宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 今回の話は滅茶苦茶に滅茶苦茶を重ねがけした…というか天使の過去が分からないのが全部悪い。


準備期間 ②

 

 

 コツリコツリと足音が響く、純白に輝く羽を揺らして天使は廻の隣へとやってきた。

 

 何を言うでもなく、最初の一言以外は無言のままでただ靴音を鳴らして天使は廻の隣にまでを歩を進めて、同じように空を見上げ…その口を開いた。

 

「…五条菫のことか? 悩んでいるのは」

 

 流すように視線を向ける、優しげな笑みを浮かべながら告げられたその問い掛けに廻は一言、まぁ…とだけ応え、天使はそんな廻の姿にクツクツと笑みを溢しながらやはりなと呟いた。

 

「相変わらずだな…私達の中で君が一番強かった癖に、そういったことで一番悩むのは何時も君だった」

 

 懐かしむように、思い出に浸るように、目元を細めて夢でも見ているかのような瞳をしながら天使はゆらりと廻から視線を外し…ふと、言葉を吐き出した。

 

 

「…殺したくないんだろう? 五条菫のことを」

 

「…まぁ…そうですね」

 

 僅かな応酬、明確な感情の籠もったその言葉に天使はクスリと再び笑みを溢し、仕方の無いモノを見るかのような瞳を廻へと向けた。

 

「そうだろうな…君は、一度懐に入れてしまえば基本的に情深いからね、そうなってしまうのも分かるさ」

 

 クスリクスリと笑みを浮かべる、まるで祖母が孫の可愛い所を語る時のような、そんな雰囲気を醸し出しながら笑みを浮かべる天使に廻は何処か呆れたような表情を浮かべた。

 

 

───相変わらずだな、この人も。

 

 

 先程までのシリアスな思考は何処へやら、未だに普段の雰囲気からは想像も出来ない程に二ヘラァッと笑みを浮かべている天使の姿に廻は思わずと言ったように内心独り言を漏らした。

 

 気に入った相手、或いは尊敬している人間のことを語る時に限り、天使の雰囲気は厳格なソレから孫自慢をするお婆ちゃんのものへと変わる…それによって、一体どれだけの人間がその長話の餌食になっていったのかを、廻は良く知っていた。

 

 褒め殺しに恥ずか死必須の思い出話、尊敬する人間と気に入った人間の長所を延々と上げ続けた挙げ句に年下でもないのに偉いねぇと頭を撫でてポンポンと叩く謎の母親属性…一体どれだけの人間がバブミ? を感じて昇天してしまったのか、廻もまた把握しきれていない。

 

 時間が経つに連れて少しずつでこそあるが改善されていったその悪癖のようなナニカ、徐々に徐々に現在の性格へと近づいていった天使はしかし、再びその脅威を矢面に晒し出そうとしていた。

 

 

「覚えているかな、君が私との任務帰りに子供を拾って来た時のこと…あの時の周りの表情は格別だった、みんな君が子供を作ったどうたらと騒いでいたからね、特にあの菫が泣き出した時は思わず笑ってしまいそうになる程の───」

 

 

 嬉々として思い出話を開始した天使、そこには虎杖達へと見せていた毅然とした気配は何処にも無く、あるのは戦友との思い出話に華を咲かせようとする一人の人間の姿だけ。

 

 そんな天使の姿に廻は内心でため息を吐き出しながら、徐々にヒートアップしていく天使の思い出話に仕方が無いとでも言うように、言葉を返し始めた。

 

 

 一先ず、菫に関しては宿儺から引き剥がしてから考えよう…そんなことを思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何を…してるんだい……君達」

 

 目の前に広がるその光景を前に、羂索は何処か呆然としたようにそう言葉を溢した。

 

 眼前に広がる光景…ズズッと音を立てながら抹茶を口に運ぶ裏梅にその視線の先で文字通り滝のように汗を垂れ流して地面に寝転がっている三途の姿…そして───

 

「───ケヒッ……なるほどな、こうなるのか」

 

 指を開いては閉じて開いては閉じてを繰り返す、白髪が印象的な()の姿が、羂索の視界の中に映り込み…そこから感じ取れた気配に、羂索は愕然とした。

 

 

「…宿儺……かい?」

 

 絞り出すように放り出された疑問の言葉、ほんの僅かな呟きとも取れるような静かな呟きとして吐き出されたソレに男は…宿儺は正に今気が付いたとでも言うように羂索へと視線を向け…嗤った。

 

 

 

 全体的な印象は、虎杖に降霊していた際の宿儺に近い。

 

 虎杖同様の背丈に鍛えられた肉体、割れた腹筋に靭やか且つ強靭そうな手足に掻き上げられた白い髪、身体中に刻まれた入れ墨がその存在が宿儺であると言う説得力を更に補強しているようにも感じられた。

 

 鈍く輝く菫色の瞳に髪の先端が菫色に染まった白い髪…所々に五条菫の要素を残しつつも、そこに存在するのは宿儺であるとという事実に、羂索は言葉を忘れて愕然とした。

 

 有り得ない事実がそこにある、本来喜ぶべき想定外がそこにあるというのに羂索はその事実に喜ぶことも頭を抱えることも出来なかった。

 

 何をどうした? 一体全体何をどうしてそうなった?

 

 完全に受肉したという訳では無いのは分かる、ならばどうやってその姿を手に入れたのかと思考を回す羂索…その耳へと、口から掠れ出したかなような呻き声が届いた。

 

 

「…ゴ…ゴハン……お、お水…ちょうだい」

 

 

 ぷるぷると震えるように…というより実際に死にかけの老人のように声を喉の奥から精一杯吐き出しながらもぷるぷると身体を震わせた三途、手を伸ばして食事と水を要求するその姿は見る人間によっては一種のゾンビか何かと勘違いしてしまいそうな迫力が存在していた。

 

 しかし、そんな迫力も雰囲気も知ったことかと言わんばかりに羂索は三途の襟首を掴んで無理矢理立たせ、その顔に満面の笑顔を貼り付けた。

 

「何を、どうしたんだい? 三途?」

 

 誰がどう見ようと満面の笑みと判断するであろう表情、しかしそこから発せられる気配は何処か刺々しく、突き刺すような気配を醸し出しながら羂索は三途へと問いかけた…何をどうした結果、こうなっているのかと。

 

 胸ぐらをあらん限りの力で掴み取る、ギリギリ締め上げられる胸倉にパンパンと身体を叩きながら苦しむ三途、その様子を裏梅はズズズッと音を立てながら抹茶を飲みながら静観していた。

 

 触らぬ神…ならぬ変態に祟り無しとでも言うように両名を見つめる裏梅、その真横に面白がったような表情をした宿儺が座り込んだ、裏梅の雰囲気が上機嫌なものと化した。

 

 ギリギリ、ギリギリと三途の胸倉を絞め出す羂索、そしてその苦しみから逃れようとジタバタと手足を動かす三途の姿に宿儺は漫才でも見たかのように大笑いし、裏梅はクスクスと小さく笑い声を漏らした。

 

 普段は見れない羂索が本気で焦燥する姿、普段とは勝手の違うその姿に両者は愉快そうに見物し、そんな二名の要すなぞ知ったことかと言わんばかりに羂索は三途の首を絞め上げ…そんな中で、三途は呻きながらも問われたソレへと応えを返した。

 

 

「…()()…を……使った…んだよ」

 

「───は?」

 

 ドスの効いた声、あまりにも普段から掛け離れた本気の苛立ちの声、それと同時に僅かに緩んだ胸元の力にゴホゴホっと息を必死に吸い出し、それに合わせて更に言葉を吐き出した。

 

 

「…無為……転変で…五条菫の魂だけを、宿儺から引き剥がしたんだ…だから術式も目もそのままなんだよ…というか、いい加減に離してよ苦しいって」

 

 掠れさせたような声、確かに感じさせる疲労感と空腹感を必死に抑え込みながら放たれたその言葉に羂索は思わずと言ったように掴み取っていた手を離した。

 

 ドチャリと尻餅をつく三途、未だに流れ出る滝のような汗を腕で拭いながらく〜っと鳴り響く腹の音…しかし、それを無視して羂索はどういうことだと三途へと口を開く。

 

 

「真人は渋谷で君が使い潰したはずだ、死滅回遊を成立させる為に、私の目の前でそうしたはずで───」

 

「確かに使い潰したよ、()()()()()()()()()…僕が宿儺に使ったのは───」

 

 

───千年前…平安の頃に居た真人だ。

 

 

 告げられた応え、お腹空いたと何処か能天気な声を出した三途の姿を羂索は理解出来ない、信じられないものを見るかのような瞳で射抜いた。

 

 ダクダクと地面へと流れ落ちる汗の大群、ゴクリと飲み干される唾とぐ〜っと鳴り響く空腹を知らせる音が周囲に響く、齎された応えに羂索の思考は停止と回転を繰り返し、まるで五条悟の領域でも食らったかのようにその動きを止めた。

 

 千年前の真人…確かに居たのかもしれない、何せ真人は人が人を呪った末に産まれた呪霊であり、人は何時如何なる世も互いを呪い、互いに呪われながらも生を遂行してきた。

 

 人間の本質は千年前の時から片時も変わっていない…ならば、『人』の呪霊たる真人が存在していたとしても別段可笑しくは無いく…故にこそ、羂索の脳はバグった。

 

「───何故、言わなかった?」

 

「自分の切り札をおいそれと教える術師が居ないことくらい分かってるでしょ? …まぁ、さっき使い潰しちゃったから、もう使えないんだけどさ」

 

 流石にキツかったなぁっと、まるで冷蔵庫の中の醤油が切れたとでも言うように軽い調子で告げられたその言葉に羂索の思考は直ぐ様、別の方向へと飛躍する。

 

 平安時代に存在した言わば千年前の真人を使用して五条菫の魂を宿儺から引き剥がした…そこは良い、認めよう。

 

 しかし、ならば、だと言うのならば───

 

 

「───五条菫の魂は…その残骸は、今何処にある?」

 

 

 告げられる問い掛け、なまじトラウマであるが故にその所在を確かめないことには羂索の安寧は無く、故に羂索から飛び出たその言葉は当たり前のソレであり…だからこそ───

 

 

「───えっ? さっき宿儺が腹の足しにって食べたけど?」

 

 

 その言葉が耳に届いたその瞬間、羂索は三途の顔面を全力で殴り飛ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『五条菫』  死亡

 

 

 

 

 





天使

 思い出長話…に見せかけたフォローを実行した人。

 廻が悩む姿を何度も見ているので、悩み=答えは出てるけど心が納得できていない…ということを理解しているので、そこら辺を取り除こうとした人。

 迷いを取り除くというより、その雰囲気をマイルドにすることに専念していた為、今回の話は大概わざと。


三途

 千年前に羂索に察知されることなく『人の呪霊』を手に入れていた呪詛師…実は千年前の大地と森と海の呪霊も居たりする。

 真人を使用し、宿儺からの菫の魂を引き剥がすという大役を任され、それをほぼ一日掛けた上で成し遂げた男、因みに体力使いすぎて死にかけたし、真人は菫の抵抗が原因で破壊された。


羂索

 宿儺が乗っ取っていたはずのトラウマの姿が変わっていたことで思い切り錯乱していた男、普段は見せない狼狽えぶりを見せた為に周囲からそんなに菫がトラウマだったんだなと理解されてしまった男。

 魂の残骸を燃やそうとしたら宿儺に喰われたと聞いてマジギレしたし、殴り飛ばした後にマウント取ってひたすらに殴り続けた。

 菫がマジでトラウマ。



宿儺

 身体に刻まれた菫の術式と瞳はそのままなので問題無く術式使用可能、因みに菫の魂の残骸を食った理由はただの嫌がらせ。


菫さん

 マジで死んだ、復活無し。





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