最近鬱になってたせいで書けなかった…メロンパンと三途戦どうしよ。
雷が、宿儺の身体を斬り裂く。
雷光一閃…その名の如く振り抜かれたその一刀が宿儺の上半身を斬りつける、振り向きざまを狙って放たれたその一撃は防御を許さず宿儺の肉体に傷をつける…が───
───浅い
その傷は、深くまでは届いていなかった。
薄皮一枚とは言わない、表面だけとも言わず明確に肉にまで届いたその一撃はしかし、決して骨には届かずましてやその内にとは非常に言い難い。
呪力の一点集中、放たれる一撃に合わせるようにただ一箇所へと呪力を集中させることで宿儺は廻の一撃を防いでみせた。
あの速度で、あの不意打ちの最中でそのような芸当をやってのけた反応速度、あまりに埒外のソレに廻は無意識的に舌を打った。
宿儺の戟が振り下ろされる、無造作に振り下ろされたその一撃を廻は背後へと飛び退くことで躱した。
僅かな停戦時間、飛び退いたことで響く足音だけが静かに響くその中で両者はほんの僅かに相手を見据え、次の瞬間には再び敵手目掛けて飛び掛かる。
「───もう良いぞ、行ってこい」
呟かれた言葉と共に刀の内から獅子王が這い出してくる…ドロドロと刀に纏わりついていた影が音を立ててその姿を変貌させ、最後には依代としていた刀を壊しながらその姿を現す。
暴力の化身、今の今まで良く我慢出来たなと言いたくなってくるレベルでその瞳に殺意と憎悪を滾らせた獅子王はその眼光をより一層の怪物へと変貌させながら宿儺へと殴り掛かった。
迫る拳、スローモーションにも見える視界の中で獅子王の拳だけが普通の速度で進んでくる…そんな迫る死に対して宿儺は嗤ってのけた。
飛び越える、振り翳された獅子王の拳を走る勢いを殺さず前へと進むことで躱し、更にその勢いのまま宿儺は獅子王の股下を通り抜けた。
狙いは廻、股下を通り抜けてから一気に1から100へと速度を跳ね上げ廻へと接近する宿儺、地面を踏み砕きながらの全力走行にて廻へと突き進む様はさながら飢えた恐竜だ。
突き…戟を真っ直ぐと突き出しその腹部を串刺しにしてやろうとする…が、当然の如く当たらない。
ほんの僅かな最小限の動作にて突きを躱す、紙一重スレスレの動きで戟の一撃を避けた廻はそこから宿儺の戟を掴み取りグイッとこっち来いと力任せに引き寄せる。
「───手数勝負か?」
「───舐めんな、競うまでもなくお前の勝ちだろうがそれ」
引き寄せられたと同時にパッと手を離して言葉を放つ宿儺、暗に手数勝負は此方が上だぞ? という明確なソレを以って放たれた言葉に対して廻は知っていると言わんばかりに言葉を返し…それと同時に、宿儺の腹部へと蹴りを叩き込んだ。
前蹴り、ヤクザキックとも呼ぶべき乱雑な蹴りが宿儺へと直撃する、確かな衝撃と痛みが突き抜け明確なダメージを宿儺へと与える。
ならば此方もと宿儺は廻の頬と鳩尾へと拳を同時に叩き込んだ。
同時に繰り出される四つの拳、頬と鳩尾に対して其々二つずつの一撃、二つの手しか持たない廻にはどう考えても避けようが無いソレに対して廻が選んだ解答は至極単純だった。
顔面を前へと突き出す、放たれた右拳に合わせるように顔面を前へと突き出し頭突きをするかのように無理矢理拳を額に当てさせる、突き出しことにより狙っていたその位置をズラされた拳を廻の側頭部辺りで空を切り、逆に右拳には硬い感触だけが広がった。
鳩尾の二撃は両手で防ぐ、ダンっと響いてくる二つの拳の衝撃が掌に伝わり、その感触を受け止めると同時に廻はその両手を全力で掴み上げ───
「───相撲しようぜ、お前横綱な?」
そのまま、全力の力で以って宿儺の身体を思い切り投げ飛ばした。
言葉の意味はそのままに、あまりにも無造作に放たれたその言葉に宿儺の返答が遅れる…というより、端から待つ気なぞ更々無かったのだろう廻は言葉通り相撲のように宿儺の足を払い、そうして崩した体幹ごと宿儺を投げ飛ばした。
巨体が宙を舞う、筋肉隆々の大男の身体がいとも容易くブオンッと風切り音を立てて浮かび上がり大きく跳ね投げられる。
「───『龍鱗』『反発』『番いの流星』」
それと同時に言紡がれる呪詞、投げ飛ばされるのとほぼ同時に開始された呪詞の詠唱に廻の眉が僅かに揺れ動く。
───『解』
放たれる至近距離からの呪詞込みでの斬撃、投げられたことにも意を介さず、何の迷いも無くその命を奪いにかかる…が、廻もまたそれを意にすら介さない。
弾く…ガキンっと腕から鳴り響いてはいけないような衝突音、近場で飛び交う虫を払うように、タバコの煩わしい煙を払い除けるように、迫りくる斬撃に対して廻は徐ろに腕を振り抜きやってきた斬撃を弾き飛ばした。
呪詞込みでの一撃に対して廻は自身の腕に『解』が接触する直前に高出力の領域展延を使用、発動されたそれの接触した『解』は展延の効果によって僅かに威力を減衰され、それと同時に『解』は彼方へと弾き飛ばされた。
離れ業と呼ぶべき技量、幾ら展延で威力を減衰させたとてあの両面宿儺の斬撃、弾き飛ばすなぞ通常の出力であろうと出来ようはずが無い…が、しかし禪院廻はそれをやってのける。
当たり前のように、当然のように、出来ない訳が無いとでも言うように、粛々淡々と作業をする会社員か何かのように平然と捌き切る。
そしてそれを何でもないかのように熟し、その上で上へ上へと突き進んていくからこそ…禪院廻という
投げ飛ばされ『解』を放ち、そしてそれを廻が弾く…それら動作に掛けた時間は大凡三秒弱、あまりに僅かな時間で当然のように繰り広げられた応酬に遂に獅子王が追い付いてくる。
紫電を放ちながらの拳…ではなく、混ぜ込まれた『虎葬』による巨大で鋭い命を刈り取る爪。
珍しくも握り込まれず開かれたその手がジャキリと音を鳴らす、一体誰と何の存在を真似したのかとんと検討も付かないソレを獅子王は大きく振り被りながら宿儺へと振り下ろす。
大振りの一撃、慣れ切り見飽きたその一撃を宿儺はひょいっと擬音が付きそうなレベルで容易く躱した。
軽く身体を下げて頭を下へと移す、頭上を勢い良く斜めに通り過ぎていく爪による一撃に宿儺は余裕の笑みを浮かべながら一歩踏み込もうと足を踏み出し───
「───影纏い」
───『白叡』
その声を聞いた。
小さく響いた宿敵の声、つい先程繰り出された新たな単語と聞き慣れたその名、呟きぼやくように響いたその声に宿儺の意識は集中し、咄嗟にその視線を廻の元へと移す。
瞬間、埒外の速度にて突っ込んできた廻の拳が宿儺の顔面を打ち抜いた。
───『黒閃』
黒い火花が散る、残光を残しながら飛び散った黒い呪力が放出された呪力に照らされながら花火のように飛び散る。
影纏いによる高出力呪力放出能力の入手…純粋な呪力放出による攻撃を得意としていた白叡を使用した影纏い、当然それによって手に入るのは白叡自身が得意とする高出力呪力放出能力及びそれを使用した圧縮と収縮能力。
正確に言うのであれば高出力呪力放出は上記の圧縮と収縮能力によって成り立っているものなのだが、そこは大して重要では無い。
重要であるのはその高出力呪力放出能力を禪院廻が持つということ…元々平安の猛者達に比べてみれば低い呪力出力を黒閃による練磨と呪力操作技術によって補っていた禪院廻という人間がそんなものを手に入れれば一体どうなるか…答えは明白だった。
顔面が捻じれ飛ぶ、文字通りの意味で。
肉を潰す感覚、肉を捩じ切る感覚、顔という人間を構成するものの一部を思い切り破壊した感覚が拳から伝わってくる。
吹き飛ぶ宿儺の身体、未だにスパークする黒閃の残滓が廻の手の中で踊るようにその黒を弾けさせ、それを廻は握り締めた。
吹き飛ぶ、吹き飛ぶ、吹き飛ぶ…今までに無い程の超が付くようなあまりに重い一撃、黒閃であろうともただの一撃でここまで深く染み込んでくることは無かった…そんなことを思考しながらも吹き飛び続ける宿儺。
地面を抉り、建物を貫通し、近場の川を跳ねてその先にあったのであろう障害物全てを貫通してようやくと言ったように宿儺の動きが止まる。
引き摺られるように煙を上げながらも地面へとその身体を沈ませる宿儺、土煙ではなく火花による煙なのではないかと思わせられる程に焦げ臭い匂いを放つソレに、宿儺は何でもないように立ち上がる。
捻じれ飛んだ顔面の皮を反転で癒しながら立ち上がり、コキリコキリと首を慣らしながらニヤついた様子を隠さず、さてさてどうしたものかと言わんばかりにその瞳を宿敵の居る方向へと向けた。
呪力量も出力も問題無し、『函』の使用により呪力は削れてこそいるがそれでも継戦能力には依然問題は無く、出力に関しては言わずもがな。
戟は未だに手元にある、先の応酬の際に一度は手放したソレを宿儺は吹き飛ばされる直前に拾い上げていた…こんなにも頑丈なのだ、持っていて損をするということは無い。
依然何の問題も無し…宿儺は自身の状態をそう判断した。
そしてそれは、廻も同じだった。
獅子王を刀に纏わせたことで刀の呪具を紛失、銘こそ無いがそれでも業物であったソレを紛失したことに勿体なさを感じはするが、それでも宿儺相手にそれで済んだとなれば良い方かと思考を切り捨てる。
獅子王と白叡は共に健在、傷は負っておらず依然その戦闘能力に支障は無し…ただ、もう決め手にはならないだろうと考えた。
動きに慣れが見えた…千年前という空きがあったからこそ渋谷では上手いこと通じ、ここ新宿に於いても序盤の翻弄が可能ではあったが…恐らく動きに慣れ始めた時点で決め手にはなりえないだろうと、廻はそう判断した。
…ならばどうするか。
「…出し惜しみをする時期は過ぎた…か」
腕を前へと突き出し、握り込む…強く、音が鳴る程に強く皮ごと肉を引き千切らんとする程に強く強く、握り込む。
───ガコンッ…!!
音が鳴る、聞き慣れた音だ、高専の交流戦以降ずっと側で鳴り続けた己が誇る最強の音、己の誇る導。
獅子王が、纏っていた白叡が影ヘと戻る…どろりと溶けて黒く染まり、黒墨のような色と感触と化して廻の影の中へと…その奥に座す存在の元へと還っていく。
気配が溢れ出す、色濃く鮮明に、かつて唯一見ることの叶った千年前の情景…溢れ出した気配を察知した宿儺はふとしたようにその光景を思い出した。
「───来るかっ…!!!」
───ガコンッ…!!
吐き出されたその言葉に反応するように鳴り響く法陣の音、コポリと泡を吐き出す廻の影がまるで深海の海のようにその冷たさを辺りにバラ撒く。
「───布瑠部」
───由良由良
画してそれは言紡がれる。
コポリと泡を吹いていた影が静かに収まる、何をするでもなく静かに静寂に…その奥から、座していた存在がゆっくりとその面を上げる。
影の奥から歩いてくるように、這い出すのではなくゆっくりと登ってくるように、階段を歩いてきたかのような自然体でゆらりと影の中からそれは姿を現す…白色の巨人が、人型の姿をしたそれが鎌首を擡げて姿を現す。
瞳は無く代わりに存在するのは鹿の角、人のような身体の先端に生えた狼のような鋭い爪を携えた手足、長く靭やかな尾がゆらりゆらりと宙を漂いその背には白い翼がバザバサと生えていた。
ガコンッと頭上に浮かぶ法陣が廻る、音を鳴らしその存在を伝えるように法陣はぐるりと音を立てて回り続けた。
「───八握剣」
───異戒神将魔虚羅
十種影法術、その虎の子にして禪院廻が誇る最強の矛にして盾…呪いの王がついぞ待ち望んだ主菜が、遂にその面を上げる。
「───さぁ、喰らいつけよ呪いの王」
───メインディッシュだ…!!!
人外魔境は今此処に、佳境へと移り変わる。
最近、ダンダダンのアニメが始まったので見てみた…面白いから楽しみが増えた。