そうですね……今回はNO titleという歌を聞きながら書きました、聴いてみると良いかも知れませんね
「……!!」
砲弾が横を掠めていく、アビ・エシェフの性能は折り紙付きだ。決して気を抜いて戦えるようなもんじゃない、この機動力と火力。ちょっと過剰かと思えるぐらいは有るけれど。これはこれで兵器としては、有能な分類には居るんだろうな、面白みがないのはどうかと思うけれどな…!
「やるじゃないかトキ」
「そちらこそ、元々機械いじりをしていた人とは思えませんね…!」
互いが互いの攻撃を躱していく、トキはアビ・エシェフからはじき出された計算で弾道を躱し。攻撃を仕掛ける、ニアはそれをひたすら逃げて逃げて逃げ続けたあの地獄で培ったフェイント混じりの回避で避けつつ。隙があれば攻撃をしていく
「演算結果を悠々と上回るのは辞めてください…!」
「悠々に見えるなら、まだまだだぞ!」
実際問題、トキの相手をするのはかなりきつい、先代部長が残してくれた装備のお陰でなんとかなっているだけに過ぎないのはある。バッテリー駆動と、神秘を経由して余剰エネルギーを限りなくゼロにしてのける腕は、流石といったところだった。もう、彼女と話すことも会うこともできないのが悔やまれる
「生憎、貴女と戦うことを想定していませんでしたので!」
「それはこっちも同じこと!」
そう、トキと戦うことなんて想定に入れてはいない、想定してたのはC&Cのメンバーだ。それが相手なら。撃破とはいかずとも、強行突破ぐらいは出来る。それはトキも同じようだった…いや、君の場合は。敢えて入れていなかったのかも知れない。そんな気がする
お互いの手法とも呼べる戦術が通用しない、イタチごっこはそう長くは続かないとは思う。トキの方は連戦中だ。そこの損耗を考えれば……なんてことは思っていない、ここは相手のホームグラウンドなのを忘れたつもりはない
「ッ!」
弾切れした腕部分をパージして後ろに下がりつつ。何かを操作しているのを見れば、ビルの床が空いて新しいアビ・エシェフのパーツが補填される。まあ、そういうのも当然用意はしているだろうさ!
「本当だったらエリドゥから引きずり出して戦うべきなんだろうけど、そんな余裕はないな!」
「貴女がエリドゥから去れば、戦わずに済みますよ…!」
「それはできない相談だなトキ!」
「そうだと思いましたよニア!」
いつの間にか、お互いがお互いの名前を呼んでいる。最初の他人行儀な会話からは考えられないぐらい。私達はお互いのことを知っているようになった。…本当だったら、こんな戦場じゃなくてミレニアムの学校でやることのはずなんだよな…何てことを思う。
だけど、それはお互いにもう有り得ないことだと理解しているはずだ。ならば、お互いの意見を押し通すまでに過ぎない!
「ちょこまかちょこまかと…っ!」
「お前には言われたくないよ、そっちこそ飛び回りすぎる!」
かすったら致命傷を食らう私と、継続的にダメージを与えられると一気に不利になるトキ。両者とも無茶な飛び込みだけはなるべくしたくはない状況を作り上げられているからこその拮抗である。
「パージ!」
「!」
来た、このタイミングだ。このタイミングで勝負が決まる、私は銃を構えて、収束率が低いままレールガンの引き金を引く。勿論効果はない、防御力もしっかり備えてあるのがなんともリオ会長らしい…!
「換装の隙はないか!」
「生憎ですが、リオ会長は明星ヒマリのように楽観的ではないので…!」
「それはそうだろうさ!でなければアリスを見逃しているだろうよ!」
そうだ、楽観視しなかったからこそ。あの人は強硬手段に打って出たんだろう。自分は三年生、残り少ない学生生活を投げ売ってでも後輩のために、泥を被り続けることを選んだ人だ。これぐらいは想定していておかしくはない!
「ロマンと楽観は全く違う、合理性ではなく。
「なるほど、貴女にとってのロマンはそういうものでしたか…!」
お互いに饒舌になっている。無言で戦おうとしていたよりも幾分気が楽だ、会話で思考を誘導しよう。なんてちゃちな方法はお互いに取ることはない。もう語るだけ語ったんだ、ならば後は戦うのみ!そういう風にしかならないなら。そうするだけさ
「くっ……予想以上に、手こずらせますね」
かれこれアビ・エシェフのマシンガンの弾倉を4本使わせている……そろそろ、終わらせるタイミングだな。此処で仕留められなかったら私の負け、逆に仕留めれば私の勝ちだ…!
「ですがこれで──何っ!?」
トキが武装を装填しなおした瞬間、アビ・エシェフの片方の腕が爆発で弾け飛ぶ。驚いているだろうさ、とトキ自身、リオ会長の腕はよく知っているはずだ。生半可なことでは壊れない。そう思っているだろう。
「残念だったな、リオ会長は機械に精通していても──お前自身は私よりも理解が低い!」
そう、機械を扱うなら。お前はもっとしっかり構造について勉強しとくんだったな。何故排熱機構がついているのか。何故、武器は一定時間休ませないと駄目なのか。それは、武器自体の熱で内部の構造が駄目になるからだ
「バカスカバカスカ撃ち過ぎなんだよ。その辺り、考えが足りないな」
「フレームの強度は確かに余裕があったはず…!?」
片腕が戦闘不能に陥ったことで大きく差が開く。弾倉を狙い撃ちすることも、今なら用容易だ。エネルギーを溜めさせて高出力の砲台も使うことはできまいよ!
「そう、フレームはな?……ただ、それを動かすケーブルはそうじゃない、熱を帯びれば脆くなり。そして、接合部との接触不良が起きれば───ドカンだ!!」
「くっ!?」
とうとうアビ・エシェフが戦闘不能に陥り、なんとかトキが脱出すると。爆発は起こさなかったものの。電源が完全に死んで動かなくなる。これでチェックメイトだ。トキ
「どういう理屈で……その手に持っているのは……ワイヤー?」
「そう、ワイヤーだ。お前が私の攻撃を防いだ時。仕込んでおいたのさ、保護してある皮が剥けて、剥き出しになった導線は容易に漏電して、内部からぶっ壊れてショートする。システムは強いけど……電子武器の最大にして唯一の弱点、って言っても良い。それだけはどうにもならん」
「なるほど…ミレニアムの戦闘では。どれだけ優秀な技術者が後ろにいるかがポイントになりますが…私の研鑽ミスだったとは」
アビ・エシェフのフィードバックが予想以上に大きかったのか。トキは自前の銃を構えようとして。手から滑り落とさせた。そのまま膝を突いて、息を絶え絶えにしている。……本当は、此処で様子を見てやりたいところなんだけどな。捕まえられる可能性がまだある、私だったら最後までチャンスを待つ。コイツもそうするだろう。そんな事を知ってか知らずか、トキは自分の持っている銃火器を此方に投げ飛ばしてきた
「……もう、動くのも辛いので。貴女を此処で捕まえる気はありません、……それに、約束。ですから、負けたら追わないというのは……」
「そうか………ありがとう」
「ありがとうは要りませんよ。此方こそ……ようやく、肩の荷が下りるというものです。……一つ聴いていいですか。ニア」
トキが床に座りながら。君が問いかけてくる、なんだ。私に答えられることなら。答えておこう
「……私のやってきたことは、しっかり意味がありましたか?」
あったとも、君がこうしてやってくれなかったら、多分。リオ会長はもっと酷いことになっていただろうから。それを防いでくれたのは。間違いなく君だ
「……私は、ちゃんと強かったですか?戦えていましたか?」
強かったとも、戦えていたとも。君の思いの強さ、しっかりと伝わっていたよ。ああ、それは嘘じゃないよ。うん、しっかり……私の中に。響いていたも
「……私は…私は。ほんとうは……っ」
「…なんだい、言ってごらん?大丈夫、私は怒らないから」
「本当は……
彼女の前で、みっともなく泣きじゃくってしまう。負けてしまった、止められることができなかった、そんな悔しさとやるせなさから来る涙だったら良かった。けれど、私が今流している涙は安堵の涙だ。これでようやく戦う必要がなくなる、あの重苦しい戦闘に明け暮れるだけの日々から。消えることのなかった胸のつかえ、恐怖心が無くなると。何よりも、貴女を追う理由が無くなった、無くなってしまったという。一種の責任逃れができたことから来る涙だ。こんなの、彼女に見せて良いものじゃない。よりつらい戦いに赴くであろう彼女に見せてはいけないはずなのに。どうしても抑えきれなかった
「ごめんなさい…!ごめんなさい……!私、苦しくって、辛くって……怖くって……!」
そうだ、怖かったんだ、彼女のように一人きりになることが。彼女を倒すということは、彼女がやってきたものを全て背負わなければいけない、そんな強さは私には備わっていなかった。貴女が置かれた境遇に憤慨し、他の生徒を憎むことで。なんとか均衡を保っていたのだが。それを打ち砕かれてしまえば、残るのはただの飛鳥馬トキそれだけだ。
「貴女に負けて、安堵しちゃって……!」
リオ会長を、私は止めてあげることができなかった。最悪、貴女の二の舞いを作り上げることに加担しているのと同義だ、そんなこと。本当だったら止めなければならないのに、私はそれをすることができなかった。天童アリスを見た時。本来彼女が居たはずの光景を見せつけられているような気がして、許せなくて。居なくなってしまえ、なんて思ってしまった。天童アリスも、あの場所に居たいということを知りながら、私はそれをすることが出来なかったのだ
「ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
これは懺悔ではない、罪の告白だ。この場で。例え貴女が私に何をしようとも。私はそれを受け入れるしか無いんだ、死ねと言われれば死ななければならない。私はそれだけのことをして此処に立っていた。立ってしまっていた。視界が歪んで、今貴女がどんな顔をしているのか、私には分からない。きっと、怒っているのだろう。そんな事を思っていると
「トキ」
優しい声で、名前を呼ばれた。幻聴かと思った。だけど、貴女は優しく優しく私を包容して。子供をあやすように、背中を撫でてくれた。
「ありがとう、君の本心を語ってくれて。C&Cの飛鳥馬トキでもなく、調月リオの私兵でもなく……あの頃、まだミレニアムに居れた頃の君の本心を語ってくれて。嬉しかったよ、別に悪いことじゃない。怖いのはみんな同じだ…むしろ、私にならないでくれて。ありがとう、私の行動に意味を与えてくれて。ありがとう」
「私は、そんなものでは……!」
「いいや、君がちゃんと。この学園の生徒のままで居られる。それを知れただけで十分だよ……。日常へお帰り、君が。本来いるべき場所へ」
また、泣きじゃくってしまう。また、助けられてしまった。許されてしまった……本当に、本当に貴女には敵わないままだった。そんな事を思いながら、泣きつかれて眠りについてしまう。
その時、目にしたのは……
「おやすみ、トキ。ちゃんと帰るんだよ?」
──貴女の、優しい笑みだった
「……チュテレール」
「なんでしょうか、来訪者」
「トキを上まで運んであげてほしいんだ」
名前を呼べば、チュテレールが顔を出す。恐らく、気を使ってくれたのだろうか、人間臭いやつだ……そんな事を思いながら。眠りについているトキをチュテレールに預ける。よっぽど疲れているのか、ちょっとやそっとでは起きないだろう。だけど、丁重に。なるべく起こさないように、優しく運んでくれ
「……一人で行かれるのですか?」
「ああ、最初からそのつもりだったからな…トキを……彼女を。巻き込んでしまったのは、私の失態だった。チュテレール、トキを上に運んだら。事が終わるまで彼女のことを守ってあげてほしいんだ。」
「………分かりました。それが貴女の望みであれば」
「あぁ、それが私の望みだとも……じゃあな、チュテレール。短い間だったが世話になった」
「……ご武運を」
その言葉だけ躱して、エリドゥ中部へと走る。リオ会長……私が、貴女を止めてみせます
さて、次はミレニアムメンバー&先生VSリオ会長。まあ無理ゲーかつ強制敗北イベントだけど、書かないと進まないからね
今回の勝負、本来ならニアはギリギリの勝負で死にかけるはずでした。何なら負けるほうが可能性として大きかったんです、じゃあ何で勝てたのか?
勝因は……トキが優しすぎたから、それだけです。それを考慮して次のお話をお待ち下さい
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=306013&uid=169733
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NO titleの歌詞の当てはめ方を書いてみました。興味があればどうぞ
トキの扱いについて
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このままミレニアムに残る
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ミレニアムから離れてリオと一緒に行く
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ニアについていく