宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 今回ようやく書けたせいなのか、ちょいと迷走気味…流石に三週間休み無しはキツイって。


人外魔境 ドリンク②/言う事を聞かない魔虚羅

 

 

───マズイ、負けるかもしれない。

 

 

 肉体に深く突き刺さる拳に意識を向けながら、廻は呑気な様子で湧き上がってくるその思考を止めることが出来なかった。

 

 身体の内側からやってくる強烈な嘔吐感、血管丸ごと射出してしまうのではないかと言わんばかりに猛烈にやってくるそれを必死に抑え込みながら廻は拳を打ち込んできた宿儺に対して、やり返すようにその腹元に蹴りを叩き込んだ。

 

 ズドンッという音と共に互いの距離が離れる、口元から僅かに血を流しながら足裏からやってくる地面を踏み締め引き摺る感覚を感じながら、宿儺は笑みを浮かべて口を開く。

 

 

「元気だなぁ、まだまだっ!!」

 

「言うほど元気でも無いんだけどな…!!」

 

 

 死闘の最中とは思えない程の軽口、切断された左腕の断面から流れ出す血液が徐々に徐々に廻の視界をブレさせていく。

 

 舌打ちを一つ打ちながら何処からともなく取り出した布を左腕へと強く巻きつけて流れ出る血を止める…その一連の動作に付け込むように宿儺が来る。

 

 突き出される槍が如き突き、真っ直ぐと伸ばされた腕が廻の顔面目掛けて突き出され、止血の為の行動によって僅かに回避が遅れた廻の片目を抉り取る。

 

 小指の部分が突き刺さり、そのまま目玉ごと目の部分を抉り引き裂いていく、あまりの激痛にさしもの廻も口からうめき声が漏れ出てくる。

 

 片目を抑えながら後方へと瞬時に下がる、流れ出る血液が更に廻の身体の動きを鈍らせ、その思考を曖昧な物にしていく…その感覚を直に味わいながらも、しかしその瞳に宿る殺意と意志には微塵の揺らぎも無い。

 

 まるで追い詰められた獣が如きその瞳に、宿儺は思わずと言ったように腕を強張らせた。

 

 

「───クハっ…!!」

 

 

 そうだ、それでこそ…そんな在り来りな台詞を脳内に浮かべながら両面宿儺は近場に落ちていた大鉈二本を拾い上げながら疾走し、両腕を振りかぶって廻へと斬りかかる。

 

 振り下ろされる二つの刃、猛然と迫りくるその二撃に対して廻は脚を振りかぶった。

 

 同時に振り下ろされてくる大鉈二本、それに狙いを定めて薙ぎ払うように蹴りを叩きつける、大鉈二本を弾き飛ばすだけの威力と重さを持ったソレは確かな勢いと正確さを以て大鉈へと直撃した。

 

 

 

───黒閃

 

 

 黒い火花が爆ぜる、振り抜かれた蹴りが大鉈二本を根本から圧し折り砕く。

 

 舞い散る破片、飛び散った小さな破片が頬を切り裂き皮膚へと刺さる、目元の近くを飛び交う鉄色にしかし宿儺は止まらない、分かっていたと言わんばかりに残った二本の腕で廻の身体へと打撃を打ち込む。

 

 血を吐き出す、視界がグラつく、本格的に敗北が迫ってくるのを感じながら廻はどうしたものかと何処か呑気な様子で宿儺の隙を探し続けていた。

 

 

 …そして、そんな光景を……魔虚羅はずっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボロボロの主の姿、ボロボロの宿敵の姿…血みどろで泥だらけで傷だらけで、それでも尚も戦い続けるその姿…そんな光景を、魔虚羅は影の中からずっと見ていた。

 

 行きたい、行きたい、行きたい…今にも倒れ込んで死んでしまいそうな主の元に今すぐにでも現れたい…それが出来ない事実に、魔虚羅は砕けんばかりに歯を噛み締めていた。

 

 ダメージを受けた、顕現がままならなくなる程の大きな大きな痛手を受けた…それが結果として魔虚羅と廻との間に楔を埋め込んだ。

 

 今飛び出せば自分が死ぬことは分かっていた、単なる呪力強化打撃…ましてや黒閃を食らってしまえば魔虚羅という存在はこの世から完全に消滅してしまうことを魔虚羅は自覚していた。

 

 それではいけないのだ、主の役に立つどころか主の足を引っ張りかねない、禪院廻という人間が式神でしか無い己等を使い捨てにしないことを魔虚羅は良く良く知っていたのだから。

 

 ならばどうする、どうすればいい…どんな方法でも良い、意識を逸らすにしても確かな一撃を与えるにしても、何か一つでも禪院廻の有利に傾くような…そんな何かを魔虚羅は欲していた。

 

 影は使えない、先の『黄泉國』の一件で廻は残存呪力の大凡を使い切っている、呪力の無い現在の己がソレを使えば呪力を差し引かれるのは主である廻の方だ。

 

 ただでさえ少ない呪力を持ち前の圧倒的な呪力効率と操作技術によって半ば無理矢理に遣り繰りしているのだ、そんな今現在の状況でソレを行うのは最早戦犯に近い。

 

 ならば自分の呪力を捻り出すか…論外である、そんなことをすれば自分が死ぬ…そして、己が死ねば十種は漏れなく消滅する、見出す勝ち筋が完全に途絶える。

 

 手詰まり…持ち前の適応もそもそも召喚するべき式神がいなくては成り立たない、世界を断つ斬撃もまた同じこと。

 

 何も出来ない…千年前と同じ、主が死へと向かうのを黙って見ていることしか出来ない…これでは自我を得た意味が無い───

 

 

 

 

 

───否……在る。

 

 

 

 辿り着きかけた結論に魔虚羅は否定を叩きつける、そんなことは無いと自分の思考を真っ向から拒絶する。

 

 あった…たった一つだけ、唯一にして絶対に手段が存在した。

 

 禪院廻が千年前に開発し、結局最後の最後まで使用しなかった最終手段…生まれ変わってから、己が自我を得てからは手段の一つとしてすら認識しなくなったその存在を、魔虚羅は今ここで思い出した。

 

 使えば自分がどうなるかは分からない、自分がどうなってこの芽生えた自我が残るかどうかも分からない…それでも、あの時を繰り返すよりはマシだろうと、魔虚羅はそう判断した。

 

 

 歩く、影の上へと続くその道を歩く。

 

 未だに死闘を繰り返す化物二人、その呪い合いの元へと魔虚羅は確かな意志と自我で以てその一歩を踏み出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザバリッと、水のような音がした。

 

 互いに距離の離れた状態、今正に懐に潜り込んでやろうと動く宿儺とソレを迎え撃とうとする廻…そんな正に一触即発の状況下の中で響いたその音に、両者の予想外と言ったような表情を浮かべた。

 

 ドシンっと影の中から飛び出してくる巨体の腕、歪な程に白いその腕から引っ張り上げられるように姿を現す巨人の姿。

 

 雄々しく広げられた二対の翼、天に聳え立つが如く突き上がっていた折れた鹿の角、傷だらけの状態はそのままに今にも崩れてしまいそうな容貌を携えたその存在に、廻は焦ったように口を開いた。

 

 

「───何やってんだお前…!?」

 

 

 傷の治り切っていない式神…魔虚羅の登場に廻は疑問と驚愕の声を吐き出していた。

 

 何故来た、何故出て来た、まだ治り切っていないその身体のままどうして出てきたのかと呪いの王の前であるという事実も忘れて問い質そうとした廻に…魔虚羅は覆い被さるようにして抱き着いた。

 

 唐突な行動、今現在の状況には全くと言って良い程に似合わないその行動に廻の思考は戸惑いで満たされる。

 

 やはりまだ傷が治り切っていない? 何故に出て来た? 何故今ここで自分に抱き着いてくる?……戸惑いと疑問に埋め尽くされた思考の海の中で、魔虚羅はその崩れかけの肉体を気にも止めず……()()()()()

 

 

 

 

「───オ…トー……チャ……ン」

 

 

 掠れたように、機械が喋るかのように、棒読みで辿々しくて、それでも確かな意思を持ったそんな言葉が耳元から聞こえてきた事実に廻はその瞳を見開いて驚愕を露わにし───

 

 

 

「───…バ……イ……バ………イ」

 

 

 

 次いで、その言葉を聞いたその瞬間…全てを悟った。

 

 

 

「───よせっ!! やめろ、魔虚羅っ!!!」

 

 

 叫ぶ、否定の言葉を。

 

 それをするんじゃない、それだけはやめろと魂の奥底から声を出したかのような大声で叫ぶ宿敵の姿に、宿儺は行おうとしていたその動きの全てを止めた。

 

 

 

 瞬間…異変が訪れる。

 

 

 魔虚羅の身体が崩れ出す…否、溶けていく。

 

 ドロリと白から黒へとその身を転じさせて行く魔虚羅、白いペンキが黒墨色のペンキへと塗り替わっていくようにその姿を変質させ、そのまま包み込むように廻の身体を覆っていく。

 

 

 

───禪院廻には…極ノ番が存在する。

 

 

 

「───やめろ…!! やめろよ魔虚羅…!!! コレをすればどうなるのかくらい分かってるはずだろお前も!!!」

 

 

 叫ぶ、やめろと叫ぶ…これをしてしまえばどうなるのか、後戻りが効かないことが分かっているはずだと廻が叫ぶ、今すぐに止めろと主が叫ぶ。

 

 

 

───千年前に開発された禪院廻の極ノ番…万が一、自身が全ての式神を失った時の為に生み出された最終手段…今日ここに至るまで、一切の日の目を見ることの無かった禪院廻の禁じ手。

 

 

 

 

 

 しかし魔虚羅は止めない、廻の…主の言う事をピクリとも聞かない…それも当たり前のことだろう。

 

 逆らうことを許された、言う事を聞かないことを許された、殺すことを許された…自身が決め得る全てのことを、魔虚羅は主の手によって赦されているのだ…他ならぬ禪院廻の自身の意思によって。

  

 だからこれは、何ら可笑しくないことなのだ、なんら魔虚羅の基盤から逸脱していない行為なのだ。

 

 廻の身体を完全に影が覆い尽くす、姿の見えなくなった宿敵の姿を…影の向こう側へと消えた宿敵の存在を、宿儺は何をするでもなくジッと待ち続けた。

 

 感じるのだ、鼓動を。

 

 感じるのだ、変質していく宿敵の呪力を。

 

 感じるのだ…まだ見ぬ味を。

 

 

 

 

───禪院廻は自身の奥義を嫌っていた…何故このような物を作り出したのかと自身を恨んですら居た…式神をただの式神と見れなかった禪院廻は、最後の最後まで…死んでもこれだけは使わないと心に決めていた、禪院廻にとっての禁じ手。

 

 

 

 

 ドクンドクンッ、ドクンドクンッ……心臓の鼓動のように脈動する影、内側から迸るナニカの本流と存在感が徐々に徐々に強まっていく。

 

 望まぬ起動、望まぬ発動…きっと、死ぬその時までソレを使おうとはしなかったろうと主に変わり、その技を発動した魔虚羅の意識は何処までも満足気だった。

 

 これでようやく置いていかれなくて済む…これでようやく、主に何かを遺していける。

 

 千年間、ただ無為に生き延びた自分の時間の全てが、今ここでようやく…無意味じゃなくなった………そんな充実感のような感情を、廻はダイレクトに受け取っていた。

 

 

 

「───…馬鹿野郎っ……!!!!」

 

 

 吐き出すように、言葉を紡ぐ。

 

 覆いかぶさっていた影…一つの繭のような形へと転じていたその影を突き破るようにして、二対の翼が広げられる。

 

 純黒の翼…魔虚羅の翼とは真逆の色をしたソレが、繭を突き破ってこの世にその威容を現す。

 

 

「───お前が…お前が生きてくれてたら、俺はそれで良かったのに……それでも良かったのに」

 

 

 泣き出しそうな声色で呟くように言葉を吐き出す、翼を広げて突き破られた繭の内側から更に更にと鋭い何かが飛び出してくる。

 

 それは…爪だった。

 

 

「どうして…どうして今日に限って、言う事聞いてくれないんだよ…!!」

 

 

 引き裂かれる、ビリビリと片手間のように引き裂かれたそこから現れるのは…あまりに悍ましい悪魔のような腕。

 

 魔虚羅とは違う、獣のような腕というより鬼や悪魔のソレに近い手足、硬質で刺々しい黒と赤が混じり合ったかのようなその容貌に宿儺はその瞳を見開いた。

 

 泣き出しそうな声とは裏腹の悍ましい見た目、足音を鳴らしながら繭の奥から姿を現したその宿敵の全容は、あまりにも人間という生き物から掛け離れていた。

 

 悪魔のような手足に鬼のように刺々しく生えた赤黒い鹿の角、背部から生えた純黒の翼にその尾に生えた魔虚羅と同じ形状をした黒い尻尾。

 

 白く染まりきった悍ましい姿とは真逆の純白の頭髪、満月のような金色だった瞳の色は狂い月のような真っ赤な紅へと変色し、その瞳孔は獣のように割れていた。

 

 

 異形、怪物…そのような言葉で言い表すに相応しい姿へと変貌した宿敵の姿を、宿儺は言葉を失ったようにジッと見つめていた。

 

 そんな宿儺の姿など目に映らないのか、廻は嘆きを堪えるかのように空を見上げ…掠れ消えるかのような声色で、言葉を紡いだ。

 

 

「分かってる…分かってるんだ………言わなきゃいけないのはこんな言葉じゃないって」

 

「でも…でも……それでもやっぱり……」

 

 

 

───悲しいもんは、悲しいよ。

 

 

 

 言うが否や、激烈な圧力と殺意が宿儺へと襲い掛かる。

 

 今までとは違う殺意、相対して初めて分かるような類のモノではなく、何処までも鮮烈に明確に相手にその差を突き付けるかのような絶対的な気配…自身と同質のソレに、宿儺は───

 

 

 

「───ククッッ……クククククククククッ……!!!!!」

 

 

 

 涙を流していた。

 

 感涙の涙だった…あまりにも予想外のことに脳が追いついていないのか、それとも単に気にしていないだけなのか、涙を流しながら満面の笑みを浮かべた宿儺は耐え切れぬと言わんばかりに言葉を放った。

 

 

「何処までも何処までも…あぁ本当に貴様という男は───」

 

 

 

 

───何処まで俺を、飽きさせないっ!!!!!

 

 

 新しく増えた皿、最早味を変えたメインディッシュのおかわりに近しいその光景を前に宿儺のボルテージは比喩表現無しに振り切れる。

 

 宿儺は今此処に確信していた、自身が生まれたその意味を、自身がこの世に生を受けたその意味を。

 

 こいつに出会う為に在った、こいつと殺し合う為に在った、こいつと喰らい合い、最後の一滴まで味わい尽くす為に自身は生まれてきたのだと、両面宿儺は今此処に確信した。

 

 そんな、今の今まで一切流していなかった感情の流出に、今までに無い呪いの王の姿を目撃した廻は…その紅い瞳から溢れた涙を振り払い…紡ぐ。

 

 

 

「あぁ…これで本当に最後だ……精々───」

 

 

 

───腹を壊してくれるなよ…!!!

 

 

 

 

 

 

 

───禪院廻の極ノ番『影満たし』…その能力は十種の式神達という影を、自身という器へと注ぎ込むことで自分自身を十種へと変貌させるというもの。

 

 

───最後の一体が破壊された時…或いは未だ生存している自身の式神を自ら破壊することでのみ、その奥義は発動する……であるが故に、禪院廻はこの奥義を生み出した当時の己を憎み恨んだ。

 

 

───その憎悪故か、はたまた別の要因なのか…本来の魔虚羅とは程遠い姿へと変貌したその姿に、誰かが思わずと言ったように呟いた。

 

 

───『まるで魔王みたいだ』と。

 

 

 

 

 





『影満たし』

 禪院廻の極ノ番、十種の式神という水を禪院廻という器に注ぎ込むことで廻を十種の能力を持った生物ヘと変貌させる業。

 より正確に言うと破壊した…或いはされた際の能力の継承の対象を廻へと移す業、因みに本人は自覚しておらず作った当初の自ら破壊しなければ発動しないままだと思っていた。

 禪院廻という存在を軸に変貌が始まる為、その注ぎ込まれた存在と同じような見た目には基本的にならない、だから今回は魔虚羅とは真逆の悪魔みたいな見た目になった(モチーフはデスペラード・カオス、あの悪魔の極致みたいな見た目が好き)

 因みにこの極ノ番を作った理由は15歳くらいの頃の平安で初恋の人が目の前で死んだから。

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