宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 なんでこんな話書いたんだろうと思える程度には振り切ったんじゃないかと思える話…作者の個人的なイメージは正直コレだっただけとも言える。


変態は何年経っても変態だから変態と呼ばれる

 

 

 その姿を視認したその瞬間、(よろず)と呼ばれた女の心中は歓喜の感情に満たされた。

 

 見覚えのある気配に嗅ぎ覚えのある匂い、感じ取れる呪力はその存在の強大さをこれでもかと雄弁に語り上げ、同時にそこから感じられる一抹の切なさからは程よい母性を万の中から捻出させる。

 

 何処ともしれない建物の中、仙台結界…平安風に言うのならば会津の敷地内、その近場とも言えるその場にて、万はその存在を認識した。

 

 雄弁に堂々と王の如く歩を進める一人の男の姿、白い髪を揺らして鈍く輝く菫色の瞳を此方へと向けるその男の姿に、万は下腹部に熱が溜まるのを感じた。

 

 興奮に次ぐ興奮、その存在に認識されその存在がオノレを目指してやってきている…その事実に万は一種の発情期と同等の状態へと到達し、更に同時に自身の内から燃えるように湧き上がるその感情を前面へと押し出した。

 

 そして、人はその感情を───

 

 

「あぁぁぁぁぁ宿儺ぁぁぁぁァァァァッッッ!!!!」

 

 

 愛…または、恋情と呼んだ。

 

 

 

 叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ…その名を呼びながら万は自身の内に在る愛という愛の感情を全力で表に捻出し、隠すこともなく男の下へと…宿儺の下へと突撃を開始した。

 

 約千年ぶりの邂逅…普段の…正確に言えば原典の万であればこんな醜態を晒すことは……まぁ、あったのかもしれないが、それでもここまでのソレを晒すことはまず無かったことであろう。

 

 しかし…五条菫の存在が万という存在の一部を変えてしまった。

 

 想い人との別離、自身が殺した訳でもなければ相手に殺された末にというわけでもなく、自身が看取った訳でもなければ看取られた訳でも無い。

 

 別の人間に殺された、その血に触れその身体に触れその生命に触れて、自身が触れることの叶わなかったソレに終始触れ続け、自身の知らない表情を引き出し挙げ句の果てには看取ることすら叶わなかった…そんな女の存在を万は知ってしまっていた。

 

 故にこそ…万の気休め程度には存在していたブレーキはいとも容易く壊れた。

 

 

「宿儺ぁぁぁぁぁっ!! 結婚しましょう今すぐにぃぃっっ!!!!」

 

 

 愛を叫ぶ、術式を使用して生み出した液体金属を流動させ、そのまま物語上のスライムか何かのようにうねりながら宿儺へと襲い掛からせる。

 

 それに対して宿儺は何もしない、愛を叫びながら殺意の塊のような攻撃を仕掛けてきた万の姿を何処かゲンナリとしたような表情で見据えながらも、宿儺はその場から動くどころか下げた手を動かそうともしない。

 

 液体金属が降り注ぐ、流動し蠢き何故だかハートの形に弧を描きながら宿儺へと降り注ぐ殺意の塊、そのまま喰らえば並大抵の人間であればミンチと化してしまうソレは、しかし宿儺へと直撃することは無かった。

 

 停止していた…眼前に迫った液体金属の魔の手は宿儺へと触れことすらなく、宿儺の目と鼻の先にて停止していた。

 

 何をするでもなく停止した液体金属、その事実に宿儺へと突撃を開始していた万は眉を動かす…が、そんな事実は知らぬと言わんばかりにその動きを停止させることをせず、寧ろその速度を上げて宿儺へと飛びかかった。

 

 両手両足を大きく広げると同時に折り曲げ、更に飛びかかるのと同時にスポーンッと擬音が付きそうなレベルの早業で服を脱ぎ捨て全裸となり、そのまま重量に身を任せて宿儺の下へと落下していく。

 

「───I!!」

 

 何やら叫ぶ。

 

「───LOVE!!!」

 

 愛を叫ぶ、全裸の状態で折り曲げた両手を宿儺へと突き出しながら万が迫る、その瞳をハートの形に煌めかせながらやってくる万の姿に、宿儺は何処かドン引きしたような形相で向かってくる万を見据えていた。

 

 

「───YOUゥゥッッ!!!!!!!」

 

 放たれた言葉は英単語のI LOVE YOU…直訳して私は貴方を愛しています…言ってしまえば典型的な告白文を全力全開で叫び散らしながらやってきた万は、そのまま唇を尖らせながら宿儺へと迫り───

 

 

「───グェェェッ!!!?」

 

 

 突如として出現した、氷の壁にぶつかった。

 

 あまりに唐突に地面からせり出した氷の壁、まるで宿儺を守るように出現したその氷壁に、万は速度を落とすことなく激突した。

 

 ビターンッと響き渡る激突音、ツツツーと滑り落ちていく万の姿を宿儺は変わらずドン引きしたような瞳で見つめていた。

 

「───…申し訳ありません宿儺様、差し出がましい真似を致しました……しかし、流石にアレは見過ごせませぬ」

 

「いや、良い……良くやった、裏梅」

 

 

 傅き、自身の行動に対する謝罪を口にする裏梅に対して、宿儺は頭痛を堪えるように瞳を閉じてソレを許し、寧ろ良くやってくれたと言わんばかりに若干の賞賛を込めた言葉を裏梅へと放った…のと同時に、氷壁が砕きながら人影が…万が飛び出してくる。

 

「宿儺ァァァァッッ!!!」

 

 氷の壁なぞ何のその、この愛を止められぬ者などこの世におらぬと言わんばかりの勢いで壁を砕いて現れた万、その瞳は想い人たる宿儺ただ一人へと向けられており、その隣に居るはずの裏梅には目もくれない。

 

 迸る熱いパトスとでも言うのだろうか、内から溢れ出る本能に付き従うように突き進む万の姿に裏梅は不機嫌そうな表情を隠しもせず前面に押し出し、それと同時に盛大に舌打ちを打った。

 

 汚物を見るような目とでも言うべきだろうか、それこそ道端のゴキブリの死骸を見るかのような瞳で万を捉えた裏梅は最大出力の霜凪を放とうと構え、それを宿儺に手で制される。

 

 やっても無駄だ、どうせ直ぐに向かってくる…そんな副音声が聞こえてくる程に呆れたような表情をした宿儺は、これまた呆れたようにため息を吐き出した。

 

 あの呪いの王とは思えぬ仕草、吐き出したため息が氷壁に反応して空に浮かぶ雲のようにゆらりゆらりと宙を舞う…そんな何処か疲れたような雰囲気を醸し出した宿儺の下へと空気を読まない暴走恋愛特急列車がやってくる。

 

 瞳をハートマークに染めながら、思考内に至る全てを桃色で塗り潰した平安のストーカー女は呆れたように自身を見据える想い人の顔を脳内フォルダに百枚単位で保存しながらも突っ込み、そのままその唇を奪おうと手を伸ばして…停止した。

 

「───あら?」

 

 キョトンしたような声を出して、キョトンしたように首を傾げる。

 

 虚空にて停止した自身の腕、幾ら押しても一向に進んでくれない自身の腕を疑問を隠さずに見つめる万…そんな万の顔面に、宿儺の張り手が突き刺さる。

 

 パシィンっと響き渡る高い音、呪いの王から放たれた張り手は万の横面に容赦無く突き刺さり、ダメージよりも大きい痛みを万へと与えながらその肉体を後方へと吹き飛ばす。

 

 錐揉みに回転しながら飛んでいく万の身体、地面に接してなおも止まらない勢いのままに土煙をあげて勢いに引き摺られていき、ある程度の距離まで突き進んだ後、万の身体は停止した。

 

 パタリと足が地面に落ちる、ピクリとも動かない万の身体に裏梅は徐ろに作り出した氷の石を無造作に万へと投げつける。

 

 直撃する、ゴツンッと音を鳴らして倒れた万の頭部へと直撃した氷石は頭部へと直撃した影響で明後日の方向へと飛んでいき、そこから遅れるように万の頭部から血が流れ出した。

 

 ピチャリと地面へと流れ落ちていく血液、氷石の当たった部位から流れる大量の赤に裏梅は何をするでもなく再び氷石を生成、トドメを刺してやろうと言わんばかりにピッチングフォームを取り、そこから大きく振りかぶって石を万の頭へと投げつけた。

 

 剛速球、回転を掛けて投擲された氷石は寸分違わず万の頭部目掛けて突き進んでいく、このまま行けばまず外れることはないだろうと見る者が見ればそう予測する程に正確なその球は、唐突にムクリと起き上がった万によってその狙いは外れる。

 

 突破的に起き上がった身体、身体を動かしたことで狙っていた場所が別の部位へと置き換わる。

 

 直撃部位は腹部、突き進んだ氷球が万の丸出しの腹部を貫いてやろうと言わんばかりの猛スピードで接近し、その腹に風穴を開けてやるという裏梅の殺意を代弁するかのように寸分違わず腸の集中している部位へと向かっていく。

 

 自身へと向かってくる豪速球の何か…頭部からやってくる痛みの箇所に手を置いて確かめている万の視界に唐突に映り込んだソレに万は寝ぼけ眼のように目元を擦り…パシリと、やってきた豪速球を何気無く受け止めた。

 

 受け止めて尚も手の中で回転を止めない氷の球、それを見るだけでどれだけの回転を掛けた上で投げたのが分かるレベルの異常、場合によらずとも呪力強化無しでも常人ならば容易く死ぬ程の速度と回転が掛けられたその球を、万は何処かぼんやりとした様子で眺め───

 

「───返すわよ、小姑」

 

 投げ返す、無造作に自然にぼんやりとした調子で腕を振りかぶって手に持った球を投げつける。

 

 速くはない、呪力強化も無ければ術式を使用した訳でも無い、ただ普通に投げただけの球、本当に言葉通りの意味でただ返す為だけに投げられた球。

 

 頭にぶつけられた事に対する恨みは無し、宿儺へと向けていた感情がそのまま凍りついたのではないかと錯覚してしまいそうな程に興味の無さそうな声色で万はその球を裏梅へと投げつける。

 

 

「───誰が小姑だ、変態が」

 

 そんな裏梅の言葉と共に、球が溶け落ちる。

 

 術式を解除、それによって溶け落ちた氷の球が水へと変化する、投げようと振りかぶった腕の先から抜けていく水の感覚に万はパチクリと目を瞬かせた後に視線を動かし…改めて、その視線を宿儺へと移した。

 

「───結婚しましょ、宿儺」

 

「───寝言は寝て言え、痴れ者が」

 

 

 改めて告げられた愛の告白、それに対する呪いの王の返答には、やはりと言うべきか、ムードもへったくれも存在しなかった。

 

 

 

 

 







 菫が想いも何も告げられずに別離したことを知ったせいで元々壊れていたブレーキが更に壊れてしまった人、なんかルパンダイブ(仮)をするようになった。

 
宿儺

 変態がやってきた…だけじゃなくて何か変態度が上がってる事実にドン引きした。


裏梅

 …ころす。


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