~4月16日・朝・赤の管理区~
朝、俺たちはシルトの滞在許可を取るために赤の管理区へと向かった。その場所は神殿や古代文明…いわゆる神話に出てくるような雰囲気だ。
シルト「わぁ~、すごい!地面が浮いてるー!」
空「あれが観光ガイドにも載ってる『天空島』ですね!私も始めて観ましたっ!」
美海「ヒメ会長が住んでるのも、あの天空島なんだって。今日の目的地はあそこだよ。特別な人しか住めないエリアで、立ち入りにも許可がいるらしいんだけど…」
明日翔「ソフィーナがいろいろ話付けてくれたんだよな、まったく顔の広いやつだよ…本人は不在だけどな。」
美海「今日はどうしても外せない用事があるんだって。新歓戦あたりから、すっごく忙しいみたい。」
空「魔女王の右腕ともなると、私たちの想像できないお仕事がいっぱいあるんでしょうね…。」
シルト「ねぇねぇ、それであの島にはどうやっていくの?」
美海「ちゃんと道があるから大丈夫だよ。上まで続くすーっごく長い階段があるの。」ビシッ
指さした方向を見ると、そびえたつ階段が見える。
空「えっ…階段であそこまで登るんですか!?ちなみに、何段くらいあるんでしょう?」
美海「たしか、50000段って言ってたかな。」
空「ご、ごまん!?さすがに死んじゃいますよ、それは。」
シルト「でも楽しそうじゃない?それに一段飛ばしで登れば半分で済むよー。」
空「それでも25000段じゃないですか!?」
明日翔「まー神様もろもろが住んでる場所だ。このぐらい乗り越えなきゃ踏み入る権利すら与えられねんだろ。」
空「そういうことではないと思いますけど…。;」
明日翔「どれどれ…人間の足をなめるなよぉ~!」シュタタタタタ
空「あ!先輩!」
~階段~
明日翔「まってろよ神様ども!この俺様のお通りだぁ!」タタタタタタタ
空「せんぱ~い!」
明日翔「へぁ?」
美海「頑張ってねー!」
ペガサスに乗って上まで駆け上がっていく空達が見えた。
明日翔「あ!ずりぃぞお前たち!ぐぬぬぬぬ…」
ミコト「もうちょっと待ってたらキミも乗れたのに。」
横から声を掛けられる
明日翔「ヒメガミ、迎えに来るなら先に言ってくれよ。」
ミコト「キミが早とちりなんだよ…。じゃあ乗って。」
ミコトのペガサスに乗り天空島に向かう。
ミコト「よくあの階段を上ろうと思ったよね…。」
明日翔「神様からの挑戦状と思ってな?俺に不可能はねぇのよ。」
ミコト「少なくとも本州には5万段の建物はないけどね。」
明日翔「うるせぇやい。…で、実物を見てどうだった?なんか引っかかるものでもあったか?」
ミコト「いいや?まだ話してもないし第一印象でしかないけどね。」「その話はついたらしようよ、今は二人きりのデートを楽しもう?ね?」
明日翔「ヒメガミ、言ってくれるじゃないの。珍しいな。」
ミコト「ふふ。キミの真似だよ。」
~天空島~
明日翔「ぴょーん、ぴょーん。」シュタッ「到着~。」
空「先輩!やっぱりペガサスさんを使ったんですね!。」「よかった…会長さんがいなかったら階段を上るだけで日が暮れていたかもしれませんっ。」
ミコト「あはは、飛べない種族が天空島に来るのはあんまり想定してないからね。あの階段を自分の足で上り下りしたい人なんて、赤の世界でもそうそういないしね。」「…そこにいるお馬鹿さんを除けば。」ニガワライー
明日翔「お褒めに預かり光栄ですー。うひょひょひょ。」
ミコト「さて、それじゃあ本題に入ろうか。」「その子が、緑の世界から来たらしい女の子だね?」
ここまでは、昨日の打ち合わせ通り。実は昨日、同じ話をすでにしたんだ。
~回想・昨日の夜・城琉のアジト~
俺たちのアジトをなぜかヒメガミは特定してやってきた。会話の一部始終も聞かれちまってたし本人の画像なども含めてすべて話した。
ミコト「なるほど、名前はシルト。何者かに追われていて、青蘭学園で保護したいという考え、と。」
明日翔「一応今日プログレスってこともわかったし俺とリンクできるってこともわかった。あとそこの役者ともな。」
歌右衛門を親指で指さす。歌右衛門は会釈だけ返した。
明日翔「一応手加減アリではあるがソフィーナと美海といい勝負したぜ。」
ミコト「それはすばらしい。能力だけなら、在籍の資格はありそうだね。…でも大きな問題がある。」
城琉「グリューネシルト絡みの問題ってことか。」
ミコト「ご名答。緑の世界はグリューネシルト統合軍がすべてにおいて管理している。資源やプログレスを含めた人間、すべてをね。」「当然ながら軍や警察機構も一括として兼ね備えている。その強硬さは5つの世界で随一だ。」
城琉「追手次第では、許可できないってことか。」
ミコト「そういうこと。加えて追われてる理由もわからないのだろう?」
明日翔「ああ。余程恐ろしいことが起きたのか記憶がごっそりなくなってる。」
ミコト「なら…最悪なパターンとして、犯罪者だって可能性もないわけじゃないよね?」
歌右衛門「なんだと!?」ガタッ「我が師匠がそう見えるとでも言うのか!?我が師匠はそのようなお方ではない!!」
ミコト「役者さん。なぜ、そう言い切れるの?確かに、記憶を失った今はそうかもしれないけど…記憶を失う前は悪人で、追われる原因がそこにあるんだとしたら?」
歌右衛門「我が師匠を愚弄しおって!!!!ここで斬り捨てる!!!」チャキッ
城琉「落ち着け!歌右衛門!!ここで斬ったところで進まねぇんだ!話はよ!」ガシッ
歌右衛門「離せ!竜の字!」ジタバタ
城琉が別室に歌右衛門を押し込みに行く。
明日翔「お前らそうカッカすんなって。ヒメガミも熱くなんなって、学園を守る立場である以上気持ちはわかっけどもよ。」
ミコト「ふぅ…でもこれはあくまで最悪のパターンね。」
明日翔「あくまで仮説、そういうパターンもありゃそうじゃないパターンもあるってもんだ。」
ミコト「うん、その通り。」
城琉「考える限りの最悪のパターンを引き続けた結果の話ってことだろう?」ガチャ
別室から戻ってきた。
明日翔「おお、おかえり。わりぃな。」
城琉「あいつならふて寝したよ。」「さんざん説明してるがグリューネシルトはそれはそれは物騒な連中だ。その女を匿うことで逆に俺たちの命が危なくなる。それを生徒会長さんは危惧してるんだ、そうだな?」
ミコト「わかってくれてなによりだよ。」
明日翔「じゃあまずはどこのどいつが追っているのか調べる必要があるってことだな。」
ミコト「そうだね。統合軍が追っているにしても、その理由がわかるだけで、話は進むね。」
城琉「よし明日翔、そのヤマは俺に任せろ。俺も調べることがたくさんあるからな。」
ミコト「私の方でも、探りを入れてみるとしましょう。」
明日翔「探り…?ああ、あんたの助手か。」
城琉「助手…ああ、あの獣人か。」
ミコト「覚えているようだね。ナクルに頼んで統合軍の手配書リストに名前がないか確認する。」
城琉「そいつぁ助かるが、大丈夫なのか?統合軍に足がついちまうぜ。」
ミコト「ナクルはその閲覧ログ自体を管理している情報部のコだから、問題な~し。」「私はこれでも人の縁を司る女神。人を見る目は確かだから、任せてよ。」
城琉「ふっ。肝心な女を任せる人選は間違えてる気がするけどな。」
ミコト「いいや。間違えてないね、私の目に狂いはないよ。」
城琉「大した自信だぜ、まったく。取り合えず滞在許可は取れたということでいいな?」
ミコト「そうだね。でも青蘭島で問題を起こさせないこと。そうなったら、私も庇えない。」
明日翔「もちろん、青空寮の連中に任せりゃその辺は大丈夫さ。」
ミコト「じゃ…そちらのお願いには答えられたかな?」
明日翔「十分だ、あとはこっちでどうにかする。」
ミコト「うんうん、素直でよろしい。ちゃんとお礼が言えるのはポイント高いよ。」
明日翔「んじゃあ明日、赤の世界であいつらにもおんなじ説明頼むわ。俺も同行すっからよ。ソフィーナから連絡が来るはずだ。」
ミコト「うん、わかった。じゃあ明日、待ってる。」
ミコトは玄関に向かい帰ろうとしたとき、この言葉を言い残した。
ミコト「…これは生徒会長として言っておくけど、この部屋煙臭いから気を付けてね。風紀委員が黙っちゃいないよ。」ガチャ…バタン
城琉「はぁ~…。まったく油断も隙もねぇ女だな。お前いつもあの女を相手にしてんのか?」
明日翔「いつもじゃねぇよ?たまにさ。」
城琉「俺は週一でも嫌だがな。」
てなわけで、事前に話の流れは打ち合わせ済みだったってことだ。滞在許可もとっくにとってたってわけよ。
~現実・昼・青空寮~
美海「というわけで!」
空「無事、シルトちゃんの滞在許可が取れましたー!」
シルト「ぱちぱちぱちー。」
ソフィーナ「ふぅん、緩い条件で許可が出たのね。もう少し難色を示されるとおもったのだけれど。プログレスの味方って言葉が嘘じゃなかったのか、明日翔が信用されるようになったのか…いずれにせよ…よかったわね、シルト。」
シルト「うん!みんながいたら怖くないから、ここにいられるのはうれしいかも!」
空「シルトさん…!私たちが、守ってあげますからね…!」
ソフィーナ「さて、問題解決の道筋が明らかになったのは何よりだわ。シルトが誰に追われているのか突き止める。それが、次のステップということね。」
空「でも、会長さんが統合軍に聞いてくれるって言ってましたよ?」
ソフィーナ「それでわかるのは『統合軍が追手か』のYES・NOの二択で根本的な解決にならないでしょ。」
美海「青蘭学園に滞在できることがゴールじゃなくて、シルトちゃんの安全がゴールってことだね。」
ソフィーナ「そう。だから、『追手が誰か』を特定できれば、シルトの自由度と安全度は上がるわ。そのために考えられる方法は二つ。」「一つはシルトの記憶を取り戻してもらうこと。」
明日翔「もう一つは『そいつ』を俺たちの前に引きずりだすことか。」
ソフィーナ「一つ目はシルト次第だけど、二つ目はやり方次第で進展が見込めるわ。シルトに目立つように動いてもらえればね。」
セニア「シルトさん本人を囮にして、追跡者を釣りだす…ということでしょうか。」
ソフィーナ「流石セニア、理解が早いわね。そういうことよ。」
空「そ、そんなの危険です!だって…追われてるんですよ!?」
明日翔「だからこそさ、空。シルトがここから出ないってことは追手の奴らはどっかで俺たちに手を出さねぇといけねぇわけだ。」
セニア「その襲撃者を捕縛し、所属を確認できれば、避けるべき相手も特定できる、というわけですね。」
明日翔「そゆこと。5つの世界が織りなすこの島にはどこも精々数人ぐらいしか投入できないだろ?」
美海「そっか!つまり私たちが一緒にいれば…!」
ソフィーナ「この寮のメンツを少数で制圧できるプログレスなんて、そうそういないでしょう?それに、こっちには『色んな』場数を踏んだαドライバーもいるんだし。」
セニア「治安維持機構として、生徒会や風紀委員もいます。緑の管理区にさえ注意すれば危険性は少なそうです。」
ソフィーナ「ただ、このやり方はシルト自身が襲われることを前提にしているわ。だから、危険がないわけじゃない。一番安全なのは寮から出ずにいることよ。」
空「そうして、シルトさんの記憶が戻るのを待つと。」
ソフィーナ「そう。けれど、それもいつになるかわからない。私の提案は、リスクを抱えながらでも、学園生活を送ることもできるプランよ。」「シルトがどちらを選んでも、私たちは協力する…そうよね?」
明日翔「ま、そうだな。シルト、お前はどうする?」
シルト「わたしは…」
しばらく沈黙が流れた後、シルトはこう答えた。
シルト「みんなに迷惑かけるかもだけど、みんなと同じ生活を送ってみたい。」
明日翔「へへっ。決まりだな。」
ソフィーナ「それじゃ、明日からシルトは外出するとき、寮の誰かと必ず一緒にいること。貴女は寮の一員よ、遠慮はいらないわ。」
明日翔「ほんじゃ、改めてよろしくな。」スッ
シルト「うん!ありがとうー!」
シルトと握手を交わし、改めて寮に迎え入れることにした。今日も安定的にウロボロスを退治し一日を終えた。
~4月17日・朝・青空寮~
明日翔「う~ん…暑ぃ…寝苦しい…」
???「ん…う~ん…?明日翔?どうしたの~?」
明日翔「ちょっと寝苦しくてさぁ~…今何…んぁ?」
俺の布団の上に緑色の髪の年の瀬もいかない見覚えのある子供がいた。
明日翔「…な」「ななななななにぃ~~~!!!???」ゴロゴロゴロゴロバゴン!ゴロゴロゴロズシャーーーーン!!!
ベッドから転げ落ちドアを突き破って壁に激突しひっくり返る。
明日翔「おおおおま、お前なんで俺の部屋に!?」
シルト「明日翔を起こしに来たんだー。」「でも、気持ちよさそうな寝顔を見てたら眠くなっちゃっの。」
空「先輩!すごく大きな音がしましたけど、平気ですか!?」
明日翔「この状態が大丈夫に見えるぅ?お助け」
空「ですよねぇ…よいしょっと。」
空の手を借りて起き上がる。
明日翔「起きたらシルトがいたのよ。あ~いたたたた…最近ひっくり返ってば~っかりだ。」
シルト「へへへー。おはよー!」
~リビング~
シルト「ねぇ、明日翔。そのコーヒーっていう飲み物、おいしい?私も一口飲んでみたいなー。」
明日翔「舌がガキンチョだと苦いぜ~?」
シルト「…」ゴク「うっ…にがっ!」
明日翔「にょほほほ、まだまだコーヒーは早ぇってことよ。今は牛乳を飲みな。」
セニア「データによれば、コーヒーはミルクと砂糖を入れると飲みやすくなるそうです。」
シルト「ふぅ~ん…わざわざこんなに苦いのを飲まなくてもいいのに。」ジトー
明日翔「歳を重ねりゃわかるものさ。」ゴク
シルト「明日翔はほかにどんな食べ物がすきなの?何時に起きるの?お風呂は夜派?」
明日翔「おいおい、質問は一個ずつにしちゃくんねぇかなぁ、忘れちまうぜ。」
美海「シルトちゃん、明日翔くんにべったりだね~。」
空「でもさすがにすこしべったりすぎですね…あはは。そういえば、ソフィーナさんの姿が今日も見えないみたいですけど…。」
明日翔「…!」ミミピクッ
美海「今日もまた、黒の世界でお仕事なんだって。」
空「またですか?かなりお仕事が大変なんですねぇ。」
美海「うん…こんなに行き来することは今までなかったんだけどね…何か困ってたりするのかなぁ。」
ソフィーナ…最近のあいつは何かがおかしい。何かこう…思い詰めているような…、気のせいか?
シルト「ねー!明日翔!松詠ちゃんがねー!裏山にいるから来てほしいんだってー!」
明日翔「んぁー?どしたー?歌右衛門がなんだってー?」
少し、話をする必要があるか…?
~昼~
シルトを散歩がてら裏山まで送り青空寮に戻るとソフィーナがいた。
ソフィーナ「ふぅ…。」
明日翔「よぉ、ソフィーナ。」
ソフィーナ「あら、明日翔じゃない。貴方一人で何してるの?」
明日翔「シルトを裏山まで一緒にな?」「それより俺はお前と話がしたかったんだ。」
ソフィーナ「私と?何か話でもあるって顔ね。」「それで?私に何が聞きたいの?」
明日翔「お前の仕事について聞きたくてな…いや、どっちかっていうと労働環境か?」
ソフィーナ「私の仕事の話?そんなのきいたってつまらないわよ。」「でもどうしてそんなこときくの?もしかして、私の事心配してくれてるのかしら。」
明日翔「…お前さんちぃとばかし働きすぎだぜ。寮を不在にすることも多いし何より俺よりも美海が心配してる。」
ソフィーナ「……そう。」シュン「…少しのどが渇いたわね。貴方も一緒にどう?」
明日翔「久々に頂いちゃおうかな。」
~数分後~
ソフィーナ「他のみんなは出かけているのね。…この寮も賑やかになったものだわ。私と美海の二人でいた頃は、いつも今くらい静かだったのよ。」「友達がたくさんできて、美海も嬉しそうで何よりだわ。」
明日翔「おいおい、そいつぁ間違ってるぜ。」ゴク「お前も、だろ?」ニヤ
ソフィーナ「それは…ええ、そうよ。私にとって、一番信頼している友達だわ。…まぁ、知り合ったばかりの頃は友達というより、手のかかる問題児って印象だったけれど。それでもあの子を見てると、なせかほっとけなくなるのよね。」
明日翔「おほほほ、あいつには人を魅了できる不思議な魅力があるからなぁ。」
ソフィーナ「それは、貴方もだけどね。真っすぐで、頑固で、向こう見ずだけどなぜか最後は何とかしてしまう。」「違う点で言ったらロマンチストであることと距離感がおかしいぐらいかしらね。」
明日翔「お褒めに預かり光栄ですぅ。」
ソフィーナ「別に褒めてないわよ。」ジト
明日翔「あっ、はいぃ…。」
ちょっとの沈黙が流れソフィーナが口を開く。
ソフィーナ「貴方の目には、美海はどんな子に映ってるかしら?」
明日翔「美海かぁ?そうさよな~…、面白れぇ奴だよな。間違いなく、少なくともデータなんかじゃあ測れねぇ奴だ。」
ソフィーナ「そう。日常でも戦いでも、思いもよらないことをするのよね、あの子。そこが私は気に入っているの。」「…私は、ああはなれないから。」「私にとって、美海はかけがえにない友人よ。貴方たちも加わってからの青空寮での生活は悪くなかったわ。」
明日翔「悪くなかった、か…。」
ソフィーナ「私、あの子がうらやましいわ。雌雄で、力強くて、自分勝手で。自分の力でどこまでも飛んでいけえるあの子が。まあ、あんまり適当すぎるのもどうかと思うけど。でも、時々思うのよ。私もあの子みたいに生きていけたら…ってね。」「まあ、そんな淡い夢物語はかなうはずもないのだけど。私には私の立場や責任があるもの。」
明日翔「じゃあ、自由になってみるか?」
ソフィーナ「え?」
明日翔「なんでもねぇ。…お前も大変だな。」
ソフィーナ「去年なんか本当にひどかったのよ。毎日美海の部屋まで行って起こしてたんだから。」クスクス「この私を目覚まし時計に使うなんて、あの子くらいだわ。」「でも、美海はそれくらいでちょうどいいのよ。…悩むのは私だけで十分なんだから。」
明日翔「…やっぱなんか悩んでるみてぇだな。」
ソフィーナ「…たとえ話よ。今のは忘れて頂戴。」「とにかく、私はあの子に、ずっと明るい場所で何にも縛られずに生きていてほしいの。私にはできない生き方で、ずっと笑っていてほしい。」「もしあの子が笑えなくなったときは、貴方も力になってやってくれると嬉しいわ。」
明日翔「…お前はどうすんだ?」
ソフィーナ「…私がいつもあの子のそばにいられるわけじゃないでしょ?だからもしあの子が笑えない時、私が美海の側にいられなかったら…そのときは、貴方が美海を支えてあげて頂戴。」
明日翔「…わかった、約束するよ。」
ソフィーナ「ふふっ、頼りにしているわよ。αドライバーさん。さて…私はもう部屋に戻って休むわね。」「貴方と話せてすこしすっきりしたわ。」
明日翔「…そっか。」「なぁ、ソフィーナ。」
ソフィーナ「?まだ何かあるかしら?」
明日翔「…今からいう言葉はとある悪党の戯言だ。」「責任や立場に縛られて生きる人生なんて俺にとってはつまらねぇ、まして責任や立場で一人の友人を見捨てるぐらいなら…」「そんなもん、真っ先に捨てちまったほうがいい。一人の友人がいるだけで先の未来はなにもかも変わる、きっとな。」
俺は立ち上がりソフィーナの前に立つ
明日翔「打ち明けるなら、今だぜ。後悔しないようにしねぇとな。」
ソフィーナの横を通り過ぎる。
明日翔「おっと…これも、とある悪党の戯言だ。」
ソフィーナ「…。」「貴方はいいわね、これまでこんなにも責務を負ってきてるのに…私には無理な生き方よ。」
~夜・裏山~
今日も今日とてウロボロス退治を完了させ岐路に向かう途中のことだった。
ユーフィリア「シルトさん、だんだんと寮に溶け込めてるみたいですね。」
空「はい、それはそうなのですが…あまりに自然に溶け込みすぎてて、逆にちょっと心配といいますか…」「例のシルトさんを追ってる人たちの件、本当に大丈夫なんでしょうか?」
ユーフィリア「それほど心配いらないと思いますよ。学園で危害を加えることは…」
俺は夕方ソフィーナと話したことがどうも引っかかっていた。そりゃ黒の世界のトップ候補、忙しくたって無理はない、しかしあいつの顔…何かこう…よくない感じがする。こいつぁ妙なことんなっちまったようだ、よく考えればあいつの仕事について根本的なことは聞けていない…。まだ何か隠してやがんな…。
ユーフィリア「…というわけでもし私がシルトさんの追跡者だったら、頭を抱えてしまう状況ですね。」
空「なるほど…そう言われると、だいぶ安心できる気がしてきました!ウロボロスもサクッと倒せましたし、今日は安眠できそ─」
???「その前に、お姉さんに今の状況を説明してもらえないかな?」
ユーフィリア「!!!」
???「キミたちに妙な縁が繋がってるのが気になって来てみれば…なにやら随分と、変わった活動をしているみたいだね?」
明日翔「ヒ、ヒメガミ…」
空「い、一番みつかったらめんどくさそうな人に見つかってしまいました…。ど、どうしましょうユフィさん…時間跳躍したらこの遭遇の記憶は消えますかね?」コソコソ
ユーフィリア「いえ…どうやらヒメガミノミコトさんが訪れたのは、偶然ではないようです。時間跳躍をしても、どこかで遭遇してしまします。」コソコソ
明日翔「はぁ~…これも俺が原因か?」コソコソ
ミコト「明日翔くん、本当に感心しないなぁ。」ツカツカ…グイッ
ミコトは俺の目の前まで来てジャケットをグッと掴み引き寄せる。
ミコト「私以外にも、こんなことしちゃうんだ?」「こんな遅い時間まで、何してたのかな?」
明日翔「…もう何もかも、話した方がよさそうだな…」「今から話すことはタイムスリップとかそういう話だ。…俺の話を信じてくれるか?」
ミコト「ふぅん…」チラ
ユーフィと空に視線を一瞬移し再び俺の目を見た。
ミコト「…いいよ。彼女たちの話を聞いてから、だけど…信じてあげる。すこし移動しようか、ここで話すのも場所がよくないし。あそこにいこっか。」
明日翔「ああ…。」
空「ユフィさん、先輩と会長さんの関係って…」コソコソ
ユーフィリア「さぁ…私の知っている次第ではこんな…」コソコソ
~行きつけのステーキ屋~
コックのおっちゃんには暫く奥に引っ込んでもらい、話をした。ウロボロスの存在、それが一日の時間を妨害していること。それを俺たちが夜な夜な退治していること。すべて話した。
ミコト「ふぅん。私たちが知覚できない脅威が存在し…対処できるのは時間系の能力をもつキミと、明日翔くん一味。そして彼らとリンクできるプログレスだけ…か。」「にわかには、信じ難い話だね。」「けど…現に君たちはこうして夜に怪しい活動をしているわけだし…」
明日翔「何より新歓戦のあの日、俺は奴らと戦ってる。お前も存在自体は目にしていたはずだ。」
ミコト「うーん…さて、どうしたものかな。」
ユーフィリア「でしたら、私たちに協力していただけませんか?」
空「え!?」
ユーフィリア「私はお伝えできることはすべてお伝えしました。そのうえで信じられないと思うのであれば、私たちと一緒に戦ってください。その結果、私たちの行動が看過できない、ということであれば、相応の処分を受けます。」「…明日翔さんと空さんは、私が強引に巻き込んでしまっただけです。どうか処分は、私だけに留めて頂けないでしょうか。」
明日翔「ユーフィ…」
ミコト「…」「わかった、そうしよう。自分の目で確かめてもらうことにするよ。もし君の話が本当なら、生徒会としても対策を練る必要があるからね。」
ユーフィ「ありがとうございます、それでは明日の夜、青空寮に来てください。お願いします。」
そういって立ち去ろうとすると
ミコト「あ、明日翔くんは残って。ほか二人は帰っていいよ。」
明日翔「まじかよ…」ガックリ
空「先輩…なにしたんですか…ご指名なんて」コソコソ
明日翔「まぁ色々あるのよ…先帰っててくんな」
チリンチリーン
二人を帰らせ店の中にはミコトと俺だけが残った。
ミコト「隣、座って。」
促され隣に座る。
ミコト「…やましいことはなにもしてないよね?」
明日翔「ああ、誓うぜ。」
ミコト「さっきの話が本当かわからない…。けど、新歓戦でキミの一味が倒した怪物たち、それは間違いなく実在したもの…。でも遺体になるもろもろはチリとなって消えてしまい現場検証すらできなかった。」「キミたちが相手にしてるのはそういうものなんだろう。」「…キミは一難さって三難といったところだね。」
明日翔「ああ、だけど退屈はしねぇな。」
ミコト「…私に全部話してくれないかな、キミについて。キミはまだ私に隠していることがある、でしょ?」
明日翔「…」
ミコト「キミが真実を話しているのは、わかる。けど…キミ自身が隠し事をしていたらなにも信じられない。」「だから、話してほしい。キミは…何者なの?」
真剣な顔で俺を見つめてきた。
明日翔「…俺は、泥棒だ。」
ミコト「え…」
明日翔「俺は泥棒だ。今までの記憶にある限りの人生すべて。」
ミコト「…」
明日翔「色々な国を飛びまわってありとあらゆるものを盗んだ。予告状をだして、厳重な警備を潜り抜けお宝を盗むのが俺の生き甲斐だ。お宝を盗むたびに自分の限界を超えられる感覚があった。その感覚にとり憑かれていたのかもしらねぇ。」
ミコト「そう…」
明日翔「前いったろ?俺に越えられねえ壁はねぇって。…俺にとって壁ってのはスリルなんだ。楽しむためにある。俺にとって怖いのは死ぬことじゃねぇ、退屈なことさ。」
ミコト「…」
明日翔「話が脱線しちまったな。泥棒の俺が今更善人気取る気なんてねぇ、俺は悪党だ。使えるものは何でも使う、それがこの俺『明日翔』のやり方だ。」
ミコト「…」
明日翔「幻滅しちまったか?…無理もねぇ、今目の前にいる奴はただの悪党で泥棒なんだから。」
ミコト「…話してくれてありがとう。幻滅なんてしないよ…私はキミを悪党だなんて、思ってないから。」「…ちょっとこっち来て。」
明日翔「?」
ミコト「…」ギュゥゥッ
ミコトは俺を近くまで寄せると強くハグしてきた。心なしか耳まで真っ赤だ。
ミコト「キミが泥棒なのもきっと真実…強かったのもその経験からなんだと思う。でもキミの周りに繋いでる縁の多さや太さは噓をつかない。これだけは忘れないで。」
明日翔「…そうか。で、いつまでこうしてるつもりだ?」
ミコト「…これでも勇気出して抱き着いたんだから、抱き返してよ。言わせないでよ、恥ずかしい。」
明日翔「はいはい…」ギュッ
今夜は時間の許すまで、こうしていた。こうして人肌触れるのも久しぶりだな…たまには、いいかもな。
ヒメガミと熱~い夜を過ごした俺は早くも翌日再開、あいつも学園を守る身として迷う気持ちがあったことを打ち明けてくれた。だから俺も今直面している違和感を彼女に打ち明ける、そして翌日その違和感は答えへと変わる。
次回「選ばれた者の先へ。」
あいつ、無茶しなきゃいいが…