アーマード・コア Vice Ignition~黒い不死鳥はルビコンを翔ける~   作:カキロゼ

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データログ2:二度目の死線

 灰色の空の下、かつては栄えていたのであろうビル群とそれを通る道路をACが滑る。

 

 「敵襲!?」

 「所属不明AC! 応戦しろ!」

 

 傍受した相手の通信が聴こえて来る中で機体を操作。正面に見える巨大な戦艦らしき残骸の下に居座るMT2体を、パルスブレードの二連撃で軽々と斬り伏せる。

 強化人間の特性の一つ、思考加速能力により仮想視界ではMTが1/2倍速で斬られていく。それを無感情に似た感覚で見つめながらも、エアと名乗った声は俺に語りかけていた。

 

 《レイヴン、貴方が装備しているパルスブレードですが……出力リーチが短い分、直撃できれば大きなダメージを与えられます。覚えておいて下さい》

 「(……覚えておく)」

 

 脳内の声に()()を返している所に、ハンドラー・ウォルターからの通信が入る。

 

 『その付近にACの残骸があるだろう。パイロット情報を抜き取れ。解析はこちらでやる』

 《ACの残骸……あそこですね。こちらでマーカーを付けます》

 

 エアがそう言うと同時に、仮想視界にマーカーが表示されACの残骸を発見。

 

 「(助かる)」

 《これぐらい当然ですよ》

 

 近づいて解析のために遠隔アクセスしながらも、エアへと軽くお礼の言葉を伝えたらそう返ってきた。

 

 

 

 ──この声が幻聴の類ではないのはもう証明されている。 

 俺の知らない知識に、仮想視界……機体への干渉。何より受け答えがはっきりしている事に、エアという存在に疑う余地が無かった。

 

 《疑われるとは悲しいですね。私は貴方の幻聴でもなく、れっきとして存在しています》

 

 ……話しかけなくても聞こえるのか。

 

 《貴方の思考が軽く伝わってくる程度です。ですが私に話しかけている事がわかりやすいので、これからも()()してくれると助かります》

 「(わかった)」

 

 

 

 そんな会話をしている間に、ハンドラー・ウォルターからの解析結果の画面が視界に映る。

 ライセンスコードはトーマスカーク。ランク26/E、所属は独立、ライセンスは失効済み。

 

 『身分証としは使えないな。このライセンスは既に停止されている。次を当たれ』

 

 ……()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 ()()、ハンドラーウォルターの猟犬として、俺はこのルビコン3に降り立った。

 この乗っているACごと大気圏に突入する際、惑星封鎖機構とやらの衛星砲に撃たれるアクシデントもあり到着位置がずれたが……。

 それは、ウォルターの指示によって施設にあったカタパルトで空中を移動し解決した。

 

 俺は正規の手順を踏まずに来た密航者。

 そのためハンドラー・ウォルターが言うには、この惑星で仕事を得るにはACの残骸から独立傭兵としてのライセンスを獲得する必要がある、という話だ。

 まだ失効していない独立傭兵のライセンスコードを拾い、そのライセンスの持ち主として傭兵支援施設に帰ることで、この惑星での傭兵という立場を得る。

 いわば、自らの名前を拾う任務だった。

 

 それが狂ったのが、惑星封鎖機構が介入してきた時。

 

 4つ目に見つけたACの残骸にアクセスした直後──あの巨大なヘリに遭遇。

 惑星封鎖機構大型武装ヘリ、という名前が視界に映ったヘリは俺の機体にミサイルと榴弾、ガトリング砲を浴びせて来た。

 俺はとっさの出来事に対応できず、まず最初の一斉掃射でリペアキットを全て使い切り。相手の武装を見る余裕もなく圧倒されて。

 

 そして最後、空中で榴弾を避けられずに。

 

 俺は死んだ。

 

 

 

────────────────

 

 

 

 そして今。俺は二度目の死を追体験しそうになっている。

 

 『これで4つ目だな。あの残骸にアクセスしろ』

 

 外れだとわかっているACの残骸にアクセスし続け、最後に残った残骸は街より一つ上の高台にあった。

 カタパルトを使用して一気に上昇し、余裕をもって広いスペースの高台に着地。マーカーが示された箇所には、爆発か何かで半球状に陥没した地面。そこにACが横たわっている。

 

 《前回はここであの残骸にアクセスした後、先ほど見かけた巨大なヘリが来た、とのことですね》

 「(あぁ)」

 

 アクセスするか迷っている間にヘリが到着し、戦闘で残骸が壊されたらどうしようもない。手早くACの残骸にアクセス。

 エアにも、先ほど他のライセンスを探しているときにヘリを遠目に視たため、見た目や装備の情報は共有されている。

 

 《先ほどカメラに映った画像を見ている限り、主武装はガトリング砲とヘリの下部に備え付けられた連射式榴弾。また誘導式ミサイルが備え付けられているようです》

 《私がヘリが突入してきた箇所をマークします。まずはヘリに近づいてパルスブレードを》

 「(……わかった)」

 《……強い緊張は焦りを生みます。大丈夫、私がサポートしますので》

 

 アクセス率80%──90%──100%。

 

 ピピッ、と電子音がしてアクセス完了を知らせる。

 

 『登録番号Rb23。傭兵ランク圏内。識別名は……』

 

 ハンドラー・ウォルターの無線通信を聴きながら、周りを油断なく見渡す。

 そして。

 

 『……なんだ?』

 《正面左前方! 来ます!》

 

 バラララララ、とけたたましく空気を切り裂く音が聞こえ始める。仮想視界のマーカーが左前方の空中を指す。

 素早く機体カメラを向けた先には、自らの機体の10倍以上はある黒い質量の塊が飛んでいる光景。

 仮想視界に、エネミー判定されたためか名前が浮かび上がる。

 

 〈AH12:HC HELICOPTER 惑星封鎖機構大型武装ヘリ〉

 

 《前に! 先制の一撃は今しか取れません!》

 

 言われる前にヘリをターゲットロック。直後、エアの声に押されるようにアサルトブーストを展開。

 

 心の奥にあった恐怖心を超高速で後方に置き去りにしながら、起動したパルスブレードを躊躇なく真正面から叩きつける。

 緑色のブレードによって、熱されたヘリの装甲がバラバラと地面に散り。

 

 『素早い反応だ、621。そのまま迎撃しろ。今なら特定されることもない』

 《追撃を!》

 

 「(……了解)」

 

 どちらに返したかもわからない返事と共に、アサルトライフルの銃口をヘリの装甲に0距離で押し付けて、トリガー。

 

 俺は再び、二度目の死の縁に降り立った。

 

 

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