宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

139 / 187

 作者が週一の二話投稿を止めた理由:そうしなきゃ書けないレベルでネタが切れた。


人外魔境 メインディッシュ③

 

 

 影の中から引き抜かれた銃が…所謂ところのアサルトライフルが連続して火を放つ。

 

 本来両手で構えるはずのそれを片手で構え、起こり得るはずのリコイルによる軌道のズレを自らの腕力にて無理矢理殺し、ガガガッとけたましく銃弾を飛び散らせる。

 

 引き金を引いてからのフルオート射撃、吐き出された無数の銃弾が標的目掛けてその牙を突き立てんと猛進し、その牙が空を切る。

 

 獣のようなジグザグ走行、吐き出された銃弾に対して宿儺は身を獣のように低く屈めながら疾走を開始、放たれた銃弾を置き去りにするように右へ左へと次から次へとジグザグに動き回る。

 

 逃げ回る宿儺、それを追うように襲い掛かる現代兵器、追い込み捉え殺そうとするように執拗に宿儺を追い回す乱射された弾丸が無数の建物や瓦礫に風穴を空ける。

 

 

 カチリと、音がした。

 

 弾切れ、連続して火を放っていた機器の唐突な停止、燃料の切れた自動車のようにあまりに唐突に停止した手元のソレに、しかし廻は特段焦った様子もなく空と化したマガジンを銃から取り外し、次の弾倉を取り付けようと腕を動かした。

 

 

───『剥』

 

 

 しかし宿儺はそれを許さない。

 

 無機物に対してのみに設定された絶対切断、『廻輪奇劇』を破壊した対無機物特攻の斬撃が廻のアサルトライフルをバラバラに斬り刻む。

 

 八分割、まるで大根でも切るかのように手元でバラバラの鉄屑と化し地面へと落ちるライフル、硬質な音が丁度八つに分かれて鳴り響き、それに伴うように宿儺と廻は同時に思い切り地面を踏み付けた。

 

 片や踏み込みが為に、片や新たな武器を取り出さんが為に…理由は違えどもその目的は両者共に変わらず、眼前の宿敵への殺意がその行動を引き起こす。

 

 先手を取ったのは廻だった…踏み付けた影から銃器が飛び出し反射的にそれを手に取り引き抜く。

 

 ガシャンコンッと持ち手をスライドし、弾丸を装填する…世間で言う所のポンプアクションと呼ばれるその一連の動作を手早く終えながら廻は手元のソレを…ショットガンを宿儺へと向けた。

 

 至近距離、踏み込んで来た宿儺との距離は僅か腕一本と少し分、散弾銃の射撃の位置としてはあまりに的確で効果的なその距離から廻は何の躊躇いもなくその引き金を引いた。

 

 ズガンッも強く放たれる散弾、銃声を響かせてポップコーンのように飛び散ったソレは残り僅かとでも言うような距離にまで接近していた宿儺の肉体へと突き刺さり…そして宿儺は、そうして突き刺さった弾丸の全てを無視して、引き絞った拳を廻へと叩きつけた。

 

 咄嗟にショットガンを盾に拳を防ぐ、バキャリと乾いた音が廻の耳へと届き直感的に手元の獲物が破壊されたことを廻は悟った。

 

 血塗れ、傷跡から若干の白が見えるまで深く入り込んだ傷すら存在している宿敵の姿に廻は内心で舌を巻いた。

 

 痛いだろうに、並大抵の痛みではなかろうに、その全てを無視してでも攻撃を敢行した呪いの王の姿に廻は思わずと言ったように口を開いていた。

 

 

「───やっぱりイカれてるよ、お前っ…!!」

 

「───ハッっ! 貴様の言えたことか!!?」

 

 

 宿敵の言葉に対して宿儺もまた反射的に応えていた、イカれているというのであればそれは正しく貴様のことだろうと、そんな意思表示を隠しもせず宿儺は廻の言葉に返答する。

 

 腕を斬り飛ばされても関係無いと言わんばかりに突っ込み拳を叩き込む、腹から臓物が溢れかけても反転があるからと一時無視して頭突きと蹴りを叩き込む、頭が欠けて脳液が垂れ出し脳髄の一部がパンのように毟られても知ったことかと言わんばかりにその動きを止めず、挙句の果てには反撃に回ってくる。

 

 本来反転への意識によって僅かに止まる、或いは精細さを欠くはずのソレ、平安の猛者達であっても容易く無視は出来ないはずのソレを目の前の男は平然と無視する、踏み越えられないはずの一線をこの男は平然と踏み越える…それを知るが故に、宿儺は禪院廻という人間をイカれていると評した。

 

 

 イカれている? それは貴様のことだろう? …少なくとも、こう答えるだけの確信と経験が宿儺にはあった。

 

 

 そんな宿儺の内心を知らない廻は殴りつけられ破損した散弾銃の銃身を手に持ち、バットでも振るうかのように思い切り振り抜いた。

 

 フルスイング…最早バットと言うよりゴルフクラブなのではないかと問い質したくなるような遠心力を利用した実に見事な振り抜きが宿儺の顔面を打つ。

 

 後ろへと吹き飛ぶ宿儺の顔面、後方へと傾いた頭部に釣られるように後方へと仰け反っていくその肉体に追い打ちを掛けようと振り抜いた散弾銃をもう一度振り被ろうと廻は散弾銃を構え、振り下ろす。

 

 振り下ろされた散弾銃、突き刺すように真っ直ぐと腹部目掛けて振り下ろされた散弾銃はしかし空を切る…仰け反った態勢からさも当然のようにバク転を繰り出した宿儺によってその攻撃は空振りと化す。

 

 

「───魔虚羅っ!!」

 

 

 そんな宿儺の元に、禪院廻の誇る最強が襲い来る。

 

 主の呼び掛けに応えて突撃を敢行する魔虚羅、言葉にされたわけでもないソレに対してしかし魔虚羅は的確にその思慮を汲み取る。

 

 音が鳴らない、純粋な爪による斬撃が宿儺の首筋へと振るわれ、それを宿儺は片腕で受け止めた。

 

 ズズッと僅かに足が動く、踏み締めた足が音を立てて地面を擦り、片側からやってくる圧力に片腕が震える。

 

 

───シャラン

 

 

 そこへすかさず繰り出される絶対切断、鈴の音を鳴らしながら振るわれる爪の一撃に宿儺は『断』を当てることで相殺する。

 

 空間が割れる、先と同様の現象が引き起こされ両者の立ち位置と弾かれた腕の位置が僅かにズレた…だから何だ、最早慣れたと言わんばかりに宿儺と魔虚羅は同時にその腕を振るった。

 

 叩きつけられる拳と拳、爪では埒が明かないと思ったのかはたまた別の理由からか、魔虚羅は爪による斬撃を止めて拳による打撃へと攻撃法を切り替えた。

 

 片腕と片腕、爪による圧力はそのままにもう片方の腕を宿儺へと振り被り、宿儺もまたそれに対して己が拳を振り被った。

 

 激突する両者の拳、一発二発三発四発五発と何度も何度も己の拳を敵手へと叩きつけんと拳を振るい、振るう度に両者の拳は激突する。

 

 激突する度に鳴り響く鐘のような重たい音、聞いているだけで手が痛くなりそうな感覚のしてくるような音、絶え間なく続くソレは既に残像を残さんばかりの速度で以って振るわれ始めていた。

 

 消えてはぶつかり消えてはぶつかり、最早この一連の攻防を観戦している一部を除いた者達の目にはその動きを捉えることが出来ないでいた、それほどまでの速度。

 

 片腕を弾き、拳を振る…爪による圧力を鬱陶しがった宿儺によって弾かれたもう片方の腕が後方へと下がり、その余韻で魔虚羅の態勢が僅かにズレた…それを宿儺は見逃さず、空かさず魔虚羅へと突きを見舞う。

 

 

───『貫』

 

 

 貫通特化の一撃、白叡どころか獅子王の肉体すら貫いてみせた貫きの一閃が魔虚羅へとその牙を剥き、それに僅かに遅れるようにして魔虚羅は弾かれた片方の腕を振るった。

 

 横薙ぎ、そのまま進めば爪による斬撃か或いは純粋な腕の薙ぎ払いが飛んでくるだろう行動、当然喰らえばタダでは済むまいが…魔虚羅のソレが届くよりも先に宿儺の一撃が届く…ただし───

 

 

───ガゴンッ…!!

 

 

 グシャリと、宿儺の指が折れ曲がった。

 

 突き放たれた宿儺の一撃、白叡と獅子王の肉体を貫通せしめたその一撃は魔虚羅の肉体を前にその刃先を砕かれた。

 

 指から血が吹き出る、折れ曲がった指がぷらんぷらんと力無く慣性的に揺れ動き、先の一撃が如何に効果を発揮していないのかが理解出来た。

 

 舌打ちが漏れる…よりも先に魔虚羅の一撃が宿儺へと届く。

 

 横合いからの薙ぎ払い、爪による一撃ではなくあくまで薙ぎ払い、脅威としてはそこまでではない…が、それでもあの魔虚羅の腕の薙ぎ払いだ、そんな中途半端なものであるはずがない。

 

 胴へと直撃、そのまま力任せにその身体は吹き飛ばされる。

 

 言葉にするのならばラリアット、それによって吹き飛ばされた身体を大いに勢い良く宙を飛び、ほんの一秒そこらの後に一つのビルの窓ガラスを突き破った。

 

 転がり込み引き摺られていく自身の身体、それを指を床へと突き立てることで止めた宿儺は、瞬時にその場から飛び退くように動き出した。

 

 瞬間、床から飛び出してくる水の球体、幅にして大凡横向きに置いた大型車のタイヤ程度のソレが先程まで宿儺の居た箇所を型抜きのように抉り抜き、その数瞬後に下の階層から床をブチ抜きながら魔虚羅が現れる。

 

 身体だけ生やすような形でその姿を現した魔虚羅、床を文字通りブチ抜きながら現れたその存在に対して宿儺は躊躇うことなくその拳を振るう。

 

 振るわれた拳に対して魔虚羅は瞬時にその肉体を飛び出してきた穴から下へと逆戻りすることでその一撃をスカらせ、そこから更にお返しと言わんばかりに床の向こう側から宿儺へと向けてその爪を突き立てた。

 

 床の向こう側から突き立てられる魔虚羅の腕、宿儺の立ち位置から僅かに数cm程ズレた真横からその腕が生えて来るのを目撃した宿儺はその指を銃の形に変えて床へと向けた。

 

 

 

「───『龍鱗』『反発』『番いの流星』」

 

 

 

───『解』

 

 

 詠唱込みの『解』が床ごと魔虚羅を打ち付ける、どれだけ斬撃の威力を殺せはしてもその勢いまでは殺せない、避ける間も無く詠唱済みの『解』を至近距離で食らった魔虚羅はその衝撃によって建物の最下層…地下の段階に至るまで叩き落される。

 

 崩れ落ちるビルの一角、内から崩れていくその光景を直に目撃していた宿儺は宙を漂う僅かに残った床の破片を蹴ることでその場から逃れようとし…その顔を笑みに歪めた。

 

 

 瞬間、銃声と共に弾丸が宿儺の脳天目掛けて飛来し、宿儺はソレを首を傾けることで回避した。

 

 

「───チッ…」

 

 

 舌打ちと共に行われるボルトアクション、ボルト特有の重たい音と共に落ちていく赤色に塗装された薬莢を尻目に、宿敵目掛けて飛び込みながら行われた一連の行動の後に再び銃声が鳴り響く。

 

 放たれた銃弾は今度は心臓目掛けて突き進む、最早狙撃と呼ぶにはあまりにも近いその位置に於いては最早回避は現実的な手段とは言えない…そのはずなのに、宿儺はこれまた僅かに身体を動かすことで容易くソレを躱した。

 

 ボルトを引っ張る、カシャンッと排莢された薬莢が宙を舞い、それと同時に廻は崩れかけているビルの中核へとその足を踏み入れた。

 

 崩れず残っていた数少ない足場、今にも他の物同様に崩れて落ちてしまいそうなソレに着地するが否や、廻はその足場を踏み壊しながら手元にある狙撃銃を何の躊躇も無く投げつけた。

 

 勢い良く、まるで射出された弾丸のような速度で以って飛来した狙撃銃、まるで投げ槍か何かのように真っ直ぐと自身へと向かってきたそれを宿儺は片手で弾き、そこへ廻は横薙ぎの蹴りを叩きつける。

 

 

───『黒閃』

 

 

 直撃、宿儺の身体が吹き飛び、隣のビルへと飛来する。

 

 大袈裟な音を立てながらビルの一角…恐らく世間一般的に言う所のサラリーマンが通うような、そんなパソコンと書類の山が無数に点在している部屋に突っ込んだ宿儺は自身へと降りかかってくる書類の数々を鬱陶しげに振り払った。

 

 瞬間、ガラスを突き破りながら禪院廻がやってくる。

 

 

 紙束が衝撃と風に舞う、互いの姿を覆い隠すようにパラパラピラピラと大量の書類が舞い散り踊り狂う…そんな一室の中で両者は徐ろに動き出した。

 

 瞬時に近づき膝蹴りを放つ廻、宙を舞う書類によって遮られた視線の中をまるで縫うように近づいてきた廻の膝蹴りを宿儺は両手で押さえながら身体を後方に下げることで防ぎ、空いているもう一つの両手で廻の顔面を挟み込むようにして拳を放つ。

 

 身体を屈ませることで拳を躱し、身体を屈ませる同時に足払いを仕掛けるも足を上げられることで躱される。

 

 踵落とし、身体を屈ませた廻に対して宿儺はその脳天目掛けて踵落としを叩きつける、腕を交差させて防いだ廻の足元が床へと沈み、純粋な打撃による重力が廻へと降りかかった。

 

 

「ッッラァァッ!!」

 

 

 裂帛の気合、雄叫びと共に弾かれた踵落としに宿儺の足はタタラを踏み、そこへと廻は近場にあった机を片手で掴み上げ投げつける。

 

 投げ付けられたデスクを宿儺は飛び蹴りの要領で上へと蹴飛ばす、宙に浮いたその瞬間を逃す手は無く廻は宙に浮かんだ宿儺相手に全力の回し蹴りを叩き込まんとする…が、近場にあった椅子を起点に宿儺は横に回転しながら飛び上がることでソレを躱す。

 

 躱された、紙束の何枚かが回し蹴りの際に引っ付いてきたことを煩わしく思いながら廻は追い打ちと言わんばかりに拳を握りしめ、宿儺はそれを迎撃しようと近場にあったボールペンの束を手に取り…ふとしたように、両者共にその視線を横へと向けた。

 

 瞬間、飛び込んでくる紫色、純粋な呪力砲に両者は咄嗟にその場から後方へと飛び退いた。

 

 眼前を通過する紫紺の砲撃、崩れ落ちたビルから飛び込んできたソレに誰がどういう経由でそれを放ったのかを両者は察する。

 

 咆哮が轟く、無数の動物の声を編集して混ぜ込んだような咆哮、風通しの良くなった窓の向こうから聞こえてくるその声に宿儺はからかうような笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「───良いのか? 迷子が呼んでいるぞ?」

 

「───そんな歳でもねぇよウチの子は」

 

 

 指の骨を鳴らしながらさも平然とそう返した廻に宿儺はそれもそうかと納得の声を漏らしながら、内心で冷静に思考を重ねた。

 

 最早『貫』と『解』は魔虚羅には一切通じない…というよりダメージを通せない、武器として機能しない。

 

 であるのならば適応関係無しに相手を斬り捨てる『断』で殺そうとも考える…が、基本的に近接攻撃であるが故に不意を突きづらいし、何より魔虚羅自身が同じことをやってくる為か、かなりの高確率で『断』を相殺されてしまう。

 

 では禪院廻から先に殺してしまおうか…否、そんなことをしても魔虚羅が停止しないことは千年前に判明している、そもそもその当の禪院廻を相手に勝利を収めるということが正しく至難の業なのだ、魔虚羅が現存しているのであれば尚更である。

 

 『無下限呪術』…正確に言えば五条菫の『無下限呪術』はその大半が魔虚羅に適応されている…『蒼』も『赫』も当然のことだが『虚式』も『黎』も五条菫の記憶によれば適応されてしまっている……ならばどうするか───

 

 

「───ケヒッ」

 

 

 気配が切り替わる、『函』が解かれる。

 

 纏っていた領域の気配の消失、あまりにも唐突なその行動に廻の眉が僅かに細められる…それと同時に主の横へと降り立つ魔虚羅の姿に、宿儺はその顔に冷や汗を貼り付けながら嗤った。

 

 

 

───この式神を殺す為には、俺の持つ最大火力を…。

 

 

 

 宿儺は既に分かっていた…自身の持ち得る全てが最早通じないことに、自身の術式では眼前の式神を殺し切れないことに。

 

 『解』『捌』『貫』『断』『竈』…それら全てが最早眼前の敵を殺すには申し足りないという事実に宿儺は当に気が付いていた…千年にも及ぶ適応の日々によって自身への対策塗れと化したこの怪物相手には、己の業の大半が効かない事実に宿儺は既に気がついているのだ。

 

 

 では、ならばどうするか、ならばどう殺すのか……選択肢なぞ端から無い…たった一つの、ただ一つの唯一の答えだけが宿儺の中にはある。

 

 それ、即ち───

 

 

 

 

 

 

───完成した『滅式』を、決めるしか無い…!!!

 

 

 

 

 五条菫の最大の奥義、その顕現のみである。

 

 

 

 

 





『滅式』について

 沖縄にて五条菫が半ば事故的に発動された業、発動したら沖縄の五割が七割が消し飛ぶ程の威力を誇るが、実はそこまで範囲が広がっている時点で完成していない。

 完成した滅式の範囲は無制限の『茈』よりも小さい…その代わり当たったらほぼ確実に『消える』。


 完成した滅式の難易度を具体的に言うのならば『陰蜂』


宿儺

 実は内心冷や汗ダラダラ、滅式決められなかった文字通り負けが決まる。
 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。