ウルティマ地獄編   作:XX(旧山川海のすけ)

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お金を稼ぐために、場末の酒場でメンバーを募り、街の防具屋に泥棒に入る。
普通の人がやれば大変なことだが、勇者には許される。
そこで稼いだ資金は、全て正義のために使われるのだから。


第二十一話 伝説の地アンブロシア大陸

★★★(リルファ)

 

 

「んん~! 休んだぁ~!」

 

 西部デパートを出て。

 ルロードさんは伸びをした。

 

 久々の仕事。

 だいぶ長いこと休んだ気がする。

 

 ウッドさんは

 

「この後、大変な試練が待っている。この休暇で、思い残すことの無いようにしっかり休んでおけ」

 

 そう言われてたから、しっかり休んだ。

 これ以上ないほど。

 

 美味しいものも食べたし。

 お酒も飲んだ。

 お芝居も観に行ったし。

 読みたかった本も全部読んだんだ。

 

 もう、悔いはないって感じ。

 

 まあ、あくまで「感じ」だけど。

 

「久々の冒険だけど、身体は鈍っていないな?」

 

 ウッドさんが全員集合するなり、私たちにそう確認する。

 

「はい! 昨日の夜は早めに寝ました!」

 

「ランニングで身体を起こしてきたのでバッチリです!」

 

 私とルロードさんはそう元気いっぱいの返事。

 

「よし! では行こう! 船に乗るぞ!」

 

 久々の海。

 前に乗ったのは、大地の鎧を掘り出しに行くとき。

 今日はどこに行くんだろうか?

 

 乗船しながら、ワクワクに胸を膨らませる。

 次は天の剣かな?

 ああ、でもあれは銀のつるはしが要るんだっけ?

 じゃあ、次は銀のつるはしを探しに行くのかな?

 それとも何か他の事?

 

 想像するだけで幸せな気分になる。

 これが冒険の醍醐味だ。

 

「出発だ」

 

 ウッドさんが舵取り。

 私たちの船が陸を離れる。

 

 大海原に、私たちの船が進んでいく。

 

「ありったけのーゆーめーをーかきあーつめー」

 

 ルロードさんがテンションを上げ過ぎて、歌を歌い出した。

 気持ちは分かるんだけどね。

 久々だし。

 

 船がどんどん進んでいく。

 怪物は居ない。

 海賊も居ない。

 

 平和で、気持ちいい海。

 

 そしてどのくらい海を進んだんだろうか。

 

 行く手に、怪物では無いんだけど。

 気になるものが出現する。

 

 ……渦潮だ。

 

 ちょっとした、じゃない。

 入ったらまず死ぬなー、と思ってしまうくらいの大きさの、渦潮。

 

 ……大渦って言った方がいいのかな?

 

 でもま。

 

 結構離れているし、避けるのは簡単。

 檻の中のグリズリーを恐れる者はいない、って言うよね。

 怖くない怖くない。

 

 ……と、思っていたら。

 

 私たちの船が……そこに向かっていく。

 え……?

 

 何で? どういうこと?

 

 最初、意味が分からなかった。

 何で私たちの船が、大渦に向かっていくの?

 

 ひょっとして吸い込まれているのでは……!?

 

 えっと……それじゃどうすれば……

 

 そこでやっと気づく。

 ウッドさんの判断を仰ごうとしたときにだ。

 

 ウッドさんがね、全く焦ってなかったんだ。

 落ち着いてると言うか……

 

 いや、これは「アクシデントに遭遇しても落ち着いている」じゃない。

 

 ウッドさん自身が、そういう風にしてるんだ。

 これは……わざとだ!

 

 それに気づいた瞬間

 

「やめてくださいウッドさん! 死ぬ気ですか!?」

 

 ウッドさんに縋りついて止めようとした。

 だけど……

 

 私の力では、男性の力に敵わない!

 

 止められず、船は大渦に向かっていく。

 

「やめろー! ウッドさん!」

 

 ルロードさんもウッドさんの意図に気づき、止めようとする。

 だけど、そんなウッドを羽交い絞めにして、ガルネフが妨害する。

 

 戦士と魔術師では基礎体力が違うから、止め切れてないけど。

 それでも、邪魔にはなっている。

 

 誰も、ウッドさんを止められないーーー!!

 

 船が大渦に直進していく。

 

「うわあああああああ!」

 

「きゃああああああああ!」

 

 私とルロードさんの悲鳴が木霊した。

 

 そして……

 

 船は渦に巻き込まれた。

 どれぐらいの時が経ったのだろうか。

 気がつくと見知らぬ海岸に倒れていた。

 

 

 

「う……」

 

 良かった……どうやら生きていたみたい。

 それに持っていた道具類、お金、装備もちゃんとある。

 奇跡的。

 

 身を起こし、私は仲間たちを確認した。

 

 3人、倒れていた。

 

 ……良かった。全員無事。

 生きてる。

 それは全員、動いていたからすぐに分かった。

 

「立てますか? 痛いところはないですか?」

 

 そう、呼び掛けると

 

「ああ、なんとかな」

 

「ボクも大丈夫です」

 

「俺たちはどこにいるんだ?」

 

 3人が頭を振りながら立ち上がる。

 

「皆、すまなかった。ここに来るにはこうするしかなかったんだ」

 

 正直、ここに来るために全員に「大渦に飛び込むこと」を覚悟できるように説得が出来ると思えなかったんだ、と。

 

 ウッドさんがそう言って私たちに詫びた。

 そうだったんだ……理由があったんですね。

 

 分かりました……

 

 でも……

 

 ここ、本当にどこなんだろうか?

 

 緑あふれるソーサリア大陸と違い。

 ここの大地は灰色だった。

 

 ……火山灰?

 

 理由は分からないけど、生命力を感じない大地。

 死の大地と言って良いかもしれない。

 

 寂しい土地だ。

 

 誰か……いないかな?

 

 そう思って、人影を探す。

 どこにもいない。

 

 本当に何もない大地……

 

 不安になる。

 泣きそうになる。

 

 誰かいないの……!?

 

 そうして、どのくらい探したのか。

 

 やっと、見つけた。

 

 お婆さんが、一人でポツンと立っていたんだ。

 私は駆け寄る。

 そして訊いた。

 

「ここはどこですか?」

 

 すると。

 私を見て、お婆さんはこう言ったんだ。

 

「ここはアンブロシアですじゃ」




大渦:
このゲーム、能力値はレベルアップで伸びません。レベルアップで伸びるのは、前も言いましたがHPだけです。
能力値を伸ばすためには、アンブロシアという伝説の大陸に行く必要があります。
そこで各種能力値の神殿に行き、献金して上げてもらうのです。
そのアンブロシア大陸に行く方法ですが、それが「船で海の大渦に飛び込む」こと。
普通に考えると自殺行為ですが、このゲームではそれが強制されるのです。
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