宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 (作者的にも)ちょっとした準備期間、流石にここからいきなり変態と宿儺戦は無理があるのですよ無理が。

 


準備期間 ①

 

 

 トプリッ…と、水滴の垂れる音が響く。

 

 一つの空間に一つの地面、何処とも知れぬ建物の中で濃い黒紫色の液体がさながらプールのように満たされている。

 

 水滴の先にあるのは幾百幾千を超える呪霊の束、斬り刻まれ細切れにされ、一匹一匹が丁寧且つ徹底的に締められ搾り取られた生き地獄とも言える環境の中に在る呪霊の姿。

 

 それを男は…三途と呼ばれた呪詛師は、何処か興味深そうに頬杖を突きながらソレを眺めていた。

 

「質の良い呪霊をくれ…なんて言うから何をするのかと思ったけど…なるほどね、こうするのか」

 

 感服したかのように言葉を吐き出す三途、向けられる視線の先では未だに呪霊が切り刻まれており、中には悲鳴を叫び続ける個体もいる…その個体の核が切り離され、幾千の呪霊同様に吊るされていくその光景を前に、三途はただ笑みを浮かべた。

 

 仮にも手駒であった存在が目の前で裂かれていく、身体を抉られ千切られ切り取られ、内臓を抜き取られグチャリグチャリと刀のような包丁を身体に入れられジタバタと暴れ回った所に氷の釘のような物が突き刺さる。

 

 そんな光景を、三途はジッと眺め続けた、楽しそうに。

 

 そんな端から見れば不気味以外の何者でもない三途の姿に反応したのか、呪霊を捌いていた張本人が…裏梅が、徐ろに口を開き始める。

 

 

「呪霊の提供に関しては感謝している…良くもまぁここまで質の良い呪霊を大量に集めたものだ」

 

 

 純粋な賛辞…当の本人の性格と言動からは考えられない程に何処までも純粋な他者を褒めるような言葉、恐らく何処ぞのメロンパンがその光景を見ようものなら即座に茶化してくるであろう光景を前に、三途は何処か照れくさそうに頬を掻いた。

 

「元は一千万体くらいは居たんだけどね…ちょっと多すぎて嵩張っちゃってさ…だから───」

 

「───使い潰すついでに、蠱毒の真似事をしてみた…と言ったところか?」

 

「まぁ…そうなるのかな?」

 

 ポリポリと頬を掻く、裏梅の言葉に何処か気恥ずかしそうに顔を逸らす三途の姿に裏梅は呆れたようにため息を吐き出しながらも、目の前でビチビチと跳ねる獲物へと自身の包丁を突き刺した。

 

 ドスリと響く生々しい音、丁寧に締めていく過程で消え去っていく呪霊の生の音をニコニコとした笑顔で眺める三途…その二人だけの空間の中で、ただ静かに時間が過ぎていく。

 

 カチリカチリと何処からともなく響いてくる秒針の音、グチャリグチャリと響く音の隙間を縫うようにやってくる穏やかで静かな音…その最中に、それは唐突に起き上がる。

 

 ザバリッと響き渡る水の音、濃い黒紫の奥底から湧き上がるようにして姿を現した人影は、ピチャリピチャリと水滴を垂らしながらも歩き出す。

 

 掻き上げられる長髪、両手で掬い上げるように後方へと投げ出された長い髪が辺りに水滴をばら撒き、その仕草が嫌に色気を感じさせる。

 

 ピタピタと響く足音、衣服を纏うことも無く生まれたままの姿を隠しもせずに、ただただ我が道を行くと言わんばかりに堂々と歩くソレへと、裏梅は敬わしく傅きながら衣服を手渡した。

 

 受け取り、バサリと羽織る…仕草の一つ一つから感じられる一種の畏敬、悠々自適に歩を進める呪いの王は何処か上機嫌そうに三途へと視線を向け…一言告げた。

 

 

「───仕上げだ…用意をしろ、三途」

 

 断定口調で告げられた言葉、断ることも質問することも許さないと言わんばかりの口調で以って告げられたその言葉に、三途はすくりと腰を上げ───

 

 

「───御意に」

 

 一言、滲みませた笑みと共に肯定の言葉を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そっか…宿儺の器になったんだ、アイツ」

 

 

 ただ一言、漠然と呟いた。

 

 何をするでもない、その事実をただゆっくりと受け入れるように…ただ、その事実を確かなものであるのだと認識するかのように、俺はその事実を呟いた。

 

 

 

───五条菫が宿儺の器になった。

 

 

 その言葉を聞いた時、告げられた時…柄でも無いけど、少しだけ呆然とした。

 

 よりにもよってアイツがなるのかとか、なんでアイツがそうなったんだとか、宿儺に無下限は無しだろとか…言いたいことは色々あったけど、そんな中で俺が真っ先に思ったのはそんなことじゃなくて。

 

 ただ漠然と、悠然と、無意識的に…俺はその事実に悲しむことも無ければ喜ぶわけでもなくて、ただただその事実を聞いた時、俺は───

 

 

───じゃあ、終わらせてやらなきゃな。

 

 

 そんなことを、思った。

 

 

 

 

 

 

   

 親友が宿儺の器になった…ソレを聞いて真っ先に出てきた言葉がコレだった…助けるでもなければ何でって疑問でもない、ただアイツを終わらせてやらなきゃって言う義務感みたいなモノが俺の中から溢れてきた。

 

 怪我だらけの皆に久し振りの顔馴染み、傷だらけでボロボロの皆の姿を見て治療してやらなきゃとか、会えて嬉しいだとか…そんな当たり前の感情が彼等に対してはさも当然のように出てきたのに、何故だかアイツ相手には、そんな感情が湧き上がって来なかった。

 

 何故と問うても答えは出ない、自分で吐き出した感情なのにそれが何故なのかが自分でも一切分からなかった。

 

 普通は助けようと思うもんじゃないのか、普通は心配するものじゃないのか、普通は親友が最悪の事態に陥ったことに狼狽えるものなんじゃないのか。

 

 普通は、普通は、普通は、普通は、普通は……そんな考えだけがグルグルと俺の頭の中を巡り続ける、喧しくも俺の中でギャーギャーと騒ぎ続ける。

 

 思わず頭を抱えそうになる、俺はこうも情の薄い人間であっただろうかと、思わず自分にそう問い問い質したくなってくる。

 

 人間としては間違いなく駄目な類の人間だ、生きているか死んでいるかの何方が良いかと言えば間違いなく死んでいた方が良いと…そう言われても可笑しくないのが俺の親友、五条菫という人間だ。

 

 命を何とも思っていない…と言う訳ではないのだ、ただその何ともを思う範囲が極端に狭い上に無駄に行動力があるせいで余計に被害を拡大させては他所から恨みを買う…少なくとも、俺の知る五条菫はそういう人間だし、それを分かった上で俺も菫との関係を続けていた。

 

 放っておいたら本当に被害が拡大した上で悪化するし、それはそれとして何だかんだ一人ぼっちなのが寂しそうで放っておけなかったというのもあったのかもしれない。

 

 何方にせよ、俺は望んでアイツの友達を続けた、アイツが誰を殺そうがどんな問題を起こそうが、自分で付き合い続けると決めたからには最後の最後まで付き合ってやろう…その程度には考えていた。

 

 だから…だから───

 

 

「…どうして……なんだろうなぁ」

 

 

 呟きながら、空を見上げた。

 

 雲一つ無い満天の星空、輝く冬空の向こうではキラキラと星が輝いていて、それが余計に虚しさとかそう言ったモノを俺の内から込み上げさせる。

 

 アイツを終わらせる、それはつまりアイツの人生に今度こそ終止符を打つということ…考えなかった訳じゃない。

 

 何時か…本当に何時の日か、アイツが文字通り取り返しの付かないようなことをしでかしたその時、きっとその役が俺の下へと回ってくるのだろうと、それをしなければならない日が来てしまうのだろうと…そう考えたことがあった。

 

 あくまでもしも、来るかどうかなんて分からない…けど、あの性格だからきっとそうなるんだろうなって思ってて…だから、その時が来たら出来る限り優しくって…そう思ってた。

 

 

 

 

 けど…何か、何かが違う、ぴったりと噛み合ってくれない。

 

 友愛、親愛…出来うる限りの感情で以って送ってやろうと思ってた、お前のことが憎い訳でも嫌いなわけでもないんだぞって…そんな俺なりの愛情で以って、終わらせてやろうって…そう考えてたはずだったのに。

 

 どうして俺は、俺の感情は…こんなにも…こんなにも、冷めきっているのだろう?

 

 

 

 

「───どうした、悩み事か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悩んでいる…少なくとも、その姿を見てそう感じた。

 

 夜空を見上げながら、何処か遠くを見つめている満月のような瞳が、僅かに揺れているように感じた。

 

 禪院廻…天使という術師の知る限り、宿儺と並ぶ最強の術師…それが、うんうんと何やら悩んでいるような様子だった。

 

 必死に何かを堪えるように、何かを受け入れようとするように、自身を納得させようとするように…自分でも分からない何かを必死に探り当てようとするその姿を見て、不思議と頰が緩むのを天使は自覚した。

 

 

───相変わらず…か。

 

 

 

 天使の知る限り、禪院廻という人間は良く悩んでいたように思う。

 

 京の町で大きな被害が出た時、呪霊による被害で仲間が大量に死んでしまった時、止むを得ない理由で呪詛師になってしまった者達を捕縛した時…無数の事柄に無数の理由。

 

 それを知る度に、それを受け止める度に、禪院廻という人間はこうして頭を捻らせながら必死に悩んでいた…その姿を、天使は良く覚えている。

 

 だからこそ───

 

 

 

 

 

『…すまない、華』

 

「はいはい…ちょっとだけですからね?」

 

 

 放っておけないと、そう思ってしまうのだ。

 

 

 

 

 宿主である華に一言告げて、天使は肉体の主導権を手に入れる。

 

 指先の感覚を確かめるように伸ばして曲げてを繰り返し、バサリバサリと背後の翼を緩やかに動かし、その全てを問題無しと判断するが否や、天使はコツリと足を踏み出し───

 

 

「───どうした、悩み事か?」

 

 

 今尚も、普通の人間と同様に悩み続ける千年前の戦友へと、天使は声を掛けるのであった。

 

 

 





天使

 最強なのに何か無茶苦茶人間らしく悩んでるし、何なら性格もマトモ過ぎるせいで若干放っておけないなって感情を廻に対して抱いている人。

 因みに廻は受肉して来たんじゃなくてシンプルに正規の方法で生まれ変わったんだろうなぁとか思ってる人。

 天使視点の廻=滅茶苦茶強いし頼りになるペンウッド卿。

主人公

 何か久し振りに一人称を書かせたくなった人、久し振りに書くせいでキャラがブレテいやしないか心配で仕方が無い。

 実は菫の事はもう殺すと決めている、決めてはいるけどそれはそれとして殺したくないって感情もあるから内心で言い訳しながら殺さない理由を探してる…でも殺す。

 多分、殺す時は笑ってると思ってる中で無茶苦茶に無表情で殺しに来る。


 


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