勇者パーティーに明らかに役に立たなさそうな人が混じってるのですが   作:蓮太郎

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プロローグ とある町での攻防

 

「ほ、報告します!南門の方から魔王軍多数!北門の幹部は囮だったようです!」

 

「馬鹿な!まさかこんな事になるとは…………」

 

 勇者一行が現在魔王軍幹部の強敵と戦っている間、遠巻きに見守っていた衛兵達に絶望の報告が入った。

 

 現在進行形で人間と魔族は戦争している。人間に勇者という上位種がいるのと同じく魔族にも似たような幹部という上位種が存在している。

 

 人間の中で圧倒的な力を誇る勇者は敵の強敵と戦っているため抜け出せなんて言われると逆に幹部を野放しにしてしまう。そうなると残された弱い衛兵達、もちろん町民よりも戦えるのだが、幹部の強さにははるかに及ばずは虐殺されてしまうのだ。

 

 敵は今この時も人間の虚をついて攻めてくる。

 

「敵の数はいかほどだ?」

 

「す、少なくともこの町の人口の半分くらいは居ます!」

 

「まさに絶望的、だな」

 

 魔族と人間には種族的に大きな差がある。その差を埋めるために鍛えるのだが多勢に無勢、今の衛兵達の数では魔王軍に数で押しつぶされる。

 

 遠くで死闘を繰り広げてる勇者達には悪いが、彼らは絶望しかなかった。

 

「はーい、戦前のスープ出来たよー」

 

 そんな殺伐とした空気の中、どう見ても戦闘職にみえない男がスープの入った大きな鍋を持ってやって来た。

 

 全く空気を読まないと全員から睨まれる。

 

「あれ、俺何かしましたっけ?」

 

「こんな時にスープなんて作るな!何でこんな奴が勇者の仲間なんだ!」

 

 衛兵がそう言うのも無理はない。農作業でそれなりの筋肉を持っているが、本当にただそれだけの肉体。スキルも特に役立つものもないと言っていた。

 

 実際、衛兵達が始めて彼を見た時はバックパックしか持っておらず武器も防具すら装備していなかった。

 

 どう見たってただの荷物持ちである。今のほほんと立ってる男はどう見てもただの村人にしか見えない。

 

「それより何があったんだ?あのソラーマメだったっけ?そいつは勇者に任せてたら大丈夫だろ」

 

「反対側から大量の魔王軍が来てるんだ!」

 

「そんな時にスープ作ってどうする!」

 

「まーまー、落ち着いて。ほら、冷めないうちに」

 

「飲んどる場合か!もうおしまいだ…………」

 

「諦めるのは早いんじゃないの?せめて戦ってから諦めろよ。話はそれからじゃん」

 

「だったらお前も勇者一行なら戦え!」

 

 明らかに他力本願の衛兵を宥めながらスープの入った器を差し出すも拒否されてしょぼんとした顔をしている彼だが調子を崩すことはない。

 

「仕方ないなぁ、やればいいんだろ?」

 

「へ?お、お前本当にやるのか?」

 

「戦えって言ったのお前じゃん。兵士の癖に戦えない同然の宣言したのお前じゃん」

 

「ふ、ふざけるな!誰がお前なんかに戦えと言った!」

 

「うわー、矛盾してるわー。きたねーわー」

 

「貴様ッ!」

 

 今にも斬りかかりそうなのを周りが必死に止めるが村人は挑発的な表情を変えない。

 

「それだよそれ、それくらいの気合があれば魔族の1人や2人は倒せると思うのに。あ、鍋温めておいてくれ。後で温めなおすすから」

 

 男は自分の身よりも鍋のスープの方を心配しつつも彼は南門まで全力で走る。

 

 走る速度も普通だったため南門まで5分くらいかかった。

 

「ああ、女神よ、どうか私達を天に連れて行ってください…………」

 

「もうダメだ、おしまいだぁ!」

 

 南門は情けないほど完全に諦めムードだった。もはや戦うことも諦め楽に死ねるかどうか分かららず祈り、または自棄になっている人間しかいない。

 

 生きることを諦めて神に祈ったりして現実逃避をしているものばかりが走り抜ける中でどうしても目に映るので彼まで嫌になってくる。

 

 しかし、この男にはやるべきことがある。それが命を捨てることとなっても。

 

 そんな中でこっそりと村人は門をくぐって魔王軍の方面へ走る。その事に誰も気づかず、たった1人で魔王軍に突撃していく彼に気づかない。

 

 その日、魔王軍幹部と大量の魔王軍兵士が死亡すると言うある所によっては吉報、ある所では悲報が伝えられた。

 

 北門では激しい戦闘の傷跡が見られ、南門には隕石が落ちたのかと思うほどのクレーターがあり戦いの激しさを物語っていた。

 

 戦いが終結した翌日、勇者一行はクレーターの中心部にいた。

 

「『生き返れ生き返れ〜』」

 

「毎度思うけど呪文が適当すぎないか?」

 

 白いシスターの格好をしたクレーターの中心で不真面目に聞こえる詠唱を唱える。

 

 流石に適当過ぎる気がしたのか勇者パーティーの中で最も気高そうな雰囲気を出す男、勇者が感想をこぼす。

 

 それについて白いシスターも思う所はあったようで、しかし地面の半分溶けたような土がもぞもぞと動き出したことを確認すると開き直り、呪文の成果がでたことを喜んだ。

 

「過程なんて実際どうでもいいんですよ?ほら、地面から手がずばんと出てきましたよ!」

 

「なんか手がバタついてるけど、生き埋めになってない?」

 

「あ、動きが止まった。埋め立てよう」

 

「やめて差し上げろ。1日に2度死ぬとは可哀想なやつ…………」

 

 あの日、魔王軍を中心に大地震と共に大爆発が起き、キノコ雲が上がり軍隊は壊滅した。

 

 いったい誰があの爆発を起こしたのか、街の住民は誰も知らない。

 

「せめて早く掘り出してくれよ!2度も死ぬ羽目になったわ!」

 

「まーまー、悪気があってやったわけじゃないし?」

 

「勇者ァ!その甘さがダメっていつもいつもー!」

 

 そして中心で勇者と個性のない村人っぽいのが大喧嘩をする場面を遠巻きに見られ恐れ知らずと噂になったとかなんとか。

 

 これが今の勇者パーティー。勇者を筆頭に戦士とシスター、魔法使いと個性豊かな村人。

 

 …………あの、すいません。

 

 勇者パーティーに明らかに役に立たなさそうな人が混じってるのですが。




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