~5月3日・朝・青空寮~
朝食をちみちみ摂っていると、美海が話す。
美海「そういえば執行部の依頼、私は手伝わなくて大丈夫?ヒメ会長から、2人に任せてるって聞いたけど…。」
空「はい、今のところは。1年生のチームをなんとかするというお話なので。」「チームの強化をすると言うだけなら、美海先輩に入ってもらえればひとまず解決はするんですけど…。」
美海「そういうお話じゃない、ってことだね。」
空「そうなんです。目下の問題として、メンバーの一人がエクシードの不調で、原因もわからなくって。まずはその原因を突き止めよう、というところでして。」
美海「!わぁ、エクシードの不調かぁ。それは大変だねぇ…。」
明日翔「なぁ美海、俺男だからよくわかんねぇっけどもよ、よくあることなのか?」
美海「私の場合は前までよくあったけど…あはは…、うーん…人によるんじゃないかなぁ。」「ソフィーナちゃんとセニアたゃんとかは、あんまり調子悪いのって見たことないでしょ?」
明日翔「ああ、何かしらの妨害がなければ基本的に。」
美海「ただ、エクシードを扱うのって、気持ちとか気分に影響を受けることが多いんだ。だからもし不調って言うんなら…。」
明日翔「ってこたぁよ、エルエルは"ここ"になにか抱えてるってことか?」トントン
自分の胸の中心を人差し指でトントンと指差す。
美海「うん、エクシード絡みのトラブルなら、その可能性はあるんじゃないかな。その辺の制御は学園で訓練していくんだけど、まだ入学したての一年生なら、ありえるかも。」
空「なるほど…参考になりますっ。」
美海「もし何か私にもできることがあったら、いつでも言ってね、私も執行部の一員なんだし!」
明日翔「まぁ、俺らだけでなんとかできるよう頑張るわ。」
空「…その、メインで頑張るのは先輩かもですが。私もたくさんお手伝いしますのでっ。」
明日翔「空ぁ、お前に関しちゃ同じ任務を受けた一人だ、この件じゃあじゃじゃ馬のように働いてもらうぜ?」
空「は、はいぃっ!」シャキッ「じゃあ、今日の練習も頑張りましょうっ!チームとの顔合わせ…特にリーダーの紗夜さんにはバッチリ印象を決めないとですねっ。」
美海「…?」「紗夜…って、蒼月紗夜ちゃん?」
明日翔「ああ、そうだぜ。知ってるか?」
美海「実はね。…そうだ!」「よかったら紗夜ちゃんにお手紙渡してもらえないかな。この前、かわいいメッセージカード買ったんだぁ。せっかくの機会だから使わせて~。」
明日翔「いいぜ、ついでに渡しとくよ。」
美海「ありがとう、明日翔くん!お昼休みまでには用意しておくね!」
シルト「美海ー、空ー、明日翔ー。まだ朝御飯食べてるのー?」ガチャ
シルトが廊下に通じる扉を開けて顔を出した。
セニア「徒歩で移動する場合、予鈴までの猶予があと3分です。急いでください。」
美海「はっ……!もうこんな時間!」ビックリ
ソフィーナ「ウロボロスは関係ないんだから、執行部のエクシード使用特権は通らないわよ?」
空「あ、あわわ~!す、すぐにいきますー!」アセアセ
明日翔「おいおい、落ち着けって。喉詰まらしちまうぞ?」ズズズ…
冷静にコーヒーを飲む。
ソフィーナ「えらく冷静だわね…また良からぬことを企んでるのかしら。」
明日翔「にっひひひひ。さっすがソフィーナ、俺のことはよくわかってるねぇ。」「まぁ、見てなさいって。」
学園へは、オープンカーではないフィアットR500で行った。因みにバレなかった。
~数時間後・放課後・練習アリーナ~
放課後。美海から手紙を受け取り、練習アリーナにおとずれた。
明日翔「確かこの時間であってたよな?」
空「天音さんとエルエルさん、遅いですね…連絡してみましょうか?」
天音「ごめんなさーい!」タタタタタ「お待たせ!」
エルエル「わわっ、もう来てる~。ごめんね~遅れて~。」
紗夜「来てるのは当たり前でしょ。待ち合わせの時間は過ぎてるんだし。自分から一緒に行こうって誘っておいて、天音を遅刻に巻きこむのは、エルエルらしいけど…。」
天音「あれ?他のみんなは?」
紗夜「遅刻中。」
エルエル「あらら…一人で待たせちゃってごめんねぇ…。」
うーん…こいつぁエルエルの精神状態と言うより…チームの統制に問題がありそうな気がすんなぁ…。
紗夜「別に、いつものことだし。」「…それで?あなたが明日翔先輩?」
明日翔「当たり~、いつだかに会ったな。俺は明日翔、何でもできるって触れ込みの生徒会役員だ。蒼月紗夜…だな?」
紗夜「そう。…そっちも、合ってるってことでいいんだよね?」「今回の特別対策については聞いてる。エルエルのエクシードの対処のために、αドライバーとそのサポーターに、一時的にチームに参加してもらうって、そういう事情であってる?」
空「はい、合っていますっ。チームでもお世話になりますっ、紗夜さん!」
紗夜「お世話になるのはこっち。よろしくね、空。期待してる。」「…明日翔先輩は、美海先輩とチームを組んでたんですよね?」ギラギラ
明日翔「おぉあいつかぁ?確かに組んでたな。」
空「な、なにやらちょっと、対抗心のようなものを向けやれている気がするのですが…。」
紗夜「そのうえ青空寮で美海先輩と一緒に住んでいる…羨まし」ボソ「違った、運のいい男。コホン…。あなたたち、本当に生徒会が直々に送り込むだけの実力があるの?」
空「え、えっと…それは…!」アセアセ「私はまだまだ未熟ですが、先輩の実力は確かですよ!それこそ新歓戦や選抜戦で証明されたと思いますっ!学園屈指のαドライバーさんですっ。」
紗夜「確かに先月のブルーミングバトルはすごかった。私も見てたし感動した。でも明日翔先輩は指揮を取っていたというより、αドライバー本人に戦いを仕掛けたりしていることの方が多かった。だから、ブルーミングバトル自体は美海先輩の力が大きかっただけかもしれないでしょ?」
明日翔「まー否定はできねぇなぁ。事実新歓戦の指揮は実際ほとんどとってなかったのは事実だしそれも事実だ。よく見てるじゃねぇか?」
紗夜「でしょ!…先輩、結構話せる人んだね。特に選抜戦ラストの美海先輩はすごかったよね!才能開花!ってかんじで!」キラキラ
やけに話に熱がこもっている、こいつもしや…。
空「なにやら紗夜ちゃんの様子がおかしいような…。」
天音「あはは…うん…紗夜、美海先輩の大ファンなの。」
エルエル「美海先輩のことになると、ちょっと盛り上がっちゃうんだ~。」
ペラペラペラペラーッッッ
紗夜「…って言うところがかっこよかった!見たことない新技も開発してたしすごいなぁって!」
明日翔「確かに美海はすげぇよ、あいつぁ今まで燻ってた奴だけどようやく日の目を浴びることができたってやつだな。」
紗夜(今…呼び捨てにした…?あの美海先輩を?)
明日翔「どした?急に静かになっちまったじゃねぇか。」
紗夜「むっ…いま…『美海』って?呼び捨てにするような関係なの?」
明日翔「?ああ、まぁ同じクラスだし同じ寮だしなぁ。」
紗夜「そういう一般論を聞いてるんじゃないの!もっと…これは…大事なこと…。」フルフル「明日翔先輩、正直に答えて。美海先輩とは…どういう関係なの?」
それを聞く紗夜は拳を握って震えている。
明日翔「どういう関係…?そうさよなぁ…。」
空(先輩、ここは穏便に普通の関係として…。)
明日翔「まぁいわゆる…あ~んってしてくれる関係っていやぁいいのかなぁ?うひひひひ。」
紗夜「っっっなっっっ!?!?」「な、なにそれ!?ふざけてるの!?こっちは真剣に聞いてるの!茶化さないで!」
空(じ、地雷を踏んでしまったーっ!)
明日翔「うひひひ、いっぺん言ってみたかったんだよなぁ。」
天音「明日翔先輩、紗夜ってあんまりそういう冗談が通じないタイプで…。」
空「天音さん…事実なんです。」
天音「え?」
空「明日翔さんが言っていることは事実なんです…。」
天音「えぇ~っっ!?!?」
明日翔「そういうわけだ、わかってくれたかな?」
紗夜「くっ!…こんな不真面目で不誠実でうさんくさくてふざけた人が生徒会で美海先輩と同じ寮だなんて…。」フルフル「明日翔先輩っ!あなたに勝負を挑みますっ!」シャキン
剣を召喚し、剣先を明日翔にむけた。
明日翔「おいおい、穏やかじゃねぇなぁ?」
紗夜「私のチームに入るからには、それ相応の実力を示してもらわないと納得できない。何より…あなたが美海先輩のチームメイトにふさわしいと確かめられないと納得できない!!!」
空「ええっ!?せ、先輩まずいですよ、紗夜さん完全にやる気ですっ!」
明日翔「いいねぇ、そういうガツガツした女は好きよ?な~んてな。」
紗夜「ぐぐぐぐぐ…この局面でその減らず口…。」フルフル
明日翔「戦う顔になったみてぇだな、そうこなくっちゃあ面白くねぇな?天音、筆箱は持ってきてるか?」
天音「え?う、うん。持ってきてるよ、どうして?」パカ
天音が筆箱を開ける。
明日翔「どれどれ…おお!こいつだ、ちとかりてくぜ?」
そういうとハサミを持って行った。
明日翔「うーん、いいハサミだ。布切るのに最適かもなぁ?」
天音「は、はさみ…?」
空「先輩っ、かなりやる気ですよ。くらったらひとたまりもないかも…。」
明日翔「大丈夫だって、俺に考えはあっからよ。見てなさいって。」クルクル
借りたハサミをくるくる回しながら対面する。
紗夜「なに、本人が相手になる気?エクシードもないのに?」
明日翔「わからねぇか?空の手を借りるまでもねぇのよ。お前は俺に一太刀も入れることはできねぇってことだ。」
紗夜「どこまでもバカにして…!」フルフル「ずいぶん自信ありそうな顔。言っておくけど私だって弱いプログレスじゃない!」「余裕ぶって手を抜いてると痛い目に会うからね!」
明日翔「お手並み拝見といこうか。」
紗夜「やぁぁっ!」シュッ
明日翔「おっと、速いねぇ。」
紗夜「ふっ!」ヒュッ
明日翔「うおい。」
紗夜「えいっ!」ズバッ
明日翔「あらよっ。」
斬り上げ、突き、横凪のコンボをひらりと躱していく。
紗夜「何よ、避けてばっかりじゃない。」
明日翔「そらおまえ、俺に女を傷つける趣味はねぇんだわ。」「一回だ、俺は一回しか攻撃しねぇ。」
紗夜「ぐぐぐ…どこまでも私を…。絶対ギャフンって言わせてやる!!!」
~~~~~~~~
紗夜「えい!!」ギュギュギュギュン!
明日翔「へぇ、そんな芸当もできんだな!光ってのは便利なもんだねぇ。」
無数の光弾を明日翔に向けて放つが針の穴に糸を通すかのごとく躱す。
紗夜「なんで…ぜんぜん攻撃が当たらない…!」
明日翔「そりゃ場数も修羅場も段違いだかんよ、いったろ?俺には一太刀も浴びせることはできないって。」
紗夜「ぐぐぐぐ…!でやぁっ!さっ!くらえ!」シュッヒュッズバッ!!
明日翔「ほっ!よっ!あらよっ!」スカッスカッスカッ
斬擊のコンボをあっさりと躱す。
紗夜「隙あり!でえい!」ヒュッ!
明日翔「おっと!」ガキィィン!「あぶねぇ、一太刀入れられるところだったぜ。」
この光景を空たちは眺める。
エルエル「すごいねー…紗夜の攻撃が全然当たってないや…。」
空「さすが先輩と言うか…容赦がない…。」
天音「光弾も斬撃も全部見切られちゃってて…数少ない隙に斬撃をいれようとしてもただのハサミ一個だけで防がれちゃう。」「というより…ハサミを当てて剣筋をそらしてる。…実力があるαドライバーとは聞いてたけど、紗夜をこんなに手玉にとるなんて…。」
目の前の光景がただただ信じられないという感想だった。
紗夜「ぜー…はー…!ぜー…はー!」
明日翔「おいおい、もう燃料切れか?これはまだこのとおりピンピンしてんだぜ?」
紗夜「ぐぐぐぐぐ…!私は負けない!貴方なんかに!」「私を舐めないで!!!」グオオオオ!!!
思いっきり踏み込み明日翔に斬りかかる。
紗夜「うああああああ!!!」ゴゴゴゴゴゴ!!!
紗夜が斬りかかろうとした瞬間、その衝撃は走った。
明日翔「…。」ギロリ
紗夜「!!!」ビクゥッ!
明日翔が向けた目を紗夜はみて、恐怖のような何かを一瞬覚え固まってしまった。
天音「紗夜!!!危ない!!!」
明日翔「っ!」グッ!
紗夜「うっ…!」
天音の声で意識が戻ったときには明日翔の持っていたはさみの刃を喉元に押し付けられていた。
明日翔「覚えときな、人を殺すときは一発で決めるんだぜ?」ボソ
紗夜「あ…。」ガシャッ
持っていた剣を床に落とす。
明日翔「…にっひひひ。お主、まだまだ修行が足りぬぞ?」
紗夜「あ…は…はい…。」
明日翔「ずいぶんビビらしちまったなぁ?ここまでする予定はなかったんだがな。」
紗夜は冷や汗だらだら、状況があまり飲み込めていないようだ。意識が飛んでいる紗夜に天音が駆け寄る。
天音「紗夜、大丈夫…?」
紗夜「天音…私…生きてる…?」
明日翔「おいおい、こいつぁ一旦休んだ方が良さそうだぜ。」
数十分後…
~~~~~~~
紗夜の呼吸と気持ちを整える時間。
空「先輩…あまりにも…その…容赦が…。」
明日翔「あんなんくらったらひとたまりもないだろ?避けるのは当然さ。まぁ、すこしビビらせすぎたかもなぁ。」チラ
向こう側で座って休憩している紗夜たちを見る。
紗夜「ふー…ふー…ありがとう、天音。落ち着いた。」
天音「うん、よかった。」
明日翔「よう、もう怖くねぇか?」ツカツカ
紗夜の前に立つ。
紗夜「…明日翔先輩。」
空「どうでしょう、紗夜さん。先輩の実力のほどは…?」
紗夜「…確かに、生徒会長と美海先輩の目に狂いはなかった。」
空「じゃあ、認めてもらえますか?よかったぁ…。」「あっ!そうだ、忘れてました。先輩、例のあれ。美海さんからの預かりもの…ありますか?」
明日翔「美海の?…ああ!お手紙を預かってたな。」スッ
ジャケットの内ポケットから便箋を取り出し、紗夜に差し出す。
明日翔「憧れの美海から、お前宛だぜ。」ニヤリ
紗夜「て、手紙…!?美海先輩からの…手紙!?」ガッ「見せてほしい…!」
紗夜は便箋を受け取り、中を見ると小さなメッセージカードが綴られていた。それを紗夜は何度も何度も目で追って大切にそうに、見ていた。
紗夜「美海先輩っ…!」フルフル
感極まったようにそう呟くと、紗夜は丁寧なカードを便箋に戻し、立ち上がる。
紗夜「美海先輩からそう言われて、難癖をつけるわけにはいきません。明日翔先輩、空さん。貴方の言う通り、修行が足りませんでした。まだ未熟で修練不足な私たちですが…。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。」スッ
そういうと深くお辞儀する。
エルエル「わぁ…わぁ?紗夜が急に難しいこといってる…ど、どうしたの?それ何語?」
明日翔「尊敬語ってやつ。」
空「美海さんの手紙効果…すごいですね…。」
天音「あはは、ちょっと意地っ張りだけど、根は良い子なんだよ。美海先輩が絡まなければ…。」
空(もしかして…美海先輩は、このことを見越してたんでしょうか…?)
~~~~~~~
結局メンバーは来なかったので、ひとまず明日翔とは別れる。
紗夜「…すごかったな…。」
天音「紗夜、大丈夫?」
紗夜「大丈夫、すこしパニックになっちゃったけど…。」「すごかった、私の攻撃を全部躱しちゃうし…プログレスが絡んだらきっと勝てなかった。」(…何よりあの目…すごく怖かった…)
エルエル「明日翔くんがこんなに強いなんて思わなかったなー…思ってたところを越えちゃったよ。」
天音「うん、あの人が美海先輩と空ちゃんを操ってたんだから。そりゃあ優勝するよね。」
紗夜(後藤明日翔…美海先輩がどうして貴方を認めたのか…見定めさせてもらうから)
~翌日・5月4日・昼・教室~
美海とセニアと昼を食べていたときのこと。
明日翔「…んでよ、すっげぇ喜んでたぜ?」
美海「そっかそっか!書いててよかった!」
セニア「憧れ…いずれ理解したい感情です。」
タタタタタタタ…ガラッッ
空「せ…せ…せんぱーーーーーーいっ!!!!!」
明日翔「うわぁーーっっ!」ズシャーン!
慌てた様子の空が俺の横で叫ぶ、俺は手に持っていたおにぎりをガードしながらひっくり返る。
美海「あれ、どうしたの空ちゃん。2年生の教室になにか」
空「た、たたた、大変です先輩!!緊急事態ですっ、驚きの報告なんですっ!!」
明日翔「いっててて…どうしたよ、俺がおにぎりを口に入れてたらノド詰まっちまうところだったぜ?んで、驚きの報告ってのは?」
空「明日から始まる『新入生交流プログラム』に、先輩も参加しないといけないみたいですっ!」
明日翔「?なんだぁそりゃ。」
セニア「高等部一年生の春に行われる、泊まりがけのレクリエーション合宿です。異なる文化を持つ世界から訪れたプログレス同士の相互理解を目的としているそうです。」
美海「青の世界で言うところの、林間学校みたいなものかな?」
明日翔「おいおい、そいつぁおかしいぜ?俺は二年なんだぜ?」
空「先輩は編入生なのと、今回の執行部のお仕事で1年生チームを担当しているからとヒメ会長が。」
明日翔「あいつか…。」ガックリ
美海「ははぁ、なるほど…。」
セニア「確かに、接触時間の長い本プログラムは、チームの状態や人間関係を把握するのに適していますね。ヒメガミノミコトが明日翔に参加を命じたのは、編入生だからというより、そちらが理由でしょう。」
空「さ、さすがセニアさん。納得がいきました…!」
明日翔「ほんじゃあ、急いで準備しねぇとなぁ。」
空「ふふふ、この久遠空、抜かりありません。」キラーン「ヒメ会長からしおりを預かってきています!」ジャジャーン「これを一緒に読んで対策を…。」パラパラ
明日翔「どれどれ…『9日間の宿泊の準備』。」「…だけかぁ?すいぶんなげぇな。」
美海「あー…今年はそういうのなんだね。やっぱり噂って本当だったんだ。」
空「噂?今年は?どういうことですかっ?」
セニア「新入生交流プログラムは、毎年内容が変更されるらしいのです。私たちの時も別の内容でした。」
明日翔「へぇ、そいつぁ準備が大変だな。どうしてたってそこまでしてんだ?」
セニア「プログラムに対策をさせないためでしょう。プログラムへの参加は、クラス単位でなく、チーム単位です。事前にプログラムの内容がわかってしまえば有利なチーム編成が行えるようになってしまいます。」
空「なるほど…って」「先ほどから『対策』とか『有利』とかのワードが使われてるのは一体…。」
美海「歴代のプログラムで共通しているのは、交流の他に『エクシードを強化する』ってことなんだ。私たちの時は、青蘭島全域を使って2陣営に別れたケイドロみたいなプログラムだったし…。」
美海「何年かは前は、全一年生の勝ち抜きクイズ大会だったこともあるみたいだよ。」
明日翔「バラエティ豊かってところか?だけっどもよ、それエクシードの強化に関係あんのか?」
セニア「分かりません。ですが、プログラムは実施後も、内容は公にされず、参加者しか知り得ません。よって、口頭でしかデータが継承されないのです。」
明日翔「へぇ~調べりゃしれっとネットに転がってそうなもんだけどなぁ。」
空「にしても9日間の合宿って長くないです!?ちょっと怖いですよ!?」
美海「あはは、でも命の危険がある訳じゃないし。みんなでお泊まりしながら、エクシードの強化合宿って考えたら、楽しいと思うよ。」
空「…それもそうですね。緊張しますけど、ちょっとワクワクしてきましたっ。」
美海「うんうん。せっかくだから、たーっぷり楽しんできて!帰ってきたら、お土産話聞かせてね。」
空「はい!…でも、9日だけとはいえ、美海さんたちと離れ離れになるのはちょっと寂しいですね。」
美海「空ちゃん…!」ウルウル「何かあったら、飛んでいくからね!」ムギュッ
空「美海さん~。」ギュー
明日翔「そいつぁやめといたほうがいいな。」
セニア「新入生交流プログラムの目的を害することになるので。」
数時間後…
~放課後・帰宅中~
明日翔「9日間かぁ、何があるかわかったもんじゃあねぇ。万が一に備えて道具はしっかり準備しねぇとなぁ。」
独り言を呟きながら帰宅していると山から光が見える。
明日翔「お…?なんだありゃ、山が光ってるぜ。何かのサインか?」「別にあんな山、遭難するような山じゃねえはずなんだけどな。ま、携帯の充電切れたとかあるかもしれねぇし。行ってやっか。」
~裏山~
紗夜「…ふっ!」
ズバァァァン!!
紗夜「ふぅ…こんなものかな。もう少しだけコントロールの制度を…。」
ガサガサガサッ!!!
紗夜「誰っっ!?」バッ
紗夜は後ろを振り返るが、誰もいない。
紗夜「…いない?」キョロキョロ「…はぁ。」クルッ
ホッと一息ついて後ろを振り返る。
明日翔「いないいないばぁ~。」シュルル
紗夜「きゃぁっ!」ドサッ
明日翔が某アメコミのヒーロー見たく逆さまの状態で上から降りてきた。紗夜は思わず尻餅をつく。
明日翔「にっひひひ。お主、まだまだ修行が足りぬぞ?…いよっと。」シュタッ「手貸すぜ。」
着地して手を差し出す。
紗夜「…びっくりした…。」グッ「明日翔先輩、どうしてこんなところに?」
手を借りて立ち上がる。
明日翔「帰ってたらピカピカ光ってたもんでな。」「ちと座るか。」
倒れた木をベンチ代わりに座る。
紗夜「見えてたんだ…私のエクシード、光って目立つからこっそり人の来ないところでやってたんだけど…。」
明日翔「見つけたのが俺でよかったな?風紀委員だったらお縄だったぜ。んで?そこまでして急ぐ理由があるのか?」
紗夜「明日から『新入生交流プログラム』があるよね。何があっても対応できるように、って考えてたの。それで、新しい使い方を思い付いて、試してみたかったんだけど、アリーナの予約が取れなくて…。」
明日翔「自分の能力に研究熱心なのはいいことだぁ。まだまだ強くなれるぜ、お前さんは。」
紗夜「ありがとう。でも…私はプログレスだから、もっと力を使いこなして、バトルでも結果を出せるようにならなきゃ。」「チームのリーダーなんだから、誰よりも私が強くないと、みんなに示しがつかないし。」「…そういえば、先輩ってプログラムに参加するの?2年生だし、どうなのかなって。」
明日翔「まぁ浮いちまうよなぁ。命令だからしゃーねーところもあんだけどよ、お前はどっちがいい?」
紗夜「どっちでも。いないならいないで、私は頑張るだけだし。」「でも、参加してくれるなら、期待してる。あなたは美海先輩のαドライバーだから。明日からのプログラムで、私は許される時間全部つかってエクシード強化に取り組むつもり。」
明日翔「熱心だねぇ、そんな根詰めちまってよ疲れねぇか?」
紗夜「私は、特別になりたいの。美海先輩みたいな、すごいプログレスに。」
明日翔「美海みたいにかぁ。あいつぁ人を惹き付けるなにかがあんだよなぁ。」
紗代「あなたから見ても、美海先輩はすごいプログレスでしょ?強くてかっこよくて…そう、憧れてる。」「ブルーミングバトルって、配信の花形でしょ。去年まで私は、見る方だった。初めて美海先輩をブルーミングバトルの試合で見たのは、ちょうど去年の今ごろ…。」「入学したての頃の美海先輩はコントロールが不安低だっけど、見るたびに上達してた。まるで風そのものの姿は、見てる人の目を釘つけにして話さないような魅力があった…!」キラキラ
明日翔「ほんとに好きなんだな?美海が。だけっどもよ、たまには自分に目を向けたっていいんだぜ?」
紗夜「え?」
明日翔「お前にはお前の魅力があるってことさ。もしかしたら、美海以上に人がついてくるかもしれないぜ?」
沙夜「…。」「…ありがとう。でも、あの人はもっとすごくて、キラキラ輝いてる人だから。…ちょっと熱くなりすぎたかも。」「とにかく、私は美海先輩みたいな、輝いてて特別なプログレスになりたいの。そしていつかは、回りのみんなはもちろん…美海先輩にも、認めてもらうんだ。」
明日翔「いつかはなれるさ、いつかはな。」
紗夜「そう、いつかね。…そういってくれるのは、悪い気しないけど。」「もしよかったら、美海先輩のこととかもっと教えて。あの人のこと、色々知りたいんだ。あと…先輩のことも。」
明日翔「ああ俺?俺の話なんてつまんねーもんばーっかりだぜ?」
紗夜「…昨日は明日翔先輩に手玉にとられた。攻撃もことごとく躱されて…プログレス抜きで私が負けるなんて思わなかった。」「先輩は、今までどんな訓練をして来たの?」
明日翔「訓練なんてしてないさ、修羅場と場数だよ。」
紗夜「もっと詳しく教えてよ、それじゃわかんないよ。」
明日翔「いずれわかるさ、今の時期に修羅場なんて踏むもんじゃねぇのよ。にひひひ。」
紗代「…。」グニャグニャ(はぐらかされた…。)
~数時間後・玄関前~
ウロボロス退治が終わった帰り道、空は突如立ち止まる。
空「先輩、私は大変なことに気がついてしまいましたっ…!」
明日翔「あん?」
空「新入生交流プログラムは泊まりがけ。その間のウロボロスはどうすれば!?ウロボロスは先輩がいないと倒せないので、このままだとエンドレスな初日を過ごすことに。」ショボーン
ユーフィリア「その点は安心してください。既に手は打ってあります。強力な助っ人を呼びましたので。」パンパン!
スタスタスタ…
城琉「おい、嬢ちゃん。俺たちはサーカス団員じゃないんだぜ。」
歌右衛門「普通に呼んでくれればよい。」
影から二人か現れる。
ユーフィリア「いつもの人たちです。」
空「たしかに…この二人がいればウロボロスを倒せますね。」
城琉「明日翔がいないんじゃあ、俺らがやるしかねぇ。気乗りはしねぇが…。」
歌右衛門「これも自然の摂理を正すため、明日の字がおらぬ間、我らが前にたたねばなるまい。」
明日翔「よく承諾したなぁ城琉。報酬はなんだ?」
ユーフィリア「マッカランの12年もので快く。」
城琉「まぁ、この年代で出せる酒はそんなもんだろ。そういうわけだ、お前らは安心して行ってこい。帰ってくるまでは何とかしてやる。」
明日翔「わりぃな、迷惑かけるぜ。」
城琉「そいつぁお互い様さ。」
空「お二人…ありがとうございますっ!いってきますっ!」
歌右衛門「明日の字、空の字、御武運を。」
空「はいっ!」
ってなわけで、一年どもにつれられてとある場所まで運ばれた俺たち。運ばれたところは無人島ときたもんだ。そのうえ、バトル・ロワイアル形式なんだとよ?はた迷惑なはなしだぜ。巻き込まれた俺の身にもなってほしいもんだ。
次回「無人島生活始めました」
また会おうぜ?