もう色々と面倒くさくなって全部吹っ飛ばした…反省はしているけど後悔はしていない、もう何でも良いから無茶苦茶やりたくて仕方がないのだから仕方がない。
…今回は自分でも大丈夫かな? とか思うくらいには雑だけど、それでもここまで来たからには頑張ろうと作者は思う…平安編? し…しら……(目逸らし
夜だ。
暗い暗い夜、まだ日だって昇っていないような夜、窓の外を見てみれば未だに月明りが爛々と輝いているのが見えた。
時計を見てみれば、時刻は大凡四時かそこら、通りで暗いはずだと得心しながら、俺はせっせっと身支度を整えて部屋を出た。
ガチャリと扉の開く音が無機質に響く、まだ誰も起きていないのだろうその時間帯の中で響くその音は酷く不気味なように思えた。
宛もなく歩き出す…今日が所謂ところの決戦の日であるからなのか、もう一度寝ようとは欠片も思えなかった。
台所に着く…何気無くお湯を沸かしてコップを取り出し、手慣れた様子で更々と緑茶の粉を入れてその上からお湯を注いでいく。
回転寿司とかに良くある緑茶の粉…あれってそこはかとなく便利だよなぁ…なんてことを考えながら、湯気がゆらゆらと立つ緑茶へと口をつける。
唇にやってくる熱の感覚、緑茶特有の味わいを舌に残しながら喉を通る温かいソレ、12月最後の一日という寒さのピークに近いその季節、ましてや日も出ていないような時間帯ならばその寒さは尚更…だからこそ、余計に身体が温まる感覚が直に伝わってくる。
ハァッと息を吐き出す、吐き出された空気に紛れて熱せられた湯気が口から外へと出ていき、まるで幻か何かのようにゆらりとその姿を消していく。
そんな光景をぼぉっとしながら見つめ、小腹が空いたなぁ…なんてしょうもないことをぼんやりと考えて…ふと、足音が聞こえた。
「…早いな、もう起きてきたのか」
「流石にお前には負けるけどね」
互いに一言二言程度の会話、視線を足音の方向へと向けて相変わらずの親友の姿を俺は目視した。
ワイシャツ姿のだらけた姿、何時もの目隠しではなくサングラスを付けた親友の姿に、俺は緑茶をグビリと飲み干してから、一言言葉を掛けた。
「───悟も飲む?」
何も変わらない…何時も通りだ。
目の前の親友の姿を見て、俺はふとしたようにそう思った。
「───悟も飲む?」
グビリとお茶を飲み干しながら、何処かのんびりとしたような様子で俺へとお茶を進めてくる親友、あと数時間もすればあの宿儺との決戦が始まるって言うのに、その姿からは欠片も緊張を感じられない。
そんな姿に相変わらずと思いながら、一言飲むとだけ告げて、俺は近場のソファーに腰を落ち着けた。
お茶粉を入れる音とお湯を注ぐ音が聞こえる、トポトポと音を立てて器へと注がれていくお湯の音、そのすぐ後に器を持ち上げた音が耳へと届き、ほんの少しの足音と一緒に目の前にコトリとコップが置かれた。
湯気の立つ淹れたての緑茶、ゆらりゆらりと白い煙を上方へと浮かばせながらポチャリと揺れる茶の湯、茶柱が立っているかどうかも確認せずに俺はそれを一口含み、飲み込む。
「…緊張とかしねぇの?」
「何が?」
唐突に、湧き上がる疑問のままに俺は言葉を吐き出し、それに即応と呼ぶべき速度で廻は俺に言葉を返した…そこには緊張のきの字も感じられない、何も変わらない平常運転の廻がそこにはいる。
「宿儺のことだよ…何も感じねぇの?」
コトリとコップを机の上に置いて、俺は真っ直ぐと廻のことを見つめた。
クビリと緑茶を飲み干し、何かを考えるかのようにコップを持ったままその動きを止めている親友に、俺は実質的に問い掛けているのだ…大丈夫なのか? …と。
廻が負けるなんて思ってない…でも、それでも、もしもがあるとは思っている…思わざるを得なかった。
完全体ではないとは言え、俺は宿儺と一度戦った…だから分かった、あの底知れなさが。
完全体云々は関係無い、宿儺って言う存在相手にはそうであろうとなかろうともほんの少しでも気を抜けばそれが命取りになるっていう確信があった、そんな底知れなさが宿儺にはあった。
実際に戦ったからこそ感じる凄みと圧力、それと同出力で襲い掛かってくる不気味さ、あの女の肉体を乗っ取ったことで使えるようになったのだろう俺と同じ無下限呪術に加えて、過去の実情から明らかにされている宿儺の神懸かりな技の冴え。
心配じゃない…なんて、口が裂けても言えなかった。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、廻は徐ろにクスリと笑ったかと思うと、何でもないように口を開いた。
「何も感じないってことはないかな…正直、勝てる勝てないの確率は五分より下だし、向こうは向こうで成長してるだろうし、何よりアイツの使う無下限っていうのがどうにもな…ハッキリ言って厳しいって言うのが現状だと思う」
淡々粛々と告げられる言葉、自分の口から吐き出したとは思えない、さっきの笑みを浮かべていた時とはまるで別人のように他人事か何かのような声色で何処までも淡々と口を動かした廻は、そこから徐ろにけどまぁ…と一言続け───
「───大丈夫だよ…俺、お前以外に負けてやる気は更々無いから」
何処か獣のような瞳を覗かせながら、そう告げた。
…朝日が、昇ろうとしていた。
遥か彼方、地平線の向こう側、大量に存在するビル群の隙間からゆったりと顔を出そうとしている太陽…それをぼんやりと眺めながら、廻は椅子の上に座り込んでいた。
ぼんやりと、何をするでもなくぼーっとした様子で今にも昇りそうな朝日を眺めながら、何でもないように首を鳴らし…ふとしたようにその視線を動かし、口を開いた。
「───よぉ…早いな、お前も」
「───ククッ、貴様程でもないさ」
何時から、そこにいたのだろうか。
廻の視線の先、自身から席三つ分は離れたその先に男は…宿儺はさも当然のようにそこにいた。
椅子に座り込み、ただただジッとその一点を…禪院廻という人間のみを見つめているその姿に、あまりの神出鬼没さに思わずと言ったように廻はため息を吐き出した。
何時から等とは最早問うまい…最初から居たと考える方が楽だと、廻は判断した……何処か菫の登場の仕方に似てるな等と、人によってはとても失礼なことを考えながら。
椅子に座り込む二つの影、暗い空間を僅かに刺した陽の光が微かに照らし、まるでそこに入り込んだかのように存在する二つの影の主達は、互いの関係性からは想像も出来ない程に落ち着いた空間を生成していた。
「…裏梅さんは? 一緒じゃないのか?」
静謐な暗闇の中、口火を切ったのは廻の方だった。
普段必ずその側に佇んでいる白髪おかっぱ頭が特徴的な呪いの王の従者、絶対的な忠義を持ったその存在の不在を確かめるように問うた廻に対して、宿儺はその口角を上に上げながら口を開く。
「裏梅には間引きに行かせた…俺とお前の邪魔をする者達の間引きにな」
そう言いながらケヒヒッと声を漏らした宿儺は、徐ろに椅子から立ち上がり、今にもその姿を現しそうな太陽へと視線を向けながら言葉を発する。
「どんな形であれ、俺と貴様の存在を知ろうと知らなかろうと、俺と貴様の邪魔をする存在を徹底的に間引け…裏梅にはそう伝えた」
コツリコツリと靴音を鳴らす…ガラス張りの向こう側、段々と明るくなっていく夜闇の向こう側をまるで撫でなぞるように手を這わせる。
キュッというガラス特有の音、自身の顔を僅かに映し出すソレに宿儺を笑みを浮かべながら、ふとしたように廻の方向へと身体ごと振り向いた。
笑顔…満面の笑顔だけがそこにはある、明るくなっていく夜闇の向こう側から差し込む光がその姿を照らし、一種の神々しさすら持って廻の視界に映り込んだその光景に、廻はガリガリと頭を掻きながら…ふとしたように口を開いた。
「───…考えることは同じ…か」
呟かれたその言葉、まるで自身と同じことを考えたかのようなその言葉に宿儺はその表情をキョトンとさせる…そんな宿儺を珍しいものを見たとでも言いたげな様子で笑みを浮べた廻は、ネタバラシでもするかのような顔で言葉を紡いだ。
「意味合いは違うだろうけど、俺も雪姫さんに同じようなことを頼んだ……ここに、俺達が居るこの場所に人っ子一人近づけないでくれ…ってさ」
言いながら立ち上がる…ガラリと動いた椅子の音、ゆらりとした様子で立ち上がる廻を宿儺はカメラのピントを合わせるようにジッと見つめた。
瞳から感じる圧、決して目を離さぬと言わんばかりに注がれるその視線…しかしそんなもの何のそのと言わんばかりに廻はガン無視を決め込みながら、その視線を外へと向けた。
「───昇るな、太陽が」
言うが否や、外から明確に光が漏れ出してくる、顔を出し太陽が徐々に徐々に日の光を辺りにばら撒き注ぎ出し、あと少しでもすれば自分達の元までやってくるだろう光を見つめながら、廻は感慨深そうにそう呟いた。
黄金…否、今や琥珀のソレへと転じたその瞳が太陽を見つめる、輝き眩しいソレが暗闇に染まっていた世界を明るい色で包み込んでいく…そんな光景を前に、廻は吐息を一つ吐き出した。
「───朝だぞ、宿儺」
「───あぁ…昇ったな」
廻と宿儺の視線の先、その向こう側で太陽は完全にその姿を現していた。
人間の陽の象徴、自然界に於ける恵みの一つ、一日の始まりを象徴する天の灯り…それが、今ここにその顔を出した。
元旦は…今ここにやって来た。
…そして、その事実に廻は───
「───じゃあ…始めようか」
何事も無いように、そう告げた後…徐ろに宿儺へと何かを投げ飛ばした。
小さく高速で飛来する何かの影、真っ直ぐと己へと向かってくるソレを宿儺は何気無しに受け止め…それが何かを確認することもなく、笑みを浮かべながらソレを口の中に放り込んだ。
分かっているのだ…廻が自身へ、何を投げ渡したのかを。
そんな宿儺の姿を視認するのと同時にコツリコツリと、廻は靴音を鳴らしながら宿儺へとのんびりくらりと近づいていく、まるで散歩にでも行くのではないかと言わんばかりの気軽な足運び…そしてそれに乗るかのように、宿儺もまた同じようにゆらりとした足運びで廻の元へと足を動かした。
コツリコツリ、コツリコツリ…数少なく響く二つの靴音、互いが互いに足を動かし目指す先は、眼前に存在する己の宿敵。
僅かに離れていた距離も残り少なく、あとほんの一歩でも踏み込めば互いの手が直に届くような距離にまで接近した両者。
残りの一歩を踏み込めば、そこは既に間合いの内側、実質的な死地そのものであると言うのに…両者共に、その足取りに微塵も躊躇いは無い。
で、あるが故に……両者は共に、何の躊躇いも無くその間合いへと踏み込んだ。
コツリと響く靴の音、大した音ではないはずなのに何故かその一歩だけが両者には異様に大きな音に聞こえていた…そして、まるでそれに反応するかのように両者は───
「───……ケヒっ」
「───…クフッ…」
小さく、狂気が滲み出したような声を漏らした。
瞬間、廻と宿儺は同時に拳を振り被り…眼前の宿敵へと、その拳を叩きつけた。
衝撃が奔る、拳と拳の衝突により発生した衝撃によって周囲の机や椅子が一気に漫画か何かのように吹き飛び、近場のガラスが一気に砕け散った。
ガシャァンっと大きな音を立てて落ちていくガラスの破片、吹き飛び激突して破損する机や椅子…その僅かな数瞬後に、廻と宿儺の肉体が同時に後方へと弾き飛ばされた。
まるで双極の磁力の衝突、互いに反発し合うかのように吹き飛んだ両者はしかし、吹き飛び地面に激突するが否や数秒と経つのも待たずに再び敵手へと向けて突撃し…その拳を叩き込んだ。
瞬間……両者の居た建物、その一角が…爆ぜた。
後に人外魔境と呼ばれた一つの殺し合い…その幕開けであった。
廻さん
宿儺に乗せられてちょっと声が漏れちゃった人、リベンジマッチで勝つ気満々、お兄ちゃんに色々と貸してもらった上で決戦の場に来てる。
因みに、キチンと他の皆さんには見送ってもらった…けど、作者が面倒くさがったせいでそこら辺は省かれた。
宿儺
内心ワクワクし過ぎて逆に落ち着いてた人、多分これから一気にメッキ(落ち着き的な意味)が剥がれていくし寧ろ剥がしてやりたいと作者は思っているので頑張ろうと思っている。
因みに、黒丸は今手元に無い…けどその内持ってくる。
五条
勝たなかったら殺しにいくと脅しかけた、死んでたら殺せないだろとツッコミを入れられた、そういう意味じゃねぇと思った。