「…………」
茫然自失になっている調月リオを尻目に、状況を確認する。爆発音と戦闘音、何よりも蒼白い閃光が飛び出た時は間に合わないかと思ったけれど、なんとか間に合うことができたのだけは不幸中の幸いというべきなんだろうか
「……………」
見知った顔が、地に転がっている。ノア、ユウカ、そして…………
「……………ウタハ先輩」
遠くで気絶しているウタハ先輩が視界に入る……そこなら、戦いに巻き込まれることもないだろう。本当は、安全なところまで連れて行ってあげたいけど。私はもう、貴女に触れてはいけないんだ
「……………貴女は、蒼望ニア…………なのかしら?」
「……ええ、そうですよ」
調月リオにそう答える、これが初めての邂逅だ。現ミレニアムのトップ、この壊れている兵器も。全部一人で作ったと考えると相当腕のいい技術屋であることは間違いない、そう確信する。これは止めるのに苦労しそうだ
「どうして………どうして………」
「………?」
「どうして、その無責任な人間を守るような真似を…!!どうして、自分がそうなった原因であるAL−1Sを助けるような真似を……!!」
調月リオが此方に吠えてくる、雰囲気から察するに此処まで激情家ではないと思う。となると………理由は私か。でも何故?何故そこまで起こるのか、私には理解できない。一体何を知っている………?
「……どこまで、私のことを知っている?」
そう問いかけると、調月リオは此方を見た後。しまい込んでいたものを見せてくる……あれは、私のスマホだ。あの時、死ぬかも知れないって思って置いてきたものだ。あのまま持って行ってたら、誰かに最後連絡してしまいそうになると思ってたから。最後に録音だけ取って、あの場所に向かったんだ。
「貴女が、あの日あの時。全てを捨てることになったのは、AL−1Sに連なるもののせいだったはず!それなのに、どうして……!!」
……そうか、調月リオ。貴女は……そうか、信じてくれたのか。死ぬ寸前に残した世迷い言と言われそうなものを、貴女は。信じてくれたのか……、覚えていてくれたのか。
「それだけじゃない、今の今まで積み上がってきた負債は。貴女のせいではなく、私達の、今大人と呼ばれている見て見ぬふりを続けた人間のせいで。今まで、キヴォトスがこうしてなんとか保っているのは、今更出てきてろくに覚悟も責任もないそのシャーレの先生等というものでもないはず……!!」
……ああ、そうか。調月リオ……いや、リオ会長。貴女も、ずっと向き合ってきたんだ。このミレニアムと、歪とも言われても仕方がないキヴォトスの現状と。
………なら、私も。今は………今だけは。『ハウンド』ではなく、『蒼望ニア』として、接しよう。
「別に、彼らが無責任な人間とは思わないよ。普通だったら、そういう風になると思う。そこは責められないし責めちゃいけないんだ、私は。そう思ってるから…だから。だからこそ」
「私は、ただの生徒がただの生徒で居られるように。戦うって決めたんだ」
そう。誰もが戦えるわけじゃない、皆怖い。戦うのは怖いことで、痛いこと。苦しいことは誰だって避けたいよ。私もそうだ、皆……そうなんだよリオ会長。私はもう、やってしまったから。なら、やってしまった人間がやらないと。そうじゃないと、私のような人間が増えちゃうから。そうなってほしくはないんだよ
そういうと、リオ会長はまた茫然自失になった後、頭をかきむしりながら。苦しそうに悶えてしまった
「貴女が、身を体にして。守るような生徒は多くはないわ……!!!大半の生徒……いえ、キヴォトスの人間は傷つけ合うのが当然だと思っている!撃って撃たれるのが当たり前!平和?キヴォトスの日常?こんなもの日常なんかじゃない!武器を取って他人の領域に土足で踏み込み、荒らし。自分のエゴだけで周りの人間を滅ぼそうとするのが当たり前であって言いわけが……!」
「……それは本当に、そう思うよ」
本当なら、他者を傷つけること無く。生活できれば良いんだろうけど。キヴォトスではそれが当たり前になっている……あの人を思い出す言い方だな。リオ会長も、この現状に疑問を持っている方だったんだね
「だから…だから、今。此処から変えなくてはならないのよ。変わらないだろうから、そう言ってその負債を背負うのは5年、10年後の生徒達……自分達がこのままでいいと、そんな軽い気持ちで放っておいていい問題では。決して無い…!」
「……その踏み潰すという行為を、貴女自身がやっている上で?」
「そうね、私も彼女達と一緒…だから。私の代で、全ては持っていくことは出来ないと思うわ。私はそこまで優秀な人間ではないもの。たった一人、救うこともできない私には。その負債の一端を担って消えていくことぐらいしか出来ないわ……。分かっているわよ、こんなことでは、ほんの時間稼ぎにすらならないかも知れないと。だけれど、だからこそ。
………ねえ、リオ会長。貴女は、本当は優しい人間なんだね。リオ会長は、人が傷つけ合うのが本当は嫌いだから。だからこそ……自分が、それを全部引き受けようとしているんだと。そう思ったよ、ずっと疑問だった。どうしてこんなに急いでいるのか、強引でもやろうとしてるのか……貴女は、自分の責任から逃げたくないんだ。苦しくても、辛くても、理解されなくても。それでも…それでもと
「……リオ会長」
「………何かしら」
そうだ、リオ会長。貴女は、人殺しになっちゃいけないんだ。駄目だ、貴女はまだ、戻れる場所にいる…私とは、違うんだ。
「………私は、もう。一人…人を
「───────」
人殺し?このキヴォトスで人殺し……?頭の処理が追いつかない。ミレニアムの未来を見据えていた彼女が?ありえない、あり得ない。それはありえない、理由がない。理由が見つからない
「この手で、殺したわけでは有りませんよ………死なせてしまった人が居る。私のせいで」
「一体誰を、貴女は見る限り。人との関わり合いを───」
「前エンジニア部長、覚えていますよね?」
「………ええ、覚えているわ」
ちょうど私が一年生だった頃の3年生、技術力も何もかも飛び抜けていて、一目置かれていた、人間性も高かった相手だ、勿論、覚えているとも。責任能力もあった人だと
「………その人ですよ、私を助けてくれた人は。私が………死なせてしまった人は」
「──────」
声が出なくなる、死んだ?あのエンジニア部長の部長が?あの人が?そんな事あるはずが………ある、はずが…………、まさか。貴女が今使っている装備は……
「これも、彼女が遺してくれていた物です。これが、私の罪の証拠です」
そう言って聞かせてきたのは、私と同じような端末。再生されるのは、あの人の今にも死にそうな声
…………………
……………………………
「……怒らないんですね。てっきり。敵討ちされると思いましたよ。貴方方の先輩の死因が目の前にいるんですから。」
彼女の言葉が、頭の中に入っては通り抜けていく。死んだ?あのマイスターが……?脳が理解を拒む、優秀な生徒ではあった。利発な先輩ではあった……だが。蒼望ニアとは無関係のはずだ。
理解しきれていな私に、蒼望ニアは言葉を続ける
「あの人は……前エンジニア部長は。おそらく、私がやろうとしていたことを。自分でやろうとしていたんだと思います、自分が卒業した後に。『生徒』としてではなく、『大人』として。……私達に、火の粉がかからないようにと」
また、思考が乱れる。知っていた?知った上で放置していた?いやそれは蒼望ニアの食い違う、彼女の言う通り。全て、一人でやろうとしていたのだろう。全て、背負おうとしていたのだろう。彼女が使っている武器をよく見れば、ハッキング対策が入念に施されている。あれは間違いなく……アレに対抗するもののであると。
「……それを、私が台無しにしてしまった。入念に準備していたであろう前エンジニア部長ではなく。私が下手に手を出したせいで、あの人は……死んでしまった。ぽっと出の私よりも、前エンジニア部長のほうが上手く出来たはずだ、時間もあっただろうし。何よりも、経験が前エンジニア部長のほうがあったはずだから。それを、私は台無しにしてしまった。だから……私は、貴方方三年生には。正直憎まれると思っていますよ。なんなら、あのまま亡くなるべきは私だと言われても仕方がないとも」
「ソレはないわ」
「………リオ会長」
前エンジニア部長が死んだことは。思考を奪うには十分すぎるものではあった、十分すぎるものではあったが。ソレだけだ、死んでしまった人間は。どんなに手を尽くしても帰っては来ない。例え禁忌を犯しても、それはただの物だ。前エンジニア部長では……先輩ではない
「……彼女は、前エンジニア部長である
そうだ、彼女は。蒼望ニアは……前エンジニア部長の、利発で。面倒見が良くて、よく笑っていたあの人がキヴォトスに最後に遺したものだ。彼女が
そして、一つ思ったことが有る
「貴女は……自分を許せないのね」
そう、蒼望ニアは自己を受け入れていない。否定し続けている、いっそのこと消えるのは己の方だと、そう考えているのだろうと。そう問いかけると、ほんの少しだけ、先程まで無表情だった彼女の顔に。陰りが見える
「それは……そうですね。私が、この惨状の原因なので。私は、貴女を、現三年生も、その上の先輩方も、信頼してあげることが出来なかった。ましてや同級生すら、私は信用できなかった。もし、もしもこうなるのを知っていたら?そんな憶測だけで行動した、未来ばかり見据えて。今を顧みなかった、残されてしまった人のことを。考えることもしなかった……何よりも。私はアリスを
「…… AL-1Sを?」
「私には……それを、殺す機会があった」
彼女が語ったのは。調整槽にて眠りについている AL-1Sを見つけたこと、殺さなければならないものだとは理解していたこと。
「………それが、この結果です。私には、覚悟が足りなかった。あまりにも足りなかった、人を殺す覚悟はなかった。知らなかったとは言え、人を死なせておいて、ソレをなすことが出来なかった、前エンジニア部長なら可能だったかも知れない。もしかしたら、何らかの方法で無力化する方法も編み出していたのかも知れない。それなのに、私はその邪魔をしてしまった。ミレニアムを危険に晒してしまって…ミレニアム生徒同士で、殺し合いをさせる要因になってしまっている。それは、許されるものではありません。守りたいと思っていた場所を壊す原因となり、守りたいと思っていた人達を。悲しませて、傷つけて。
彼女から吐き出され失望は、怒りは、悲しみは、嘆きは、憎しみは……全て、蒼望ニアだけへ向けられていた。やらなければよかった、というのも他人に任せていれば良い。というものではなく、もっと上手くやるべきだった。こんな犠牲を出してしまった責任は何処に有るのか?それは蒼望ニアにある。調月リオにはない、彼女はそう言いたいのだろう
……情けない、そんな感情が湧き上がってきた。思い違いをしていた、彼女は。決して強い人間では無かったのだ、もっともっと。弱い人間だった、自分のことは割り切れても。周りの犠牲者は容認できない弱さが有る。それを確認できた、でなければ自分のほうが消えるべきだったとは言わないのだろう。
…………なら、私がやるべきことは一つ
AL-1Sを調月リオの手で破壊することである
蒼望ニアが撃てなかったことを責めるべきか?否である。追い詰められていた彼女にそこまで求めることは許されない。動けなかった私が、私達は
蒼望ニアにAL−1Sを
…………迷うことは、私には。許されない
私は……調月リオは。前エンジニア部長に救われた、口下手でコミュニケーション不足だった私のことも気にかけてくれていた。褒めてもくれていた、死んでしまったことは悲しい。喪に服したい気持ちもある。だがそれは今ではない、今。前エンジニア部長の遺した者が壊れかけている……その要因になってしまったことについては。申し訳がない…だけれど。
これ以上、彼女を。摩耗させるわけにも行かない。少しの間。眠っていてもらわなくては
『ねえリオ。貴女は。不器用だけど、誰よりも周りのことを考えているのね……。きっと、貴女の事を理解してくれる後輩が、きっと……きっと。来てくれると思うわ』
そろそろ共依存ルートとかIFルートとか考えようかなと思わなくもない。共依存ルートならリオだと此処で分岐、ウタハの場合は一旦出て行ってから。アリスを撃てなくて錯乱してるところにかな。アコはセーフティハウスから逃さない感じ
あ、ちなみに皆さんお分かりだと思いますけど…リオの協力を先生は現在得られていないので…今現在は最終章で詰みです
Q.なんでリオこんなに強いの?
A.個人的に他のSSのリオが弱すぎるというか軽視されてるだけ。先生の指揮有りで負けるっていう設定よく考えてないんじゃないかと思う
トキの扱いについて
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このままミレニアムに残る
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ミレニアムから離れてリオと一緒に行く
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ニアについていく