宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ようやっとここまで来たって感じが凄くする。


降霊

 

 その傷を受けた時、菫は即座に反転術式を全力で回した…それ程までのダメージであると判断したのだ。

 

 袈裟懸けに斬り裂かれた身体、深く内臓にまで届いているのではないかと思わされる程に深い傷、血が大量に流れ落ちては身体を伝って地面へと落ちていく感覚が無数にした。

 

 回せ、回せ、全力で反転を回せ…でなければ死んでしまうぞと強迫観念染みた思考回路の中で行ったソレは、しかしてどうしようもなく効能を発揮しなかった。

 

 何故…そう認識する間に身体がグラつく、呪力による止血と意地だけで立っているような状況、ほんの少しでも気を抜けば即座に崩れ落ちてしまいそうな現状に、菫は必死に生きようと足掻いていた。

 

 知る由もないだろう、虎杖の放った一撃が魂にまで届いている事実を菫が知るわけがない。

 

 何処までも禪院廻という人間だけに固執していたツケがここに来て菫を苦しめる…ただただ一個人のみを視界に収め、他の存在を全て等しく邪魔と切り捨てた弊害がここに来て菫を死に至らしめようとしていた。

 

 

 隙だらけだ…『断』による斬撃をモロに食らった五条菫という存在が今にも崩れ落ちそうな様相で立ち尽くしている、手刀を振り抜いた状態の虎杖からしてみても十分に差し込む隙間があった。

 

 借り物とは言え、虎杖の術式は先の一撃にて焼き切れている、もう一度『断』を撃てと言われても決して撃ちようのないその現状で、しかし虎杖は再び足を踏み締めた。

 

 関係が無い、『断』はあくまで虎杖が決定打を欲したが故に作り出した技だ、相手に重症を負わせてからの追撃というパターンも当然の如く想定している。

 

 元々身体能力が極端に高い虎杖だ、そこから放たれる打撃はそれだけで十二分に脅威になるのは言うまでもなく、ましてやそれが直前により強い一撃を撃ち込まれた後であるのならば尚の事。

 

 勝てる、倒せる、殺せる…虎杖はそう確信していた、恐らく一部始終を見ていた天使や華もまた、同様の確信を抱いていたし…恐らく、五条菫自身も無意識的にソレを自覚していたことだろう。

 

 しかし───

 

 

 

 

───『契闊』

 

 

 

 その予定調和を、呪いの王は平然と崩す。

 

 響く何時かの言葉、それが契約執行の合図であることを虎杖は良く知っていた。

 

 意識が反転する、地表から水底へと落とし込まれるような感覚と共に虎杖悠仁の意識は沈み、それと同時に呪いの王の…宿儺の意志が前面へと押し出される。

 

 唐突に眼前へと出現した呪いの王、入れ墨が浮かび上がり邪悪な笑みを浮かべたその姿に、菫は言いようの無い悪寒を覚えた。

 

 逃げろ…そう肉体に指示を出すその前に、それを認識するよりも尚も速く、宿儺は菫の口元を鷲掴みにしていた。

 

 おごぉっと奇妙な声が出る、鷲掴みにされたことで無理矢理開かれた口元から漏れ出たその声に宿儺は吹き出すのを我慢するかのような笑みを浮かべながら、そこへと更に無理矢理自身の親指を突っ込んだ。

 

 口の中に入り込んだ異物、舌上へと転がり込んでくるザラザラとした感触に何をと思考する前に、宿儺は口元を鷲掴みにしていたその手を離し、直後に下から打ち上げるように菫の顎を撃ち抜いた。

 

 開かれていた口が無理矢理閉じられる、勢い良く閉じられた故に生じた歯と歯のぶつかる感覚と共にその隙間に存在していた異物を噛み千切る感覚を菫は自覚する。

 

 ブチリとやってくる生々しい感触、明確に噛み切ったとソレを認識した菫はその異物を吐き出そうと無意識的に口を開き…そこを宿儺に無理矢理閉じられた。

 

 開かない口に中に放り込まれた異物、ぬるりぬるりと徐々に徐々に口内の奥へと侵入していく敵手の指の存在に菫は宿儺の狙いを看破する…が、どうしようもなく遅い。

 

 

 ゴクリ…ナニかを飲み込んだような音と共に、菫の意識は暗闇へと消えた。

 

 

 

 

 

 意識が戻る、時間にして大凡10秒から12秒程度の時間…たったそれだけの時間の合間に、全ては変わっていた。

 

 

「───ケヒッ…こうして面を合わせるのは初めてだったか?」

 

 

───小僧。

 

 

 意識が追いつかない、理解が追いつかない。

 

 何が起きた? 今の一瞬で何が起きた?

 

 思考が巡る、目の前の光景に未だに理解が追いついていない、愉快そうに笑みを浮かべた女がさも当然のように話しかけているその光景に虎杖の思考は混乱の淵へと落とされる。

 

 傷が癒えていく、魂を傷つけられ修復が困難と化していた深い傷が瞬きの間に消え去っていく…そんな光景を前に、虎杖は無意識的に歯を噛み締めていた。

 

 分かっているだろう、分かっているはずだ、意識が沈む直前に何が起きたのかを知っている己はこの状況が何なのかを最も理解しているはずだと、虎杖は自身へと言い聞かせ…腹の底にあるソレを絞り出すかのような声で、五条菫であった存在を睨みつけた。

 

 

「───宿儺ぁぁァァァッッ…!!!!」

 

 恨み骨髄とこの事を言うのだろう、傷だらけの身体をモノともせず半ば本能にて行動開始した虎杖は、その怨嗟の叫びにも近しいソレを吐き出すと同時に宿儺へと拳を振るった。

 

 傍目から見たソレは正しく羅刹、怒りをそのままつけ加えたかのような形相にて拳を振るう虎杖に菫は…否、宿儺は愉快気に頬を歪めた。

 

「そう焦るな()()───」

 

 

───うっかり殺してしまいかねん。

 

 

 直後、虎杖の腹部に衝撃が奔った。

 

 撃ち抜かれる腹部、拳により繰り出される鋭利なカウンターが綺麗に虎杖へと入る。

 

 ゴブっと吐き出される空気と血反吐、全力の殺意に合わせる形で放たれたソレは容易く虎杖の肉体を行動不能寸前にまで追い込み、そのまま虎杖の肉体を後方へと吹き飛ばす。

 

 転がっていく虎杖の身体、ゴロゴロと水切りをする石か何かのように後方へと吹き飛んでいく虎杖を、天使…華は咄嗟に抱きとめた。

 

 

「ゲボっ…! ガハゴホッ…!!」

 

 

 必死に呼吸を行う、未だに深く奔る痛みを必死に堪えながら半ば過呼吸気味に息を吸い出しては吐き出しを繰り返す虎杖の姿に華は薄ら寒いモノを覚え、それと同様に天使は冷や汗をひたりと流した。

 

「ゲホゲホッ…ゴメン天使、油断してた…あんな方法で抜け出されるなんて思ってなかった」

 

 吐き出されたのは謝罪の言葉、呼吸をすることすら苦しいその中で吐き出されたその言葉には、何処か自罰的なモノが含まれているように感じられる。

 

「───いや、君は悪くない」

 

  

 そんな虎杖の言葉を、天使は食い気味に否定する、悪いのは己の方なのだと。

 

「君が堕天の…宿儺の器であることは聞かされていた、その時点で私だけはこの様な事態を警戒しておくべきだったんだ」

 

 だから君は悪くない…そう言葉を切った天使の視線の先では、宿儺が何処か鬱陶しそうに自身の髪を弄っていた、女特有の長くしっとりとした長髪というのがどうにも馴染まないのであろう。

 

 徐ろに肩口辺りで指を振るい、ズバリと髪を切って捨てる…長い長髪を肩程度の長さにまで切り落としてスッキリしたのか、何処か満足気によしと言葉を溢す宿儺の姿に天使は歯噛みした。

 

 

 責められない、天使は虎杖悠仁のことを責められなかった。

 

 器であることは聞かされていた、食らった指の本数も聞かされていた、本人自身も宿儺に対して非常に警戒心を持っており自分から出すなんてことを決してしないだろうと確信すら持てた…そんな中で宿儺はいとも容易く檻から抜け出した。

 

 誰が悪いのかと言われればそれはやはり自分であると天使は自認するだろう、この中で最も宿儺の恐ろしさを知っていた己が呑気にしていたからこんなことになっているのだと言う自認が天使にはあった。

 

 五条菫の存在は言い訳にならない、紛れもない己の油断が招いた不手際だ、ならばしっかりと精算しなければならない…ならばどうするか、簡単だ。

 

 ()()()()()()()()()()()。 

 

 

 

「……華───」

 

「分かってる…大事に扱ってよ?」

 

「承知している…やるぞ」

 

 

 瞬間、華の気配が一変する。

 

 姿が変わったわけではない、容姿にはコレと言った変化は見受けられずましてや入れ墨やらそう言った変化すら起きていない…しかし、それでも虎杖は確信していた。

 

 起きてきたのだ…と。

 

 

 

「…早速で悪いが虎杖、手伝ってくれ…今しか無いんだ」

 

 

 告げる、冷静さの中にありったけの切実さを混ぜ込んだような言の葉で、天使は虎杖へとその言葉を告げる。

 

「恐らく奴はまだ肉体に馴染み切っていない、今の奴ならまだ私達でも太刀打ち出来る、つまり───」

 

「殺すなら今しか無いってことだろ」

 

「よろしい…やるぞ」

 

 

 あっさりと取り決められた殺害予告、目の前の呪いの王が完全に肉体に馴染み切る前に殺し切る、その共通の目的を前にした両者に対して宿儺は───

 

 

「───来てみろ、遊んでやる」

 

 

 くいくいっと、手招きをしてみせた。

 

 

 

───『天使』 降霊

 

───『両面宿儺』 降霊

 

 

 

 魔境の門が、再び開く。

 

 

 





菫さん

 割と初期の段階からコイツを器にしようかなぁとか思ってた(作者が)、ある意味で一番組み合わせちゃいけない二組。

 因みに、この状態の菫は死んでないけどこれからある方法で死ぬ。


虎杖&天使

 殺意MAX、天使は共生してたけどこれくらい出来ただろお前とか思ってた、もっと活躍見せてよ単眼猫先生。


 
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