なんか余計な話を挟んでしまった気がする、これ大丈夫かなぁとか思ってしまう今日この頃、低評価とか来たら凹む。
因みに羂索と三途戦は本編と番外編のどっちが良かと思いますかい?
「───お久しぶりです、兄様」
ふと、懐かしい声が聞こえてきた。
暗い空間、まるで夜闇のように薄暗い空間の中に俺は何時の間にかポツンと立っていた。
さらりと頬を撫でる弱い風、ふとしたように周囲へと視線を向ければそこに広がるのは赤一色の花畑…一般的に彼岸花と呼ばれた赤い花達が、俺を出迎えるようにそこにはあった。
俺の視界の中を花弁が舞う、花に釣られて飛んだ花弁が視界を舞い散り、頬を掠め、薄暗い空間を更に赤へと染め上げる…そんな光景に少し見惚れているようなタイミングで、それはやってきた。
懐かしい声だった、懐かしい気配だった、千年前に置いてきて以降会うことの叶わなかった愛しい家族の存在が確かにそこにはあった。
振り向く、急ぐわけでもなければダルげにでもない、ただ普通に当たり前に振り向いて…ソレを見つけた。
黒い髪に俺と同じ琥珀色の瞳、温和で優しげな瞳と整った顔立ちが合わさりそれはもうモテるだろう顔立ちをした男の姿、着物を着込んで腰に刀を差し、俺の姿を心底嬉しげに見つめるその男の姿に、俺は無意識の内に微笑みながら口を開いた。
「───久しぶり、薫…元気にしてた?」
「───はい、お陰様で…私はとても幸せでしたよ、兄様」
ゲボっと、血が吐き出された。
宙から地へ、浮かんでいた肉体を地面へ降ろすと共に宿儺はその口から大量の血液を吐き出した。
ゲボっ、ゴボッ…生々しい音を辺りに響かせながら何度も何度も血を吐き出す、鼻から鼻血が流れ出し瞳の白が赤へと染まって溢れ出し、さも当然のように頬を伝っていく。
頭に激痛が響く、脳を直接殴られたかのような感覚が宿儺を襲い、思うように立ち上がれないという時間が暫く続く。
滅式『白』を放った代償…それは宿儺が考えていたソレを遥かに凌ぐレベルで宿儺へと降り掛かり、今尚も宿儺を苦しめ続けていた。
本来の時間軸にて五条と宿儺が行った破壊した脳を即座に反転術式で再生させることで焼き切れた術式をリセットするという技…それの大凡七回分の負荷、それが一息の間に宿儺へと襲いかかっていた。
並大抵のソレではない、普通なら即死していても可笑しくない度を越したその代償、あの五条悟でさえ五回が限界であったそれを二度も上回る命知らず…その代償は、現在全力で反転術式を回している呪いの王という形でこの世に現れていた。
吐き出す、吐き出す、吐き出す…時間にして大凡三分そこら、大量と言う言葉が生温くなる程のありったけの血液に地面が染め上がる、手を動かすだけでぴちゃりと音がする程に深い血液の量に…しかし、呪いの王は立ち上がった。
片膝を付きながら、荒い呼吸を繰り返しながらも立ち上がった呪いの王は、その視線を結果の方向へと向けた。
全てが、刳り抜かれていた。
半径にして大凡100m、宿儺の持つ領域の半分程度の範囲に広がった『白』の被害は文字通り全ての消失だった。
建物、自動車、看板…何も無い、文字通り最初から何も存在しなかったのではないかと、そう勘違いしてしまいかねない程、その場には何一つとして存在していなかった。
塵も灰も何も無い、消失という言葉が良く似合うような完全なる消滅、街のその一角だけがゲーム画面で消されたかのように存在しない…そんな中で、唯一そこに存在する物体があった。
血に塗れた肉体、千切れた片腕にドクドクと流れ出す血液、今尚も流れ出すその赤は一様に止まる気配を見せず、そのままであれば死ぬだろうことは誰の目から見ても明らかだった。
「───………ッッッ!!!」
その側でモゾモゾと動くのは白い巨体であった存在、胴体と右腕以外の全てを消失したその存在は這いずるように自身の主の元へとその肉体を動かそうとするも…這いずるために突き立てた指がガラガラと崩壊したことで、その行動を阻害されていた…時間が経てば最後にはその存在も消滅してしまうだろうことは、誰の目から見ても一目瞭然の光景だった。
口元を拭う、自身が吐き出した血液を拭い、下に広がる鉄の味を噛み締めながら呪いの王と呼ばれた存在は真っ直ぐと自身の宿敵、その血塗れの姿を視界に捉え───
「───俺の勝ちだ…禪院廻」
何処か寂し気に、呟くようにその言葉を放った。
「…正直言ってさ、驚いてるんだよな俺」
サクリサクリと花畑を歩きながら、俺はふとしたようにそう言葉を溢した。
彼岸の花が広がる赤色の花畑、何処に続いているのかも分からないそんな景色の中で俺と薫は何処へ行くとも知れないその中を、ただひたすらに歩き続けていた。
「何にですか?」
「こうしてお前と会えた事実にだよ…三度目なんだ、もう死後なんて無いって思ってたから」
死んだらみんな纏めてあの世に行く、行ってからどうなるかは知らないけど…多分俺と同じように輪廻を廻って何時かは俺と同じように生まれ変わる…それが、俺にとっての死後の認識だ。
じゃあ…記憶を持って生まれて、それを二度繰り返した俺は一体どうなるのか…考えただけじゃ分からなかったけど…少なくとも、もう俺という存在は残らないだろうなとは考えてた。
次なんて来ない、二度も繰り返して記憶を持ち込んだんだ、それでまた廻って次へとは行かない、記憶が消えるどうこうじゃなくて魂ごと消されるんじゃないか…とか、色々と考えたりもしてた。
だからこそ…俺は余計に嬉しいのかもしれない、置いてきてしまった弟と、こうして話せることが。
手頃な岩に腰を落ち着ける、歩くのが疲れたという雰囲気を出しながらさも当然のようにそこへと座り込んだ俺を、薫はジッと見つめてくる…それに俺は照れくさくなって思わず頬を掻きながら、ふとしたように口を開いた
「…ごめんな、薫」
唐突に出てきた謝罪の言葉、俺自身からしてみてもあまりに唐突に飛び出してきたその言葉に薫は何処かキョトンとしたように俺のことを見てきて…それに構わず、俺は言葉を続けた。
「───俺、まだそっちには逝けないや」
吐き出した言葉に確かな実感と感情を込めた…まだ死にたくない、まだ死ねない、終われない…そんな生への執着をあらん限り込めたような、そんな言葉を俺は薫へと吐き出した。
薫の表情は変わらない、変わらずキョトンとしたような顔で俺を見ている…いや、もしかしたらキョトンとかじゃなくてもっと違う表情なのかもしれないけど…そんなの関係無しに俺は自分勝手に言葉を吐き出し続ける。
「向こうでさ、友達が出来ちゃったんだよ…勝ってくるって約束しちゃった奴等が居てさ、俺を待ってくれるって人達が居てさ…離れるのを躊躇うくらいのモノを、向こうに置いてきちゃったんだよな、俺」
酷いだろと、軽く言ってのける…馬鹿みたいに。
酷い奴だ…千年前だって、平安の頃だって似たような状況だった癖に、待ってくれてる人達なんて今よりも大勢居た癖に、親友が涙を流して止めてきても無理矢理死へと向かって行った癖に。
「…ごめんな薫…俺、あの時死んでも良いって思ってた、生きて帰ってくる気なんて本当は無かった、今の…千年先のこの日に繋がればそれで良いやって軽く考えてた」
本音を吐き出した…今まで心の奥底に沈み込ませていた甘く浅く、馬鹿みたいな人間の考えを。
死にたくなかった…嘘だ、俺は確かにあの日あの瞬間まで死んだって良いって思ってた、あの千年前の宿儺の時に俺は確かに死ぬ気だったし、実際に死んだ。
負ける気が無かった? 勝つ気はあった? …嘘を吐くな、勝つ気があったなら何で魔虚羅を使わなかった、負ける気が無かったなら何で出し渋った。
心の何処かで宿儺には絶対に勝てないって思ってる自分が居た、心の何処かで両面宿儺に勝てるのは五条悟だけだと言ってくる自分が確かに居た…今だから言う、だから負けたんだと。
「ごめんな薫、俺は真面目にやってなかったかもしれない、真面目に生きてなかったのかもしれない」
次に宿儺に負けて目が覚めた後、俺の思考は一つの考えで満たされた…魔虚羅を最初から使ってたら勝てたんじゃないかって、ひょっとして俺が出し渋らなきゃ勝てたんじゃないかって…そんなたらればばっかり考えてた。
やらない後悔よりもやる後悔とは良く言ったものだと思う…もしも俺が魔虚羅を使った状態で負けていたらきっとこんなことは考えない、そうなったら俺はどうやれば宿儺に勝てるかだけを考え続けてたはずだ。
あれをやればどうなっていた、あれをやったらこうだったんじゃないか、あれをアレをあれはあれだったら……そんな言葉だけが頭を過ぎていく。
そうだ、これは俺の我儘なんだ、ただただ俺の残した後悔への証明の為に俺は戦っているんだ、だから死にたくないんだ。
だから、だから───
「だから…ごめんな薫、俺はまだ死ねない、もう死ねない…この後悔を晴らさない限りは、絶対に死にたくない…だから、そっちにはまだ逝けない」
否定と拒絶…迎えに来たのかどうかも分かっていないこの状況下でのその言葉に、薫は困惑するでも険悪な顔を浮かべるでもなく、ただ静かな表情のままに俺の言葉の全てを聞き終えて───
「───えぇ、そうしてください」
ふとしたように、微笑みを浮かべながらそう口を開いた。
そうしてください…放たれた全肯定さながらの言葉にポカンとする俺に対して、薫はくすりと笑みを浮かべながら安心しましたよと言葉を溢しながら俺のことを真っ直ぐと見据えた。
「ここでこっちに来ようとされたらどうしよう、私達の所に行きたいなんて言い出したらどうしよう…そうなったらもう殴ってでも向こう側に戻さなければいけないな…なんて考えてましたから、そんなことにならなくて良かったです」
呆気からんと手首を振りながらそう言ってのける薫の姿に俺は驚愕を隠せなかった…もう少し何か言われるとか思ってたのに、なんかこう馬鹿野郎とか言われたりするとか思ってたのに…なんか全然そういうのが無い…なんで? 俺がしたこと割と利敵行為ぞ?
そんな俺の様子を悟ったのか、それとも単なる気紛れなのか…恐らく前者であろう薫はその琥珀色の瞳を輝かせながら、真っ直ぐと俺を見据えて口を開く。
「兄様…私は、私達にとってはそんなことどうでも良いのです、難しいことも深いことも何も無く、願っていることはたった一つだけ…兄様───」
───しっかり生きてください。
その言葉に、俺は心の底から愕然とした。
なんてことない、ただしっかりと生きてほしいという言葉通りの意味の言葉だ、深くもなければそう難しいことでもないただの言葉…ただ、自分達のことなんて気にするなと、そう暗に言っているだけの簡単な言葉だった。
「楽を噛み締めて、苦を噛み潰して、喜と哀を最後の一片まで飲み干して…そして最後に、冥土の土産としてそれを話してさえくれれば、私達はそれで満足なんです…だから兄様───」
───最後まで、気楽に生きてください。
…言いやがったと思った。
こちとら無茶苦茶気になって気になって仕方が無かったっていうのに、なんてことないようにヘラヘラしながら気にすんなって、そう言われてしまった、しかも満面の笑顔で。
これじゃあ、気にしてた俺が馬鹿みたいじゃないか…なんて、そんなことまで考えてしまう…いや、きっと馬鹿なんだろう、馬鹿だからあんな間違いをする。
「…分かった」
ため息を吐き出す、岩場から立ち上がりながらぶらりと身体を揺らし、ただ静かに俺の愛しい弟へとその視線を投げ掛けて───
「───じゃあ、勝ってくるな」
「───えぇ…ご武運を、兄様」
そんな短いやり取りと共に、俺の視界は暗転した。
次に目を開けた時、真っ先に入ってきたのは青空だった。
澄み渡るような蒼い空、真っ白な雲が悠々と泳いで太陽の光がそれに反射する、寒々しい風が頬を撫で、そのすぐ後に全身から激痛が当たり前のようにやってくる。
何時かの光景の焼き直し、違うのは曇天の雨ではないかそうでないかくらい…未だに流れる血液が生を遠ざけるような感覚がした。
むくりと起き上がる、両足は無事で片腕を破損、直ぐに反転を回して傷を癒し、パンパンと服の埃を落としながら立ち上がる。
首をゴキリゴキリと念入りに回し、聞こえてくる骨の音と筋肉を伸ばす感覚を心地良く思いながら何気無く周囲を見渡し…驚愕の表情を浮かべる呪いの王と、今にも崩れ落ちてしまいそうな己の式神の姿を見つけた。
「…戻れ、魔虚羅…死ぬんじゃない」
何処か乱雑な言葉使いで撤退を促す主の言葉に、しかし魔虚羅は否を唱える…まだやれる、まだ役に立てると言わんばかりに崩れかけの身体を再生させようと呪力を廻し…それを行う前に、その頭を撫でられた。
「いいから治してきな…治ってくれないと呼べないだろ?」
先の乱雑とは違う優しげな言葉、頭を撫でながら告げられた言葉に反応を見せなかった魔虚羅は、その数瞬後にその肉体を影の中へと沈み込ませ、遂にはその姿を消した。
影の中へと戻っていく己の式神、その姿を最後まで見届けた廻はため息を一つ吐き出しながら、その瞳を呪いの王へと向け直した。
クツクツと喜色の声が響く、青天の下に響くその声は先に聞いてきた狂気に塗れたソレとは幾分か違う、何処までも純粋な喜びの感情を現していた。
「…嬉しそうだな、随分と」
「あぁ、事実嬉しいのだろうな…良く舞い戻って来た」
怪訝そうな顔を浮かべながら疑問を放つ廻に対して、宿儺は何処までも純粋な肯定の言葉で返した…お前が舞い戻ったことが嬉しいのだと、その喜びを一切隠さないその姿に廻は珍しいものを見たとでも言いたげに瞳を丸くし…ここに至っては今更かと肩を竦めた。
肩を回す、ゴキリゴキリと骨の音がする。
手首を回す、骨の音がする…指を押さえる、骨の音がする。
拳を鳴らす、骨の音がする…足を回す、骨の音がする。
ゴキリゴキリと音が鳴る、静かに…それでいて確かな大きさで以って、何気無く骨の音は鳴り響き続け…ふとしたように、唐突にそれは響き渡る。
「───領域展開」
───『廻輪奇劇・
唐突に響き渡る奥義の宣言、骨を鳴らし終えると同時に展開された領域が一気に呪いの王を巻き込み己の世界へと引きずり込む。
脳に深刻な損傷を負った宿儺には現在『函』を使用するどころか領域を展開することさえ出来ない…故に、必然的に宿儺はその効果をモロに攻略するしかない状況下に追い込まれる…が、直ぐ様宿儺はそれら思考が無意味であることを理解する。
何故か? それは───
───外郭が…無い…!?
理解する、直感的に…この領域が自身同様に結界によって外界を遮断しない、神業が如き領域である事実に宿儺は即座に行き着き…その言葉を耳に捉えた。
「どうせだ、骨まで食っていけよ大飯喰らい」
響いた言葉と共に彼岸の花が咲き誇る、青空の元にその赤を鮮烈に見せつけるように、足の行先に至る全てをその花弁にて覆い尽くしたその変化に宿儺は知らず知らずの内に歓喜の涎を垂らしていた。
瞳を見開き眼前の獲物を捉え、その飽きの来ない馳走を前に宿儺は何度目かとも知れない狂気をその顔に浮かび上がらせる…そんな宿儺に対して、廻は何処か吹っ切れたかのような笑みを浮かべていた。
主菜は終えた…残すは品目は、サラダと甘味のみ。
呪いの王と輪廻を廻った者…その喰らい食らわせ合いは、遂に決着の時へとその針を動かした。
決着の時まで、残り───
禪院廻
ゴチャゴチャ言ってるけど要するに千年前に出来ること最後までやらなかったから皆を置いてくることになってしまったんじゃないかって思ってるだけで、本質的には2話辺りで言ってることと大して変わってない。
死にかけて走馬灯が頭に流れたからこういうこと言ってるだけで普段なら言わないしそもそも考えない、前世と前前世含めた走馬灯が一気に流れたからこういうこと言ってるだけとも言う。
因みに言っておくと平安時代の頃の記憶もそれなり以上に摩耗している為、言ってること自体があまり当てにならない。
宿儺
内心意訳
終わっちゃったなぁ(ションボリ)→上げてけよぉ廻ゥゥ!!!(真人並感)
薫
あの世でニコニコ笑顔、兄様が楽しそうで自分も嬉しい。
彼岸花の空間
廻の前前世の心象領域。