宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 取り敢えずもう一話書いてみた…もう次で終わらせる、絶対に次の話で終わらせる、何が何でも終わらせる。


人外魔境 ドリンク③

 

 

 最早、互いに限界ギリギリの状態だった。

 

 ただでさえ死闘に次ぐ死闘を繰り返し、逆転に次ぐ逆転を繰り返し続けた両者の身体は既にボロボロで、既にまともに戦えるような状態では無くなっているはずだった。

 

 宿儺は自死の縛りによって無理矢理その状態から脱した、三分間という制限時間を設けることで呪力出力を確保し、そうして確保した出力から反転術式を駆動させることで戦闘可能な範囲まで自身の肉体を回復させた。

 

 禪院廻は『影満たし』によって九死に一生を得た…魔虚羅によって行われた独断的な極ノ番の発動、これによって失った左腕と与えられた傷を癒した廻は何とか戦闘が可能な状態へと回復していた。

 

 …しかし、廻も宿儺も別に格段的に強くなったと言うわけではない。

 

 宿儺の自死の縛りは出力を反転使用可能範囲にまで回復させ、自身の状態を元へと戻す為のものだ、自身に強化を施す為のものではない、あくまで負けない為の手段でしかなかった。

 

 そして、それは廻の『影満たし』にも適用される。

 

 確かに廻は『影満たし』によって魔虚羅を継承した、本来であればその膂力と適応能力、更にその魔虚羅に受け継がれていた全ての式神の能力の使用が可能となった状態で始まるはずだった…だが、そうもいかない。

 

 『影満たし』を行った時点で廻はおろか魔虚羅ですら瀕死の状態だった、千年間溜め込んだ呪力と適応は『白』によりすっからかんでそうして継承した廻自身の呪力も枯渇寸前…言ってしまえば、傷を癒して武器を与えられただけの状態となっているのが現在の禪院廻だ。

 

 …そう、状況は言うほど変わっていない、強いて言うなら一つ前の状態に戻っただけに過ぎない……そして、同じことを繰り返そう等と言う考えは、両者には無い。

 

 

 超短期決戦…両者の脳内にこの言葉が浮かび上がったのは、殆ど同時だった。

 

 

 

 

 両者の影が、交差する。

 

 ガギィンっと最早人体から鳴るべきでは無い音をさも当然のように響かせながら、廻と宿儺は交差した瞬間に思い切り地面を踏みつけ瞬時に逆側への疾走を開始する。

 

 互いに背を向けた状態からの急速な逆走、となれば逆走の先に居るのは今しがた交差したばかりの敵であるわけで、と来ればやることは決まっていた。

 

 逆走と同時に拳を振り被って打ちつける…フリをした廻は突き出された宿儺の拳に爪を突き立て引き寄せ、本命の突きを宿儺の心臓部目掛けて突き入れようとする。

 

 突き出された悪魔の爪、心臓目掛けて突き進むソレを宿儺は咄嗟に片腕…左腕の一つを盾にして防ぐ…突き刺さり貫通すらした廻の爪は僅かに勢いを落として尚も心臓目掛けて突き進む…が、その勢いの落ちたタイミングに合わせて宿儺は僅かに身を引くことで突きを紙一重の領域で躱した。

 

 時間にして凡そ五秒弱の攻防、ほんの僅かな時間の間に行われたものとしては丸切り破格のソレをモニターの前の人間は固唾を飲みながら見守っていた。

 

 カチリと秒針が動く、宿儺に残された時間は残り一分三十秒…秒数だけで纏めるならば大凡90秒そこら…それまでに宿儺は禪院廻という人間に勝たなければならなかった。

 

 残り88秒…一般的に言えば間違いなく短いと受け取られる秒数、しかしこと戦闘区域に於いてはあまりに長い時間と取られるであろう短いようで長い残り時間。

 

 

「───ハッ……そんなにいらんよ」

 

 

 そして宿儺は、その88秒の半分以上を溝に捨てた。

 

 

 宿儺の呪力出力が跳ね上がる、急速に唐突に爆発的に、先のソレとは比べ物にならないレベルで一気に出力を跳ね上げる。

 

 縛りの追加、残り時間88秒の約半分以上…15秒を除いた残存時間全てを薪へ焚べることで宿儺は自身の出力を万全以上の状態へと跳ね上げた。

 

 負けぬ為の手段では無い、徹底的に勝つ為の手段…絶対に負けたくない、絶対に勝ちたいという勝利への執着が宿儺を死へと近づける。

 

 突き刺さった爪を無理矢理引き抜かせて殴りつける、今までに無い程の重さでやってきた宿儺の拳が廻の顔面を打ちつけ、更にそこから応えるように黒い火花が飛び散った。

 

 意識が加速する、地面を割りながら僅かに身体の浮いた廻に対して加速する意識のままに更に追撃を仕掛けようとする宿儺…その横面へと、鞭のようにしなった尾による一撃が叩きつけられた。

 

 

 

───黒閃

 

 

 尻尾による黒い火花、あまりにも予想外過ぎる一撃に身体が傾く、拳に比べてみれば遥かに軽く弱いその一撃…しかし黒い火花を纏ったソレは宿儺の体幹を崩すだけの力を確かに待っていた。

 

 残存時間約12秒、此処に来て廻の意識もまた覚醒する。

 

 加速していく思考、慣れないが代わりに自由に動く手足と翼に尻尾…黒閃による覚醒によって慣れずに直感頼りで動かしていた異形の手足に完全に慣れた廻はやり返しと言わんばかりに拳を握り締める。

 

 バチリと雷が爆ぜる…鵺と獅子王の呪力特性、変わらず紫色の光を放つソレを纏いながら廻は宿儺へと拳を叩きつけた。

 

 『満象』の水も『玉犬』の切断能力も『脱兎』による分身も使えない、当然『円鹿』の反転も『貫牛』の能力も使えないが…鵺の呪力特性だけは無事だった。

 

 これじゃあ影纏いの状態と殆ど変わらないな…なんてことを思考の片隅で考えながら、廻は拳を打ち込んだ。

 

 狙いは顔面、首を傾けることで僅かに頬に掠る程度で終わった拳…そこからバッと一気に手を開いて鉤爪のように引き寄せ首の切断を狙う…が、引き寄せ斬るよりも先に宿儺の打撃が廻の腕を打っていた。

 

 横合いからの打撃、衝撃によって横へとズレたことによって爪が首の皮一枚掠める、血すら付かないギリギリのラインを掠めたが故に痛みも無く、ソレ故に気にすることもなく宿儺は攻へと意識を切り替える。

 

 残り10秒、互いに間合いに入り込んだ状態、上手く嵌まれば互いに相手の命を容易く奪える距離、ほんの少しでも隙を晒せばそれが命取りとなってしまう距離…そんな場所に、両者は居る。

 

 

 全呪力を総動員する、後先どころか防がれた後のことすら考えず宿儺はこの数秒に全てを懸け、廻はそれら全てを踏み越えることを決めた。

 

 無数に蠢く四本の腕、力強く読みづらく、絡め手も交えながらやってくる無数の絶死の一撃一撃を廻は死に物狂いで防ぎ、捌き、紙一重で躱し、反撃する。

 

 全身全霊死に物狂い、両面宿儺…呪いの王と呼ばれた男の今までに無い程の必死のソレに廻は瞬き一つ許されない。

 

 しかし、それは宿儺とて同じこと。

 

 宿儺の必死を超えた気概と覇気に感化されたのか、宿儺の打撃を防ぎ捌き躱しながら放たれる反撃の一撃はその全てが確実に的確に自身の命を一撃で奪いかねないと確信させるような代物だった。

 

 当たれば必ず黒閃に成る…反撃として放たれた全てがそう確信させられる程の何かを秘めていた…瞬き一つ許されないだけの魔境が、今此処に有る。

 

 

 残り7秒、掠り傷はあっても未だに有効打は無しの状態、最早一歩たりとも動かずただひたすらに眼前の敵手へと致命傷を与えんとする怪物と怪物の姿がここにある。

 

 パシリと受け止められる宿儺の拳、そこへと一息に無数に襲い掛かる三つの腕…全てが全て、急所しか狙ってこないその三つ腕に思わず蠍かと言いたくなるのを我慢して、廻はその全てを打ち落とした…その瞬間───

 

 

───ズガンッ!!

 

 

 重い打撃音が響き渡る、先程宿儺の拳を受け止めた側の腕が大きく後方へと弾かれ、それによって廻の体幹が著しくズレる。

 

 遅れてやってきた衝撃、時間差の衝撃とも言うべきソレに廻は目を見開き、即座にその正体へと至った。

 

 

───虎杖くんの逕庭拳か!?

 

 

 虎杖悠仁の体質から生まれた悪癖、何時かの時空では相手のタイミングと不意を撃つ際の決め手ともなったその一撃が、最悪のタイミングで廻へと突き刺さった…その事実に、両面宿儺は渾身の笑みを浮かべた。

 

 気が付き、その正体へと至った所で既に遅い…そう言わんばかりの凶悪な笑みを浮かべた呪いの王はその腕を廻の心臓部の目掛けて突き出す。

 

 残り四秒…確実に心臓を潰して動きを止める、動きを止めた後は脳を潰して確実に殺す、今度こそ仕留める。

 

 突き進み皮膚へと接触する宿儺の突き、残り数瞬でも進めばそのまま心臓を貫くだろうと誰もが確信するような、そんな状況下の中で、しかし廻は諦めず腕を伸ばし間に合わせようとするが…如何せん間に合わない。

 

 指が皮膚を貫通する、ズブリッと突き刺さり鮮血を飛び散らせる…その瞬間───

 

 

「───ッァァァァァァアァァァォアァァッッ!!!!!」

 

 

 裂帛の咆哮を掻き鳴らしながら、突き刺さり心臓に届く半ばまで突き進んでいた宿儺の腕に、廻は拳を打ち付け圧し折った。

 

 黒い火花が大きく飛び散る、廻の胸の中で大きく圧し曲がりその肉体へと負荷を掛けられた廻は内側からやってくる激痛を超えた激痛に思い切り歯を噛み締める。

 

 口元から血を垂れ流し、痛みに叫びたい本能を全力で抑え込んだ状態で、廻はギロリと宿儺を睨みつけた。

 

 

 残り三秒…宿儺の背筋に悪寒が奔る。

 

 

「───シン・陰流」

 

 

───『簡易領域』っ…!!!!

 

 

 ここに来ての簡易領域、術式の付与されていない簡易的な領域が展開され、その枠の中に宿儺が入り込む…そこまで行って宿儺が思い浮かべたのは一人の男の姿。

 

 刀を振るうシン・陰流の使い手、虎杖の中に居た際に目にした簡易領域に入った全てを斬り刻む剣士の姿、気怠げそうにしながらアメを加え、嫌そうに呪霊を斬り捨てていた男の姿を宿儺はここに来て思い出した。

 

 故に宿儺は悟る、これより放たれる技が如何なるモノであるのかを瞬時に悟る…そして、悟ったが故に宿儺は本能的に理解する……自身の敗北を。

 

 

 領域内に入った全てに対して行われる全自動(フルオート)反射による迎撃…否、最早迎撃と言うより撃滅と呼ぶべき無数の打撃が、領域内に存在する宿儺へと一気に襲い掛かる。

 

 

 

───『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』

 

 

 

 残り二秒、簡易領域内に入れられた宿儺へと襲い掛かる黒い火花の暴力、ただでさえ一撃一撃が重すぎる廻の拳が狂ったように宿儺へと突き刺さる。

 

 心臓付近に突き刺さった折れ曲がった腕なぞ何のその、血を吐き出しながら正気を失ったように廻はただひたすらに呪いの王へと拳を浴びせかける。

 

 

───『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』

 

 

 

 残り一秒、黒い雨はまだ止まない、魔獣の咆哮は未だに止まることを知らない。

 

 

 

 

───『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』『黒閃』

 

 

 

 

 

 

 残り0秒…時間切れ。

 

 

 

 両面宿儺の食卓は、此処に終わる。

 

 

 

 





 書いてて思った…作者に長い戦いは無理です。

 ……出来れば、デザートの段階でこれをしたかった……文章力が無くて無駄に長引かせてしまう自分が憎い。
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