」

 

 消防士の問いかけに肯定の返事をしながら急いでエレベータの制御をこちらに移し扉を開ける。消防士たちが乗り込んだことを確認し扉を閉め最上階へ向かわせる。彼女たちが移動する間も消防士は少しでも情報を得ようとモニタを見まわしている。隊員側でシャッターを開けられないため、ここから操作することはその間に説明しておく。

 

「隊員たちが最上階に到着しました。防火シャッターの解放をお願いします」

 

「わかりました」

 

「隊長より各員、今からシャッターを開ける。火元の捜索を開始せよ」

 

 端末を操作してシャッターを開ける。煙が濃すぎてカメラの映像は役に立たなくなっているが、隊長が無線機に問いかける声から考えるになかなか原因を突き止められない様子である。消防隊長の指示に従って一つずつ各部屋のロックを開けていく。火元が見つからないまま捜索は最後の部屋、押収物保管庫へ。

 

「各員、これが最後の部屋だ。何としても原因を見つけ出せ」

 

 押収物保管庫のシャッターを上げ、ロックを開ける。………オペレーションルームがしばらく沈黙する。

 

「………そうか。すべての部屋を確認しましたが、火災は確認できませんでした。ですが発炎筒と思しきものを発見しました。おそらくそれが原因かと」

 

「あー……」

 

 隊長さんが言うには押収物保管庫の通風孔にいくつかの発炎筒の燃え殻があり、まだ暖かかったためこれが原因だろうということ。モニタを見ても煙が晴れ始めているので対処も済んだようだ。大方威力偵察がてらヴェリタスがドローンか何かを使って投げ込んだのだろう。通風孔に柵をしてドローンが入れないようにしておかないと。

 

「発炎筒はこちらで調査しますので持ち帰りますがよろしいですか?」

 

「わかりました。ただ調査がすみましたらこちらに引き渡しをお願いします」

 

「考慮しましょう。では我々は撤収いたしますので、エレベータを操作願います」

 

 彼女の指示に従ってエレベータを操作し消防隊員を地上に降ろすと、隊長と共に一階のロビーで集合し彼女たちが点呼を済ませて消防車に乗り去っていくのを見届ける。発炎筒を帰ってきたらどうしてやろうかしら。

 

 

 

 ……走り去る消防車を見届け、軽く背伸びをしながらミレニアムタワーへ戻ろうと踵を返すと背中から消防車のサイレンが近づいてくる。止まった消防車から消防士が駆けてくる。

 

「消防隊です!自動火災報知機が作動したと連絡を受けたのですが!」

 

 ……え?

 

 

 


 

 

 

Side ヒタチ

 

 あっはっは。思ったよりうまくいった。帰りの消防車を運転しながらわたしは笑う。

 

 ミレニアムタワーには防火設備を兼ねたセキュリティシステムがあり、セキュリティはセミナー生が握っている。また外部と接続されていないため事前にヴェリタスがハッキングするのは無理である。加えてC&Cというミレニアム屈指の戦闘部隊が警備しているので力押しで突破できる見込みは無い。

 この警戒体制を技術者集団が突破できる可能性は()()であればゼロである。()()()()()()()()?わたしの提案した作戦はここを軸とする。

 

 作戦第一段階、火災警報をわざと鳴らす。このためにハレのドローンを通風孔から進入させ最上階の押収物保管庫といくつかの部屋に発炎筒を仕掛ける。発炎筒だとばれるのを防ぐため発炎筒の設置場所は通風孔の部屋の近くのダクト内に留める。

 これにより火災対応として二つの行動をセミナーに強要する。一つ目、ミレニアムタワーのオペレーションルームから消防署、つまり()()へ電話させること。予め交換局をハッキングして通報の電話をこちらに回して消防隊が向かうことを伝えつつ、電話回線越しにハッキングを行ってミレニアムタワーの監視システムをジャックしてこちらに都合のいい映像に差し替える。これは電話の応対はわたしが実施し音声加工とハッキングはコタマが担当する。応対の一環で二次被害を避けるためその階から人を避難させるように誘導する。実際に煙は出ているのだから、消防隊の指示には従わざるを得ない。こうして二つ目、C&Cを最上階から遠ざけることが可能になる。

 

 作戦第二段階、消防隊に扮したウタハ、ヒビキ、マキとわたしがミレニアムタワーに突入する。セミナー生との応対とオペレーションルーム内での作業指示は本職であるわたしが担当し、残りのメンバーは最上階へ向かう。

 おっかない警備員がいない最上階に一旦中に入ってしまえば占めたもの。捜索にかこつけて堂々と押収物保管庫へ侵入、鏡と「原因」となった発炎筒を回収して脱出する。脱出後にタネ明かしとして本物の消防隊を向かわせる茶目っ気も忘れずに。

 ちなみに偽装に使った消防車や消防服は廃止された子ウサギ地区の消防署*1から盗んできてもらった。どうやら先生は便利屋とやらと接点があるらしい。

 

 消防車を所定の乗り捨てポイントまで走らせる。後部座席で「鏡」を手に盛り上がる面々をあらわすかのごとく、ミレニアムのビル街は払暁に染まりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 なおこの件が原因でわたしは後でFEMAの上級生から詰められ、シャーレの依頼である旨の紙を突き出すことになるのだが。それはまた別のお話。

 

*1
最終編のプロローグ参照




パヴァーヌ前半の「鏡」奪還作戦、終了。

次はシナリオから離れて消防隊らしくガチの災害に対応する話でも書こうかなと思います。
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