勇者パーティーに明らかに役に立たなさそうな人が混じってるのですが   作:蓮太郎

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第五話 旅立ちの日

 

 気づけば勇者パーティーに無理矢理入ることになった村人の心境を考えたことはあるのだろうか。

 

 普通はそんな体験をする村人はここ数百年はいないだろう。自爆スキルを使ったせいで世界の命運をかける戦いに巻き込まれた村人なんて考えもしないだろう。

 

「え、マジで行かなきゃダメなの?ユノが変わってくれたりしないの?」

 

「幼女に押し付けるな、男らしさを見せろ!」

 

「さすがに冗談だけどそこまで怒られる必要ある?」

 

 いかにも村人らしい質素な服装に大きめのバックパックを背負ったパラドが嫌そうに立っていた。

 

 いくら怪我しても治してもらい、死んでも蘇生してもらえるとはいえ、あまりにも名誉ある勇者のお供のなって世界を旅するのは荷が重い。

 

 勇者と共に旅をしたい人間は山ほどいる。それなのにいつどこで離脱するか分からないのを連れていくのはとんでもない。

 

 この世の全てが輝かしいことは無いと村での扱いで少しわかったつもりでいるパラドはため息をつく。

 

 めんどくさいことはもちろん、痛いのも苦手なのだ。

 

 旅をするにあたってパラドの役割は基本的に荷物持ちでサポートして勇者達に守られるという決まりが作られた。

 

 ある意味で最後の切り札ではあるパラドを大事に守るのはどうなのか。

 

「元気でやるのよ」

 

「元気も何も自爆前提だから結構危ない橋だと思うんだけど」

 

「自爆がなんだ!ここにいるお前を馬鹿にした奴らを見返して帰ってこい!」

 

「親父、自分じゃないからって何言ってもいいもんじゃないんだよ?」

 

 両親もノリノリなため余計に退路を断たれた気分である。

 

 そういえばユノは何処に行ったんだろうか、と聞く暇はない。勇者の事情で今すぐ出なければならないのだ。

 

「彼は責任持って僕達が守ります。どうかご安心を」

 

「怪我しても治しますから!」

 

「まあ、本当に助かるわねぇ」

 

「人ごとだからって…………全くもう、話を聞かない奴らばかりじゃねえか!」

 

 そんな叫びは通用しない。割と生きるか死ぬかの世の中でのうのうと生きていたパラドがやる時が来ただけだ。

 

 村の人たちもパラドを見送りに来た、というより勇者一行を見送りに来たというほうが正しい。

 

 なにせ、嫌われ者のパラドが行く事すら嫉妬という感情を持ってしまっているのだ。その事を勇者を褒め称えることで避けている節さえ見受けられる。

 

 正直、長く留まるより行くなら早く行きたい。勇者に向けられる憧れや希望の中に嫌な視線が混じっていることに気づいたパラドはそう思った。

 

 その意図を汲んだように勇者がキリをつけるように言う。

 

「みんな、見送りありがとう。それじゃあ僕たちはもう行くよ。応援ありがとう」

 

「いえいえ、勇者様!頑張って下さい!」

 

 ワーワーと少人数ながら歓声を上げている村人たちに背を向けて彼らは目的地の町へつながる道を歩みだした。

 

 村がどんどん小さくなってていく。今まで慣れ親しんだ村を離れるはずなのに、パラドは何も感じなかった。

 

「俺って思っている以上に薄情なのかねぇ?」

 

 列の最後尾で誰にも聞こえないように呟き、少しうつむく。

 

 鬱憤が溜まっていたのか、それでも居心地は良かったのか分からない。

 

 こっそりとぼとぼ歩いてちょうど見えなくなった頃、魔法使いのスタミナが切れた。

 

「ゼーハーゼーハー」

 

「体力尽きるの早くないすか?」

 

「彼女はもともと長距離を歩くのが苦手でね、この貧弱さは元々なのよ」

 

「黙ってぇ、ゼーゼー、なさい、ハーハー」

 

 完全に体力切れを起こして魔法を唱える補助をするための杖を老人が使うように地面についてフラフラとおぼつかなくなっている。

 

「いつも僕がおんぶしてるんだけどね。そうだ、パラド君におんぶしてもらったらいいんじゃないかな」

 

「俺が?まあいいですけど…………」

 

「勇者様が、いい、ですぅ、ハアハア」

 

 こんな時まで我が儘を言う魔法使いだが、抵抗する体力がないため言葉だけで言い返そうとする。

 

 だが、この魔法使いの眼光は野獣の如く鋭かった。だがしかし、疲労には勝てず足が震え始めている。

 

 仕方なくパラドは背負っていたバックパックを前にやり魔法使いを背負った。

 

 疲労で力尽きかけた魔法使いは対抗しようにも出来ず、楽するなら仕方ないと言わんばかりに受け入れていた。

 

 魔法使いを背負った感想は思った以上に軽く、そして硬かった。

 

 その邪な考えを見通したかのように頭を小さな杖で殴られた。

 

「痛っ、くない。杖で殴ってこの威力だったらもっと肉をつけたほうがいいって」

 

「こ、こいつ気にしてることを!私は結構食べるんですよ、手に一杯くらいの薬草を!」

 

 その量をたくさんと言わないし、肉を食っていない時点で肉付きが良くなるわけない。

 

 パラドだって畑の傍に罠を仕掛け、たまにくる野生動物を捕まえては家族と共に食べていたのだ。

 

 そもそも運動自体苦手そうな魔法使いだから食べたところで鍛えなければ太るだけになりそうな気もする。

 

 口にしそうだったが今は口論をしたくなかったのであえて黙る。

 

 視線だけでいつもこうなのかと勇者に訴えかけてみる。

 

 そっと目を逸らされた。シスターやれやれといった感じの表情をしていた。。

 

 次の町まで約三日ほど歩き続けなければならないらしい。これで足腰が鍛えられるなーとやや現実逃避ぎみのパラドはそう思い魔法使いを背負い続けるしかなかったとか。

 

 つぎの町まで、先は長い。

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