宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 一先ずこれにて一纏め…後は変態とすっくんとメロンパンと三途を書けば終わりや(終わるとは言っていない)
 
 …というか思ったんやけど、このまま行くと乙骨くんの出番が完全に死ぬですがそれは。


上機嫌

 

 

 上機嫌だ…少なくとも、自身の主を見て裏梅はそう感じた。

 

 絶えることのない強者の笑みに真っ直ぐと氷塊へと向けられた瞳、容姿が菫であることが唯一の違和感である自身の主の姿に、裏梅は言葉を吐き出した。

 

「差し出がましい真似を致しました、お許しください」

 

 口から出てくる謝罪の言葉、助けたという感情を持った訳でもなく、ただ主の邪魔者を排除しただけ…しかし、それだけでは片付けられぬような気配がした。

 

 それほどまでに、宿儺の後ろ姿は愉しげだったのだ。

 

 故に突いて出た謝罪の言葉、主の愉しみを邪魔してしまったことに対する言葉、それを宿儺は───

 

 

「───良い、許す」

 

 

 容易く、赦した。

 

 首を手を掛けてコキリコキリと首を鳴らす、静かな空間に骨を鳴らす音だけが空虚に響き渡り、大口を開けて眠そうな顔で欠伸を噛み殺しながら、宿儺は口を開いた。

 

 

「小僧…虎杖は殺していないな?」

 

「はい、一応凍結は弱めておきました、死ぬことはないでしょう」

 

 

 静かな空間に響き渡る僅かな問答、問うた問に対して返された答えに宿儺はならば良いと一言交え、何気無しに印を組んだ。

 

 

「身体を仕上げる、『浴』の用意をしろ」

 

「既に出来ております、宿儺様が宜しいのでしたら直ぐにでも」

 

「…相変わらず、痒い所に手が届く」

 

 

 ありふれた一幕、そう錯覚してしまいそうになる程に安穏とした雰囲気の中で交わされる言葉、主からの称賛の言葉に裏梅は何処かポヤポヤとした雰囲気を醸し出し、当の宿儺は何かを感じ取るように瞳を閉じた。

 

 探す、探す、探す…求めた存在を、求めた存在の呪力をただひたすらに闇雲に、周囲の全てを度外視して宿儺はその存在の気配を探し続けた。

 

 何処にいる、何処に居る、何処に在る…その存在以外の全てを文字通り感覚の中から消し去ってでも、宿儺はその存在を探し───

 

 

「───ケヒッ…!」

 

 

 見つけた、捉えた、万感のご馳走を。

 

 無数の動き回る気配に弾ける呪力、周囲の呪力が一つの気配を囲むように動き回っている光景が脳裏に浮かぶ、囲まれていた気配が一息の間に動き出し、それら囲んでいた呪力を次から次へと消滅させていくイメージを捉えた。

 

 五条菫から引き継いだ呪力を原子レベルで認識する能力を持ち合わせた六眼モドキ、それによって更に広がった宿儺の認識範囲をフルに使用した索敵、そして見つけ出したその気配に宿儺は笑みを隠しもせずに奥面に引き出す。

 

 感じ取るだけで良く分かる、五条菫の瞳がその状況を五感を通して宿儺にソレを教えてくる。

 

 研ぎ澄まされている、渋谷で戦ったあの時よりも更に、深く強く味わい深くなっている、まるで煮詰めた極上の出汁に極上の食材を丁寧に流し込んだかのような味わい深さがそこにはあった。

 

「───ケヒッ…ケヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ…」

 

 涎が垂れる、人目も憚らず声を漏らしながらそれと一緒に大量の涎が口を伝って地面へと落ちていく、無意識的に舌舐めずりをしていることに宿儺は気づいていない。

 

 喰いたい、喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい…欲望に次ぐ欲望、今すぐにでも食って喰って喰らい尽くしたいという本能に、宿儺は思わず従ってしまいそうになる…が、それを宿儺は無理矢理にでも抑え込んだ。

 

 ベチョリと口元にこびり付いた涎を拭う、二の腕へと伝わる気色の悪い感覚も、今では食欲を刺激するだけのスパイスと化していた。

 

 まだだ、まだまだ、今は喰らい時ではないだろうと宿儺は自身を納得させる、この様な状態で勝てるような…喰らえるような相手(ご馳走)ではないだろうと我慢する。

 

 まだだ、まだまだまだ…やるのは、喰らうのは───

 

 

───万全の己を、手に入れてからだ。

 

 

 思わずと言ったように口元を抑え、それでも尚も流れ出す涎と笑みに、宿儺は手元をゴキリゴキリ鳴らし上げ、裏梅はそんな宿儺の姿に相変わらずと言ったように笑みを浮かべた。

 

 どんな形であれ、主が上機嫌なのは良いことであると、そう言いたげに裏梅は笑みを浮かべ…直ぐ様、その表情を不機嫌そうに塗り替えた。

 

 

 瞬間、氷が砕けて飛び散る。

 

 ズガンッという爆砕音、道の行き場にある全てを砕いて突き進んできたそれは、虎杖は身体中に霜焼けを残したまま、獣のような眼光を宿儺へと向けて駆け出してくる。

 

 

「宿儺ァァァアァアァァァッッ!!!!!!!」

 

 

 万雷の咆哮、相も変わらず殺意と憎悪と嫌悪をごちゃ混ぜにしたかのような雄叫びの声、お前の存在を決して認めないとでも言うように吐き出したその声が氷に反響して辺りに響き渡る、それほどまでの声量。

 

 宿儺が顔を顰める、気分の良い所に唐突に響き渡った不快な不協和音、つい先程まで上機嫌気味に見ていた男へと宿儺は不機嫌そうに視線を向け───

 

 

「───うるさい、声を落とせ」

 

 一言呟いた後、予備動作無しの赫をぶつけた。

 

 僅かに動かされた指から発射された赫、予備動作と呼ぶにはあまりにも小さすぎる動作から発射されたソレは虎杖の反応速度を上回り、再び虎杖の身体を氷の壁の中へと叩き込む。

 

 氷の壁を貫通して更に奥へ、その勢いは留まることを知らず、気づけば虎杖の身体は氷の世界を突き抜けていた。

 

 引きずられる、赫が消えて勢いも死に、虎杖の肉体は地面へと擦り付けるように着地し、その勢いのままに引きずられるように後方へと砂埃を上げながら突き進み、停止した。

 

 

「…ッッ…クッソ…!!」

 

 

 息を吐き出して悪態を吐き出し、咄嗟に前に突き出した片腕へと視線をやる。

 

 千切れかけだった、ぷらんぷらんと揺れる千切れて落ちそうな腕、骨の一部は根こそぎ吹き飛び僅かに繋がった肉がギリギリ腕を繋ぎ止めているような状況。

 

 激痛が虎杖の肉体を駆け巡る、片腕を失うという大き過ぎるダメージに声を荒げて喚き散らしたくなるのを堪えながらも、虎杖は咄嗟に立ち上がろうと足を浮かせて…すぐに地面に落ちた。

 

「───ッ!?」

 

 身体が沈む、立ち上がれない、背中に重りを大量に乗せられたかのような感覚が虎杖の肉体へとやってくる。

 

 立ち上がろうと足を動かす、数秒掛けて浮き上がった片足が僅かに震えた後、力無く沈んでいく…そんな光景を前にして、虎杖は悟った。

 

 

───まともに攻撃を食らいすぎたっ…!!

 

 

 先の五条菫から与えられた赫のダメージ、それに加えて後に受けた宿儺からの打撃と今の赫、それら蓄積されたダメージが今ここに来て虎杖の足を引っ張る。

 

 足が震える、ガクガクと悲鳴でもあげるかのように震えて沈んでゆく自身の足、立てと叩いてと一向に収まらない震えを前に虎杖は強く舌を打った。

 

 虎杖は反転術式を扱えない、傷の治癒を行えない虎杖には素早く宿儺の下へと戻る術が存在しない。

 

 つまりは…手詰まりである。

 

 

 トンッ…と小さく、虎杖の背後から足音がした。

 

 振り向く…よりも先に虎杖の肩へと手が添えられる、圧倒的な圧力で以って添え掛けられたその手に、虎杖の動きが止まる。

 

 

「…何のつもりだ?」

 

「クク、そう凄むな虎杖…少しばかり、良い事を教えてやろうと言うだけだ」

 

 動かせない、幾ら力を込めてもピクリとも動かない己の身体に虎杖は早々に振り向くことを諦め、万感の棘を込めて言葉を放ち、それに対して宿儺は愉快そうに言葉を返した。

 

 癪に障る言葉使い、此方を娯楽の道具としか思っていないかのようなその態度に虎杖の顔にビキリッと青筋が浮かび上がる。

 

 普段の虎杖ならばこんなことで反応しないだろう、幾ら言葉の端々から愉悦が滲み出ていようと、言葉の端々から玩具のような扱いを受けていようと、虎杖はそれを気にもしなかっただろう。

 

 しかし…今回に限って言えば相手が悪かった。

 

 相手は宿儺、呪いの王…とかそういうことを抜きにしたとしても、虎杖悠仁という人間が心底忌み嫌った存在、殺せるのならば今すぐにでも殺してやりたいと心底から願った存在。

 

 故に、宿儺の言葉を素直に受け止められる訳もなく───

 

「知るかよいらねぇよ、どっか行け───」

 

「───お前の肉体には既に俺の術式が刻まれている、これからは契闊の縛り抜きでもお前は俺の術式を扱えるわけだ…どんな気分だ虎杖───」

 

 

───俺に近づく気分は?

 

 

 咄嗟に飛び出た拒絶の言葉、殺意を全開に込めて放り出したその言葉の全てを無視して、逆に押し込むように宿儺は言葉を放つ。

 

 笑っている、嗤っている、何が楽しいのか宿儺は嗤っていた…その事実に、虎杖の中にある導火線に火がついた。

 

「───知るか、死ね」

 

 純粋な苛つき、怒りや憎悪と言った感情ではなく何処までも純粋な苛つき、何がしたくて何が面白いのか、それら全てが心から理解出来ないが故に虎杖は苛ついた。

 

 人間として理解出来る気がしない…そんなことを考えながら。

 

 そして、宿儺はそんな虎杖を見て…愉快そうに嗤った。

 

 

「クククっ、最早見る影も無いな」

 

 クツクツと笑声を漏らす、心底愉快そうに声を漏らした宿儺に対して虎杖は蹴り飛ばしてやろうかと一息に呼吸を吸い上げ…瞬間、肩に掛かっていた圧力が、フッと消えた。

 

 殴り掛かる、振り向き様に握り込んだ拳を思い切り振りかぶり、宿儺へと向けて放つ…その真横を、宿儺は悠々と歩いていた。

 

 空を貫く虎杖の拳、空気を裂いて突き進むその一撃の真横を宿儺は散歩でもするかのような足取りで歩き、一言告げた。

 

「それでいい、その激情(呪い)を努々途絶えさはせぬことだ…でなければ───」

 

 

───お前は、ただの塵芥へと成り下がるぞ?

 

 

 消え入るように、溶け込むように虎杖の耳へと入り込んでくるそんな言葉、何処までも自身を馬鹿にしたかのようなその声質に虎杖は反射的に手刀を繰り出し…空振った。

 

 空を切る手刀、誰もいない空間を過ぎ去ったソレ、ブオンッと空気を斬り裂く音だけが響く中で、虎杖は無意識的に歯を思い切り噛み締め…吠えた。

 

 

「───ッッッ…!!!!」

 

 

 

 酷く青褪めた晴天の青空…その下で、呪いの籠もった雄叫びが、ただ虚しく響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





すっくん

 涎ダラダラ、実は三途が迎えに来ててそこに無下限式瞬間移動してた男、早くご馳走が食べたくて仕方が無い。


裏梅さん

 すっくん復活は超嬉しいけど、菫の身体なせいでとても複雑な気持ちになっている、せめて虎杖の身体の方にしてほしかったとか割と本気で思ってる。



 
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