宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 元にしたネタがネタだからこんくらいはやりなきゃいけないなとか思ってやった、元ネタが好きなだけにやりたくて仕方がなかったんや、反省なんてしない。


『獅子王』

 

 

 吠える、獣の雄叫びがそこら一帯に響き渡り、それが建物のガラスを微かに揺らす。

 

 重厚な圧力、確かな威風を感じさせるその音に周囲の動物は怯えを見せて逃げ去り、その気配を察知した呪霊はその場から直ぐ様逃げ出そうと動き出し…次の瞬間には、その肉体を粉砕されていた。

 

 やってきた人型の物体、白い肉に包まれたソレはビルを突っ切って呪霊の群れへと突っ込み、その質量のままに呪霊を圧殺していく。

 

 地面を砕き、そのまま流れるように引き摺られるように勢いを止めずに突き進み、建物の壁へガツンと音を鳴らしてようやく止まったソレは…万は、震える右手で口元を拭いながらペッと口から血を吐き出し…次の瞬間、馬鹿みたいな速度で突っ込んできた獅子王の突進を紙一重で躱す。

 

 飛び跳ねその場から移動した万の直ぐ後に勢い良く突っ込んできた獅子王、建物の壁に激突するや否やそのまま猛進し、建物を貫通してはその柱を崩して建物を倒壊させるその姿に、万は思わずと言ったように笑みを溢した。

 

 

「───とんだ、怪物」

 

 悪態を吐き出す、笑みと共に吐き出されたその言葉に込められているのはほんの少しの呆れと諦めの感情と、そんな理不尽相手にどう勝とうかとほくそ笑む術師としての感情…そして、愛した者を持つ者としての女の意地。

 

 こいつを倒さなければあの人の視界に映らないと言う自覚、ただ一人の存在しか映していないだろうあの人の…宿儺の視界に入る為には、最低でも目の前の存在を超えなければならないという自覚が万にはあった……故にこそ───

 

 

「───こっちよバーカッ!!」

 

 呼ぶ、わざと自身の居場所を伝える、私はここにいるのだと馬鹿正直に宣言してみせる。

 

 咆哮が鳴り響く、声に反応したのかそれとも別の理由なのか、大きく迸った紫電に万は大量の冷や汗を流しながらもその顔に狂気を滲ませた笑みを浮かべた。

 

 馬鹿なことをしている自覚はある、わざわざ呼ばずともこちらを見失ったあの怪物へと自身の持ち得る限りの火力と最善手を打ち続ければ良い。

 

 それをしても尚、ギリギリよりも遥かに低いその勝率…しかし万は、それでは満足出来なかった、それでは駄目だとその最善を投げ捨てた。

 

 それでは彼は自分を見ない、興味を持ったとしても直ぐにそれは向こうへと戻る…それでは駄目なのだ、それではいけないのだと万は歯をキツく食いしばる。

 

 釘付けだ、やるなら彼の視線を釘付けにしたい、自分へと明確な興味と興奮を向けさせたい、自分にだけその視線を向けさせたい。

 

 その為には、それを行う為には自身が、正真正銘真正面からあの式神を打倒するしか無いのだと、万は直感していた。

 

 殺意の視線、無数の眼光が自身を睨みつけそこからその殺意の高さを表すかのように紫電が飛び散る、荒く吐き出される吐息は正しく獲物を前にした獣そのもので、それに隠しきれない恐怖を滲ませながらも、万は嗤った。

 

 

「───ッッ!!!!!」

 

 

 咆哮と共に、突撃を開始する。

 

 四足で突っ込んでくる獅子王、万からしてみれば埒外の速度とも言えるソレを、しかし万はそれをひらりと躱す。

 

 獣故の靭やかで強靭な肉体、獣故の鋭い野生の直感に加えて獣特有の不規則な動き、並大抵の術師であればその動きを予測するどころか視認することすら出来ずに終わってしまう野生の権化…しかし、だからこそ万は獅子王を相手に立ち回ることを許された。

 

 自身の術式へ苦悩していた万が手を出したのは何も虫だけでは無い、その過程に於いて万は野生の獣に対してもその手を伸ばしていた時期が存在する。

 

 獣の肉体、野生の世界によって進化し研ぎ澄まされたその力、一時期はそれこそが自身の苦悩を払拭するのではないかと万は自身の出来うる限りに獣という生物を調べに調べた。

 

 行動を観察し、肉体を解剖し、時にはその脅威を実感する為には呪力無しにて挑みかかり、骨格からエネルギー効率に至るまでの実演と実験をひたすらに繰り返し…それこそ、やれることを可能な限りにやり込んではこれは駄目だと挫折を繰り返し…そうして達した結論は獣の肉体では駄目だという事実。

 

 そこから更に苦悩した上で辿り着いた先が虫の鎧だったわけなのだが…しかし、そこに至るまでに得た知識と経験は決して無駄とはならず、今こうして万の命を救っている。

 

 獣故の特性、獣故の無秩序に獣故の動作…獣を調べていた万だからこそ、野生の獣という分類を特に前面に押し出した獅子王という存在へと対抗することが出来ている。

 

 

 

 振るわれる拳、構えもへったくれも無い命を刈り取るその一撃を頬に掠らせながらも万は躱し、その隙間を縫って鋭い針のような形状へと変化させた腕の一部を獅子王へと突き刺す。

 

 さくりと刺さる万の針、皮に阻まれ大して深く突き刺さっていないその一刺しは、しかし確かに獅子王へと傷を刻んでいた。

 

 僅かな痛みがやってくる、チクリとしたような痛みに獅子王はウザがるように唸り声を上げ、更に無造作に片方の腕で万の身体を潰そうと振り下ろす。

 

 背中の羽をトンボのソレへと変形させる、長期間の飛行には向かないが瞬間速度で言うならば何よりも速いその形態へと羽を変更し、目にも止まらぬ速さで以って獅子王の間合いから距離を取る。

 

 舌打ち、これでは駄目かと針を引っ込めて次のソレを模索する、僅かに滲んだ笑みは思い通りにいかないが故の強がりの笑みなのか、それとも何もかもを試せる頑丈な存在に対しての笑みなのか…恐らく何方でもないだろうその笑みは、次の瞬間には距離を詰めている獅子王によって焦燥のソレへと逆戻りする。

 

 角による突き刺しと自身の質量を生かした撥ね飛ばし、ほんの一瞬でも意識と集中を乱せばそれだけで死にかねないその状況に、しかし万は分かっていたと言わんばかりに獅子王を踏み台にしてソレを躱す。

 

 足をバッタのソレへと変形させた上で躱したソレ、僅かに飛び跳ね突き刺しを潜り抜け、そこから更に獅子王を踏み台にして空中へと躍り出た万は眼前に存在する獅子王を見下ろし…ふとしたかのように、息を吸った。

 

 

 

「───ッッ!?」

 

 

 瞬間、万の肉体は思い出すかのように空気を欲し始めた。

 

 咽る、ゴホッと咳を吐き出し身体を痙攣させる万の肉体、まるで何分間と呼吸をしていなかったかのような肉体の反応に万は目を剥き、そして瞬時にその原因へと思い至った。

 

 

「───酸素を、電気で分解しているのか…!!?」

 

 周囲に漂う異様な匂い、妙に薄い空気に加えてまるで風の吹いていない現在の状況、それらの要素から万は獅子王が電気を使用して周囲の酸素濃度を下げているのだと推測した。

 

 万は電気に関連する事象に詳しい訳ではない、それは万が器にした肉体にも同じことが言える、あくまで万は電気が酸素を分解する事が出来ると言うことしか知らずその状態での風が吹かない現状が大いに危険であるという大雑把なことしか把握出来ていない。

 

 故に万は獅子王がどのような方法で電気分解を引き起こしているのかなぞ知らないし、それがどの程度の範囲にまで及ぶのかも分かっていない…だからこそ、万は無理無く距離を取るという選択を取った。

 

 羽をトンボのソレから通常のソレへと戻し、獅子王とは逆方向の先へと飛び立つ。

 

 電気分解を引き起こしたにしてもその現象には必ず範囲が存在し、その外に出てさえしまえば酸素濃度は通常のソレへと戻るはずだと、万はそう推測していた。

 

 獅子王はどうせ追ってくる、また紫電をバラ撒きながら突撃と拳と突進を繰り返し、再び辺りに電気分解を引き起こす…ならばその前に此方が辿り着き可能な限り万全の態勢を整えようと、万はそう考えた。

 

 …別に、その推測は間違ってはいないのだろう…電気分解を引き起こしたその範囲から離脱さえすればその先にあるのは電気分解が引き起こされていない場所だ、そこでならば万は目一杯空気を吸い込めるし準備も出来る。

 

 

 

 しかし、万は根本的にあることを失念している。

 

 

 万は獅子王を自身の知る獣という生物の枠組みに押し当てることでその動きを予測し、その僅かに存在した肉体に現れる獣らしい予兆すら見抜き出したことでその苛烈な攻勢を何とか凌いでいた。

 

 角による突きは牛…というよりバッファローを、拳による攻撃は猿もといゴリラのソレを想定し、そこから繰り出される瞬発力からは虎のような猫科の生物を想定し…それら要素から埋め立てられた万の予測は偶然か必然か、禪院廻という人間が獅子王へと組み込んだ三体の式神の特徴の大半を当てていた。

 

 それら万の知識と推測が偶然にも合致していたからこそ万は獅子王の攻勢を凌ぎ切ることが出来たし、こうして電気分解のソレに至るまで生き残ることが出来た。

 

 …しかし、万は獅子王を知らない、獅子王と呼ばれた式神を()()()()()()()

 

 確かに獅子王は禪院廻の十種影法術という術式の中でも特に野生の獣としての色が強い、廻自身もその行動と攻撃方法に加えてその加減の出来なさからそういう風に思っていたことも、まぁある。

 

 しかし前提として、禪院廻という人間が獅子王を野生の獣として見たということはただの一度も無い、あくまでそれっぽいなと本人がそう思っただけでそうであると認識したことは一度も無いのだ。

 

 術式と術師の認識は表裏一体、その認識の食い違いは時に伏黒恵のような持ち腐れを生み、時にはとんでもないイレギュラーを引き起こしてしまう。

 

 だからこそ…敢えて言っておこう、獅子王の大前提。

 

 

 獅子王は獣ではなく…『鬼』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獅子王は苛ついていた、自身の周りを飛び交った挙げ句に踏み台にしてくれやがった虫のような存在に。

 

 獅子王は苛ついていた、殴る訳でもなければ大した痛手を与えてくるわけでもなく、ただひたすらにチクチクチクチクと自身の肉体を突き刺す蜂にも満たない蝿のような存在に。

 

 

 攻撃が当たらない、虫のように避けられる。

 

 攻撃が当たらない、蝶かバッタのように飛び跳ね飛び交いひらりひらりと視界の端をチョロチョロとされる。

 

 苛々、イライラ、いらいら、苛々…獅子王は、途方も無く、ムカついていた…そして今、そんな存在が自分に背を向けて飛び立とうとしているのが、獅子王の視界に映り込んだ。

 

 飛び立った、逃げていく、己を散々っぱら馬鹿にするようにあちらこちらへと逃げ回っただけの虫が今度は自分に背を向けて逃げていく、父へと害意を向けた存在が逃げていく……そしてそれが、獅子王の逆鱗に触れた。

 

 

 ただでさえ呼び出されることの少ない己の場、宿儺への出番は白叡や自身の元達に取られて最後の方しか出番が無く、雷を放つ人間への出番は今や大元となった末っ子に取られた。

 

 まともに出番が無い、あっても無茶苦茶に多かった雑魚の相手や脆い赤鎧と森の妖精みたいなのしか無かった。

 

 鬱憤が溜まっていた、雑魚では吐き出せない鬱憤、倒せば父が褒めてくれそうな相手と戦って勝って撫でられたいという欲求…それらが獅子王の中で絡み合った挙げ句に溜まり込んでいた。

 

 そして、そんな状況であからさまに父が嫌がってそうな相手を見つけた獅子王は大層喜び襲い掛かり…そして現在、そんな虫のような獲物に逃げられようとしている。

 

 その事実に、現実に…獅子王はキレた。

 

 

 

 唸る、唸る、唸る、唸る、唸る、唸る…ギチギチと歯を噛み鳴らし怒りを表現するかのように掻き鳴らされる歯軋りの音と低い唸り声、それに呼応するかのようにパチリと飛び散る雷に、変化が訪れる。

 

 元々から紫に輝いていた雷、紫電と呼ぶに相応しい色をしていたソレがより深く、より鮮烈により鮮やかに紫という色をより強く前面へと押し出すように彩られていく。

 

 バチィッと弾ける深い紫電、周囲を帯電するソレへと更に呼応するように獅子王の毛並みへと変化が訪れる。

 

 暗い茶色の毛並み、鵺とはまた違ったその毛並みが湧き上がり、まるで重力に浮かされたかのようにふわりと逆立ちその色を変質させていく。

 

 鮮やか…そう呼ぶにはあまりにも深く強い紫色、若干の白光を放ちながら鮮烈に輝く紫の毛並みから湧き出るように紫電が立ち上り、その姿を別物と錯覚させてしまいそうな程に変化させる。

 

 

 

「───」

 

 

 唸り声と共に吐息を吐き出す、終わった変化に一息付いたかのように吐き出されたその吐息、白く浮き上がったソレには紫電が伴っていた。

 

 深い紫色の毛並み、毛並み一本一本が紫電を帯びて輝くその姿は先の獅子王と同種の存在であるとは思えない程の気配と落ち着きを宿しているようにも感じられた…が、それも束の間のこと、直ぐ様何かを思い出したかのように苛ついたような様相を獅子王は見せた。

 

 何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡す、まるで何処に行ったかなと探していた何かをもう一度探し出そうとするかのような動作、複数の目玉をあちらこちらと動かしコミカルに首を動かし探し…そして、その視線が徐ろに万の姿を捉えた。

 

 視界の先で飛んでいる虫のような獲物、未だに鎧を纏っているソレの姿を捉えた獅子王は…今度は逃さないと言わんばかりの大音量の咆哮を奏で上げる。

 

 

 雄叫び、まるで雷が落ちてきたかのような咆哮、呪力の放出と共に行われたその咆哮が音と共に周囲の建物を倒壊させ、その気配をわざとらしく周囲の存在へと伝えていく。

 

 崩れ落ちていく建物、誰もいない崩壊の海の中で獅子王はただ一匹悠然とそこに在り…ふとしたように、その口を吊り上げた。

 

 

 

 

 獅子王…その鬼の顔が今、面を上げる。

 

 

 

 

 

 

 





獅子王

 紫電を完全に纏う形態、言ってしまえば某ラージャンのアレ。

 毛並みが紫色に変色するし紫電の色も濃くなる、何なら呪力出力も跳ね上がるし何故だが動きのキレも良くなるよ。

 因みに、こんなことが出来る理由は獅子王作った時には廻が何か喰霊のアレとモンハンのアレみたいだなぁとか考えたせい、つまり明確なイメージの中にこいつらが居たのを魔虚羅に覗かれたせい。

 因みに、平安の頃はそもそも魔虚羅が自我持ってなくて廻の頭を覗けないからそんなこと出来ないし、そもそも廻は獅子王のこの形態のことを知らない。

PS

 そもそもこれをやりたいが為にはアレ顔のアレにした、後悔はしていない。




 えっ、何それ知らん。




 ぶっちゃけ術式に苦悩してたんだから虫に出会う前に獣の方面調べててもおかしくなかったよねとか作者が思ってる人、真正面(避けチクチク)

 今回、獅子王を獣を前提として見てしまった為にはとんでもない予想外に振り回されることが確定してしまった人、頑張れ。


呪いの王が

 何あれ知らん、美味そう。





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