ニアさんがまた事切れたかのように眠りについたのを見れば、私もアコ行政官も心底疲れたように腰掛ける
「………これはどのぐらい続いているやり取りですか?」
「……私が遭遇してからは。ずっとです、それ以前は……あまり言いたくはありませんけれど」
そう言ってアコ行政官が持ってきたのは。使い古された、小型のハンドガンであった。そのアコ行政官が銃口を向けてニアさんの頭に触れさせるのを何をしているのかと辞めさせようとしましたが。思わず言葉を失っていました
「……これを使って。です」
「………っ」
その意味に、思わず吐きそうになるのを堪えていれば、アコ行政官は申し訳無さそうにしつつ。こちらの背中を擦って落ち着かせてくれました
「おそらく、それで死のうとしたのでしょうが…死ねなかったのでしょう。だから…ヘイローを自分の手で壊そうと」
「……そこまで、許せなかったと」
「…そう、でしょうね」
アコ行政官は、立ち上がると。一冊の本を取り出してきました。ボロボロになった紙媒体の書籍は珍しいと思うよりも先に。付着している血糊に目が行ってしまいました
「………読むかどうかは、おまかせしますよ」
そう言い残すと、アコ行政官はニアさんを別室へ連れていきました。おそらく、気を使ってくれたのでしょう。それと、読んだかどうかで嘘をつくかつかないかの試しをしているのか?
「…………」
ゆっくり表紙に手を伸ばして、読むことにしました
☓☓月☓☓日
『ミレニアムから離れて数日たった、ふっ飛ばされて大分ダメージが入っちゃったんだろう。ウタハ先輩から貰った上着、ボロボロになっちゃったけど。早く逃げないといけない、出来るだけ、遠く遠く。皆に見つからないように』
☓☓月☓☓日
『あれから1ヶ月ぐらいったのかな?皆私のことは探してないみたい。効率は良くなるけど…ちょっと…寂しいかな。ほとんど交友關係広げなかったっていう意味合いもあるけど。皆……ううん、あんまり考えないでおこう』
☓☓月☓☓日
『最近、眠りが浅い。もうほとんど寝れてない。長くて4時間、短いときは30分ぐらいかな…でも、最近寝るとあんまり体調良くないんだよね…魘されてるみたいだし。そのせいで周りにバレたら意味がないから、これの方がいいのかも知れない』
☓☓月☓☓日
『通りがかったブラックマーケットの張り紙に『ハウンド』という名前で私の写真が貼ってあった。表立ってじゃなく、裏の方で懸賞金みたいなのがつけられてるみたい。……もう、ただの指名手配犯と変わんないんだよね私』
☓☓月☓☓日
『あたま、痛い』
☓☓月☓日
『血が滲んでいて読めない』
☓☓月☓日
『とうとうご飯食べても味がしなくなった。多分もう栄養失調に陥りかけてるんだと思う。頭も上手く回ってない。此処どこだっけ……』
☓☓月☓☓日
『使ってた銃が壊れた。ミレニアムから持ってこれたものなのに。大事にしないといけないのにって思ってたのに。駄目なやつ』
「………」
一旦日記を閉じて深呼吸する、ゆっくり。ゆっくりと、筆圧が段々と弱くなっていくのは見て取れる。一番の問題は血が滲んで読めなくなったところだ。一体何があったのか、そこを知るすべは残されていなかったのだ。
……読むのを再開しよう
☓☓月☓☓日
『ミレニアム近くの廃墟に、壊しきれてないものがあった。それが危険だろうから、壊しにいかないといけない。でもこの体で何が出来るんだろう、こんなボロボロでろくに動けないだろう体で、一体何が……出来るんだろうなぁ…でも、やるしか無いよね』
☓☓月☓日
『数ページにかけてページ全体が血で滲んでいる』
☓☓月☓日
『撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった撃てなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった壊せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった殺せなかった』
(数ページに渡って続いている)
☓☓月☓日
『どうして殺せなかった?どうして?どうして???あれは敵だキヴォトスの敵だどうして撃てなかったどうして壊せなかった?あれが人間型だからか?■■■■?それはおお前には関係ないだろう■■■のことなんてただの言いわけだお前は何のために居る何のために捨てた何のために戦っているどうして殺さなかった■■■■どうしてどうしてどうして奪われたのはあいつらのせいだあいつらがいなかったら私はこうなってないなる必要がないならなくてよかったはずだきっとそうだ(これ以上は支離滅裂な言語で書かれており、その後は吐瀉物と思われるもので見えなくなっている)』
「…っ……ん……っ」
真っ赤になった筆跡を見ていると狂気に侵食される感覚を覚える、そのまま引きずり込まれるような感覚だ。おそらく負傷したまま書きなぐったのだろう。恐らく、衝動にがなり立てられるように。抑えが効かなくなったように
☓☓月☓日
「帰りたい」
☓☓月☓日
「帰りたい!!!ミレニアムに帰りたい!!全部、全部投げ捨てて帰りたい!!もう嫌だ、もう苦しみたくない、もう辛い思いなんてしたくない。温かい布団で寝たい。工具握りたい、武器なんて握りたくない撃ちたくない壊したくない。何かを作ってたい、ノアに会いたい。めちゃくちゃに怒られた後に一杯抱きつきたい!!あの子にも会いたい、金髪のあの子。覚えてるかわからないけど、今度は一緒にいっぱいおしゃべりしていっぱい遊びに行きたい!!!ゲームとか色々としたい!!」
☓☓月☓日
「ウタハ先輩に……会いたい……っ。あの人の、隣りにいたい………っ」
☓☓月☓日
「(涙でぐしゃぐしゃになっている)」
☓☓月☓日
「駄目だ、此処で弱音を吐いちゃいけない。やるって決めたんだ、私が決めたんだ。私が選んで進んだ道なんだ。そこに責任を持たなくっちゃ、選択したんだこの道を。いつまで持つかわかんないんだ、私が捨て去った学生生活を糧に掴んだ時間は。やらないといけないんだ」
☓☓月☓日
「そうだ、私は選んだんだ。あの人達が普通の生活を出来るように……キヴォトスの平穏は見せかけだ。誰かがそう言ってた気がする。本当だと思う、その中に潜んでるものは大きい、だからこそ尊いんだと思う。大切にしたいんだと思う、だから……やろう、最後の最後まで。薄氷の上に成り立っている日常なら。その氷を分厚くすれば良い生半可な振動ではびくともしないように、その下が血溜まりになっていることを悟られないように。私はもう駄目だ。戻れない。戻らないんじゃない、戻れないんだ。再認識しろ蒼望ニア。お前はなんだ、
☓☓月☓日
「私が望む色は蒼だ、青臭い思いだ。青春だ、理想だ。鼻で笑われてしまうものだ、だけどそれが良い。そこが良いんだ、私には一番眩しく見える、彼女達の物語だ。だから…私は全てを賭けて描こう。彼女達が描けるように、全てを白に、真っ白に。何者にも彼女達がなれるように。それを邪魔する色を消していこう、うん。初心一徹。私は戦う、そして日常には溶け込まないようにしよう、彼女達の色を汚してしまわないように。この赤黒い、血に塗れた色が彼女達を呑み込んでしまわないようにと願いを込めて」
☓☓月☓日
「……戦え、戦えないものの為に。牙なき人の牙になれ。食い殺せ、虐げるものの息の根を止めながら。行けるところまで行こう、やれるところまでやろう、それが、誰かの重荷を軽くすると信じて。いつか、報復の刃で死ぬその日まで、私は……戦えないものの味方だ。喰われるだけは、何があっても認めない」
☓☓月☓日
「私が望む色は蒼だ、青臭い思いだ。青春だ、理想だ。鼻で笑われてしまうものだ、だけどそれが良い。そこが良いんだ、私には一番眩しく見える、彼女達の物語だ。だから…私は全てを賭けて描こう。彼女達が描けるように、全てを白に、真っ白に。何者にも彼女達がなれるように。それを邪魔する色を消していこう、うん。初心一徹。私は戦う、そして日常には溶け込まないようにしよう、彼女達の色を汚してしまわないように。この赤黒い、血に塗れた色が彼女達を呑み込んでしまわないようにと願いを込めて」
「戦え、守り抜け、それが私の
………そう書かれて、日記は終わっている、正直に言おう。侮っていた、壊れて逃げ隠れてしまっただけの少女だと思っていた。憐れみの対象だと思っていた。だけど違う、これは……違う。彼女は意志を持ってこの道に踏み込んでいる、ギリギリのところで踏みとどまっているのではない。一度堕ちて這い上がったのだ、強い意志を持って、人間性を賭けて。彼女は「生」を全うすることを選んだ、死んでしまえという感情に抗いながら。それでも、折れない
『………』
気づけば、私は彼女がいる部屋に足を運んでいた、ゆっくりと息を吐いている彼女のことを見る。アコ行政官の顔は沈痛そのものだ、彼女もまた。その覚悟を受け止めたのだろう
『……アコ行政官』
『……何でしょうか。セナさん』
ゆっくりと視線を合わせる、お互いにお互いの顔をまっすぐ見ながら
『貴女は──────』
「………セナさん?」
昔の記憶を思い出していると、
「……医薬品を用意しましょう、きっと。また無茶をしているでしょうから」
そう言って席を立とうとした時、アコさんのスマホが鳴り響く。相手は……
陸八魔アル、便利屋68からだった
「ねえ皆、私が危険な目にあったら。助けてくれるかしら?」
従業員に問いかける、彼女達はそれぞれの反応を持って答える
「そう……ありがとう、じゃあ……私がやりたいことがあるって言ったら、協力してくれる」
仲間にそう問いかける、そうすれば。彼女達はそれぞれの反応を持ってもちろん、と伝えてくる
「じゃあ……ちょっと
そう言うと、後ろで息を呑む気配を感じる、だけど動じることはない。気にすることはない、分かる、彼女達は私のために死んでくれるかも知れないというぐらいには、信頼してくれてるということを
自分達は悪党だ、そんなことはわかり切ってる。自分で選んで此処までやってきた……だけど
むしろ逆だ、悪役には悪役の流儀があり。信念がある、ハードボイルドとはなにか?そう聞かれれば…私はやせ我慢と答える。どれだけ辛かろうと、笑うのだ。そんなもの知らないと
だからこそ……笑えぬハードボイルドをしているあの
あの生徒は、アウトローだ。やっていることは、だが真のアウトローではない。あれは無理やりそうでなければならないというものだ。見ちゃいられない、アウトローの先輩として
何よりも…この
私は一人では此処まで来れていない。どうしよもなく抜けてる自分が、仲間のおかげだ。辛いときも、苦しいときも分け合うことで乗り越えてきた。
だが、あの
人が、神が、世界があの
───いつだって、
ほんへの方でもアルちゃんと仲がいいです、その話もしっかり書きますよ
トキの扱いについて
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このままミレニアムに残る
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ミレニアムから離れてリオと一緒に行く
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ニアについていく