カイザーの一連の施設を破壊してから暫く経った頃、とある情報筋から。例の少女…AL-1Sが目覚めたという情報が私のところへ飛び込んできた。これは動かなければならないな、と思いつつ。もう二度と行くことがなかったであろうミレニアムへと足を運んでいる
(変わらないな……此処は)
遠い遠い昔のことに感じる1年前までは当たり前に見ていた風景を眺める、こんなに綺羅びやかな街だったんだな…と。くだらない感傷に浸ることもなく、眼前に広がる警備網の隙を伺う。どうやら…何かあったようだ。妙に厳重な体制が敷かれている
「…既に調月リオが動いているとでも言うのか?」
アリスが機動した、という情報だけではやはり動きづらいか…かといって、此方から接触できる相手ではない。となるならば、情報を入手する必要があった。どうするか…
「……仕方がない、あまりやりたくはないが…手段を選んでいては、取り返しがつかないことになるか」
そう呟けば、もう二度と踏み入れることがないだろうと思っていた場所へと脚を向けていた
───廃棄区画にて
エンジニア部には部室には色々と残したものが有るのだがそれを回収している時間もないし、リスクが高すぎる。少なくとも今行くべきではない
ここならば。なんとかなるだろう…そう思い、扉の前に立つ。入室にはコードキーが必要だが…まあ、それぐらいはハッキングできるので問題はない。
「………」
相変わらずあちこちに廃材が転がっているのを尻目に、自分が此処を出ていく前に仕込んでいた場所を漁る。どうやら憶測通りそのまま放置されていたようなので安心した。端末を起動すると、夥しいほどの着信履歴が残っていた
「………ごめんなさい」
見慣れた名前が並ぶのを尻目に情報収集を自動でしていたプログラムを起動する。どうやらそのまま放置されていた…というわけではない。おそらく一度誰かが起動して音声ファイルを聴いた痕跡が有る…だが、この場所にあるということは特に何もしなかったのだろうか?
「まあ良いいだろう……」
そう思いながら、奥へ奥へ…AL-1Sが居た場所へと向かう。広い場所に調整層が一つだけ、起動履歴を見るに起動して数日しか立っていないようだ…となると、まだ自己形成が確立していないのか?
「少なくとも、ミレニアムをすぐに滅ぼすというわけでもないか…となると、次はあそこか」
巨大なコンピュータの前に立つ、どうやら此方も使用形跡が有る。ボタンに触れてみても起動する気配はない…壊れてしまったのだろうか?此処は巻き込まれては居ないが、電気の供給システムがイカれてしまった可能性は大いにある。経年劣化も深刻だろう、知り得る情報もそこまでないか…
「……仕方ない、別の方法を探るしかないか」
そう呟き、脚を外に向けて歩き出そうとすると
『再起動確認、システムチェック。エラー確認……一部ファイル欠損、修復完了。OSの問題は検知されませんでいた……二度目ですね、来訪者』
機会的な音声では有るが妙に人間臭い言葉を吐くあのシステムが復活したらしい、再び踵を返して画面と向き合う
「……久しぶり、だな」
『おおよそ1年と数カ月ぶりとなります、来訪者…どうやらその様子では、侵入者。と呼ぶべき有様になっているようですが』
侵入者、そう呼ばれると。まあ確かにそうだろうな…否定できる要素がない。今見つかれば排除されるような立ち位置に居ることは変わりないのだから
『先日、貴女の後輩と──』
「私はミレニアムの生徒ではない」
『……失敬、ミレニアムの生徒と件の少女が現れました』
「そうか……名前はなんと呼ばれていた?」
『アリス、そう呼ばれていました。今はゲーム部という場所に所属しているようですね』
そうか、アリスと呼ばれているのか…大分安直な名前では有るが、変に撚るよりかは良いだろう。私には関係のないことでは有るのだがな
「危険性のほどは、どうだ?何か把握していることが有るだろうか」
『………』
そう問いかけると、黙り込んでしまう。やはり何かしらの危険性は有る…いや、そもそもそれは知っていたはずだ。あの時壊しておくべきだった、という事実には変わりないのだろう…もっとも、当時の私ではどうにもならなかった可能性のほうが高いわけでは有るのだが
『どうやら、何度か暴走をしているようです。遭遇時にデータを一部のみですがコピーに成功してあります』
「…そう、か。アンチプログラムは作成可能だと思うか?」
『理論上は可能です、但し抑制プログラムが最大限であり完全な制御は現段階では不可能かと。それが可能になるのは、来訪者が元の居場所に戻った場合のみ可能ですが…それは不可能と判断していますので』
吐き出されたディスクを読み取り。データを複製した上でマスターデータを破棄する。手元に2つ有るのは良くはない、マスターデータのほうが有用性は有るが。痕跡から此処を探り当てられる可能性も無きにしもあらずだ
「…AL-1S……いや、彼女は、アリスは……楽しそうだったか?」
『…私には、そう見えました』
「そうか………」
ミレニアムへ危害を加えたこととミレニアムの生徒と絆を育みかけていること。両者の間で思いが揺れ動く、理性的にいくのであればアリスは絶対に排除するべきだ。いつ爆発するか分からない巨大な不発弾の周りで火器を使用しているのとそれほど変わらない。いや、ガスが充満してる状態で生活しているのとそこまで変わらないか、いつ起爆するか全く持って不明なのだから
「猶予はいくら有る?」
『無いとも回答できますが、永遠とも回答できます。状況次第というところが適切でしょうか?』
「了解した」
となるとすぐに動かなければならないな、確率的に無いという方が高いだろう
『来訪者、貴女にいくつかの物品があります。受け取りをしてほしいのですが』
「……物品?」
何を渡すのだろうか?私宛に荷物など有り得るはずも無い。そう思っていたがどうやら、そうでもないらしい。そう思っていると隣のハッチが起動して、蓋が開く
「……これは?」
『今後の敵に対抗するために用意していた兵装となります、貴女が設計したレールガン。光の剣『スーパー・ノヴァ』を参考にし、歩兵でも十全に使うためにダウンサイズさせたものと。長期戦を見越して防御力を安定させる為のプロテクターとなります……偽装にも使えますよ?』
そう言われつつ手に取る。見かけこそただのスナイパーライフルでは有るが。カートリッジの部分が弾薬ではなくバッテリーだ。携行できるバッテリーの数は10個、そしてかなり小さい。ただ口ぶり的にスーパー・ノヴァを参考にしていると言った以上、おそらくはダウンサイズしたとはいえレールガンには変わりないのだろう
プロテクターの方は…どちらかと言うとパワーアシストスーツというべきか。此方も有り難い
『そして…残り2つは此方となります』
そう言って大きなハッチから現れた物に、私は既視感を感じていた。何処かで見たことの有るものだったからだ、たしかあれは…そうだ。数年前見た……
『先代のエンジニア部部長が遺した武器です』
然前エンジニア部の部長も居たりしますのでハイ……まあ、その話が次になります。そっちからお辛いの再開です
『蒼望ニア』に救いはあると思いますか?
-
ある
-
ない
-
あってもいい
-
なくてもいい
-
どっちでもいい