「…仕掛けるなら、夜か」
銃の整備をしながら一人心地に呟く。カイザーに利権を取られて店を閉めざるを得ない真っ当な店もあると聞いた。その上で、アビドスの生徒の憩いの場でもあるらしい
そういった場所も守らなければならないだろう…そんなことを思っていると廃墟と化しているビルの階段を登ってくる音が聞こえる
「………」
聞いたことのある足音ではない、天雨アコは既に帰っているはずだ。とするならば、アビドスの住人。または生徒。或いは…カイザーの追手か
足音の感じからして、おそらく女性だ。となると生徒の可能性のほうが高いか、だが…アビドスの生徒の誰だ?人数はかなり少ないと記憶にあるが。どうするべきか
件の相手がドアの目の前で止まる…どうやら開けつるつもりは無いらしいが、ドア越しに撃たれてはどうしようもない。射線に入らないようにしつつ。様子を伺う
その前に、一応ではあるが足元に接触型の自爆ドローンも設置しておく。いざとなった時もろとも破壊する必要もあるだろう
そんなことをしていると、ドア越しに声をかけられる
「んー、随分物騒なもの使ってるね」
「……!?」
ドア越しに此方の状況を把握している…?
「こっちこっち」
「っ!?」
後ろに飛び退いて銃のセーフティに手をかける。気づかなかった、思考を誘導されていた…?
「大丈夫大丈夫。今のところは攻撃の意志はないよ…はいこれ」
ピンク色の長髪を靡かせている相手が差し出してきたのは、窓際の方に置いていたドローンだ…どうやら無力化してるしてるらしい
「……」
この生徒、相当強い。手持ちの装備では勿論だが、
暗がりでお互いの顔はよく見えない、いや。相手からは見えるのかもしれない
「さて、お話しようか。昼間の協力者さん?」
此方のことを把握している、何故だ?このピンク色の長髪の生徒、昼間には居なかったはずだが…どういうことだ?そう思っていると、月の光が差し込んで盾の『文字』が見える
「『暁のホルス』……」
『暁のホルス』。風紀委員の長である空崎ヒナからの情報提供で聞いていた。戦闘力という意味でも、他の学校が。少なくとも空崎ヒナがことを構えるのを避けるぐらいには。強いそうだ
「おや?私の事知ってるんだ。『ハウンド』」
…それが私の呼称らしい、飼い主に歯向かう犬。という蔑称から来たそうだ、別に私はカイザーに雇われてはないが
「…それで、何の用だ『暁のホルス』。事を構えるつもりか?」
「うへー、いきなりやる気出してこないでよ」
此方が警戒すると相手は嫌そうな顔をする、が。臨戦態勢はお互いに崩しては居ない。一触即発の事態…ではないが、此方が撃てば確実にやられる
「…まあ、話しにきただけって。とりあえず銃下ろそうよ。お互いに」
そう言いつつ相手は、銃を下ろす。盾も床に置く。とはいえ此方の攻撃にはすぐに対応できるだろう。撃つのは得策ではないし、なるべくなら撃ちたくはない
「……分かった」
銃を下げつつ、相手の方を見る。気怠げな雰囲気の中に微かに交じる隠し通せない闘気
「…それで、話とは何だ『暁のホルス』」
「その名前で呼ぶのはあんまり嬉しくないな、私は小鳥遊ホシノ。そっちの名前は?」
「……」
「りょーかい、言いたくないなら言わなくていいよ。」
「すまない、気遣い感謝する」
そう言うと、此方を観察するかのように眺めつつ。首を傾げる
「聞いていた印象と全然違うね。隙あらば私を撒こうとすると思ったんだけれど…ふぅん」
小鳥遊ホシノから逃げ切れるとは思っていない、それに。アビドスの生徒であれば聞いておかないといけないこともある
「カイザーの情報は、シャーレの先生に届いたか?」
「うん、ちゃんと把握してるよ〜……まあ、私もその話をしたいんだけれど。まず、言っておかなきゃいけないことがあるかな」
そう言うと、小鳥遊ホシノは姿勢を正しつつ。深々と頭を下げてきた
「…後輩を助けてくれて、ありがとう。本当に、ありがとう」
「気にすることはない。ついでだ、或いは恩を売った。とでも思っておけば良い、正直、小鳥遊ホシノを相手にしたくはないからな」
おそらくではあるが…彼女は、良い先輩なのだろう。わざわざこうして危ないところに来たのだから
「……そっか、じゃあそうしておこう。本題に入ろうか。カイザーのことについて」
どう、転がすか。
アビドスの自治区はカイザーコーポレーションに半ば占領されていて、学校だけじゃなく。土地の利権まで巻き上げられて、いつ完全にあっちに取られるかわからない状態だった
──少なくとも、1年前までは
ある日突然、カイザーの締め付けが緩まったのだ。緩まった、というよりは私達の相手をしている余裕がなくなったというべきか。
それと同時に、とある噂が立ち始めたのだ──カイザーに喧嘩を売った馬鹿が一人いる。と
私怨絡みで破壊活動をしていると噂があったけれど、私はどうもしっくり来なかった。本当にカイザーに私怨があるなら。もっと手当たり次第に襲っているはずだ。勿論、半ば占領区であるアビドスも例外じゃない、そう思って色々と準備して。夜間警戒も増やした…のだけれど、一向に襲う気配はなく。カイザーの非合理な取引に介入しては潰して回っているようだった
何か事情があるかもしれない、そんな時に。今日の一件があった、カイザー絡みではないところに『ハウンド』が現れることはほぼ無い。というよりはそれ以外していないんだろうと推測は容易だ
あれと戦う、ということは想像を絶する規模だろう。相当の手練でも容易ではないはずだから
そんな『ハウンド』が後輩を助けたことには何か意図がある、そう思い潜伏場所になりそうなところを探し当ててこうしている
「…どうやら、砂漠で何かを掘り当てようとしているようだ。だが何を?あれだけの防衛網を敷いている以上、重要なのは間違いない」
こうして話をしていると、普通の人だ。ヘイローがあるので多分何処かの生徒…だったんだろう、1年以上行方をくらませているのはもう居ないのと一緒と扱われるだろうし
「だろうね、わざわざ砂漠に立てる意味もないし。維持も大変だろうから」
そう言うと『ハウンド』はなにか考えている、真っ白な長髪の毛先を触りながら。それをよく見ると…彼女の髪の根元の色と、全体の色が違う。染めているのか分からないが。ほんの少しだけ不自然だ
「状況はどうやら、想定以上に逼迫しているらしい。見立てが甘かったか……」
そう言いながら、彼女は少ない荷物に銃とドローンを入れ始める、もしかすると。今からでも襲撃するつもりなのだろうか?
「…私も手伝おうか?」
そう言われると『ハウンド』は、手を止めて此方を見てくる
「小鳥遊ホシノ」
「……何かな?」
「小鳥遊ホシノは……いや、貴女は。アビドスが好きか?」
「そりゃ……好きだよ、アビドスも。私の後輩も」
「そうか……そうか」
なんとなしに問いかけに返すと、『ハウンド』の表情が僅かにだが動く。何か満足げのような表情と、どこか眩しいものを見るような視線だ
「それがどうしたの?」
「…なら、小鳥遊ホシノ。貴女はそこから離れてはいけない、貴女は。貴女と、貴女の後輩の『日常』の中に、居るべきだ」
「そっか……じゃあ、『ハウンド』には。そういうものは無いの?」
そう言うと、荷物をまとめた『ハウンド』は背中を向けてドアを開ける。肩越しに問いかけを投げかけると。自嘲気味に『ハウンド』は答えた
「あったよ……だけど。捨ててしまった、だから。気にしなくてもいい…願わくば。もう会うことがない事を祈る。私が居るところは、日常ではないから」
その背中は、背負っている荷物に比べて。酷く小さく、頼りなく見えた
一応、タグにいるメンバーにある程度スポットが当たると思います
ホシノ。あんな感じですが昔はエリートだったのは驚きましたね。
今作だと、ニアのことはすぐに見つけられるぐらいには。腕は鈍ってはいません、隙を伺って反逆するチャンスをずっと伺ってました。
『蒼望ニア』に救われてほしいですか?そうでもないですか?
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救われてほしい
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そうでもない