宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 なんかやりたいこと出来るって凄く楽しいんだなってなる。


前哨戦

 

 

 

 戦線の発端は、あまりにも唐突だった。

 

 降霊した天使と宿儺、何方もが確実に相手を殺し得る手段を持つ実力者…それを理解した上で、宿儺は試し乗りでもするかのような気軽さでそれを言紡いだ。

 

 

「───術式順転」

 

 

───『蒼』

 

 

 唐突に解き放たれる無限の収縮、蒼く輝く空間を圧縮する五条家の術式が何の躊躇も無く自分達へと向けられ、そこら一帯の瓦礫ごと虎杖達を飲み込もうとする。

 

 デタラメ…詠唱すらしていないその状態で、しかも本当に試し打ちでもしてみようかと言う軽い様子で放たれたソレの威力は明らかに五条菫のソレを凌駕していた。

 

 範囲にして大凡二倍、あからさまに広がったその範囲に虎杖は咄嗟にその場からの離脱へと移行しようとする…ことなく、寧ろグッと地面を踏み締め、前へと飛び出そうとしていた。

 

 明らかな自殺行為、触れれば成す術も無く死んでしまうと確信しているが故にその行為は愚行と呼ぶもの以外の何者でもなく、であるからこそ宿儺は嘲笑う…ことはしなかった、寧ろ当然の事のように宿儺はそれを受け入れる。

 

 何故か、なんてことはない、最適解だからだ。

 

 確かに自殺行為だ、五条菫の際ですら致命傷であったそれを今は寄りにもよって宿儺が使っている、無難としては撤退が最優先…しかし、今この場には───

 

 

「邪去侮の───」

 

 

───神槍(かんざし)

 

 

 天使という、対術式戦に於ける天敵が存在する。

 

 

 

「突っ込め! 虎杖!!」

 

「おうっ!」

 

 

 迸る気合の声、生成した槍を逆手に持ちながら虎杖へと声を発した天使に対して虎杖自身は一欠片の躊躇いも見せずに突起を開始する。

 

 踏み締めた地面が弾け飛ぶ、爆音を奏でながら砲弾か何かかと錯覚してしまいそうになる程の直線スピード、生半可な術師ではまず捉えようの無い速さで以って虎杖は蒼へと突っ込む。

 

 そんな虎杖へと合わせるように、天使は逆手に持った槍をあらん限りの力で握り締める。

 

 天使の呪力によって作り出された槍、何処か西洋的な形をしたソレを天使は地面を踏み締め大きく振り被り───

 

 

「───アァアァァッッ!!!」

 

 

 投擲(なげ)た、天使らしからぬ裂帛の雄叫びと共に放たれたソレは容易く虎杖の身体を追い越し、その直線上に存在した蒼すら貫通してそのまま宿儺の下へと向かい行く。

 

 

「───ハッ」

 

 鼻で笑う、あまりに見慣れたソレに飽きたとでも言うように首を少し傾けるだけで神槍を躱す。

 

 ヒュンと通過していく神槍、未だ輝きを放つソレは宿儺の後方に存在した瓦礫の壁へと突き刺さり、そのまま形を崩して呪力となって霧散する…そして、その直後に消滅した蒼の向こう側から虎杖が遅れてやってくる。

 

 飛び蹴り…種別で言うのならばドロップキックに近しいソレ、一切の減速を行わずに放たれた砲弾が如きソレは構えすらしない宿儺の顔面へと直撃───

 

 

「───なるほど、便利だなこれは」

 

 ふと、言葉が漏れた、ギャリギャリとせめぎ合う空間の衝突へとゆらりと視線を向けた宿儺は良い拾い物をしたとでも言いたげに笑みを浮かべ、それに対して虎杖は思い切り舌打ちした。

 

 不可侵…無下限呪術に於いてはあまりにニュートラルなソレ、先の菫との戦闘の際にも幾度となく破ったはずのソレが、再び虎杖達へと牙を剥く。

 

 不可侵を突破…否、恐らく敢えて突破させたのだろう宿儺は動き出した虎杖の足をパシリと何気無いようにその手に取り───

 

 

「そら、耐えろよ?」

 

 

 後方の地面へと、容赦無く叩きつけた。

 

 地面が割れる、砕け散る、その小さな身体からは想像も付かないような圧倒的な躯力で以って叩きつけられた虎杖は受け身すら取ることを許されず、身体中に存在していたであろう空気を全て吐き出させられる。

 

 

「…ふむ、肉体は特段問題無し…となると後は術式か」

 

 グーパーと手を開いては閉じて開いては閉じてを繰り返す宿儺、まるで何ということはないとでも言うように、誰に聞かせるでもなくそう呟き、その横合いから振るわれた天使の刃を悠々と躱した。

 

「───チッ」

 

 舌打ちを一つ、服の袖口からさながらロボットのように剣を出現させていた天使は、そこから更に次から次へと連撃を繰り出していく。

 

 二刀…両手から生やされた刃を縦横無尽に舞い踊るように振るう。

 

 残光が世界を彩る、天使の術式が付与されたそれら刃は当然の如く宿儺の不可侵を消滅させる特性を持ち、当たれば宿儺を傷つけることくらいは平然とする。

 

 ただし、当たればの話ではあるが。

 

 ヒュンヒュンと振るわれる二刀の刃、常人からしてみても一端の術師からしても、ましてや一級からしてみても確かな実力を伴ったソレ…しかし悲しいかな、宿儺はそれを()()()()()()

 

 宿儺は天使を知っている、近接戦に於いて何をするのか、どのように攻撃してくるのか…数度か一度か、天使との戦闘経験を持つ宿儺からしてみればソレはあまりにも分かり易すぎた。

 

 掠りもする、惜しいと思える場面もある…しかし直撃はしない、見切っているというのもあるが単純に天使のスペックが近接向きのソレではないというのもあるのだろう。

 

 だからこそ───

 

 

 

「───つまらん、代われ」

 

 

 

 冷めた声と瞳で、宿儺はそう告げた。

 

 なんてことないように、放たれた斬撃を散歩でもするかのように躱し、そこから流れるような動きで突き刺すような蹴りを天使へと放ち、腹部へと直撃させる。

 

 腹が軋む、いっそ折れた方がマシなのではないかと錯覚させられる程の違和感が腹の奥から生まれ、吐き出されかける何かを半ば無理矢理に天使は飲み込んだ。

 

 近接が得意ではない…そんなことは天使が最も理解している、あの菫でさえそうだったのだから、それはもう仕方が無いことだと割り切ってさえいる。

 

 天使は宿儺にソレを見せ過ぎていた、梯子だけでは無理があると理解してしまっていたが故に作り出された無数の技の全てを、天使は既に千年前の宿儺に見られている。

 

 故に断言しよう、天使では宿儺に勝てない、万が一にも殺すことは出来ない。

 

 故にこそ、天使は苦手なソレを引きずってでも前に出た、決して通じないと分かっているそれを引っ提げてでも前に出た…何故か、大した理由ではない、本当になんてことは無い理由だ。

 

 天使はただ───

 

 

 

 

 

 

───『断』   

 

 

 

 

 

 虎杖という人間が抜ける時間の隙間を、埋めに来ただけなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿儺は、自ら結んだ虎杖との縛りを破っている。

 

 『契闊時の約三分間の間、禪院廻を除く全ての人間を傷付けない』…初期の縛りに変更点を加えたことで生まれたこの縛りを、宿儺は五条菫に自身の指を食わせる際に破ってしまっていた。

 

 自身の指を噛み千切らせる際に打ち込んだ掌底、可能な限りの手加減をした上で放たれたソレが縛りの許容範囲をアッサリと突破してしまっていたのだ。

 

 その為、縛りは不成立となりその瞬間には宿儺の契闊は解除、意識を内側へと引き戻された宿儺には縛りを破った罰が待っているはずだった…が、それよりも早く、宿儺の魂は五条菫の下へと移動していた。

 

 一つの肉体に二つの魂、普通であればここで魂と魂の衝突が起こり、肉体の主導権の取り合いへと移行することになるのだが、運が良いのか悪いのか、五条菫の魂は虎杖の『断』によって深く傷つけられていた。

 

 結果として宿儺は虎杖の身体に閉じ込められることなく五条菫の肉体でアッサリと意識を会得、誰にも邪魔されることの無い自由な肉体を手に入れることとなった…が、そうは問屋が卸さない。

 

 他者間との間で結ばれ、破られた縛り…自身で結び破ったそれら縛りの強制力はそのような逃げを決して許さず、虎杖と宿儺への辻褄合わせを引き起こした。

 

 なんてこと無い当たり前の話、罪には罰を、指切り破ったら針千本、決まり事を破ったのならそれ相応の叱りを受けなければならないという、そんな当たり前…そんな当たり前が、全力で以って宿儺へと罰を浴びせかけた。

 

 

 この戦闘内に於ける術式『御厨子』及び領域展開の使用不可、更にそれに加えて縛りを結んだ対象である虎杖の殺害禁止に更に加えて呪力出力の制限…これが、少なくとも宿儺()()掛けられた縛りによる罰だった。

 

 重いか重くないかで言えば間違い無く重い、生得術式の使用不可と領域の使用不可の罰とはそれほどまでに重く、そして己の敵対者を殺せないというのもまた同様のやりづらさを術者へと要求する、面倒か面倒でないかを言うのであれば確実に面倒な部類に当たる。

 

 

 

 

 …しかし、これでも尚、足りない。

 

 宿儺は五条菫の六眼モドキと無下限呪術を手中に収めた、未だ肉体に慣れていないが故にその出力や手札に限りこそあるが、それでも充分過ぎる程のソレが宿儺にはあった。

 

 だから、それでも尚も足りないと判断した縛りは…既に宿儺との接続を切られたソレへと、恩賞を与えた。

 

 

 即ち…虎杖悠仁へと。

 

 

 

 

 

───『断』

 

 

 

 

 その一撃が、宿儺の頬を掠めた。

 

 展延による不可侵の突破ではない、抵抗感も無くスルリと宿儺の不可侵を突破したソレを宿儺は既に知っている。

 

 防御は実質不可能の絶対切断、範囲を縛ったが故に確実性を増したソレが己の頬を斬り裂いたのだと理解するのに秒と掛からず、だからこそ宿儺は笑みを深める。

 

 鋭く細められた獣が如き眼光、起き上がるのと同時にその一撃を振るった虎杖は、深くドロドロと煮詰めた激情をその目に宿し、歯をギチリと強く鳴らし…唱えた。

 

 

 

───『契闊』

 

 

 それは本能的な行動に近しかった、縛りを破られたことによる本能的な察知、身体の芯から湧き上がるその事象を虎杖は惜しげも無く使い切る。

 

 それは対象『虎杖悠仁』へと向けられた恩賞、今この場限りにて許されたただ一度限りの絶対的な殺人権、それが虎杖ヘと付与される。

 

 その効果は───

 

 

「───殺すっ…!!!」

 

「───やってみろ」

 

 

 

 約三分間…宿儺の契闊同様の時間の間、虎杖悠仁の放つありとあらゆる全ての攻撃が───

 

 

 

 

───『断』と同様の効果を持つ。

 

 

 

 

 

 

 

 





虎杖の契闊

 宿儺同様、約三分間の時間が与えられ、その間に行われる全ての攻撃が全ての『断』と同様の効果を持つ。

 この戦闘に際しての一度限りの手段であり、これ以降虎杖は自身へと契闊を使用することが出来なくなる。

 因みに、この効果は無機物を介した際でも有効であるものとする。 


宿儺の縛りへの罰(説明していない分も含む)
    
① 御厨子及び領域の使用不可

② 虎杖悠仁の殺害禁止
 
③ 呪力出力の制限

④ 五条菫の極ノ番の使用不可

⑤ 黒閃が絶対に発動しない

 尚、この縛りは現在の虎杖及び天使との戦闘時のみを対象とした縛りであり、これが終了するのと同時に宿儺の縛りは解除されるものとする。












 
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