宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 雨の音が怖い。


人外魔境 肉料理①

 

 

 

「───撃て」

 

 

 開戦の号砲は、あまりに唐突だった。

 

 

 完全体…生前の姿を完全に取り戻した宿儺、ゆらりゆらりと愉しげに此方へと向かってくるその姿へ向けて廻はさも当然のようにその指令を告げる…即ち、討てと。

 

 そうして放たれる白叡の呪力砲、真っ直ぐと宿儺目掛けて発射された紫の極光が宿儺へと迫り来て、その肉体を消し飛ばしてやると言わんばかりにその圧力を増大させる。

 

 それと同時に獅子王が吠える、全身そのものが声帯なのではないかと勘違いしてしまいそうな程に深く強く強大な王と呼ばれた獣にしか放つことの出来ない咆哮…それと共に鳴り響き轟き唸りを上げる雷鳴が獅子王の肉体へと纏わりついていく。

 

 変化する毛色、美しい紫色を悠々と泳がせるように揺れ動くその毛並みと共にバチリッバチリッと紫電が舞う。

 

 リミッターの解除…万戦の際にその姿を現した獅子王の本域、正真正銘式神『獅子王』を象徴する獅子王の鬼の面、それが今此処に再びその面を上げた。

 

 禪院廻の象徴とも言える二体の式神、その本域…迫る呪力砲に遮られて見えないはずのそれをしかし、宿儺は容易く感知した。

 

 

「───クッハ…!!!」

 

 

 跳び立つことで白叡の呪力砲を躱す、変わらずの満面の笑みを浮かべながらその身を空中へと躍り寄せた宿儺、つき先程まで居た場所を極光が根こそぎ薙ぎ払うのを下目で見ながら垂れた涎を舌で乱雑に拭った。

 

 

 

「───『龍鱗』『反発』『番いの流星』」

 

 

───『解』

 

 

 小手調べ、様子見…そんなもの等知ったことかと言わんばかりに放たれる全力の斬撃、式神使いの本体目掛けて放たれる呪詞込みの『解』…『函』の影響で世界を断つ斬撃とはならないが、それでもその一撃は凄まじい。

 

 直前上に存在した建物、しかも真正面ではなく横側に存在した建物群を斬り裂きながら迫る宿儺の『解』…不可視の斬撃がその痕跡を大いに残しながら廻へと迫る。

 

 

「───」

 

 

 しかし、それを白叡は許さない。

 

 大きな身体が渦を巻く、その巨体と長い身体からは想像も出来ない程の俊敏さで以って廻の前へとその身体を投げ出し、やってくる斬撃をその身体で受け止める。

 

 衝撃、大きく響いた衝突音、飛んできた不可視の斬撃をその身で受け止め主を守ってみせた白叡の姿に宿儺は舌を巻くように歯を剥き出しにする。

 

 

 

───やはり、こいつにも効かんな。

 

 

 内心呟きながら白叡の身体を注視する…正確に言うならば、斬撃が直撃した箇所へとその視線を集中させる。

 

 傷一つ付いていない純白の毛並み、多少ささくれ立っているようにこそ見えるがそれでもそれだけだ、斬撃による傷は勿論のことその毛並みの一本ですらも切断された様子が見えない。

 

 呪詞込みでの『解』ですらこの程度、最早式神達に対しては『解』は武器にならないと宿儺は判断せざるを得なかった。

 

 時間にして僅かに数秒、斬撃を叩きつけられた白叡はその鋭い瞳で宿儺を睨みつけ、そんな白叡の身体を労るように廻は優しく撫でた。

 

 ふわふわとした毛並みはそのまま、数秒前には存在していたささくれも何時の間にやら完全に消え去り何時も通りの毛並みがそこにある…死闘の最中とは思えぬほどの穏やかな空気が流れる中で次はこれだと宿儺はその指を白叡へと向け───

 

 

「───!!!」

 

 

 その横合いから現れた大きな影が、ぬっと宿儺の身体を覆い隠す。

 

 バチリッという電流の音、僅か数秒の間に音も無く接近していたソレは…獅子王はその身に纏う全力全開の雷と共にお前の身体をぺちゃんこにしてやると言わんばかりに両腕を宿儺へと振り下ろした。

 

 リミッターを解除した獅子王の一撃、鰻登りに高まった呪力出力に加えてそれによって副産物的に強化された身体能力、何処までも暴力的なソレは先のそれとは比べ物にならない一撃を誇る。

 

 振り下ろされる鉄槌が如き一撃、アームハンマーとでも呼ぶべきその一撃を宿儺は戟を充てがうと同時に残った二つの腕を押し木代わりにでも言うように戟へと叩きつけた。

 

 ズガンッと響き渡る砲弾のような音、獅子王の拳を戟で受け止めながら更に逆方向からの宿儺の叩きつけるようなソレ、最早単純な打撃と変わらないソレを左右逆方向から同時に受けた禪院廻御用達の呪具であったそれは変わらず悲鳴すら上げはしない。

 

 あまりに頑丈、あまりに頑強…幾ら呪力を乱雑に込めても壊れるどころか罅一つ、悲鳴の一つも上げはしないあまりに頑丈なその呪具を宿儺は甚く気に入っていた。

 

 故に受け止める、叩き落とされることもなく拮抗したように空中へと留まる一人と一匹の王は至近距離から互いを睨みつけた。

 

 

「───良い呪具だなぁ、禪院廻…!!」

 

「───そっか、じゃあ返せよ」 

 

 

 思わずと言ったように溢れた宿敵に対しての言葉、それに対して本来であれば聞こえるわけがないはずの距離に居る宿敵の声が耳元から聞こえてきた。

 

 視線を向けるまでもなかった、探らずとも肌を刺すように伝わってくる鋭い刃物ような圧力の存在に宿儺は半ば条件反射で蹴りを繰り出した。

 

 未だに上からやってくる獅子王の万力の力、それを抑え込んだ上で放たれる蹴りはしかし、そんな不安定な姿勢から放たれたものとは思えない程に鋭かった。

 

 

 

───『貫』

 

 

 槍の如く突き出される蹴り、不安定な姿勢から繰り出され、それでも尚鋭いその蹴り…それでは足りぬと言わんばかりに上乗せされた白叡の皮すら破ってみせたその一撃が廻の肉体へと迫る。

 

 居るかどうかの確認など必要無い、必ずそこにいるという確信を持ってのその行動に廻は呆れを滲ませたような表情を浮べた。

 

 普通はブラフ云々を警戒して目視で確認するだろうに、何の迷いも躊躇いも無い確信と共に突き出されるその鋭い一撃にやはり廻は呆れるしかなかった。

 

 

 手刀で蹴りを叩き落とす、突き出された鋭い槍が如き蹴りを呆れを滲ませた表情のままに弾き落とし、そこから更にお返しと言わんばかりに叩き落とした足を足場にして宿儺へと膝蹴りを叩き込む。

 

 自身の足を足場として放たれた膝蹴り、『貫』を防いだ直後に放たれたソレに宿儺は戟へと叩きつけた腕の一本を離し、その腕で以って廻の膝蹴りを防いだ。

 

 バシンッと響いてくる掌の感覚、受け止める形で廻の膝蹴りを防いだ宿儺は受け止め防いだ廻の膝を有らん限りの力で掴み取り、そのまま大きく廻の身体を弾き飛ばす。

 

 それと同時に押し込まれる獅子王の一撃、未だに鍔迫り合っていたソレが腕の一つが離れたことを契機と見たのか、一気に潰してやると言わんばかりに押し込まれる…しかし、そんなことは分かっていたとでも言うように宿儺は戟を僅かに斜めにズラした。

 

 流される…力の力場が僅かに傾きそして宿儺自身も獅子王のソレがそこへと行くように力を流し込んだ結果、叩きつけられていた獅子王の腕が通り過ぎるように流され宿儺の横を通過する。

 

 ギャリギャリと火花を散らしながら通り過ぎる獅子王の両腕、流したと言ってもその力は絶大であるが故に、その勢いのままに宿儺の体勢もそれに合わせて大きく崩される…が、都合が良いと言わんばかりに宿儺は崩された自らの体勢を直すこともなく、寧ろその勢いに任せて身体を大きく回転させながら獅子王へと蹴りを叩き込んだ。

 

 激突する一撃、獅子王へと放たれた側頭部への鋭い蹴りの一撃が回避すら許さず獅子王の側頭部へと直撃し、そのまま獅子王の肉体を下へと叩き落とす。

 

 ズシンっと重く響き渡る着地の音、叩き落された体勢から瞬時に体勢を整え地に手を付くように着地した獅子王、着地の衝撃と共に地面が陥没し亀裂まで入り、更には獅子王の呪力に反応して電流まで奔る。

 

 即座に睨みつけるは空中の怨敵、蹴りを放った姿勢のまま己を見下ろすその姿に獅子王の怒りは臨界点を超えた。

 

 リミッターを解除した状態での怒り状態、紫電を迸らせながら咆哮を金切り声上げる獅子王、咆哮に呼応するように周囲の空間が紫に染まりバチンッと弾けるように紫電が何十と言う数飛び散っていく。

 

 そんな獅子王の姿を…見る暇すら与えぬと言わんばかりに、彼方から紫の極光が飛び込んでくる。

 

 弾く、呪力を有らん限りに込めた戟を全力で叩きつけて飛んできた呪力砲の軌道を横へと強制的にズラす。

 

 ビリっと痺れる両手、あまりの衝撃と重さにさしもの宿儺であろうとタダでは済まない、僅かに痺れた両手に喜色の笑みを浮かべままチッと僅かに舌打ちを漏らす。

 

 

「───珍しいな、舌打ちなんてさ…!」

 

 

 そこへと、禪院廻は斬りかかる。

 

 その手に持った刀を振り被り宿儺へと斬りかかる、真正面大上段から振り下ろされる一撃を宿儺は戟で受け止めた。

 

 ガキンっと響き渡る硬質な音、叩きつけられた刀の鋭さと重さが両立したその一撃に宿儺は笑みを浮かべながらも言葉を吐き出す。

 

 

「しないと思うのか? 人も呪いも結局やることは同じだぞ!!」

 

 満面の笑みを浮かべながら放たれたその言葉と共に宿儺は空手の両拳を廻へと叩きつける。

 

 両の手で刀を持った状態、叩きつけ今尚も鍔迫り合っているその状態を狙った二つの拳、腹部と脇腹目掛けて放たれたその拳は両面宿儺という存在が持つ異形の肉体であるからこそ打ち込める一撃。

 

 脇腹と腹部へと向かい来る宿儺の拳、ギリギリと鍔迫りあっている状態のまま放たれたその一撃に廻は成す術も無く直撃する───

 

 

「───前から思ってたけどやっぱりズルいよお前の身体!!」

 

「───お前とて大概ズルかろうに…!!」

 

 

 することはなく、寧ろ見慣れているとでも言わんばかりの手慣れた様子で廻は放たれた二撃を片足のみで容易く打ち落とした。

 

 先の無表情は何処へやら…何処か拗ねたような、自分には無い物を持っている子供を羨ましがるような様子で言葉を吐き出す廻に、宿儺もまた何処か子供のように言葉を返した。

 

 僅かに応酬された子供のような言葉の言い合い、互いに相手をズルと呼びながらもその手は相手の急所と隙を狙い、斬り裂き穿つことを狙い続ける。

 

 斬撃が繰り出される、宿儺から放たれた戟の一撃を弾いた勢いの任せて回転しながらの左斬撃、首筋目掛けて振り抜かれたその一撃は器用に手元で戟を回転させた宿儺によって防がれる。

 

 そこへと繰り出される空手の腕達、くり抜くように突き出される貫手が廻の元へと迫り来る。

 

 狙いは目元、くり抜くようにという言葉通りにその目玉をくり抜いてやると言わんばかりの目突き、鋭く素早く繰り出されたその一撃を廻は上体ごと身体を後ろへ反らすことで躱し、ついでと言わんばかりに宿儺の顎へと蹴りを繰り出した。

 

 上体反らしのついでと言わんばかりに放たれた廻の蹴り、顎目掛けて振り抜かれたその一撃を意趣返しと言わんばかりに僅かに顎を引くのみで躱し、その勢いのままに後方へと回転する廻の身体へと戟による突きを繰り出す。

 

 繰り出される戟による突き、かつて自身が使用した獲物を使用してのソレに廻は何を思うまでもなく戟へと刀をぶつけて軌道を反らした。

 

 この間僅か数秒足らずの出来事、落下の最中に引き起こされた無尽蔵の闘争にモニターの前の人間は一部を除いて知らず知らずの内に息を止めていた…それほどまでにハイレベルな攻防。

 

 地面への着地まで後残りほんの僅か、あと一撃でも互いに叩き込めばその瞬間には地に足が付いているような現状…そこに、紫電の王は割り込んだ。

 

 全力の走り込みからの猛烈な跳ね飛ばし、着地寸前の宿儺を狙った獅子王のバッファローが如き突撃が宿儺の背後からやってくる。

 

 バチバチバチバチィッと強く鳴り響く紫電の音、最早音のみだけでもその威力と驚異の程が分かってしまう程のソレに宿儺は背後へとその視線をやる…それと同時に、廻は刀を鞘へと納めた。

 

 

「───シン・陰流」

 

 

───簡易領域

 

 

 突如としての簡易領域の展開、居合の構えを取った廻に呼応するように展開される簡易領域の構築に宿儺の思考に警戒が混じる。

 

 後方からは獅子王、そして真正面からは簡易領域を展開した己が宿敵…図らずも挟み撃ちの形となった今現在の状態に宿儺は戟を構えた。

 

 防御姿勢、未だ完全に簡易領域が展開されていない状態でのソレ、簡易領域が己を射程に捉えるのに一秒と掛からぬであろう状態でのその姿勢に宿儺は優先順位を取り決めた。

 

 まずは獅子王…『貫』による怯ませか或いは『断』による破壊か…何方にせよ、最初に対処するべきは一撃一撃が文字通りの砲弾級とも言うべき獅子王から。

 

 次に禪院廻…居合を取るのは初めてではないがそれでも何やら予感がする、獅子王に対処したその次の瞬間には抜刀して己に迫っているだろうという確信がある。

 

 ダメージ覚悟の『剥』で刀を斬る、斬られることを前提とし斬撃が繰り出された直後を狙って『剥』を使用して呪具を折る。

 

 

 宿儺の脳内にて組み立てられた一連の流れ、多少のアドリブも入るのだろうがそんなことは当たり前と切って捨て、やがてやってくるだろうソレに対しての集中を高め…その直後に、宿儺の身体が簡易領域の内側へと入った。

 

 瞬間、両者共に動き出す。

 

 飛び出す廻、そしてそんな廻を視界の端で捉えながら振り向きざまに獅子王へと戟を振るおうとする宿儺は瞬時に『貫』の構えへと移行し…気付く。

 

 

 

───居ない!?

 

 

 

 獅子王の姿が無い、忽然とその姿を消している。

 

 荒れ狂うような紫電も絶対的なまでに暴力的な気配も無い、ただ何も無い寂れた空間だけがそこには存在している。

 

 何処に言った…そう思考する宿儺の背後から、バチリッと言う雷に音が聞こえてくる。

 

 振り返る、瞬時に己の元へと突っ込んで来ているはずの宿敵の元から聞こえてきた響くはずの無い音、その正体を確かめるように瞬時にそこへと振り向いた宿儺は…確かに見た。

 

 登っている、影が刀へと登っている、鞘の中へと影がドクドクと入って行っている。

 

 まるで纏わりつくように、まるで刀身を影へと漬けるようにドクドクと鞘の内側へと入っていく影、そこから響いてくる雷の音と獅子王の気配に宿儺は思わずと言ったように内心で吐き捨てた。

 

 

 

───読み違えた…!!

 

 

 歯噛みする、元は影であることを完全に失念していた己の失態に歯を軋み上げながらも瞬時に対応しようと術式を発動しようとし…間に合わないことを宿儺は悟った。

 

 引き抜かれる、嫌にゆっくりと映り込む抜刀の瞬間、抜刀と共に声高らかに鳴り響く放電の音は獅子王の心境を現しているかのようだった。

 

 

 

「───()()()

 

 

 

───『獅子王』

 

 

 呟かれたその言葉と共に斬撃が開始される、抜き放たれる直前の刀身、黒く墨に付けたかのような真っ黒な刀身がその姿を鞘口から現した。

 

 バチバチバチバチバチ…放電の音が強くなる、今抜き放たれようとしているソレに反応するように強く放たれるその音は何かを主張しているように感じる。

 

 抜き放たれる、紫電の光と共に雷鳴の一撃がやってくる。

 

 

 

 

「───抜刀」

 

 

 

───『雷切』…!!!

 

 

 

 轟くように抜き放たれる瞬速の抜刀、紫電を纏い放ちながら抜き放たれたその雷光が如き一撃…戟による一撃を放とうとしていた宿儺の身体を一閃の下に斬り裂いた。

 

 

 





『影纏い』

 十種の影を何かに纏わせることで発動する拡張術式。

 やってることは原作で宿儺が十種でやった形を安定させずに召喚する方法と殆ど一緒、違いは何かに纏わせることでその効果を発動すること。

 纏わせる際に能力の一部…というかその式神が象徴する一つの能力しか使用出来ないという縛りにより出力を補っている、その為にその部分に関しては完全に顕現した時とほぼ同じ能力値になる。

 能力の一部しか使用しない為、十種の召喚の枠を使用しないというメリットがある…ただし、獅子王や白叡で影纏いをすると一枠を消費する。

 因みに、廻の『穿水』はこれを経由して発動している。

PS

 影纏いは一応召喚扱いで適用される。

 
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