宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 メインディッシュの最初だから暴れ成分少なめ…というより作者のテンションがイマイチ乗ってくれなかったから描写が少なめ…誠に遺憾である。


人外魔境 メインディッシュ①

 

 

───ずっと、待ち望んでいた。

 

 

 

 

 ズシンっと、足音が響いた。

 

 ガコンッと、重厚な音が鳴り響いた。

 

 ただそれだけが鳴り響く、他の音など一切響かずただ静かに…ただ静寂だけが世界を支配する。

 

 

 視界の奥、朝日に照らされた向こう側、そこからゆらりと姿を現すその巨体に宿儺は生唾を飲み込んだ。

 

 

 

 ひたすら待ち望んだ、とにかく待ち望んだ……ずっとずっとずっと、あの日の続きをする為だけに…あの瞬間の続きを始める為だけに呪いの王は待ち望み続けた。

 

 

 

 

 

「…久しいな───」

 

 

───我が『主菜』よ…!!!

 

 

 

 感慨深く、一切の感情に至る全てを無理矢理押し込んだかのような声…四つ存在する己の手に滲む興奮による汗ごと掌を握り締めながら、宿儺は大いに笑ってみせた。

 

 

「───魔虚羅」

 

 

 それに対して廻は何も変わらない、何処までも無表情を浮かべながら宿儺を見つめ、ふとしたように己の影の名を呟く。

 

 返事は無い、顔を向けることも視線を向けることも無い…ただ真っ直ぐと宿敵の姿をただ見据える…その姿に、廻もまた一切の視線を向けずにただ一言、己の影へとただ告げる。

 

 

「───良いぞ、好きにやっても」

 

 

 一言、たった一言告げられたその許可通知、あの校舎の一角にて封じられたその行動の許可証を魔虚羅は今此処に手に入れた…その事実に魔虚羅は───

 

 

「───」

 

 

 何を言うでも吠えるでもなく、無言のままに足先から膝先へと力を込めて…前方へと、軽くその身を投げた。

 

 

 瞬間、音も無く地面が弾け飛ぶ。

 

 

 僅かな空白、ソレと共に弾け飛ぶ地面と砂塵、ほんの僅かの無音の後にやってきた唐突な動に認識が遅れたと言わんばかりに地面が砕け散る。

 

 時間にして一秒…否、ともすれば一秒にも満たぬ程度の秒数であったかもしれない…そんな速度で動き出した魔虚羅はまるで霧か何かのように唐突に宿儺の前へとその姿を現す。

 

 ぬるりと眼前に姿を見せる何時かの縁、宿敵の一度目の死の後に顕現した宿敵の誇る最強の一…それが霧のように目の前に現れた。

 

 

「───ケヒャぁ…!!!」

 

 

 狂気が滲んだ、この呪い合いに於いて何度目かの狂気に滲んだ笑顔、廻と魔虚羅にしてみればあまりに見慣れたその笑みに魔虚羅は何をするでもなく無造作に爪を振るう。

 

 

 

───『断』ッ!!

 

 

 それに対して宿儺もまた己の腕を振るう。

 

 絶対の一撃、空間を断ち魂にすら届く断絶の一撃が振るわれる。

 

 両者ほぼ同時、振るわれた爪と断絶の手刀、一切の遅れを見せず放たれた宿儺の一刀は放たれていた魔虚羅の爪へと衝突し───

 

 

 

───ガチリ…!!!

 

 

 瞬間、空間が罅割れた。

 

 奇妙な音だ、まるで歯車と歯車が絶妙に絡み合い合致した時のような音、寸分違わず嵌まり込みギシギシと音を立てて動かなくなるような…そんな音が衝突音として似つかわしくないような音が響き渡る。

 

 それと同時に歪み、罅割れ、砕け散る空間…透明な虚空にガラスのような罅が入り込む、互いの一撃の衝突地点を中心として尚も広がっていくその光景にさしもの宿儺も目を見開き驚愕を顕にした。

 

 しかし、その現象に一役買ったであろう魔虚羅はそんなこと知ったことかと言わんばかりに前蹴りを宿儺の顔面へと叩きつけた。

 

 僅かに生まれた驚愕による隙間、その瞬間を逃さず打ち抜いた魔虚羅の一発は宿儺の身体を後方へと浮かし飛ばし…その肉体が、再び魔虚羅の前へと立った。

 

 

───何っ!?

 

 

 蹴られた…自身でそう認識した直後、その時点で宿儺は既に魔虚羅の前へと立っていた。

 

 無意識下の行動と言うわけではない、ましてや魔虚羅が一気に宿儺に近づいたわけでも魔虚羅が何かの術式を使ったと言うわけでもない…ではこれは何か、強いて言うのならば単なる現象である。

 

 『世界を断つ斬撃』と『世界を断つ斬撃』…両者共に同様の効果と結果を齎す一撃を衝突させたことで発生した空間の歪み、現実の肉眼にまでその姿を現した罅割れ砕け散った空間の歪みはその隙間を埋めようと瞬時に周囲の空間を取り込みその姿を元の形へと戻そうとする。

 

 結果として引き起こされるのは時間の巻き戻しと錯覚しかねない程の吸引、後方へと飛ばされた宿儺の肉体はこの空間の吸引に巻き込まれる形でその位置へと無理矢理戻され、その際に偶然にも立った状態で空間の補填が終了されたことで現在の宿儺の状態が出来上がった。

 

 魔虚羅がソレに巻き込まれなかったのは魔虚羅は動いていなかったから、空間の補填をするまでもなく最初からそこにいて殆ど動いてもいなかった魔虚羅は空間補填の対象として選択されなかった。

 

 あくまで引き起こされたのは空間の歪みによる補填…五条や菫の持つ無下限呪術のような指向性や範囲、明確な威力を持たないソレはそれ故に人間や生物を呑み込むことなぞ到底不可能なことだった。

 

 とどのつまり…傷も何もかもをそのままに、ほんの数秒前の状態へと戻されたということ…つまり、もう一回同じことが起こる。

 

 

「───」 

 

 

 爪が振り下ろされる、恐ろしく正確に鋭い速さを伴ったソレが宿儺を頭から真っ二つにしてやろうと襲い掛かり、宿儺はそれを迎撃することなく大きくその場から飛び退いた。

 

 先の一撃の感覚からして魔虚羅の放った一撃は自身と同じく空間を断つ斬撃であったことに宿儺は気付いていた、そうでなければ先のような現象が起こる訳がないだろうことも。

 

 宿儺の瞳…正確に言うならば菫の瞳は呪力の流れを原子レベルで認識することが出来る、五条の六眼のように生得術式の把握こそ出来ないもののそれによる空間の認識は可能であった。

 

 だからこそ分かる…あの歯車のような音が鳴り響いたその直前にその箇所だけ空きがあったことが、そこにある呪力だけがぽっかりと穴が空いたように消え去っていたことに。

 

 故に宿儺は先のソレを空間の歪みによる現象であると推察した…種が分かっているのならば対処は楽だ、次に同じようなこと現象が起ころうと問題無く対応出来る…そんな風に思考を回していた時、ふとしたように宿儺の視界にそれは映り込む。

 

 腕を振り被った魔虚羅の姿、あまりに無造作に振り被られたその爪が今正に振り下ろされようとしているという刹那、宿儺の身体に悪寒が奔った。

 

 咄嗟に大気を蹴る、空気の面を捉え蹴り上げ、呪力を小さく爆発させることで速度を上げてソレから逃れようとする…が、間に合わない。

 

 爪が振るわれる、上段から振り下ろされた爪が虚空を斬り裂き、そこから奏で歌うように不可視の斬撃が宿儺の片腕二つを斬り飛ばした。

 

 シャランっという音が聞こえた、まるで鈴の音を鳴らしたような綺麗で優美な音、何処か神聖さすら感じさせるような音が不可視の斬撃と共にやってきて自身の片側の腕二つを斬り飛ばした…少なくとも、宿儺はそう認識していた。

 

 視界の中で力無く宙を舞う己の片腕、血を垂らしながら漂い無力に地面へと落ちる己の腕…しかし、宿儺はそれに頓着すらせず即座に反転で己の傷を癒し、即座に()に備える。

 

 

 視界の中で、魔虚羅が爪を振りかぶっていた。

 

 シャラン…鈴の音が鳴る、爪が振り下ろされると同時にまるで巫女が鈴を鳴らすように鳴り響く鈴の音、それと共にやってくる己の放つ必殺のソレと同様の…世界を断つ斬撃。

 

 直感で躱す、必死に訴えかけてくる死への感覚を頼りに身体を動かしその射程からどうにか逃れる。

 

 耳が飛んだ、後方のビルが縦に真っ二つと化した、縦に割れた建物がその自らの重さに耐えきれず横へ横へとズレて崩れていく、ただの瓦礫へとその姿を変えていく。

 

 吹き出した血が頬を伝う、耳元から垂れた赤が地面へと落ちていく、冷たくそれでいて何処が熱を伴うような感覚と共に斬り飛ばされた耳元から痛みがズキンズキンっと響いてくる。

 

 着地と同時に反転を回して耳を治癒する、土煙を巻き上げながら地面へと着地しながらもその視線は魔虚羅からは外れず、次の一撃を最大限に警戒する。

 

 

 魔虚羅が腕を振り被る。

 

 同じ動作、横薙ぎにするように右側へと振り被られた右腕、大きく身体を引き絞りながら大きく振り抜かれようとしているその右腕へと宿儺の意識は集中していた。

 

 

───必ず躱す。

 

 

 集中した意識の中で過る言葉、まずはコレを躱せなければ話にならないという無意識下での認識がそのまま宿儺の行動に直結していた。

 

 まずは躱し、その後に見切る…己と同じ斬撃を放つソレに対応して初めて宿儺はあの日の続きに手を掛けることが出来る…この己と同じ世界を断つ斬撃を踏み越えることで、初めて宿儺はあの三分間の先へと足を進めることが出来るのだ。

 

 見る、視る、観る…見逃さない、ほんの僅かな動きもタメも何もかもを逃さないと言わんばかりに見開かれた左右と異形の瞳がその動きの全てを視界に収める。

 

 腕が動く、動き出した魔虚羅の腕が極限まで集中した宿儺の視界の中で動き出す。

 

 ゆらりゆらりと宿儺の視界の中で動き出した魔虚羅の腕が徐々に徐々に振り抜かれようする、スローモーションと化した視界の中でただその一点にのみ宿儺の思考が割かれていく。

 

 

 来い、来い、来い、来い、来い、来い…遅く流れているように感じてしまう時間の流れ、来るか来ないかのギリギリの合間をゆるゆると動く魔虚羅の爪に宿儺は待ち切れぬと言わんばかりにその瞳を更に開く。

 

 涎が口から垂れる、だらりと開かれた口からこれまた無遠慮に口から涎が垂れ落ちて顎を伝って下へと落ち、宿儺はそれに気が付かない…それほどまでの集中力。

 

 来るか、来るか、来るか…あと少しで爪が来る、不可視にして断絶の一撃がやってくる、待ち望み焦がれた宿敵の誇る究極の一、その前座とも言うべき一撃がやってくる。

 

 来い、撃って来い、斬りに来い、殺しに来い…最低限それを踏み潰せなければ己はあの日の再来を見ることは叶わない、あの瞬間の再来の土を踏む事が出来ない。

 

 来い、もう待ち切れぬのだ、早く来い、良いから来い、あの日の続きを味合わせてくれ。

 

 忙しない思考、極限の集中力の中にて繰り返される渇望と飢えと狂気染みた執着心、決して自身の集中を邪魔しない傍らで絶えることなく無意識下に滲み出ては消えて滲み出ては消えてを繰り返すそれらの言葉は、宿儺が心の奥底に煮詰めた本音とも言えた。

 

 爪が来る、爪が振るわれる…爪が見えるか見えないかの位置にまで動いた魔虚羅の腕、その巨体に隠れて見ることの叶わない刃の出現に宿儺はより一層の集中で以ってその動きを捉えようとする。

 

 爪が…刃が来る、ジャキリと構えられた刃が己の肉を引き裂かんとその凶器が振るわれる…そんな宿儺の思考の隙間に入り込むように一つの影が視界に中へと映り込む。

 

 開かれた掌、鋭く凶悪な爪を携え今にも振り抜かれそうなその掌の上に何かが乗った人型の影、ボロボロの衣服にギラついた瞳で此方を見据える男の姿、満月のような金色の中に沈み込ませた光の無い瞳が真っ直ぐと自身を見据えている───

 

 

 時間の流れが戻る、遅く重苦しくトロ臭い時間の流れが急速に通常のソレへと瞬時に巻き戻り、それと同時に振り抜かれた魔虚羅の腕が何かを宿儺へと投げ付ける。

 

 否、何かではない、分かっているはずだ、それが何なのかを一番良く知っているのはそれこそ己であるはずだと、宿儺はその思考を切り捨てながら拳を振り被った。

 

 

 瞬間、魔虚羅により投擲されてきた廻の蹴りと宿儺の拳が激突した。

 

 重苦しい音、周囲に風圧を撒き散らしながら互いの肉を打つ音が響き渡る、バキリと割れた地面と共に宿儺の足が少しばかり後方へと引き摺られる。

 

「───斬られると思ったろ? 残念、俺でしたとさ」

 

 

 言いながらくるりとアクロバティックに飛び退き着地し、まるで悪戯が成功した悪ガキのような笑みを浮かべる。

 

 先程までの無表情は何処へ言ったと言わんばかりのその表情…あまりに唐突で、それでいてあまりに見慣れ過ぎたその表情の変化に宿儺はまるで釣られたように笑みを浮かべ───

 

 

「───たわけめが」

 

 

 何処か呆れたような表情で、悪態を吐き出した。

 

 

 

 





魔虚羅の『世界を断つ斬撃』について

 放つ際に必ず鈴の音のような音が相手の耳に届く、これは距離の問題ではなく必ず相手の耳へと届く仕様となっており、それを軸にして斬撃の種類を判断することが可能となる。

 どのように音を鳴らしているのかは不明、しかしこの『音によって斬撃の到来を知らせる』という縛りによって、魔虚羅は無制限に『世界を断つ斬撃』を放つことが可能となっている。


宿儺

 『たわけめが』の所は尾形のタラシめが…のシーンを頭に思い浮かべながら書いて、滲み出た本音の所は鬼武者(アニメ)の小次郎を頭に思い浮かべながら書いた。


魔虚羅

 宿儺への恨みはとにかくとしてお父ちゃんに呼ばれた〜♪とか思いながら斬撃振り回してた子、正直考えてる手札多すぎてどうすれば良いのか決めあぐねている作者がここにいる。

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