怪盗紳士明日翔   作:どこかにいる一般人

18 / 56
選ばれた者の先へ

~4月18日·朝·青空寮~

 

熱い夜を過ごした翌日の朝、珍しく寮のメンバー全員が揃っていて全員で食事を摂った。

 

空「…はぁ…。」

 

セニア「空、どうしたのですか?顔色が優れないようですが。」

 

明日翔「そ~んなクソデカため息だしちゃって。」

 

空「えっ!?そ、そうですか?寝不足ですかね…あはは…。」

 

明日翔「おいおい、誤魔化すのが下手だぜ。大丈夫か?」

 

空「大丈夫…じゃ、ないですよ!先輩のことを考えてたからです!」

 

明日翔「あ、俺?いや~ありがたいな~。」

 

美海「え?どういうこと?」

 

シルト「んー?空は明日翔のこと、寝られないくらい考えてたってこと?」

 

空「ちーがーいーまーすー!そういうことじゃなくて!」「昨日、ヒメ会長に夜間外出を見つかってしまって、そのことを心配してたら寝つけなくって。」

 

ソフィーナ「あぁ、そういうこと。それはついてなかったわね。」「まぁ、やましいことをしていないのなら精々停学で済むでしょう。よかったわね。」

 

空「良くないですよー!新歓戦優勝コンビから一転、いきなり問題児入りじゃないですかっ。」

 

ソフィーナ「冗談よ。釈明の場くらいは儲けて貰えるんでしょう?そこできちんと説明すればいいじゃない。」

 

空「それは、はい…その通りなんですけど…。」「ソフィーナさん。ヒメ会長のこと、もっと厳しい人に見てませんでした?」

 

ソフィーナ「ええ、そうね。最近、少し見栄方が変わる出来事があっただけよ。」

 

ピーンポーン

 

ソフィーナの同僚「ソフィーナー?そろそろ時間だけど、準備できてるわよねー?」

 

ソフィーナ「あら、もうこんな時間?私は先に出るわね。夕食も今日は待たなくていいから。」

 

美海「うん、いってらっしゃい!」

 

セニア「わたしも今日はラボで定期メンテナンスがありますので、夕食は不要です。」

 

シルト「わたしも、松詠ちゃんが遊んでくれるんだー!明日翔も帰ってきたら遊ぼうよー!」

 

各々見送り俺たちは学園へ行く。ソフィーナ、明らかに学園方向にはいってない…うーん…。

 

~昼・青蘭学園・教室~

 

明日翔「ふぁぁ~…。」

 

今さら日本史やったところで眠いだけだな…そういえば徳川の埋蔵金がどうとかってちょっとまえ噂になって俺も盗みにいったっけな…。

 

明日翔「ねみぃ…。」チラ「…おやおや?」

 

ふと窓の外を見ると中庭に赤と金で彩られた特徴的で見覚えのある美人が座っている。

 

明日翔「…暇潰しといくか。」「せんせぇ~トイレいきたいのぉ~!もれちゃう~!お腹痛いのぉ~!このままだと授業中に出しちゃうかもぉ~!」

 

先生「行ってきなさい!」

 

明日翔「は、はいぃ!」ガララ、スタタタタタ「トイレ!トイレ!トイレ…。よ~し、抜け出せたな。」「授業を抜け出すやつなんて、俺くらいのもんさ。」

 

~中庭~

 

ミコト「…。」

 

~昨日の回想~

 

明日翔「ウロボロスって存在が俺たちを閉じ込めてる。」「俺たちはそれを夜毎日退治している。」「新歓戦でお前も目にしてるはずだ。」

 

「俺は、泥棒だ。」

 

~現実~

 

ミコト「…ふぅ…。」

 

明日翔「ヒメガミ!」

 

ミコト「!」「おや…誰かと思えば明日翔くんじゃない。まだ授業中だよ?もしかしてサボり?」

 

明日翔「たまたま窓を見たら美しいレディがいたもんでな、なにしてんだ?」

 

ミコト「人間観察。みんな真面目に授業を受けてるかなって。ちょうど一人、不良生徒を見つけたところだね。」

 

明日翔「おほほ、ちげぇねぇ。ほらよ。」

 

缶の甘いアイスココアを渡し、隣にすわる。

 

ミコト「ありがとう。」

 

明日翔「よっこいせ。んで、なにしてんだ?こんなとこで。」

 

ミコト「ちょっと考え事をね、キミのこと。ちょっと話し相手になってくれる?」

 

明日翔「ディープな話は出来ないぜ?するならあの場所じゃないとな。」

 

ミコト「分かってるよ。」「昨日の話は…やっぱり本当なんだよね?」

 

明日翔「ああ、嘘偽りなく本当の話さ。」

 

ミコト「そっかぁ…本当なのか~…。」

 

明日翔「なんだぁ?そりゃどっちの反応だ?」

 

ミコト「ウロボロスの話。…ちょっとだけ不安になっちゃって。」「知っての通り、この青蘭学園は、極めて高いセキュリティで守られてる。それは異なる世界の、異なる術理による複合プロテクトがあるからなんだけど…。」

 

明日翔「検知どころか存在すら確認することができなかった生物…ってことがか?。」

 

ミコト「そう。私たち生徒会はずっと、青蘭学園とこの島を守るために存在してきたの。なのに、裏であんな怪物が出現していたことに気付きもしなかった。」「ユーフィリアがいなければどうなってたか分からないなんて、学園始まって以来の事件だよ。」

 

明日翔「始まって以来?お前いつから?」

 

ヒメガミ「最初からだよ。5つの世界の交流によっておこる最大の懸念は、文化の違うもの同士の不理解でしょ。それを繋ぐために、全ての世界から最適な人材と見なされたのが、この私。」

 

明日翔「『縁』を司る女神、ヒメガミノミコトか。よくできてやかんな。」

 

ミコト「だから、ずっと悩んでたの。私たちの『今日』があるのは、キミたちが『昨日』を戦ってきてくれたから。キミたちにはキミたちの事情があるんだろうってことは分かってるの。」「けど、それでも…生徒会長としての私には迷いがある。」

 

「本当にキミたちだけに任せてしまっていいのか、って。」

 

明日翔「う~ん…。」

 

ミコト「これは学園全体の問題なんだよ。誰も気づいてなくても、全員に影響があるんだから。」「人は一人で生きている訳じゃない……なんて、月並みなこと言うつもりはないけど。こと、時空間に干渉するなんて異常な存在は本来、多くの知恵と力で挑むべきものだ。」

「だから今夜、生徒会長として私はどうすべきなのかを確かめさせてもらうつもり。」

「それがこの学園の生徒たちを、預かる上で最低限の仕事だから。」

 

明日翔「…これは俺個人の考えなんだけどよ。」「この世界は一年後滅ぶ運命にあるとユーフィは言った、あいつはそれを変えるために過去に戻ったともいった。」

 

ミコト「うん。」

 

明日翔「…そして、俺の存在や城琉たち…そのものもいなかった言った。」

 

ミコト「え…。」

 

明日翔「どういうわけかは知らねぇけどよ、はじめっから俺や城琉たちはいなかったんだ。この世界に。」「ってことはよ、この世界の『悪党』はあいつらじゃねぇ。俺なんだ。」「空は文字通り巻き混んじまった形にゃなるが、本来この世界の『悪党』は俺とユーフィリア…城琉と歌右衛門の4人。」

「俺たちは正される存在なんだ。『悪党』でいいのは俺たち4人だけでいい。」

「お前まで『悪党』なる必要はねぇのよ。」

 

ミコト「…そんな寂しいこと、言わないでよ。私はキミ個人のことも心配してるの。人の願いを託されやすい人は、願いによって繋がれた糸の張力で壊れてしまうことがある。」

 

明日翔「糸…?お前の能力のことか。」

 

ミコト「そう。私は人と人との縁を『糸』の形で見ることができる。人とのかかわり合いが薄い人は、細くて少ない。多くの人の強い絆を築いている人は、太くて多い。」「あ、『人』っていうのは便宜上の表現ね。あくまでもアンドロイドでもちゃんと見えるから。」

 

明日翔「で?俺の糸は?」

 

ミコト「……自覚はないかもしれないけど、取り巻いてる糸と数の太さが、ちょっと尋常じゃない。国を打ち立てた王様、戦乱を終わらせた救世主…平たく言うと英雄のそれ。」

 

明日翔「んな馬鹿な。俺はただの泥棒だぜ?」

 

ミコト「ね。私も「なんで?」って思ってるわけ。」 「ただの一学生でしかなく泥棒でしかないキミが、どうしてそんな業を背負っているのか?」「それこそ…世紀の大泥棒、アルセーヌ・ルパンの様に。」

 

明日翔「…」

 

ミコト「……だからそれがわかる前に、キミには無茶をあんまりしてほしくないんだ。」「キミの意見は尊重したい。けど、キミが危険になるのなら、私の本望じゃない。」「…きっとキミの美学なんだろうね、私のことを思ってくれてるのは嬉しい。」「けど、生徒会長として…私として、生徒が知らないところで危険にさらされてるのを知らない顔することはできない。」

 

明日翔「お前…。」

 

ミコト「キミの邪魔をするつもりはない。キミたちが『悪党』ではないと、責任を持って判断したいだけ。」「……私はあなたの味方だから、信じて。」

 

真剣な眼差しで俺を見つめる。

 

明日翔「…そっか。」「…ありがとな、恩に着るぜ。」

 

ミコト「…そう言ってくれて、少しだけほっとした。」「昨日もいったけど…私はキミを『悪党』だなんて思ってない。…でも一線を越えそうになった時」「…私はキミを止める、その覚悟はもうできてるから。」

 

明日翔「俺は、止まんねぇよ?盗むと決めたものは死んでも盗むさ。」

 

ミコト「…ふふ、そっか。」ニコ「もう、戻るね。ココアありがとう。」

 

明日翔「いいってことよ。」

 

ミコト「そうそう。…シルトの件、こっちでも調べてるから。明日中には結論が出そう、よろしくね。」

 

明日翔「何かは何まで、ありがとな。…お前も無理すんなよ。」

 

ミコト「お互い様、だよ。」スタスタ

 

~夜・ステーキ屋・ミコト視点~

 

ミコト「…。」

 

ミコト(やっぱり、あの話は本当だった。強大で恐ろしい怪物たち、あれをたった3人、多くても5人で…。)

 

チリンチリーン

 

コック「いらっしゃい。」

 

城琉「…思わぬ先客だ。」ドカッ「おっちゃん、いつもの。」

 

ジューーーーー…トントントントントン

 

ミコト「リュウセン・ジョウル…、明日翔くんの相棒。長い付き合いなんだってね。」

 

城琉「小坊からの付き合いだ。あいつとの付き合いは俺が一番なげぇ。」

 

ミコト「…キミは、何で明日翔くんと一緒にいるの?」

 

城琉「考えたこともねぇな。アイツと一緒にいた方が面白いから…とでも言っとくか?」

 

ミコト「彼といたら、どうなるかもわからないし、死ぬかもしれない…。それでも一緒にいるのは…なんで?」

 

城琉「…さっきの回答が不服みたいだな。うまい飯にうまい酒が飲みてぇ、それだけじゃだめか?」

 

ミコト「…。」

 

城琉「確かにアイツについていけるやつは、そう多くはねぇ。アイツの真似をして脱落してきた奴は何人も見た。」「ギブアップしたって、アイツは怒らねぇよ。」「会長さんよ、アイツ自身を重く見すぎんな。アイツはあんたが考えてるよりテキトーだ。」

 

コック「おまちどう。」コトッ

 

城琉「お!きたきた…。」ムシャ「うめぇ!」

 

ミコト「…。」(彼を重く見すぎるな…、か。)

 

城琉「ところで…」ムシャムシャ「…明日翔んとこの緑色の嬢ちゃんだが…。」

 

~明日翔視点・4月19日・朝・生徒会長室~

 

朝、ヒメガミからメッセージが来ていた。空と生徒会長室へ来てほしいらしい。昨日言っていたシルトの件で結論がでた、と言っていた。…ついでに、俺の悩みも聞いてもらうことにした。

 

ミコト「おはよう。それから、いらっしゃい。朝早くに呼び出してごめんね。単刀直入に言うと、私の優秀な懐刀であるナクルの調査によると…。」「シルトはシロだった。統合軍の手配データベースには、彼女の記載はない。」

 

空「そうなんですか!よかったぁ~っ。」

 

ミコト「ふふ、まあ公になってない事情で終われてたら話は別だけど……なーんてね。」「だけど、それはつまり、彼女が誰かに終われてるかは不明のままってこと。」「青蘭学園は彼女の在籍は認めるけど、ボディーガードまではできないから、そこは気を付けてね?」

 

空「はい、青空寮総出でシルトさんの学園生活をサポートしますっ!」「…ところで、お話はそれだけですか?」

 

ミコト「察しがいいね、もちろんそれだけじゃない。キミたち二人だけに声をかけたのは理由がある。ちょっとしたお願いがあるんだ。」

 

明日翔「お願い、なんだ改まって。」

 

ミコト「私と一緒に、『E.V.E』に出てほしいの。」

 

空「…」「ええーーーっ!!!」ドシャーーーン!!

 

空は驚いてひっくり返ってしまった。

 

明日翔「おうおうおうおうおう、どうした空?」

 

空「そ、それって…青蘭学園のナンバーワンチームを決める戦いですよ!知らないんですか!?」

 

明日翔「ぜ~んぜん?」

 

空「あぁ…」ガックリ

 

ミコト「選ばれた精鋭たちが予選を勝ち抜き、最強を決める青蘭学最大のトーナメント。強さを志すプログレスならだれもが夢見る、最強の称号がかかった戦いだ。」

 

空「あ、あの!私たち、入学したばかりですし、そもそも予選に参加してないんですけどっ。それでいきなり出場するのは、いささか失礼なのでは…!?」

 

ミコト「ああ、そこは心配しなくてオッケーだよ。出てほしいのは『選抜戦』だから。」

 

空「『選抜戦』、…E.V.Eの結果に関係なく、生徒会が選んだチーム同士が戦う特別試合ですね。それなら、先輩が選ばれるのも納得です。」「な~んだそれならよかったです。それで、どのチームと戦うんですか?」

 

ミコト「『E.V.E』の優勝チームの予定だよ。」

 

空「へぇ~…。」「ええーーーーーーっっ!!??」クルクルドシャーーーーン!!

 

二回転してひっくり返る。

 

明日翔「おー空!転倒芸が板についてきたじゃねぇか!」

 

空「む、むちゃくちゃ荷が重いバトルじゃないですかー!?」ガバッ「最強を証明したチームVS新入生&編入生なんて、オッズもつかないレベルですよっ!」

 

ミコト「あはは、大丈夫大丈夫。私は『七女神』だよ?そのくらいのハンデ、どうってことないから。」

 

明日翔「一応きくが…なんでお─むぐ」

 

ミコトに口を指で塞がれる。  

 

ミコト「キミたちと組むのが面白いと思ったから。それじゃダメ?」

 

明日翔「大変すばらしい理由だと思います、はいぃ。」

 

ミコト「せっかく私の好きに選べるんだし、何が起こるかわからない方がいいじゃない?」

 

空「いえ、むしろ何が起こるかは明確なのでは?」

 

ミコト「そんなことないって、ほかのメンバーの選定は、キミたちに任せるから。」

 

空「ええ」ビーーン

 

ひっくり返るかと思ったら『糸』でとどまる空

 

ミコト「明日翔くん、キミは類稀な『絆を紡ぐ力』を持っている。私はその可能性を見てみたい、お願いできないかな?」

 

明日翔「ほぉん…、だーれかいたかなっと…。」

 

ミコト「選抜戦は4月23日。だからそうだなぁ…明後日には返事をくれる?でも、前向きに考えてほしいな。負けても公式記録にはならないし、選んだメンバーに対してもの責任も、声をかけた私にある。」「だからキミたちに選んでほしいのは─」

 

明日翔「やるか─」

 

ミコト「─やらないか、だけ。そういうこと、お返事待ってるね。」「お話はこれでおしまい!戻ってもいいよ。」

 

空「ぶるぶるぶる…武者震いがああああ」ブルブルブル

 

ミコト「あはは、おちついて。ゆっくり考えてね。」「あ、明日翔くんは残って。」

 

空「先輩、またですか…」「ここだけの話、ヒメ会長とはどういう…」コソコソ

 

明日翔「ただの話し相手だよ。」

 

空「じゃあ、放課後ー。」ガチャ…バタン

 

ミコト「何度目かの二人きり、かな。」

 

明日翔「何かと円があんだな、お互い。」

 

ミコト「ふふ、…それで話って?」

 

明日翔「いやぁよ?すこし気になってることがあってな?」「…ソフィーナに、ついてだ。」

 

~放課後・通学路~

 

空「あの…先輩。会長からのお誘い、どうしましょうか?」

 

明日翔「エヴァってやつか?面白そうでいいじゃねぇか。出てもいいぜ。」

 

空「先輩、それじゃあ人造人間アニメになってしまいます。」「私も…私もです!この選抜戦…出てみたいです!」「先輩と…それから、青空寮のみんなと。」

 

明日翔「よしじゃあ、決まりだな?善は急げ~っ!」シュタタタタタ

 

空「あ!待ってくださ~い!」タタタタタタ

 

~青空寮~

 

美海「面白そう!やってみようよ!ヒメ会長とは前からチームを組んでみたかったんだ!」

 

セニア「明日翔がαドライバーとして参加する実戦の機会なら、私も参加したいです。」

 

シルト「美海もセニアも、強いプログレスなんでしょ?E.V.Eの本戦にはでないのー?」

 

空「それは前シーズンの全試合をリアタイ視聴した私からご説明しますっ!」キラン「美海さんは公式戦の戦績が安定してなさ過ぎて規定ポイントに到達していません。」「セニアさんは勝率こそ圧倒的ですが規定試合数が足りていません」「と、いうことで美海さんとセニアさんが加わることで、ほかの出場チームに迷惑かけることじゃありません!」

 

明日翔「ブルーミングバトルにも規定到達ってあるんだなー、そうだシルト。お前もどうだ?」

 

シルト「えー!無理だよ。E.V.Eって、みんな本気のバトルなんでしょ?しかも、たくさんの人がいるところでなんて…うーん、私はまだいいかな!」

 

空「そうですか…」ガックリ「まだシルトさんの追手の正体もわかっていませんし、しょうがないですね。ソフィーナさんは…むしろ前シーズンのMVP候補だったと思うんですけど、どうされるんですか?」

 

ソフィーナ「辞退したわ、だから悪いけれど、貴方たちのチームにも参加できない。」

 

美海「ええーっ!ソフィーナちゃんも出てくれたら、すっごいチームになるよ!一緒に出ようよー!」

 

ソフィーナ「…」「…今のあなたと組むのは興味があるけれど。その日は黒の世界で仕事をしているの。だから、出場すること自体が無理なのよ。」

 

ソフィーナは一瞬暗い顔をした。

 

明日翔「…。」

 

美海「うぅ~…そっかぁ。ソフィーナちゃんは魔女王の右腕だもんね。残念…」

 

ソフィーナ「そういうわけだから、行ってくるわ。実はもう今から向かわないといけないの。」

 

美海「えぇ!?今から!?」

 

空「まるで大企業の社長さんのようなスケジュール…」

 

セニア「空、おそらくソフィーナの重要性はそれ以上です。」

 

明日翔「その仕事、本当にお前じゃなきゃいけないものなのか?」

 

ソフィーナ「…ええ、そうよ。私でなきゃできない仕事。だから、しっかり終わらせて来ないとね。」

 

美海「わかった。選抜戦は私たちに任せて!頑張ってね!ソフィーナちゃん!」

 

ソフィーナ「ええ、貴方たちも。」「…」「それじゃあ、元気でね。選抜戦、応援してるわ。」

 

明日翔「ソフィーナ!」ガシッ

 

暗い顔をしたソフィーナの手首をつかむ

 

明日翔「なにシケた面してんだよ、頑張ってきな。」ニヤリ

 

手を放す。

 

ソフィーナ「…貴方は変わらないわね。行ってくるわ、魔女王の右腕なんてなるものじゃなかったわ。」「それじゃあね。」ガチャ…バタン

 

明日翔「…。」

 

~ソフィーナ視点~

 

ソフィーナ「結局、新歓戦も選抜戦も一緒にいてあげられなかったわね。できればもう一度、美海と戦いたかった。明日翔、散々焦らされた貴方の夢も…」「後は頼むわよ、明日翔。」

 

~明日翔視点・トイレの中~

 

ザザ…ザザザ…

 

「さようなら。貴方と過ごした日々は短かったけれど、ずっと覚えてるぐらいには楽しい日々だったわ。」

 

明日翔「予感は、的中したみてぇだな。」

 

ジャーーーー

 

トイレから出てリビングに行くとセニアが待っていた。

 

セニア「明日翔、貴方に渡したいがあります。」

 

明日翔「んあ?俺にか?」

 

セニア「Dr.ミハイルがカレンを相手に無事逃げ切った活躍と今までの戦績からあなたへ、と。」

 

そういうと机にはモノクル型の機械と時計だった。

 

明日翔「なんだこりゃ?モノクルか?」スチャ…カチッブーン「おぉ!なんだこれ!?」

 

モノクル型機械の電源を入れるとセニアの事を解析し詳しいプロフィールを表示し始めた。

 

セニア「レンズに入った人物を解析する機能があります、他にもマッピング能力やカメラ機能、追跡機能もついてますので活用してください。」

 

明日翔「こ~り便利だ。白の世界は違うねぇ。…で、この時計は?やけに重いな。」

 

セニア「逃走用の道具が仕込まれてる時計だそうです。チューブを押せばワイヤーが発射されひっかけることができます。逆に電子ロックのかかった扉にチューブを伸ばして指せばパスワードがわかるようです。」

 

明日翔「そりゃ便利だが…なんでこんなもん開発したんだ?そのDrミハイルってのは。」

 

セニア「わかりません。」

 

明日翔「えぇ」カクッ

 

セニア「逃げ回っている姿が怪盗アルセーヌ・ルパンにそっくりとは言っていました。あと、私が新歓戦で致命的な破損をしたとき、真っ先にラボに運ぶように指示してくれたのも、理由の一つだと。」

 

明日翔「なるほど、ほんじゃ。いただいてくわ、どっかで使えるかもしれねぇしな。」

 

セニア「ぜひ、活用してください。」

 

~夕方・公園~

 

ソフィーナ「…それで?貴女はいつまでそうしてるつもり?リゼリッタ。」

 

ガサガサ

 

リゼリッタ「何よ、気づいてたの?せっかく気持ちの整理をつける時間をあげたのに。」

 

ソフィーナ「余計なお世話よ。気持ちの整理はとっくについてるわ。」

 

リゼリッタ「あらそう?私が気配を出さなかったらあのまま泣いちゃうかと思ったけど。」

 

ソフィーナ「寮を出た時から、気づいてたわよ。でも…そうね、別れを惜しむ時間をくれたことには感謝するわ。」

 

リゼリッタ「何よそれ、全然あなたらしくないじゃない。ソフィーナは頭がよくてもっと生意気で傲慢で頭がよくて意地っ張りだと思ってたわ。」

 

ソフィーナ「…」

 

リゼリッタ「一応言っておくけど。あとで真実を知ったら、あの子たち、きっと怒るわよ。どれだけ憎まれても、恨まれても、アナタはそのとき、反論もできなくなってるのよ?」「本当にそれでいいのね?」

 

ソフィーナ「ええ。もう決めたことよ。…さあ、行きましょう。ここでの私の役目は、もう終わったわ。」「さようなら、美海…今まで友達でいてくれてありがとう…」「空…学園での生活、頑張りなさい。」「明日翔…結局貴方のことは何も─」

 

???「そのセリフ、まだいうにはちと早すぎるぜ。ソフィーナさんよ。」

 

リゼリッタ「!」

 

ソフィーナ「!!!」「明日翔!!!」

 

明日翔「俺の事には、気が付けなかったみてぇだな。」

 

ソフィーナ「あなたっ…!!!いつからっ…!!!」

 

明日翔「ついさっき。」

 

ソフィーナ「私たちの会話をどこまでっ!?」

 

明日翔「お前が寮を出たところからぜ~んぶ。」

 

ソフィーナ「は…はは…恐れ入ったわ。全部、筒抜けだったのね。」

 

明日翔「安心しろ、今いるのは俺だけだ、気が付いたのもな。」

 

ソフィーナ「…いつから、気が付いたの?」

 

明日翔「紅茶を飲んだあの日だよ。せっかくのティータイムでシケたツラされちゃあ嫌でも気付くさ。」「加えてお前はほとんど寮にいなかった、美海が心配するぐらい。」「気付くなってほうが無理だぜ?」

 

ソフィーナ「…目ざといわね。…貴方には、勝てないみたい。」

 

明日翔「うひひひ、そりゃどうも。」カサッ…パク「火、くれねぇか?魔法の火で付けるタバコの味に興味があんだ。」

 

くわえたタバコを口で差し出す。

 

ソフィーナ「私をライター扱いしないでちょうだい。大体ライターもってるでしょ?」

 

明日翔「つれねぇなぁ。」シュボッ「ふぅ~…。」

 

リゼリッタ「こ…こいつ…一体なんなの…。」

 

ソフィーナ「…いうなれば変人よ。」

 

明日翔「いってくれちゃって~。」「…学園、やめるんだろ?」

 

ソフィーナ「…それも知ってたのね。」

 

明日翔「俺の情報網を甘く見ちゃあいかんぜ?情報はあるだけ損はぁねぇ。」「…で、黒の世界でどんな仕事をするんだ?それも、二度と戻ってこれないような。」

 

ソフィーナ「…これは極秘情報なの。話せないわ。」

 

明日翔「ほ~ん、そうか。」

 

リゼリッタ「アナタ、他の世界の事情に首突っ込んでどうするつもり?部外者は去ってほしいんだけど?」

 

明日翔「部外者は去れ…?そういわれるとさぁ…、ますます知りたくなってきちゃうよなぁ?」

 

リゼリッタ「この無責任男…!」シュッ

 

鞭を構えようとする。

 

明日翔「やめときな。お前に俺は攻撃できない。」

 

リゼリッタ「なんでわかるの?何もわからないくせに。」

 

明日翔「…俺の銃には、銀の弾丸が仕込んである。お互い無事じゃすまねぇぞ。」

 

リゼリッタ「ぐっ…!」ギリッ

 

ソフィーナ「喧嘩はやめなさい、もういいリゼリッタ。」

 

リゼリッタ「…」「…先、『門』開いてるから。」

 

リゼリッタは立ち去る。

 

ソフィーナ「貴方も喧嘩を売るのはやめなさい。あと銀の弾丸なんていう嘘もやめて、第一持ってないでしょそんなもの。」

 

明日翔「あ、バレちゃった?」

 

ソフィーナ「はぁ~…最後の最後まで面倒かけないでよね。」「…タバコ、体に毒よ。」

 

明日翔「わかってるよ。…どうしても教えちゃくれねーのか?」

 

ソフィーナ「そうよ、教えられない。黒の世界でも極秘任務なの。」

 

明日翔「そっか。じゃあしょうがねえな。」クルリ

 

ソフィーナに背を向ける。

 

明日翔「ソフィーナ、俺は諦めが悪いんだ。…また会おうぜ。」

 

俺はその場を立ち去った。

 

ソフィーナ「…また会えたら、ね。」

 

~夜~

 

今日も今日とてウロボロス退治を終えた、その帰り道。

 

ユーフィリア「え?私が選抜戦に、ですか?」

 

空「はいっ!会長さんのチームで、一緒に出てみませんか?このドリームチームにユフィさんまでいてくれたら、もう優勝間違いなしだとおもうんです!」

 

ユーフィリア「誘ってくれるのはうれしいのですが、そういったことはご遠慮させてください。」「あまり、学園で目立ちたくはありませんので…」

 

空「あっ…そうですよね。今の話は忘れてください!」

 

明日翔「まあいつか、って感じだよな。」「すべてが終わったときに。」

 

ゴウン…ゴウン…カッ!!!!

 

空「…あれ?」

 

明日翔「黒の世界の『門』、か…?あんな感じで開くんだな。」

 

ユーフィリア「誰かが転移しているみたいですね。」

 

空「もしかして、ソフィーナさんでしょうか?しばらく出かけると言ってましたので。」

 

ユーフィリア「その可能性はありそうですね。ソフィーナさんは黒の世界の重役ですし。」

 

上を眺めていると、鳴き声が聞こえる。

 

???「むきゅ~~~~!」

 

明日翔「?なんだぁ?」

 

空「どこかから聞こえてくるような」

 

ユーフィリア「近づいてくるような…」

 

???「むきゅ~~~~!」ムニッ

 

明日翔「ブエ」グニッ

 

鳴き声とともに顔にくっついた。

 

空「せ、せんぱーい!」

 

明日翔「んん~~~~~、んっ!!!」ポン「あ~苦しかった…」

 

空「あれそれ…ソフィーナさんの髪飾りにそっくりじゃないですか?」

 

ユーフィリア「本当だ、動くんですね。」

 

ソフィーナの従える眷属だ。むにむにしていてよく俺の顔にくっついてくる。

 

眷属「むきゅ~~~~!」ウルウル

 

こいつ…泣いてやがる。

 

明日翔「…そうか、お前も寂しいんだな。みんな同じだよ。」ナデナデ

 

眷属「むきゅ~~~~!」ブワッ

 

明日翔「ほ~ら泣き止めって!なぁ?」

 

こうして一日が終わった…と思った?確かに一日は終わった、だけど俺たちの夜は終わらねぇ。」

 

~4月20日・深夜・自分の部屋~

 

明日翔「…時間だ。」

 

俺は寝ておらず、起きていた。あの準備をするために。

 

明日翔「起きてるか?」

 

ゴソゴソ

 

眷属「むきゅ」

 

明日翔「いい子だ。」「これと~これと~…あとこれ。そして書置き、と。」

 

ガラッ

 

自分の部屋の窓を開け、木を伝いながら降りていく。

 

明日翔「ぴゅっと。」ヒュッ

 

外でも閉まるように窓のノブに引っ掛けて糸を窓を閉めた。

 

明日翔「次は…城琉達に電話っと。」プルルルルルルル「城琉?…俺だ、歌右衛門もいるか?…ああ、久々のでけぇ仕事だ。商店街のいつもの店で待っててくれ。」ピッ

 

眷属「むきゅ?」

 

明日翔「俺の頼りになる仲間たちに連絡を入れたのさ。」

 

~いつものステーキ屋~

 

チャリンリャリーン

 

明日翔「よぉ、皆。待たせたな」

 

城琉「ああ、待ちくたびれたぜ。」

 

歌右衛門「久々の仕事と聞いた。」

 

城琉「…で?獲物は?」

 

明日翔「狙うべき獲物は…」

 

「『理深き黒魔女』ソフィーナの身柄だ。」「黒の世界全部まるはだかにすっぞ!」

 




てなわけで黒の世界に侵入し、城を探索する俺達。しっかしこれがひろいのなんの、まったく見つかりやしねぇ、そんなわけで探していた部屋に入るとただならぬ女が…?

次回「魔女王、降臨」
















第二章「黒魔女の夜明曲~紅き月を奪え~」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定