呪術が終わった…これから何を楽しみに生きれば良いんだ(カグラバチ、サカモトデイズ、原神)
呪いの王が突撃を開始する。
バゴンッという爆音と共に踏み込んだ宿儺、その手に黒い戟を握り込み今すぐにでもお前を殺してやると言わんばかりの殺気と鮮烈な表情を浮かび上がらせながら宿儺は廻の元へと一気に踏み込む。
速い、純粋な速さで言うならば虎杖悠仁を優に追い越す程の速さで以って突っ込んでくる宿儺…そんな宿儺に対して白叡は動いた。
侍るようにぐるりと主の周りを回っていたその身体を瞬間的に呪いの王へと向け、数瞬程溜め込み圧縮した呪力を満遍なく宿儺へと吐きつける。
挨拶代わり…そう言わんばかりに量産される無数の呪力砲、一発一発は通常出力よりも劣ってもその物量が侮れないものであることを宿儺はとっくに知っている…であるが故に───
「───くひっ」
戟をくるりと回し、意気揚々とその物量の中を突っ切っていく。
自身へと迫る小さな極光、出力が小さかろうと一つでも当たればそこから起点に一気にやってくる数の暴力に宿儺は自身の獲物を充てがった。
弾く、弾く、弾く、弾く…無数にほんの僅かな隙間しかないその一撃一撃を確実に効率的に、恐ろしい程の速度で以って叩き落としていく。
術式を使わず、ただ純粋な呪力強化と獲物を扱う技量のみで文字通り全てを叩き落としていく呪いの王、正面前方左右上方から襲いかかるそれを宿儺は例外無く捻じ伏せる。
渋谷の際に喰らわされた全方位の呪力砲にキツかったなと内心で考えながらも戟を振るう、振るい振るい振るい振るい…絶え間もなくやってくる数の暴力を捌き続け…ふと、そこに何かが紛れ込んだ。
鈍く輝く無骨な色、ボロく雅さも無ければ無骨な物特有の美しさも無い…何処までもただただ古びたような鈍い鉄の色が、極光の中を泳ぐようにやってきていた。
ギリッと、歯を噛み締めるような音が聞こえる。
───『剥』ッ…!!!
瞬間、その極光に混じって振るわれたソレに対して宿儺は無機物皆無差別に切断する斬撃を叩きつけた。
鈍く古びた輝き、極光の中を泳ぐように…さも当然のようにその中に紛れ込んできた禪院廻が振るった古びた鉈、それに対して放たれた『剥』は何の抵抗もなく振るわれた鉈を根元から斬り落とした。
宙を舞う古びた鉈の刀身、黄金の瞳が見据える中で横切るソレはしかし直ぐに極光の中へと飲み込まれていく。
満月の瞳がそれを見つめる…宙を舞い、その形を失い消え去っていく鉈の刀身を横目で眺め…何の感慨を抱いた様子もなくノンストップで宿儺へと蹴りを叩き込んだ。
ズドンッという重たい音、呪力砲が飛び交う中で更に踏み込んだ上での蹴り、僅かに掠った呪力の塊が禪院廻の皮膚を焼く…が、そんなことは知ったことじゃないと言わんばかりに廻は更にそこから
呪力砲がやってくる中で放たれた斬撃と蹴り…片方を防ぐことには成功していても、もう片方は防ぎ切れずに腹部へと直撃し、宿儺の肉体は後方へと僅かに飛んだ。
そこへと襲い掛かる白叡の呪力砲、数の暴力はそのままにほんの僅かにスペースを空けて飛び込んで来たそれを宿儺は戟にて打ち落とし…その打ち落とされた隙間へと、禪院廻は滑り込んだ。
もう一発、もう一撃…そう言わんばかりに僅かに空いた数の暴力の隙間へと踊るように潜り込んできた廻は、そこから更に宿儺へと打撃を叩き込んでいく。
右掌底からの流れような左回し蹴り、顔面へと打ち込んだ勢いのままに回転し更に顔面へと蹴りを叩き込む。
顔面への二連の攻撃、防ぐこと叶わずそれら攻撃をまともに受けた宿儺の身体が僅かに傾き、更に更にとそこへと呪力砲が降り注ぐ……それを、宿儺は許さなかった。
ガッと咄嗟に廻の服を掴み取る、逃さぬと言わんばかりに強く握り締められたそれを振り解こうと咄嗟に宿儺へと拳を振るった廻…それよりも尚も速く、宿儺は次の行動へと移っていた。
踏み込む、万力の力で持って前へと踏み込み、廻の身体を盾代わりとしてそのまま呪力砲の中を走り抜ける。
「───ッ…!」
焼き付く痛み、自身の背後やってくる呪力砲がそのまま廻へと直撃する。
左右のソレは流石に防ぎきれないのか宿儺に直撃する…が、それは廻とて同じこと、両者纏めて放たれた数の暴力の餌食となるその姿に白叡の呪力砲が一瞬だけその発射を止めた…そして、宿儺はその隙間を見逃さない。
笑みが溢れた、僅かに空いたその隙間を見逃さず宿儺はパッと廻の服から手を離して前へと放り投げ、そこへと大きく振り被った戟を叩きつける。
叩きつけられる戟、フルスイングと最大呪力出力で以って叩きつけられるそれは並の戦車程度であれば何の抵抗も違和感も無く爆散させられる程の一撃、それを叩きつけられた廻の身体はそのまま大きく大きく吹き飛ばされる。
吹き飛ぶ身体、大きくホームランの打球が如き飛翔と速度、ギュンッと擬音が付きそうな程の速度で以って廻はビルの内側へとその身体を叩きつけられる。
「お前は後だ…まずは───」
───魚から…!!!
呟かれた言葉は誰へと向けられたものか、はたまたは単なる独り言か…何方であろうと呪いの王の行動に変わりは無かった。
咆哮と共に呪力砲が放たれる、先の数の暴力ではなく列記とした圧縮と収束を行った先の『竈』をぶつけたそれと同質のモノを白叡は宿儺へと解き放った。
間も赦さずやってくる紫の極光、あまりに巨大であまりに高密度、まともに喰らえば宿儺とてタダでは済まないその一撃に宿儺は戟を大きく振り被った。
───『断』…!!!
瞬間、世界が割れる。
真っ二つに両断される呪力砲、『竈』すら押し込んでみせたその一撃を宿儺はいとも容易く両断してみせた。
白叡の瞳が驚愕に染まる、千年前とてこうも両断されることは無かったが故に白叡の驚愕はそれなり以上のものであった。
宿儺の笑みが深まる、便利な代物を…包丁を手に入れたと言わんばかりに笑みを深めたその宿儺を、観戦していた虎杖は苦虫を噛み潰したように見つめていた。
宿儺の『断』の効果は虎杖の『断』と殆ど変わらない、虎杖同様世界ごと敵手を断ち切る絶断の一撃、防ぐことは叶わぬ絶対切断能力…強いて違いを上げるとすれば虎杖とは違い宿儺の『断』の効果範囲は手に待った獲物にまで適用されるということ。
宿儺の『断』は虎杖とは違い術式が焼き切れることは無い、その代わりに宿儺が『断』を使用した場合にはそれ相応の
その時間にして大凡二分、一発撃つごとに二分間の
『函』使用中の間、宿儺は『解』による世界を断つ斬撃を使用することは出来ない…その縛りに加えて、通常状態での『断』の使用不可という二種類の縛りを宿儺は結んでいた。
これら二つの縛り…『函』の使用時という限定的な使用条件に加えて元から習得していた使い慣れた『解』による世界を断つ斬撃の封印…これによって宿儺は『函』の際の斬撃の増加の難易度の低下に加えて『断』の
時間にして三十秒…一発放つごとに課せられる『断』の
大きく割れた紫の極光、それを成したのが自身の生み出した荒業である事実に虎杖だけが気付いていた中で宿儺は白叡へと向けて一気に飛び掛かった。
時間にして言うなら一秒にも満たない、ほんの僅かなソレの間に一気に白叡の目の前一歩手前にまで飛び出した宿儺を出迎えたのは同じく白叡の呪力砲。
カッと光り輝くと同時に放たれたそれを宿儺は紙一重にて躱すと同時に白叡の懐にまで一潜り込み、そのフカフカの毛をガシリと掴み取った。
白叡の背中と張り付いた宿儺、それに対してまるで身体に嫌いな虫が張り付いたかのような反応を見せた白叡はそれを取り払おうと縦横無尽に暴れ回る。
先の余裕のある動きは何処へやら、本当に嫌いな…それこそ黒光りのGが張り付いた際の女性ばりに暴れ回る白叡、建物へと突っ込み身体を地面へと叩きつけ早く早くと宿儺を身体から振り落とそうとする。
叩きつけられ、振りほどかれかけ、前方からやってくる瓦礫によって身体と顔面を打たれる…中々の痛みを感じるソレをしかし宿儺は気にもせず、その万力で掴み取った毛を伝いながら白叡の前方頭上へと辿り着いていた。
頭に触れた感覚、そこにいるのかと白叡は自身の持ち得る最大速度にて自身の頭を建物へと叩きつける…が、宿儺はそれをヒョイッと躱し再び白叡の頭上へと降り立った。
そうして生まれたほんの僅かな隙、自ら最大速度にてぶつかりに行ったその衝撃に僅かにフラついていた白叡の頭へと宿儺は戟を構えた。
突き刺し抉る為の構え、狙いを付け射殺す為の姿勢で僅かにその肉体を静止させた宿儺は…ほんの一息を吐き出す共にそれを成す。
───『
呟かれたその名と共に突き降ろされる戟、本来であれば硬く並大抵どころか特級相当の一撃を食らっても焦げる程度にしかならない白叡の肉体を、ソレはいとも容易く突き貫く。
まるでタコ締め道具、或いは鰻の頭を突き刺す目釘のような一撃…大量の血液を撒き散らしながらその痛みに絶叫し暴れ回る白叡、ブオンブオンと振り回される頭部、そこへと突き刺した戟に宿儺はしがみついていた。
振り回される、振り回される、絶叫を振り撒き痛みに悶え、血流をドバドバと頭から流しながら思わずと言ったようになりふり構わず呪力砲を撃ちまくる白叡…そしてそんな中で、宿儺はしがみついていた戟を更に思い切り押し込んだ。
───『貫』ッ…!!!
再び唱えられる一撃の名、その名の通り貫き射殺す為の技、斬撃と言うよりどう見ても突き刺す為のソレは、より深く深く白叡の頭部の底へと進み行き…ふいに、白叡の動きが止まった。
瞳孔が開く…縦に割れたソレが広く黒く埋め尽くされ、浮かび上がっていたその身体から力が抜け落ち地面へと轟音を立てて堕ちていく。
戟を抜き取る際に吹き出る血潮、プシューっと音を立てて、まるで壊れた蛇口のように吹き出てくる血潮を宿儺は心地の良さそうな表情で浴びていた。
「───美味かったぞ、お前の
「───そうか、良かったな」
呟く言葉に返答がやってくる、吹き出る血潮をシャワーを浴びるように全身で受け止めながら放たれたその言葉に感情を感じさせない言葉がやってくる。
振り向いた先に存在するのは己が宿敵、相変わらずの無表情で己を見据えるその瞳には光は無く、ただただ色の無い美しい金色がただ己を見据えている…そんな状況に、宿儺は笑みを浮かべながら戟を構えた。
「───次は何だ?」
「───分かってるだろ」
その言葉と共に、前へと進み出るのは紫電の王、バチリッと雷を纏った獅子王が呼んだ? と言わんばかりに前へと歩み出て…瞬時に、その顔を殺意一色のそれへと染め上げた。
───嗚呼…そうだ、それとやりたかった。
咆哮が鳴り響き、雷が吠える…そんな光景を前に、宿儺は至福の時を味わうかのように深い笑みを浮かべていたのだった。
『貫』
貫通性能に特化させた斬撃? …斬撃と呼んで良いかは甚だ疑問ではあるが列記とした斬撃? である。
イメージはタコ締めの針みたいな道具と鰻に使う目釘。
とにかく貫通性能に特化させた技、相手を斬れないけど突き貫くことに関して何よりも高性能な技…因みに『断』や世界を断つ『解』みたいな絶対的な能力ではない。
白叡を殺す際のイメージはワンダと巨像…最後の一撃は切ない。