宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 交流戦が終わる前の話、じゅじゅさんぽの祝勝会の少し前の話です、じゅじゅさんぽの方に書こうとしたら思いの外長くて入れられなかった没話とも言う。


サマーオイル、ボコボコにされる

 

 

 『呪霊操術』と呼ばれる術式がある。

 

 呪霊を取り込み操る術式、等級が二つ下の物は調伏無しで強制的に取り込み従えるという使う人間によっては徹底的に強力になる術式…なんでこいつそこまで珍しくないんだろう?

 

 俺も昔の頃に呪霊操術を持った人間に会ったことがある…というかまぁ、俺の部下だったんだが、だからこそ分かるその圧倒的なまでの手数及び数の暴力、こいつが居るか居ないかだけで戦況が本当に変わるレベルだった。

 

 んでまぁ…結局何が言いたいかって───

 

「どうもはじめまして、禪院廻さん」

 

 こんなに有能過ぎる人材を闇堕ちさせて腐らせる暇なんて俺には無いのである。

 

 黒い長髪に変な前髪、耳についた大きなピアスに如何にも人受けしそうな胡散臭い笑顔にモテそうな程に整った顔…うん、間違いない。

 

 夏油傑…後に『最悪の呪詛師』と呼ばれることになる術師、自身のやりたいことと正義の板挟みにあって悩みに悩んで、それら全てを振り切った果てに術師だけの楽園を作ろうとした俺的に悲しき善人…それが、俺の目の前に居た。

 

「…あぁ、初めまして…えっと、君は?」

 

 夏油の挨拶に努めてにこやかに返事を返しながら、俺は夏油へ名前を聞き返した…流石に悟はともかくこいつの名前を俺が知ってるわけにはいかないからな。

 

 そんな俺の言葉に、夏油はあぁすいませんとこれまた胡散臭そうな綺麗な笑顔で右手を俺の前に差し出してくる。

 

「東京校一年の夏油傑です…悟から聞きました、とてもお強いのだとか」

 

 そう言って自己紹介してくる夏油…もといサマーオイルから差し出された手を握り返してこちらこそと返事をする…なんだろう、多分本人的にはただ普通に挨拶してるだけなんだろうけど……凄く胡散臭い。

 

 胡散臭い、どうしようもなく胡散臭い、とにかく胡散臭い…いや、分かっている。こいつにそんな意図は無いし未来ならまだしも今のこいつには誰かを値踏みするとかそういうのは無いのだ…無いはずなんだけど…やっぱり胡散臭い。

 

 俺がジッと見つめていたせいだろうか、キョトンとした目で俺のことを見ているサマーオイルの姿が目に映る。

 

 ………なんでこれがあぁなるの? いや分かってるけどさ、なんでこれがあぁなっちゃうの? やはり単眼猫に人の心は無い(断言)

 

 って、そんなどうでもいいこと考えてる場合じゃないか。

 

 

「それで? その東京校の夏油が俺に何の用?」

 

 単刀直入に夏油にさっさと用を話せと促す…いやごめん、なんか凄く嫌味ったらしい言い方になっちゃったけど、俺さっき帰ってきたばっかでしかも疲れてるの、用件は早めにしてほしいの…というかさっきから後ろにいる魔虚羅が君のことを狙ってる(殺意)ことに気づいてほしい。

 

 そんな俺の言葉にサマーオイルは一言すいませんと一言置くと…先程までの胡散臭そうな顔から一変した真剣な顔で、俺を真っ直ぐと見つめ───

 

「禪院廻さん…一手、御指南願えませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背中に衝撃と痛みが走る。

 

 息が吐き出され、呼吸が苦しい…頬が、腹が、足が、身体中に至る全てがひたすら痛い。

 

 仰向けになった身体に力を入れようとしてもびくともしない…が、それでも指に力が籠もって土を引っ掻く…まだやれる。

 

「大丈夫か? まだやるか?」

 

 頭上から声が響く、言動から馬鹿にされているような感覚に陥るが、その声にはそんな悪意は含まれていない、あるのは純粋にこちらへの配慮と続行の確認だけ。

 

 身体に力が入ってくるようになった、直ぐ様全身に力を入れて立ち上がり、構えを取る。

 

 視界に男が映る…短く切り揃えられた黒髪に此方を見つめる琥珀色の瞳、その瞳は此方を心配そうに見つめている。

 

「大丈夫です…まだやれます」

 

 続行の意思を伝える…私はまだやれると、私はまだ立っていられると眼前の彼にこれでもかと伝える。

 

「そっか…じゃあ続きといこうか」

 

 私の続行の意思を認めた彼は…禪院廻は、何でも無いように軽く構えた…これを見るのはこれで十数度目だ。

 

 

 

 悟から話を聞いた時は、何の冗談かと思った。

 

 禪院廻…悟は何時もその男の話をした、まるで自慢でもするように誇らしげに、嬉しげに、楽しげに。

 

 やれ俺の不可侵をさも当然のように突破してくる、やれ攻撃が当たらない、やれ一度も勝ったことがない…どれも信憑性の薄い話のように感じていた。

 

 心の何処かで有り得ないと思っていた、そんな訳がないと…術式を持たない呪力だけの術師が悟に勝てるわけがないと…そう思っていた。

 

 だけど違った、悟の言葉は最初から最後まで正しかった。

 

 

 術式を使用し、鳥の姿をした呪霊を突撃させる。

 

 最低でも一級相当の呪霊、術式は無いがその突撃力とスピードは並の術師ならば手も足も出ない程のそれを誇る。

 

 しかし───

 

 

「…ニワトリかな?」

 

 呆れた…いや戯けたように一言呟いた禪院廻は、徐ろに虚空に向けて勢い良く拳を放った。

 

 そこに呪霊は居ない、拳は空を切り何者も傷つけることはない…意味など何一つとしてないその一撃は、効力一つ残さない無意味なものとして終わる…はずだった。

 

 しかし、そうはならない。

 

 次の瞬間、禪院廻へと突撃を開始していた鳥の呪霊の頭が、唐突に弾け飛んだ。

 

 脳髄を蒔き散らし、うめき声と悲鳴を上げながら呪霊は墜落し、そのまま痙攣しながら死に絶えた。

 

 それを見据えながら、まただと唇を噛みしめる。

 

 今も、つい先刻にも、同じ光景を見た。

 

 禪院廻が拳を振り抜く度に此方の呪霊が消し飛んでいく、消し飛ばないにしても必ず殺される、タネなんて当然分からない。

 

 …いや、本当は分かっている、分かっているが納得が出来ない。

 

 呪力を拳圧によって飛ばす…なんて馬鹿げたことをやってのけている目の前の存在に対して、文句を垂れずにいられない。

 

「化け物め───」

 

「言ってる場合か?」

 

 懐から声が響き、腹へと響くような痛みが走る。

 

 ガフッと息を吐き出してしまう程の衝撃に思わず膝をつく、今にも吐き出してしまいそうな程の痛みに喉の奥から溢れ出しそうな酸味を抑え込むので精一杯だった。

 

 しかしそんな私のことを向こうは待ちなどしない。

 

 蹴り上げられる、顎から打ち上げられる。

 

 顎下から脳を揺らすように痛みが響いてくる、歯を噛み締めていたお陰で舌を噛むことは無かったが一部の歯にヒビが入ったような感覚がした。

 

 一撃一撃が速い、放たれる全てが等しく重い…強い、そう認識せざるを得なかった。

 

 そして嫌でも理解してしまう、手加減されていると。

 

 

「ほら、我慢しろよ」

 

 言葉が耳に届く、我慢しろと父親が子供に言い聞かせるような声音で禪院廻は私へと語りかけていた。

 

 瞬間、腹から突き抜けるような痛みが身体中に響いた。

 

 先程の腹部への打撃など子供の一撃と思えないような、そんな重たく鋭い衝撃が、私の身体を駆け抜けた。

 

「ぐほっ…!」

 

 声が漏れる、心臓が破裂したのかと錯覚する程のソレ。

 

 血を吐き出す、喉から外へと少量の血が地面に落ちる、さながら溢れたワインのように。

 

 視界が揺れて霞む、思考がぼやける、手足に力が入らず唇も痺れたように動かない。

 

 胸が痛い、足が鉛のように重い、腕が自分のものではないように感じてしまう…踏んだり蹴ったりだ、何が悲しくてこんな目に遭っているというのか……あぁ違った、私から頼んだのだった。

 

 悟から余りにも自慢されるから確かめてみたくなった、あそこまで他人を評価する悟は本当に珍しかったから試してみたくなったのだ。

 

 本当に悟が言うほどの強さがあるのか、悟が尊敬する程の存在なのか、半ば面白半分で手を出してみようと思った……結果は、このザマなわけだが。

 

 正直な話、勝てると思っていた…悟はきっと油断したか何かしただけなのだろうと心の何処かで思っていた、悟が本気でやらなかっただけなんだろうと、そう考えていた。

 

 しかし違った、悟の言う通りだった…まさか調伏した呪霊の過半数をまとめて相手にして祓われるとは思ってもみなかった。

 

 挙げ句の果てに、接近戦を仕掛けてみれば片手間に投げ飛ばされて地面に叩きつけられ、時に殴られ蹴られで碌なことがなかった…まぁ恐らく手加減はしてくれていたのだろうが。

 

 ……兎にも角にも、悟には謝らなければならないな。

 

 君の自慢していたあの人は、尋常じゃないほど強かった…と。

 

 

 そう考えるのと同時に、私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜…で? どうする夏油さn……あれ…? 夏油さん?」

 

 

 

「………やっべ…やりすぎた」

 

 

 

 





 この後、五条と廻の話で少し盛り上がった。
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