仕事で今週と来週の日曜休みが消えたので急遽投稿、話が荒くても許してください。
自死の縛りってこういうこと出来ないのかなって思いながら書いた。
───宿儺の術式は焼き切れている、世界を断つ斬撃はもう撃てない。
誰もがそう確信していた…モニターで観ていた観客達も、壁の外側でその光景を固唾を飲みながら見守っていた氷使いも…そして、その場に居た禪院廻でさえも…呪いの王の従者を除いた誰もが、禪院廻の勝利を確信していたはすだ。
…その確信を根こそぎ奪い取るが如く、光の無い暗闇に差した一筋の光明を踏み潰すが如く、両面宿儺はその手を動かした。
足音が響く…立ち昇る土煙、崩れる建物群にそこから落ちてくる無数の瓦礫と破片の束、足音が響く度に量産されるソレを気にもせずに禪院廻は両面宿儺目指して歩を進める。
瞬間…立ち昇った煙を引き裂いて、全てを引き裂く斬撃が禪院廻に襲い掛かり、禪院廻の左腕を斬り飛ばした。
「何っ!?」
誰かが声を上げた、有り得ない光景を前に椅子を蹴飛ばし立ち上がり、自らの驚愕を全面的に面に出した。
血飛沫が舞う、斬り飛ばされた己の左腕に廻は驚愕の視線を向ける…そして、それは誰がどう見ても明確な隙であった。
「───ヒャハハァァッッ!!!」
狂ったような声、狂気を限界まで煮詰めたような声を金切り出しながら呪いの王は煙の奥から飛び出してくる、
「はぁっ!?」
日下部がキレかけの老人のような声を上げた、誰かのように椅子を蹴飛ばしながら立ち上がり、眼前の光景を信じられないと言うように凝縮する。
顔に付いた傷も失った三本の腕も何もかもが癒えた状態、文字通り完全に受肉した当時の状態をそのまま持ってきたかのような万全の状態に日下部の全身から血の気が引いた。
有り得ない…誰もがその言葉に行き着いたはずだ。
宿儺の状態は分かっている、反転術式は既に扱えず術式は最早焼き切れるどころか
ならば何故…そう誰もが思考を回す中でただ一人、即座にその事実に行き着いた人間が居た。
「───まさか…!?」
女の…冥冥の脳裏に可能性が過った、この場に於いて最も簡単且つ誰にも気付かれずに呪力の出力を底上げする方法、自らの術式の真骨頂として使用しているが故に、冥冥はその方法に誰よりも早くに行き着いた。
だがしかしそれは有り得ないことだとその可能性を捨てかける、決して生を求める人間のすることではないとその可能性を切り捨てかける。
何故ならそれは一度限りの博打だから、何故ならそれは無数に群生する生物を使う術式を持つ己だからこそ出来たことなのだから、何故ならそれは使う=次を捨てることと同義のことなのだから。
故に断じる、有り得ないと……しかし───
『───もしも宿儺に目的があるとすれば、それはきっと廻だ』
ぐるぐると思考が巡る、有り得ないという断じつつもあの呪いの王ならばやりかねないという確信が冥冥の中にはあった、禪院廻という人間に対する異常なまでの執着という天使から齎された情報がそれに確信を持たせてしまう。
故にこそ、冥冥はその予測という名の真実を吐き出す…その顔に、大量の冷や汗を貼り付けながら。
「───自死の……縛り…」
途切れ途切れに呟かれた言葉、あの冥冥らしからぬその様子に誰もが注目し、そしてその内容を理解するや否や誰もが正気を疑うような目線を宿儺へと向けた。
確かにそれなら可能だ…自死の縛りによって底上げされた呪力出力であれば宿儺は自らの傷を完全に再生させることが出来る、両面宿儺は完全に復活することが出来る。
有り得ない…誰もがそう断じたかった、誰もがそうであって欲しくないと、そう言いたくなるような推察がそこにはあった。
絶望…術式どうこうではない、今の廻相手に身体的に万全な宿儺が復活するというのはそういう意味なのだ。
驚愕に目を見開く廻の元へと宿儺が往く、その拳を握り締めていた先程までの仕返しだと言わんばかりにその肉体に自身の拳を叩き込む。
拳を受け止める、踏ん張りが利かず僅かに後方へと下がる己の身体に舌を打ちながら廻は更にやってきた二本腕の打撃に対処した。
受け止めていた拳を投げ飛ばすように払い除け、その直後にやってきた二つ腕の打撃を廻は纏めて横から打ち抜くことでその軌道を逸らした。
逸らされた打撃、片腕の状態であっても尚も淀むことの無いその動きに宿儺はその笑みを更に更にと深める…そんな宿儺の腕の一つ、弾いた二つ腕の一つを廻は掴み取り、無理矢理自身の方へと引っ張り、そこへと蹴りを叩き込んだ。
満身創痍のはずだ、傷だらけで術式も使えず、ましてや呪力量も少なくなっているこの現状の中でしかし、その迸る力には全く揺るぎが無かった、己が引っ張れているのがその証拠であると宿儺は歓喜のままにその蹴りを防いだ。
「───さぁ、延長だ禪院廻ゥッ!!!」
「───還れ馬鹿たれっ!!」
宿儺の頬に拳が突き刺さった。
「おいおいおいおいッッ!!! ふざけんじゃねぇぞッ!!!?」
頭を掻き毟りながら日下部が言葉を吐き出す、今までに無い程の焦燥を見せる日下部の姿に三輪は無意識に唾を飲み込んだ。
日下部の言葉はこの場に居る全ての人間の代弁でもあった、きっと誰もがそう感じ言葉を吐き出したくなっていたに違いなかったのだから。
突き刺さった廻の拳、よろめいた宿儺の身体に合わせて蹴りを叩き込もうとした廻…そこへと向けて宿儺の四つ腕が殺到する。
腹部、鳩尾、片腕に顔面…片腕を押さえられた廻は蹴りを打ち出す前に宿儺の打撃によってその態勢を崩され、攻撃を中断せざるを得ない状態へと押し込まれる…そして、そこに宿儺の蹴りが突き刺さる。
吹き飛ぶ身体、ゴロゴロと転がり血を吐き出す廻、片腕のまま震える膝を強く叩きながら起き上がるその姿には最早限界なのだと誰もに悟らせた。
そんな廻の姿に、日下部は更に頭を掻き毟る。
「頭がおかしいだろうがよ…! 何だよ自死の縛りって、冥冥みたいに式神とかそういう生物に利用する術式に使うってんならまだ分かる、そういう術式の補い方もあるさ…けど、こいつは違うだろ…!! イカれてるにも程がある…!!!」
言葉を捲し立てる、冷や汗を流し雪を身体に直接流し込まれたかのような悪寒をその身に感じながら、何とか深呼吸を繰り返して自身を落ち着かせようとする日下部の姿に、三輪は思わずと言ったように口を開いた。
「自死ってことは使ったら死ぬってことですよね? ……じゃあなんで、宿儺は死んでないんですか…?」
「自死の縛りとは言ってもすぐ死ぬものとそうでないものがあるからね…私のは一撃限りの縛りだけど、恐らく宿儺のものは───」
「───制限時間付きの縛りだろうな、十中八九」
冥冥の言葉に被せるように鹿紫雲が口を開いた、ただ一心に一時たりとも見逃してなるものかと一切その瞳を逸らさなかった鹿紫雲は、続け様に言葉を放つ。
「このまま行けば負けるぞ、禪院廻は」
「だから困ってんだよこっちは…!!」
確かな事実を顔色一つ変えずに言い放つ鹿紫雲に日下部は苦渋の滲んだ声色で悪態を吐きながら椅子に座る、息を吐き出し自らの感情を制御し、次に顔を上げた時点で日下部の顔色は元の状態に戻っていた。
「…状況は廻にとっては最悪だろうが、俺等にとっちゃ多少はマシだ…何せ、勝っても負けても俺等は宿儺と戦わずに済む」
ボヤくように言葉を紡ぐ日下部、顔色は戻っても苦渋に満ちた表情はそのままの日下部はまるで納得していないという感情を隠しもせずに手で汗を拭った。
日下部にとっての最悪は廻が負けた後に五条が敗北し、その後に自分達が戦場に投下されることだった…未だに羂索や三途という悪辣と最悪を残しているこの状態で最強二人を失い、しかも此方の戦力を削られる可能性が無くなったのは素直に有り難かった。
そういう意味では、廻はこれでもかと仕事をしてくれたことになる…だからこそ、日下部はこれでもかと言う程に廻の生存を祈っていた。
「───宿儺が出てきてからどれだけ経った?」
「───大凡35秒程度…今40秒になった」
「……一分そこらで死ぬとかなら嬉しいんだけどなぁ」
絶対死なないんだろうなぁ…そう脳内で付け加えながら日下部は考える、今の状況で廻に手助けが出来るか否かを。
結論から言ってしまえば無理であるというのが現状だった…何せ廻と宿儺自身が他者の介入を拒む縛りを結んでしまっているのだ、破れば何が起きるのか分からない以上は何もしないのが最善だった。
戦況は依然宿儺が有利…互いに術式が使えない上に互いの技量が拮抗していた場合、その有利不利は呪力の有無と出力の差に現れてくる。
呪力が残り少なかった廻と出力の足りなかった宿儺、あまりにも危ういバランスで保たれていた両者の拮抗は宿儺の自死の縛りという埒外の手法によって完全に崩壊していた。
出力が多少なりとも戻ってしまったことで両腕を再生され、それによって生まれた手数が余計に廻を苦しめる…しかも、方法は不明ではあるが廻の片腕は斬り飛ばされた状態だ、何時失血死しても可笑しくない状況下に廻は追い込まれていた。
しかも、このような状況下であろうと此方は何も出来ない、五条を投下するという最善策を打てないという悪循環的な状況に日下部達は置かれていた。
故にこそ、日下部達には最早信頼し任せることしか出来ない。
「…気張れよ、廻───」
───お前が居ないと後が面倒なんだ…!!
この先で引き起こされるであろう面倒事、その予感を察知していた日下部は苦渋に塗れたような言葉を吐き出しながら、ただモニターを見続けることしか出来なかった。
呪術欲「今回の話で(宿儺戦は)最後にすると約束したな?」
作者「そ…そうだ大佐…! 助けてくれ…!!」
呪術欲「あれは嘘だ」
作者「ウワォァァァァァァァァッッッ!!!!!」
と…言うことで続きました、想定外だぜこれは。