宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ようやく宿儺戦はこれで終了…何だろう、話の長さよりも日程が経っている気がするけど、まぁ終わったなら良いやと思える自分が居る。

 本当に疲れた。

 


人外魔境 閉廷/ごちそうさまでした

 

 

 空が、広がっていた。

 

 上向けに広がる青い空、白い雲が悠々と気ままに漂う昔から存在する何時もの光景、空の向こう側に浮かんでいる太陽が今日は嫌に眩しく思った。

 

 寝転がる自分の身体、身体の隅々から響き渡る頸痛に次ぐ激痛、指一つたりとて動かないその現状に改めて呪いの王は…両面宿儺は実感する。

 

 

───負けた。

 

 

 負けた、敗北した…到底受け入れられるようなものではないはずの現実を、しかし両面宿儺は容易く、当たり前のように受け入れた。

 

 

「───真逆だな、あの時と」

 

「…どの時とだよ」

 

 

 呟かれた宿儺の言葉に、足を引き摺りながら廻が応えた。

 

 如何にもな重傷、心臓付近に突き刺さっていた宿儺の腕は黒閃を打ち終わった際にスッポ抜けたことで大量の血液が垂れ流され、口元からも吐き出しきれなかった血液が流れ出す始末…立っているのがやっとの現状。

 

 それでも尚も死んでいないのは、やはり『影満たし』によって肉体の強度が上昇していることにも関係しているのだろう…そんな、今にも死ぬ寸前の男の姿を見ながら、宿儺は何となしにそう考えた。

 

 足先の感覚が無くなっていく、サラサラとまるで砂にでも変化していくような感覚がする。

 

 自死の縛りに寄るペナルティ、制限時間を迎えた宿儺に待ち受けていたのは生物的な死ではなくこの世からの完全消滅…生前の死後のように呪物がこの世に残ることは無い、文字通り塵と化して地面に還る…それが、両面宿儺の結末だった。

 

 …しかし、時間制限を付けたからなのか、はたまた別の理由からなのか…そんな縛りの精算方法が、逆に宿儺という存在にほんの僅かながらの時間を与えていた…宿敵と語り合うだけの、短い時間を。

 

 

「…あの時は、雨だったろう?」

 

「……そうだったかな……そうだったかも」

 

 

 仰向けになりながら、倒れ込みながら、肉体の感覚と実体が段々と消え去っていく実感を感じながら、しかし宿儺はそれを差して気にした様子も無く言葉を紡ぎ、廻はそれに対して何かを思い出すような仕草と共に言葉を返した。

 

 そんな廻の姿にクツクツと声を漏らしながら、両面宿儺は満足そうな表情を浮かべながら、万感の想いを吐き出すように口を開く。

 

 

 

「───満足だ、満腹だ…これ以上無い程に、満たされた」

 

 

 何を得ようが、何をされようが満たされない心…他者に満たしてもらおう等と考えたことは無いと豪語していた両面宿儺という人間…それが、何の億面も無しに言ってのけた……お前に、満たされたのだと。

 

 それがどれほどの異常事態なのか、どれほど有り得ないことなのか、宿儺を良く知る人間であればある程に驚愕を禁じ得ないその言葉に、しかし廻は大して驚くこともなく、無表情のままにただ一言呟いた。

 

 

「───そっか」

 

 喜びの感情、悲しみの感情、虚しさと楽しさ…そのような感情の波を禪院廻は一切見せなかった。

 

 光の無い瞳が宿儺を見つめる、光に照らされながら満足そうな表情を浮かべた宿敵の姿に、今にも肉体の崩壊が間近に迫っているという現状に表情すら変えないその姿に、廻はふとしたように口を開いた。

 

 

「…お前、結局何で受肉したんだよ」

 

 

 それは、心の底からの疑問だった。

 

 元の世界に居た時から一切明らかにされていなかった宿儺が受肉した理由、五条悟の死亡以降からの知識を一切持たない廻には、その理由が欠片も分からなかった。

 

 何故お前は二度目の生を望んだ、何故お前は呪物になってまで次を追い求めた、何がお前をそうも突き動かした…頭の中を巡るのはそんな言葉の羅列ばかりだった。

 

 知りたかった、知ってみたかった…そう暗に廻の表情が語っているように感じられたのか、実際そう感じていたのか、宿儺はその言葉に対してキョトンとした後、笑みを浮かべながら廻に問いかける。

 

 

「───知りたいか?」

 

「───知りたい」

 

 

 まるで悪戯を仕掛ける前の人間のような表情を浮かべながらの言葉、知りたいのかと問い掛けられたその言葉に対して、廻はその表情を変えることなくただ一言、知りたいと応えた。

 

 変わらない表情…勝った側の人間が無表情で、負けた側の人間が満面の笑み…言葉として並べてみたら逆なのではないかと言われるような状況の中で、宿儺はクハっと吹き出すような笑みを溢しながら真っ直ぐと廻へと視線を向けて───

 

 

 

「───教えん、精々悩め」

 

 

 何処か煙に巻くように、悪戯に成功した子供のような笑みを浮かべながらそう言葉を返した。

 

 禪院廻の表情が崩れる…先程までの無表情ではない、何処か呆れたような表情…まぁ、お前はそういう奴だよなとでも言いたげな呆れの表情に今度こそ両面宿儺は爆笑した。

 

 相も変わらずの奇妙な笑い声、新宿に響き渡る呪いの王の屈託の無い喜悦の声にソレを観戦していた人間達は新たな展開を警戒し、予感し、期待し…そして、宿儺を良く知る従者のみが、それに気付く……終わりだと。

 

 

 

「お前の勝ちだ、禪院廻…───」

 

 

 

───ご馳走様でした。

 

 

 

 

 最後の最後に全く以てらしくもない発言、食事という名の自らの生の終わりを宣言しながら、両面宿儺の肉体は塵へと還って行った。

 

 風が吹く…塵と化し吹いた風に運ばれ中へと昇っていく両面宿儺であったモノ…それが宙を漂って視界の中から消え去っていく様を見ながら、禪院廻はやはり呆れたような表情を浮かべながら、その中にほんの少しの笑みを混ぜて───

 

 

 

「───お粗末様でした」

 

 

 ただ一言、そう呟いた。

 

 

 歓声が響き渡る…呪いの王に勝利した事実に、賭けに勝った事実に、モニターを見ていた人間達の歓声がまるでドームに居るかのように響き渡る。

 

 当然ソレは廻には聞こえていない、その場に居ないのだから当然と言うべきなのだが、それでもその気配だけは感じ取っていたのかもしれない。

 

 飛び交い自身へと視線を向ける黒い鴉、バッサバッサと翼を動かし無数に飛び交う鳥へと廻は視線を向けた。

 

 冥冥の鴉…黒鳥操術によって視界を共有されたその鴉、何かを期待するかのような視線を向けながらその場に滞空する鴉の姿に、廻はがめついなと呆れの表情を浮かべながらも、しかしその顔は満面の笑顔に染まっていて───

 

 

「───勝ったよみんなぁ!!」

 

 

 そう勝利宣言と共に向けられたVサインに、今度こそモニターの向こう側に居た高専の仲間達は、その事実に歓喜の歓声を跳ね上げた。

 

 

 

 

 

───人外魔境新宿決戦 両面宿儺VS禪院廻  勝者 禪院廻

 

 

───決め手 『黒閃乱打』

 

 

 

───追記 数秒後、笑顔のまま意識を失い倒れ込んだ禪院廻に対し、東堂葵は迫真の表情で術式を使用していたものとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───随分とまぁ、満足そうに逝ったじゃないか」

 

 何処ともしれない道路の上、周辺に木々が生い茂り、葉っぱが太陽の光を僅かに反射し光に当たる者の視界を封じる…そんな場所で、男はスマホ片手に呑気に段差の上に座り込んでいた。

 

 

 スマホに映り込む場面を見ながら、呪いの王の敗北の瞬間を見届けながら、全ての元凶は…羂索は面白可笑しそうに言葉を溢す。

 

 

「いやはや、まさか彼が勝ってしまうとね…驚いたよ、心底から」

 

 嘘偽りの無い本音を吐き出す…さしもの禪院廻であろうと完全となった宿儺には勝てないと思っていた、菫の無下限すら手に入れた両面宿儺には決して勝てないと…まぁ、結果は逆だったわけなのだが。

 

 胡散臭い言葉遣いのまま驚いたと言う羂索…嘘偽りの無い心の底から本音であるはずなのに、何処か嘘臭く感じてしまうのは最早本人の素養によるものなのだろう。

 

 

「しかしまぁ…うん、面白かったね、ここまで手に汗握る激闘と言うのは中々見れない、最強の繰り上がりを観てしまって少し残念だが…まぁ満足だよ」

 

 

 誰に対して言っているのか、誰に対して言葉を溢しているのか…単なる独り言と言うにはあまりにも大きく、問いかけるようなその言葉遣いは、端から見れば奇異の目で見られることは間違いなかったことだろう。

 

 …もっとも、それはこの場にこの男以外の誰かが居なければ…という前提条件下での話になるのだが。

 

 

 

「───やぁ…久し振りだね、悠仁」

 

 

 コツリコツリと足音が響く、地面を叩く靴音と共に虎杖悠仁は悠然とその瞳に殺意を漲らせながらゆっくりと羂索へと向けてその歩を進めてくる。

 

 

「いやぁ、意外いが───」

 

 

 変わらずの胡散臭い笑みを浮かべながら口をひらこうとする羂索…その顔目掛けて、音速を超えた血の弾丸がやってくる。

 

 首を捻って躱す、僅かに頬を掠った血の弾丸に視線を向けることすらなく、余裕の表情を浮かべたままに羂索はひらひらと馬鹿にするような笑みを浮かべた。

 

 

「おっと…君も居たかい、脹相───」

 

 

 瞬時に追撃がやってくる…空中に飛び上がる人影、背部から無数に飛び出してくる血の矢やレーザーのような何かが雨あられと言わんばかりに羂索の頭上へと降り注ぐ。

 

 背部に広げられた蝶のような血の翅、複数に渡って構築された翅から繰り出される無数のソレに対して羂索は余裕の笑みを崩さず、容易くソレに対処する。

 

 躱す、無数にやってきてはランダムに襲い掛かってくるそれをまるで行き先が分かっているかのように躱し、何時の間にやら抜き放っていた刀で遊ぶように弾く。

 

 焔すら纏われていない純粋な呪力強化しただけの刀、溶けることもなく未だその鋭さを見せつけるようにギラギラと輝く刃に追撃の主は…壊相は困ったように顎に手を当てた。

 

 

「強いね、流石に…どうする、兄さん?」

 

 

 地面に接地しながらどうするのかと兄へと呼びかける、温和な笑みを浮かべながらその瞳に殺意を宿し、肩に刀を担ぐ自分達兄弟の親と呼ばれる存在へとその視線を投げかける。

 

 その横を青緑色の異形が…血塗がゆったりとした様子で歩いてくる。

 

 ペタペタと足音を響かせながら、傍目から見てもあからさまに鈍いと言われるような速度でぺちぺちと裸足の音を響かせながら歩いてきた血塗…その姿を横目で視認した脹相は表情一つ変えずに口を開いた。

 

 

「何も変わらないさ…何時も通りで行くぞ、弟達よ」

 

「なるほど、何時も通りだね」

 

「何時も通り〜……何時も通りってなんだ?」

 

「応っ……何時も通りって?」

 

 

 

 何処かコミカルさすら感じさせるやり取り、何時も通りと言って構える腸相とそれを受け取り納得の元、再び翅を広げる壊相…そして、勢いで返事をしただけで何時も通りの意味を分かっていない三男と末弟の姿に脹相は小さく笑みを浮かべ…羂索はそんな兄弟団欒の姿に吹き出すようにして嗤った。

 

 

「なるほど、勢揃いなわけだ……良いさ、たまには親子喧嘩というのも悪くは無い」

 

 

 

───術式解放『焦眉之赳』

 

 

 蒼い焔が解放される…魂すら焼き尽くすと言われた禪院薫の代名詞、虎杖悠仁が知る中で自身を助けた老人が使っていたその焔の威容に、虎杖は知らずの内に唾を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 異色の親子喧嘩、此処に開催である。

 

 

 





 次は羂索、これは正直短めで済ませたいと思っている今日この頃…文句は受け付けない。
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