宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ハイテンションで書いた…やっぱりシルヴァリオは素晴らしい。


人外魔境 前菜①

 

 

 両者の領域は、同時に展開された。

 

 前回の渋谷とは違い、明確に同意思を以って展開された二つの領域、展開されるが否やその領土を広げようと現実へと足を踏み入れ、眼前に居座る外敵を見つけるが否やその喉首噛み千切ってやると言わんばかりにその領土をぶつけ合う。

 

 外殻を持たぬ神業的な領域と外殻を持ち必中必殺を捨て去ったが故の鉄壁奇妙な領域…斬撃の嵐を生み出す領域と静かな空間にて生み出される劇場の領域、ある意味で正反対なソレを前にただただ両者はそこにある。

 

 

 

───ガコンッ…!!

 

 

 鳴り響くのは聞き慣れた何時もの音、主である廻もその敵手である宿儺でさえも聞き慣れた、一つの合図を告げる音。

 

 廻の領域、その外殻へと容赦無く降り注ぐ斬撃の雨霰、降り注ぐ雨粒のように細かくそれでいて鋭く、確実に敵手を斬り刻み粉微塵としてやるという殺意を感じさせるソレが外殻へと降り注ぐ。

 

 ギャリギャリと鳴り響くガラスを軋ませたような音、それが尋常ならざる大音量にてやってくるというのだからそれを聞く人間にしてみれば溜まったものではない、御免被るとはこの事だろう。

 

 それに比べて内部は静かなものである…渋谷の時と同様、外から響いてくる音と衝撃はこと内部の人間からしてみれば単なる雨音と大して変わらなかった。

 

 

 トントンッと靴先が舞台を叩く、静かな空間の中に反響するように響き渡る靴の音に宿儺はその口角を吊り上げながらその指を鳴らした。

 

 

「───さぁ…『開演』だ」

 

 

 呟かれた言葉はあの日あの時と同じもの、まるで渋谷の再現でもするかのように発せられたその言葉と共に、心地の良い殺気を宿儺は敏感に感じ取る。

 

 瞬間、宿儺の上空から無数の雷が降り注いだ。

 

 文字にするのも億劫になる程の激しい雷撃、紫色の雷を放ちながら縦横無尽に飛び回る鵺の姿に、雷の輝きから飛び出してきた宿儺は小手調べと言わんばかりに斬撃を放つ。

 

 不可視無音の十八番の一撃、見慣れ斬られ慣れたその一撃を鵺は身体を回転させることで躱し、そこから更に上へ上へと上昇していく。

 

 何をする気だと笑みを溢しながら上を見上げ、その隙間を狙っていたと言わんばかりにやってきたその一撃を宿儺は分かっていたと言わんばかりに受け止める。

 

 ギラギラと輝く瞳に金色の瞳、獣特有の縦に割れた瞳孔が今にも殺してやると言わんばかりに己を睨みつける。

 

 吐息に煙が付き纏い、唸り声と共にやってくる獣の匂い、白と黒の毛並みに身を包んだその姿に宿儺は思わずと言ったように言紡いだ。

 

 

「───伏黒恵の『渾』か…!」

 

「───読み方は同じだよ…漢字が別だけどな」

 

 

 その言葉が響くと同時に、その横っ面に廻は拳を叩き込んだ。

 

 横合いから、玉犬の爪によって半ば抑え込まれていた宿儺の横っ面に拳を全力で叩き込む…頰へと突き刺さった拳はその勢いを止めず、全力の勢いのままに宿儺の肉体を大きく殴り飛ばした。

 

 宙を進む宿儺の肉体、瞬時にその体勢を立て直そうとする呪いの王はしかし、その頭上から待っていましたと言わんばかりに墜落してきた紫電によってその動きを堰き止められる。

 

 上空から一気に下陸まで、一切の減速を見せずに突っ込んできた鵺はその勢いのままに舞台を貫通して下へ下へと潜っていく。

 

 馬鹿みたいに木材の壊れる音と何やら壊してはいけない何かを壊したような音を響かせながら、その勢いをまるで止めずに下へと向かって行った鵺は、ほんの少しの間を置いた後に別の場所から一気に飛翔してくる。

 

 ズガンッと飛び出してきた鵺、木片に塗れながらもバッサバッサと翼を元気一杯に振り回すその姿からは負傷の様子など一欠片も感じられなかった。

 

 無傷…バチリッと強く紫電を鳴らして身体に付いた木片を吹き飛ばす鵺、邪魔な物が無くなってスッキリしたと言いたげな表情を浮かべながら、鵺はその注意を下から外そうとしなかった。

 

 瞬間、舞台を真っ二つに割りながら飛び込んで来た不可視の斬撃を、鵺は大きく翼を羽ばたかせることで躱し…そこへと、舞台をクッキーか何かのように砕きながら呪いの王は飛び出してくる。

 

 ボロボロの服装に無数に突き刺さった小さな木片、突き刺さっている箇所から流れ出る無数の血液に未だにパリパリと肉体に帯電している紫の電流…それら全て知ったことか言わんばかりに宿儺は満面の笑みを携えて鵺へと突撃する。

 

 驚くべき速さ、空を蹴りながら迫る呪いの王の姿に鵺はその殺意を解き放つかのように唸り声を上げ、それに呼応するかのように宿儺の笑みは益々とその深みを増していく。

 

 楽しいのだろう、久方振りの…しかも二度目のソレが楽しくて楽しくて仕方がないのだろう、望みに望んだソレをようやくと言って良い程に満喫出来ている今が、紛うこと無く愉しいのだろう。

 

 

 満面の笑み、一切の不純物の混じらぬ純粋なソレを浮かべながら、宿儺は大きく腕を振り被り勢い良くソレを鵺へと振り下ろす。

 

 指向性の指定に加えて範囲の縮小、ただ眼前の獣のみを狙って放たれたその斬撃を何処からやってきていたのか玉犬が…『玉犬・(こん)』が受け止める。

 

 鳴り響く斬撃と斬撃の衝突音、僅かな衝撃と威力の衝突に玉犬と宿儺はビー玉のように弾かれ、舞台の上へと着地する。

 

 軽い音と重い音、体重の違いを感じさせるそれらの音、着地の瞬間に響いたその直後に宿儺は舞台の足場を思い切り踏みつけ、目の前に着地した玉犬へと一気に踏み込んだ。

 

 砕け散る足場の一部、並々ならぬ執念を感じさせる眼光で玉犬の元へと舞台を砕きながら接近してくる呪いの王、それを相手に玉犬は大きく吠え立てると共にその姿勢を縮め、何時でも飛びかかれるとでも言いたげに呪いの王を睨みつける。

 

 それに気を良くしたのかそうでもないのか、益々とその速さを倍増させた宿儺は足跡型の亀裂を残しながら玉犬へと猛進し…徐ろに、その足を止めた。

 

 時間にして僅かな二秒足らずの僅かなやり取り、見ること聞くことも叶いそうに無い速度感のソレの中で、影の中から這い出してきたソレは…蝦蟇はようやっと来たなと言わんばかりに自身の自慢の舌を宿儺の足へと巻きつける。

 

 動きが止まる、十種の中でも一二を争う程に非力な蝦蟇の力とは思えない程に力強い舌の力、進もうとした足が前へと踏み出せないそのジレンマに思わずと言ったように舌を打つ宿儺…そしてその瞬間を、彼等は決して逃さない。

 

 

 姿勢を屈め、低い唸り声を上げていた玉犬・混…その背後から、一体何処に隠れていたのかと問い正したくなる程にぬっとその影から姿を現した廻に宿儺の瞳が見開かれる。

 

 手を合わせ、先端を此方へと向けるその姿、一度二度と見ているが故に何を放つ気であるのかがありありと理解出来るようなソレに、宿儺は思わずと言ったように嗤った。

 

 

 

───『穿水』

 

 

───術式順転『蒼』

 

 

 

 

 読んでいた…そう言わんばかりに繰り出される順転の蒼、引き寄せ押し潰すその力を宿儺は穿水の発射と同時に発動した。

 

 眼前にて現れる蒼い球体、穿水の発動と同時にそこへと出現した蒼は脳天目掛けて放たれた穿水を容易く掬い拾い、いとも容易くバチャリと水の矢を捻り潰す。

 

 実際に読んでいた訳では無い、ただ穿水に対してはそうしようと、先の一撃から宿儺がそう学んだだけのこと。

 

 役目を終えて消える蒼、僅か数瞬の間に起こった出来事…それに続くように玉犬が宿儺へと飛び掛かる。

 

 高い瞬発力とバネ、獲物へ向けて飛び掛かる狼、俊敏さで言うのならば最早猫と呼んでも差し支えの無いそれに対して宿儺は片腕を上げる。

 

 

───術式反転『赫』

 

 

 収束の発散、弾く力の権現が宿儺の手から射出される。

 

 飛び掛かる玉犬、今正にその牙と爪を獲物へと振り翳そんとする獣へと向けられた破壊の一手、半ばゼロ距離に近い距離から放たれたソレは真っ直ぐと玉犬の喉元へと接近していき───

 

 

「───ァッ!!!!!」

 

 そうして近付いてきた赫に、玉犬は躊躇いもなく噛み付き…そして、これまた何ということも無いとでも言うように噛み砕いた。

 

 飛び散る赫、収束の発散、弾く力の権現…宿儺の呪力により強化されたソレが赤い輝きをばら撒きながら砕けた飴玉のように消えていく…さしもの宿儺も、その光景を前にして驚愕の感情を隠せぬと言わんばかりにその瞳を大きく見開いていた。

 

 

「───そう驚くことでもないだろ」

 

 そんな状況下で、そんな光景を前に、さも眼前にて起こった出来事が当たり前のソレであるかのような声色で、禪院廻は宿儺の眼前へと躍り出る。

 

 拳を握り込み、ギチリと大きく腕を引き絞りながら、鋭く目前の敵手を見据えた状態で廻は何処か自慢気にその口を開く。

 

 

「───言ったろ? ウチの子達は凄いんだ」

 

 

 笑み、親が我が子を自慢するかのような笑みを浮かべながらそう告げた廻は、その後の反応も待たずにその拳を宿儺の鳩尾へと突き入れる。

 

 瞬間…まるで祝福するかのように火花は散った。

 

 

 

 

 

───『黒閃』

 

 

 

 

 

 打ち込まれる拳…骨を砕き、肉を裂く感覚と共にやってくる全能感、入ったなと確信させるような意識の高揚と集中の高まり、ドクドクと脈打つ心臓の鼓動と共に廻は宿儺の肉体を全力で殴り飛ばす。

 

 黒い電流も黒い火花、いっそ残光すら描きながら吹き飛ばされる宿儺、舞台を二転三転と水切りのように飛び跳ね、その度々に舞台に大きな亀裂が走る様をその目で捉えながら、廻は両手を広げ舞台の上で宣言するが如くその名を呼ぶ。

 

 

「───今度はお前の出番だ鵺…さぁ、張り切って行こうか…!!」

 

 告げられたその言葉に奇声が轟く、変わらずの奇妙な鳴き声を上げながらその呼び掛けに呼応するかのようにバサリとバサリと廻の頭上を飛び交い、大きく翼を広げて咆哮する。

 

 

 そんな様子に、そんな鵺の姿に廻は楽しげな笑みを隠さず表に引き摺り出し、体勢を整え此方へと飛び掛かろうとしている宿敵へと楽しんで行けと告げるが如く、その名を此処に告げる。

 

 

「廻輪奇劇───」

 

 

───『雷雲(らいうん)神楽』

 

 

 

 

 

 

 

 雲は躍り、雷鳴が歌う…雷祭りの開催である。

 

 

 

 

 

 





『玉犬・混』

 伏黒の渾と見た目は同じ、ただし性能は馬鹿なんじゃないかってくらい高いし、こいつ特有の能力みたいなのも備えてるらしい個体。

 獅子王と白叡を除いた場合、純粋な戦闘能力は式神の中で最も高い。

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