宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 前みたいなハイテンションで書けなかった、ちょっと残念。

 ダイの大冒険とかうしおととらとかみたいな熱い最終決戦ばっかり見てた…やっぱり王道は熱いよ。


人外魔境 前菜② 

 

 

 告げられたその名、領域内へと響き渡る禪院廻の宣言…それと同時に瞬時に全てが切り替わる。

 

 例にも漏れず音も無く光も無く、壮大な演出も地味な演出も何も無く…ただただ一瞬の間際にて全てが切り替わっていく。

 

 

 雲の上…そう表現するしかないような光景が宿儺の眼前には広がっていた。

 

 地平線一杯に存在する薄暗い、まるで曇天の雲そのもののような地面…踏み締めた足先から感じる感触は明確な地面のソレとは言い難く、何やら柔らかさと硬さを内包したかのような言い知れぬ感触を宿儺は感じた。

 

 上に右に左に下、視線を動かした先で目に入る雲、雲、雲…まるで己を中心として覆い尽くそうとしているかのような配置、覆うにしては些か離れすぎていると感じるソレが、宿儺にしては妙に気になった。

 

 そして、極めつけは───

 

 

「───ッっ!!!」

  

 

 

 奇声が鳴り響く、聞き馴染み手を煩わされたその鳴き声が空間の隅々にまで響き渡る。

 

 鵺…橙色の毛並みに身を包み、翼を閉じて爛々ギラギラとした瞳で宿儺を睨みつけるその怪鳥は、悠然とそこへと足を落ち着けていた。

 

 何時からあったのか、何時から存在したのか…鳴き声が響くその前までは確かに存在していなかったソレが…所謂ところの神楽殿と呼ばれる建物…その屋根に、鵺は止まり木に止まる鳥のようにそこへと存在していた。

 

 視線が交差する…呪いの王とこの空間の主、音を発せず存在する雲達に見守られるかのように存在する静寂の空間の中で、しかしそんな何時まで経っても待てが続くような性格を獣も王もしていないわけで。

 

 

「───来い…魅せてみろ」

 

 

 クイクイと指を動かす。

 

 明らかな挑発、試すような笑みの中に存在する確かな期待を胸に宿儺は煽るような声色で言葉を放ち…それに応えるかのように鵺はその翼を広げた。

  

 

 瞬間、周囲一帯の雲から紫電が弾ける。

 

 バチィと鳴り響く紫電の音、宿儺が見渡した全てから轟いた雷鳴の起動音、足下からも鳴り響き宿儺へと登ってくる電流の感触に宿儺の動きは一瞬だけ停止し…偶然か必然か、それを合図にしたかのように鵺は飛び立った。

 

 通常の『廻輪奇劇』とは比較にならない程の速度、先の舞台の上でのそれを当然のように上回るその速度を宿儺は身体を大きく動かすことで躱す。

 

 躱された突撃、真横を通過していく鵺の姿を横目で追いながら瞬時に反転、その翼を斬り落としてくれると指を鵺へと向ける…が、それとほぼ同時に鵺は雲の中へとその姿を消す。

 

 

 瞬間、鵺の気配が加速する。

 

 雲が紫色の光を放つ、バチリッと音鳴らし、ほんの少しの残響と共に鵺の速度を一気に数段階上の領域にまで引き上げる。

 

 視界に映り込む紫の残光、グングンっと雲の内側を通り抜けていく一筋の残光だけを宿儺は捉え、その次の瞬間には雲の内側から飛び出してきた鵺によって宿儺の肉体は跳ね飛ばされていた。

 

 

 

───速っ…!?

 

 

 あまりの速さ、下手をすれば羅生門時の獅子王にすら匹敵する程の速さでの突進による跳ね飛ばし…宿儺の口から血が吐き出される。

 

 錐揉み回転しながら空中へと投げ出される宿儺、痛みと電気の性質による肉体の痺れに身体の反応が遅れる…そんな宿儺を尻目に、跳ね飛ばされた宿儺に見向きもせず鵺は再び雲の中へと突入し、更に更にと加速する。

 

 雷鳴が轟く、突き進み加速する鵺に呼応するかのようにゴゴゴッと轟く雷音と迸る残光、真っ直ぐと雲の内部を突き進んだ雷は唐突に直角へと折れ曲がり雲の内から再びその姿を現し、宿儺へと突き刺さる。

 

 

「───ゥゥッッ…!!!」

 

 呻き声、同じく跳ね飛ばされまたもや宙を舞う、痺れも痛みも同じようにやってきて、しかもそれがまた繰り返される。

 

 鵺が雲に入る、雲の内から紫が溢れ光と化し、再び姿を現し己へと突っ込んでくる。

 

 三度目の一撃、正面からの一撃、雲に入って加速して出てきてからのもう一回…まるで焼き直しのようなそれに対して、遂に宿儺は鵺の速度に反応してみせた。

 

 

「───龍鱗 反発 番いの流星」

 

 なぞられる必殺の呪詞の詠唱、世界ごと敵手を斬り裂く絶断の一撃が、今尚も突っ込んで来ている鵺へと向けられる。

 

 

 

───『解』

 

 

 放たれた、何もかもを断つ不可視の斬撃。

 

 真っ直ぐ縦大上段、真っ向から真っ二つにしてやると言わんばかりに放たれたソレは音も立てず鵺の顔面へと迫る…が───

 

 

「───!!!!!」

 

 

 まるで分かっていたと言わんばかりに、鵺はそれを容易く躱した。

 

 迫る大上段の斬撃を瞬時に肉体をバレルロールのように動かすことで紙一重の領域で宿儺の『解』を躱し、更にそのまま勢いも速度も落とさず宿儺の肉体へと突撃を敢行した。

 

 

 

───やはり躱すかッッ…!!!

 

 

 撃ち抜かれる肉体、やはりと内心で思いつつもまたもや鵺にその肉体を跳ね飛ばされる宿儺、分かっていたとばかりに自身の斬撃を躱されたその事実に対して、宿儺は反転術式を回しながら思考を回す。

 

 

───斬撃を躱された…マグレではないな、間違いなく見てから躱していた。

 

 

 的確な回避、何処にどう来るのか分かっていなければまず行えない紙一重の回避行動…不可視のソレが見えていなければまず行えないだろうソレから、宿儺は鵺が…十種の式神達全てが斬撃を目視することが出来るだろうことを推察…否、確信していた。

 

 ならば、見えていると分かっているのならばそれを踏まえた上で斬撃を鵺へと当てれば良いというだけの話…それだけの話なのだが、如何せん───

 

 

「───速いな、やはり…!!」

 

 

 喜色と共に呟かれたその言葉が、全てを物語っていた。

 

 鵺が来る、雲の向こう側から。

 

 

───『解』

 

 

 斬撃を放つ、先程に放った世界を断つ斬撃ではない、あくまで通常の斬撃を数十と鵺へと向けて放つ。

 

 無数の不可視、音も無く姿もなくただ一方的に他者を蹂躙する宿儺の刃、それが無数に自身へと突っ込んできた鵺の元へと殺到する。

 

 流石の鵺もこれには進路を変更、バサリと翼をはためかせて真っ直ぐから一気に真横へと飛び、紫の残光を残しながら迫り来る無数の斬撃を持ち前の速度にて引き離し回避する。

 

 雲の中へと入りそのまま霧散していく斬撃、ようやく雲に入るのを止めたなと凶悪な笑みを浮べた宿儺が狙い撃つように指を銃の形へと構えた。

 

 狙い撃ちの構え…呪力放出の指向性固定、斬撃の範囲を極小へと設定しその代わりにその威力を大きく高める狙撃用の斬撃…今尚も先に放った斬撃を躱し続ける鵺の頭蓋へと照準を合わせ、その頭を吹き飛ばしてやると呪力を集中させ…徐ろに、足を掴まれた。

 

 

「───ッ!?」

 

 驚愕も束の間、驚きそこへと視線を向ける…そんな間すら与えず、()()()()()()()()()()()()()そのまま宿儺をその身体ごと雲の下へと引きずり込む。

 

 接触感も抵抗感も無い、瓦礫に突っ込んだ時のような感触も何も無しに宿儺の身体はするりと雲の内側を通り抜け、そのまま外側へ放り出された。

 

 

「───忘れてたろ、俺のこと」

 

「───あぁ、楽しませてもらっているからなッ…!!!」

 

 

 雲の底、突き抜けた先にはあったのは何の足場も無い空中、その先には居たのは満月のような瞳で己を見据える姿の見えなかった宿敵の姿…笑みが溢れる。

 

 万力の力で掴み上げられた宿儺の足首、ギチリッと音を立てて軋みを上げるそれを廻は更に下へと投げ飛ばす。

 

 勢い良く射出されたように下へと落ちていく宿儺…風を感じながら、落下のしていく肉体の感覚をその身に味わいながら、片時もその瞳は宿敵から離れない。

 

 そして…斬撃を躱し終えたのだろう、引きずり落とされた雲の向こう側…先程まで己が立っていたはずのそこから引き裂くような雷音を金切り上げながら鵺が雲を突っ切ってやってくる。

 

 相変わらずの加速、雲の向こう側からやってきた鵺はその速度で以って主の横を通過し、真っ直ぐと己の方向へと向かってくる…まるで流星のようだと、宿儺は何処となく感じた。

 

 

「───ケヒャッ…!!!!」

 

 

 狂気の微笑み、口元から零れ落ちたるは未だ底の見えぬ宿敵への狂喜と期待。

 

 避けるのは慣れていないから未だ無理、攻撃を当てようにも向こうは此方の斬撃を視認してくる上に上記同様速度に慣れていない為、当てること自体が至難の技…ならば、どうするか。

 

 

 ……答えは、一つ。

 

 

 

「───ククッ…これは、もう少し後にと思っていたのだがなぁ……まぁ、良い───」

 

 

───今度こそ、お披露目と行こう。

 

 

 

 

 宿儺の、気配が変わる。

 

 

 

 

「───『(ボックス)』」

 

  

 

 

 

───『(フーガ)

 

 

 

 

 

 

 

 伏魔の棚が、今此処に開かれる。

 

 

 

 





『雷雲神楽』

 鵺が主役の舞台、全体的に地面が無く神楽殿を除く全て雲で構成されているのが特徴。

 雲の内側に獅子王同様の加速装置…というより機能が内蔵されており、雲の内側に入った途端に一気に数段階上の速度にまで加速する。

 雲の内側に入れば即座に加速出来ること、獅子王とは違い自由に何度でも雲への出入りと加速が可能である代わりに、羅生門のような爆発的な威力と速度の上昇が無い。

 その為、威力と速度という点で羅生門よりも劣る…が、その代わり避けらようが防がれようが何度でも相手に突っ込んでメタメタに出来るので、そういう意味では雷雲神楽の方が使い勝手は良い。

 因みに、廻だけは領域内の雲を足場にすることが出来る、他はすり抜ける。


 
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