宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 何かこっちの方を書きたくなったからこっちの方を書くことにした、完全に気分。


不幸の男

 

 

 それは、間違いなく不幸と呼ぶべきものだった。

 

 瓦礫に頭を打たれながらも、心の底から込み上げてくるトラウマに心を傷つけられながらも、決して諦めることなく逃走を繰り返し、ようやくと言った具合に両者から離れる目処が付いた…そんな折のことだった。

 

 

「───ハハッ……そりゃないでしょ」

 

 乾いたような笑みと共に吐き出される自身の不幸への諦めと呆れの混じった言葉…この時代を生きて幾年、こうも連続して不幸に襲われることが無かっただけに、その言葉の重みはどうしようもない程の説得力を有していた。

 

 自身の目の前を呪霊が泳ぎ、そしてそれがグチャリと豆腐か何かのように叩き潰される。

 

 白く巨大な獣のような異形の両手足、瞳の部位にそびえ立つ鹿の角、下半身の尾尻に存在する生き物のように揺れ動く太い尾。

 

 それがなんであるかを羂索は知っている、それがどういうものであるのかを羂索は知っている、眼前に存在しているコレが一体全体どういう存在であるのかを羂索は嫌という程に分かっている。

 

 

───ガゴンッ…!

 

 

 頭上の法陣が音を立てて廻る、寺の鐘のような重さと静謐さを併せ持ったその音が周囲に響き渡る。

 

 気味の良い音だ、煩いと感じることはあっても煩わしいと、嫌な音であると考える人間はそこまで多くはないだろう…そんな音が、一部の強者を除いた全ての術師にとっての絶望を告げる鐘であると言うのだから、世の中分からないものである。

 

 

 羂索は知っている、その音の意味を。

 

 羂索は知っていた、ソレが廻るということの意味を。

 

 

 

 千年前、宿儺との決戦の際に禪院廻が死を間近にしてようやく使用した切り札、あの宿儺を相手にして尚も使用を躊躇った禪院廻の誇る正真正銘の奥の手。

 

 

───『八握剣異戒神将魔虚羅』

 

 十種の影、その秘奥…十種の術師ならば必ず行き着くこととなる最強の式神。

 

 三分間という僅かな時間でこそあれど、それでもあの宿儺をして殺し切ることが出来なかった羂索にとってのもう一つの最悪、五条悟に並ぶ究極の一。

 

 それが今、羂索の眼前にて立ち塞がっていた。

 

 その事実に、その絶望に、羂索は───

 

「…あぁ───」

 

 

───死んだかな…今回ばかりは。

 

 

 何処かやけくそ気味に、腰の刀を引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 偶然だった。

 

 偶然…そう、偶然だった…それは、紛う事無き偶然だったのだ。

 

 呪霊を叩き潰した魔虚羅は、眼前にて刀を引き抜いた最悪の術師を視界に収め…ふとしたように思考を回した…それ即ち、この男を殺すべきか否かを。

 

 殺すべきなのだろう、考えるまでもなく思考するまでもなく指示すら待たずに殺すべきなのだろう、少なくとも自身の主はそうするだろうという確信が魔虚羅にはあった。

 

 しかし、だがしかしと魔虚羅は考える、本当にそれで良いのだろうかと魔虚羅はその自立と独立を両立させた思考にて、その答えに待ったをかけた。

 

 思考の内に浮かぶのは宿儺の器であった男の姿、主が何かと目に掛けては心配していた一人の少年の姿…虎杖悠仁の姿が魔虚羅の思考の中に浮かび上がる。

 

 眼前の男の血を引いているらしい少年の姿、目の前の男を必ずこの手で殺すと主に語っていた虎杖の姿、同じく最悪の術師の血を引いているらしい男と談笑している二人の姿…それらの記憶が、魔虚羅に眼前の男の殺害を躊躇わせる。

 

 殺すのは簡単だ、恐らく数秒と掛からないと確信出来る…しかし、それをしてしまえばあの少年はどうなってしまうのだろう?

 

 過去に踏ん切りを付けられるだろうか、己を生み出した男への憎しみと怒りの感情にケジメを付けられるだろうか、果たしてその後にこの男の存在を影に感じずにいられるだろうか。

 

 表では納得出来ていたのだとしても心の何処かでは己の手で決着を付けたかったと、己の手で終わらせたかったと、そう感じやしないだろうか…そんな考えが、魔虚羅の思考回路を巡っていく。

 

 別にそう可笑しな話ではない、何故なら魔虚羅とて未だに納得出来ている訳ではないのだから。

 

 叶うことならばあの時に、交流戦の時に出てきた宿儺の首を跳ね飛ばしてやりたかった。

 

 叶うことならば、渋谷での一戦の際にこの手で宿儺の身体をバラバラにしてやりたかった、他の式神になぞ任せず己の手でその身体と命をグチャグチャにしてやりたかった…だけどしなかった、主がそれを望んでくれなかったから。

 

 恨みは消えない…自立した思考とは別に自我を持ったが故に、明確に感情を得たが故にその恨みが消えることは無い、その対象が今尚も生きているのならば尚更だろう。

 

 

 

───復讐するな、そんなことしても何も返ってこない…なんて、知った風に言えないだろ? 俺達はその人じゃないんだからさ。

 

 

 何時か、主が自身の友人にそう言ったことがある…数年前、未だ学生であった時の主が言った言葉、復讐に全てを燃やしている誰かの姿を見て口にしたその言葉を、魔虚羅は明瞭に覚えている。

 

 望みは叶った…主との再会は果たされ、失った時間を今現在進行形で埋め合わせている、望むべく物は文字通り全て手に入れた……そうして幸せを得ても尚、潰えることのない黒い炎。

 

 恨みは消えず、呪いも消えない…この怨嗟(おもい)は決して途絶えることは無い…そして、それはきっと虎杖自身も同じなのだろうと、魔虚羅は拙いながらもそう考えた。

 

 魔虚羅は虎杖の過去を知らない、何をされたのかなぞ当然知らないし分からない、千年経ってもその情緒は何方かと言えば子供に近い魔虚羅には、その恨みがどういった類いのものであるかの判別は付かない。

 

 しかしそれでも、虎杖の抱いた怨嗟も憤怒も、その全てが紛うこと無き本物であると、魔虚羅は判断した。

 

 それ故に、魔虚羅はこれよりの行動の全てを、決断した。

 

 即ち…半殺しである。

 

 

 

 

「───ッ…!!」

 

 

───術式解放『焦眉之赳』

 

 

 術式解放も同時に飛び散る青い炎…術式としての最高性能に辿り着いた者だけが特有の色、それが魔虚羅の視界に映り込む。

  

 冷や汗と脂汗、その両方を瀧のように流しながら羂索は歯を噛み締める、生への希望を捨て去って尚も諦めを知らないその性根に自分自身でも呆れながら、羂索は刀を握り締めた。

 

 殺意…何気無く飛んできた殺意に反応したが故の術式解放だった、あのままでいればどの道死んでいたと確信してしまう程に濃い殺気と気配…あぁ恐ろしいと内心でやけくそ気味に吐き捨てた。

 

 

 既にその精神は死に体のソレ、であるが故に半ば背水の領域に突入している羂索に対して、魔虚羅は何処までも無造作であった。

 

 

 

 実の所、現在の魔虚羅は到底フルスペックとは呼べない状況にあった。

 

 何故か…簡単だ、獅子王が未だに影に帰ってきていないのだ。

 

 廻の式神…正確に言えば、術式を譲渡した後に出現した魔虚羅を除いた十種の式神は、その全てが脱兎の能力によって魔虚羅から分離した個体だ。

 

 脱兎の能力によって分かたれた身体、そこへ破壊による継承によって魔虚羅へと注がれていたはずの力と魂を再び器へと注入することで再び生を受けたのが、現在の十種の式神なのだ。

 

 適応の一部が分離した式神に受け継がれるのは、分離した際にその器の中に僅かながらに魔虚羅の呪力が混じってしまうから、その根本に魔虚羅の存在があるからだ。

 

 獅子王は『鵺』『貫牛』『虎葬』の三体の式神から連なる複合個体、縛りとその他諸々によって強化されたその強さはあの宿儺にさえ通じる。

 

 つまり…その獅子王が、正確に言えばその三体が戻ってこない限り、魔虚羅はフルスペックでの戦闘を行えないし、その能力も制限される。

 

 現在魔虚羅の中に残っているのは『玉犬』『大蛇』『円鹿』『満象』『蝦蟇』『脱兎』の六体、六体分の継承が魔虚羅の内に残っているということになる。

 

 別段問題というわけでもない、そもそも羂索を半殺しにするだけなら例え全ての式神が出払っている状態であろうがどうとでもなるという確信が魔虚羅にはあった…しかし、もしもがある。

 

 何せ術式が術式、あの主の弟が…禪院薫が使用していた術式だ、あの五条菫の身体を術式の拡張のみで斬ってみせた男の術式だ、慎重になり過ぎるということも無い。

 

 ましてや羂索はその肉体に入り込んですらいるのだ、警戒しない訳が無い…それほどまでに、禪院薫という人間は強かったのだから。

 

 青い炎が揺らぐ、何時か共に主の遺体を護る為に戦った、己の隣にあった青い炎の存在に、魔虚羅はふとしたように吐息を吐き出し───

 

 

───ガコン…!

 

 

 その爪を、ジャキリと鳴らした。

 

 

 





メロンパン

 完全に不幸の男と化した最悪の術師…この度、よりにもよって一番出会いたくない存在Bに出会ってしまった男。

 因みに、よしんば魔虚羅に出会わなくても周辺に乙骨と夏油、そして廻と獅子王が丁度良く散らばっていた為、どの道誰かしらに出会って闘うことになっていた男…泣きたい。
  
 因みに、薫程に術式を使いこなせていない。


魔虚羅

 何だかんだ五条のことを心配していた主に代わって勝手に五条の所に向かっていた式神、バッタリで出会したメロンパンのことを半殺しにすることにした。

 自我を得てからは内心では結構考えているタイプ、虎杖の因縁は虎杖自身につけさせてあげようとか考えてる。

 情緒が幼いので、虎杖の本能的な憎悪と自身の抱いている憎しみとの違いが分からないし、区別もついていない。

 因みに、喋れた場合は廻のことをお父ちゃんと呼ぶ。


獅子王

 廻に蹴られた際に遊んでくれると勘違いしてじゃれついている、因みに獅子王のじゃれ付くはアラレちゃん的なプロレスごっこと対して変わらない、被害が大きい。




 無茶苦茶被害出さないように頑張ってる、今の所は優勢。



五条&宿儺

 全力で殺し合ってる、近くに鹿紫雲の姿がある。

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