ウマ娘×ストライクウィッチーズ-Project Cross Rebellion- 作:ソロー筋
研究室の窓から差し込む淡い月の光が、静寂を保つ部屋の中を照らしていた。中央には、ベッドに横たわる謎の少女の姿があり、その側の回転いすでアグネスタキオンが思索にふけっていた。
彼女の手には厳密に計られた最適温の紅茶のカップが握られていて、深い萌黄色の液体が光り輝いていた。いつもならリラックスのための紅茶だが、今夜はその役目を果たしてくれそうもない。
「あの耳と尻尾は…」彼女の目は、少女の身体の特定の部分に固定されていた。「どうして消えてしまったのだろうか」
とれた形跡も、傷の痕跡も見当たらない。それらは、一体、どのような原理で消失してしまったのか。エネルギー体なのか、はたまた、一時的に映し出されたフォログラムのようなものだったのか。では、なんのために?それとも、私の頭がおかしくなっているのか。
タキオンの目が少女の顔に移ると、彼女の眉間に薄らと皺が寄っていた。時折、痛々しい寝言が漏れ、微かな身じろぎを伴って身体が震えていた。その姿を見て、タキオンはハンカチを取り出し、彼女の顔に伝う汗をそっと拭き取った。
「この少女は一体、何を見ているのだろうか」
* * *
宮藤の心中に浸透してくるのは、街の瓦礫の間から伝わってくる恐怖だった。上空からの眺めが、彼女が自分はウィッチとして空を飛んでいたことを思い出す。守れなかったこの都市、無人と化した通り、そして戦火に追われる人々の姿。地上を蹂躙する小型ネウロイたちが、何の罪もない人々を次々と殺戮していく。彼女の目の前で、大型ネウロイの攻撃で街が炎の海と化す。
「守らなくては…!」そう思っても、駆け寄ろうとしても、透明な壁に阻まれて近づけない。壁の向こうで負傷しながら必死に戦う彼女の仲間に声は届かない。彼女の胸に湧き上がるのは、その場面をただ見ているだけの、自分が何もできなかった絶望と悔しさだった。彼女は空を飛びながら、泣いている子供や、苦痛の声を上げる兵士たちに手を伸ばす。しかし、どれもこれも彼女の手を伸ばすと消えていく。仲間の一人が、ネウロイの攻撃に、地上に落ちる……
「待って!」宮藤の声は絶望的に高まり、彼女の心と体が限界を迎える。必死に手を伸ばし……
* * *
「待って!」
大きな声にタキオンは飛び起きた。
するとベッドの少女は手を伸ばして、悲痛な表情で上半身を起こしていた。
「大丈夫かい」
タキオンは驚かさないように、できるだけ優しい声で語りかけた。
「わたしはアグネスタキオン。しがないウマ娘さ」