なんで暫く書かないとか書いたその数時間後に書きたくなってくるんてすかねぇ作者って奴は…書かない詐欺だよこれもう。
因みに作者はブラボの獣狩りの斧が好きです(唐突)
都市の一角が爆ぜて飛ぶ…万を超える呪霊との戦闘に身を窶していた術師達の耳に爆音が届き、それと同時に煙の内から影が飛び出してくる。
地面を削りながら後方へと下がる『リア』とその腕に乗った三途、笑みを携えて煙の方向へとその視線を投げた三途…そしてその背後に瞬時に現れた五条がその背部を全力で殴り付けた。
背後からやってきたあまりに重い一撃、まるでカウンターを食らったかのような感覚と共にやってきた打撃の衝撃が三途の口から空気を溢れ出させ、その肉体を煙の方向へと吹き飛ばす。
「行ったぞ傑っ!」
「オーライっ!!」
掛け声に対する返答と共に煙の内側から夏油が飛び出してくる、何処か快活な笑みを携えながらやってきた夏油は此方側へと吹き飛んで来る三途の身体を有らん限りの力で以て蹴り飛ばした。
腹部へとめり込む蹴りの一撃、ミシミシと骨が軋む感覚と共にまたもや吹き飛ばされた三途は横断歩道の先に存在した信号機ごと地面に叩きつけられる。
カハッと息を無理矢理吐き出させられる、逃がしようのない衝撃が全身に巡り、肉体の動きがほんの一瞬だけ硬直する…そして、そこに降り注ぐようにやってくる大量の呪霊による質量攻撃。
上から下と突き落とされたような形でやってきた大量の呪霊、無数の呪霊を攻撃ではなく単なる重量物として扱ったが故の純粋な重量と質量は三途からしてみても明確な脅威以外の何者でもなかった。
視界が塞がれる、前が見えない、ほんの僅かな硬直によって術式を起動することも出来なかった三途は自分に伸し掛かってくる質量に四苦八苦としていた。
重い、とにかく重い、別に身体能力が飛び抜けて優れている訳でもない三途にとってこの重さは致命的であった、何せ気を抜くとプチッと潰されかねない。
幾ら呪力があろうが強かろうが、純粋な質量と重量を相手に何の抵抗もしなければ誰だろうと基本的に死ぬのだ、それはきっとあの宿儺でも例外ではない。
だから───
「───うずまき」
他人の極ノ番…夏油が編み出した所持した呪霊を圧縮することで高密度の呪力の塊を相手に叩きつける呪霊操術の奥義…それを短縮し放つことで三途は質量による押し潰しを逆に押し飛ばす。
僅かに空いた隙間、一部が吹き飛び消し飛んだことで空いた空間を縫うように転がり脱出する、ズンッと再び地面に激突する呪霊の重しの姿に三途はふぅーっと息を吐き出し…横からやってきた蹴りを腕で受け止めた。
「ッ!!」
ズザァッと地面を削る、放たれた蹴りによって無理矢理下げられた位置、そこから更に蹴りを放った張本人は…五条悟はその顔に狂気的な笑みを貼り付けて更に更にと踏み込んでくる。
まずは顔面に一発、防御の為に掲げた腕ごと顔面を殴り抜いてその体勢を崩す、防御の上からの一撃に三途の身体が後方へと僅かに浮いた…そして、その瞬間を五条は見逃さない。
「クハっ!」
吹き出すかのように笑みを溢し、僅かに浮き上がったその身体へと五条は連打を叩き込む、両腕を上げて防御の構えを取った三途の肉体へと次から次へと岩を抉るような打撃を叩き込む。
数にして大凡十発と少し、ほんの数秒足らずの間に叩き込まれた連打が防御ごと三途の肉体を浮かし更に後方へとその身体を押し出していく。
押し出された身体、痛む腕に歯を噛み締める三途の姿を横目に五条は瞬時に三途の背後へと移動し、そのがら空きの背中へと思い切り蹴りを叩き込もうとする。
振り抜かれる鞭が如き蹴り、ゴウッと音を切り裂きながら迫ってくるその一撃に三途はその蹴りを防ぐでも無ければ逸らすでもなく、さも当たり前のように蹴りに使われたその足に手をやり、そのまま大道芸のようにくるりと回転して五条の蹴りを躱した。
まるで跳び箱を使ったバク転だ、アクロバティックな大道芸染みた動きにさしもの五条もハァッ!? と困惑が入り混じったような声を上げた。
回転からの綺麗な着地、ここに審査員が居たのならば高得点の点数札を上げたこと間違い無しのソレをさも当然のように行った三途は口から血を吐き捨てながら言葉を紡ぐ。
「───起きろ 『
紡がれた言葉が空間へと響くその刹那、それに応えるように三途の影の内から溢れ出した猛烈な呪力反応に五条は動きを止めた…そして、それを待っていたと言わんばかりに変化は訪れる。
カタカタと三途の影の内から骨の腕が這い出してくる、ガシリと地面を引っ掴み、のそのそと身体を動かしながらその全貌をこの世へと現し始める。
赤く輝く眼球が現世を映し出す、カタカタと揺れる全身の骨の音が不気味に響き、まるで嗤うように口元の骨を揺らす。
骨だけの身体にボロ布のような黒い衣服、大鎌でも持てばそれだけで死神か何かと勘違いされるのでないかと思わされる程の死の気配をばら撒きながらソレは…餓者髑髏はこの世に顕現した。
骨だけの足を地面へと付ける、がしゃりと鳴る重く乾いた音、骨特有の奇妙な音を足音を鳴らしてこの世に足を降ろした餓者髑髏はギロリッと横目で三途を見据え───
「───悟ッ!!」
そこへと、夏油は横合いから割って入るように乱入してきた…いや、乱入したというよりかは単に追いついてきただけと言うべきなのか。
今までに感じたことの無い気配、あまりにも濃密過ぎる死の気配にさしもの夏油にも緊張が奔る、『リア』とは違う別種の格別的な存在を前に夏油は知らずの内に冷や汗を流し、しかしその行動には一点の惑いも無い。
───特級呪霊『黒沐死』
呼び出したるは何時かの渋谷で入手した特級呪霊、恐らくこの世で最も嫌われ疎まれているであろう黒い害虫の呪いを一身に受けた呪霊を夏油は三途へと差し向けた。
ブブブっと気色の悪い生々しい翅の音を響かせながら突撃を敢行する黒沐死、その手に引きずり出した魔剣を握り無いはずの食欲を振り回しながらその牙を剥き出しに三途と餓者髑髏へと襲い掛かる。
そんな黒沐死へと、餓者髑髏はゆったりとした動作で視線を向けて───
三途の保有する呪霊の一部には、術式に寄る取り込みではなく三途自身が交渉し、契約を結んだ個体が存在する。
渋谷の一戦にて顕現した『土蜘蛛』に加えて現在乙骨と『リカ』を相手に怒り任せに大暴れを繰り返している『リア』…そして、現在三途の手によって目覚めを果たした『餓者髑髏』もまた、その内の一体であった。
勝てなかった…というわけではない、土蜘蛛も餓者髑髏も三途に近しい実力こそ持ち合わせてこそいるがそれでも三途は一度はこの二体を相手に勝利を収めている。
では何故に取り込みではなく契約という形で術式の中に組み込んだのか…それこそ簡単だ、敢えて契約という形で制御を手放すことで顕現する呪霊の能力値を引き上げようとしたのだ。
呪霊操術の強みを敢えて捨てるような選択肢…奇しくも自らの師と同じ選択を取った三途はこれによって一部の呪霊達に実力以上の能力を付与することに成功していた。
結果として、放たれる一部特級相当の呪霊達の実力の程は、三途をしてキツイとまで言わせるレベルの存在へと昇華されていた。
───ザンッ!!
響き渡る、斬撃音。
何時の間に抜き放っていたのか、その手に握り締められた無骨な片刃の斧が、無造作に黒沐死へと振り下ろされていた。
黒沐死の肉体が真っ二つに割れる、ただ一つの振り下ろしによって、あまりに無造作に振り下ろされたその一撃が黒沐死の肉体を塵へと還した。
無骨、無骨、あまりに無骨…一切の装飾もクソも無い、正真正銘何処までも殺す為だけに作られたような片刃の斧、紫色の血液を付着させたソレを振り払いながら餓者髑髏は感情の見えない瞳で夏油を見据えて…嗤った。
活きの良い獲物が来た、活きの良い敵がやって来た、血の巡りの良さそうな実に良い人間がやってきた…あぁ、素晴らしい。
ギロリッとしていた視線は喜色の混じったものへと変化を遂げる、三途へと向けていた何処となく不機嫌そうだったその瞳は上機嫌なモノへと変わっていき、カタカタと喜びを表すように骨が揺れる。
そんな餓者髑髏の姿に夏油は即座に呪霊の口から槍を引っ張り出し、五条は何処か面倒なモノを見たとでも言いたげな視線を餓者髑髏へと向けた。
そんな両者の視線に餓者髑髏は大いに喜ぶ、何方も良き殺意と良き呪いを持ち合わせているとカタカタカタカタと骨を揺らして喜びを表現し、ふとしたようにその顔を背後へと…三途へと向けた。
その視線から感じ取れるものは殺戮への許諾…もう良いな、辛抱ならんぞ…まるで実際にそう言ってきているかのようにすら感じてしまう程のあまりに強い殺戮への欲求…それに対して三途は特に何を喋るでもなく、ただ一言呟いた。
「───お好きにどうぞ」
そんな三途の言葉を最後に、餓者髑髏は狂気と歓喜の感情のままに夏油達へとその刃を振り下ろした。
混沌の終わりは、未だ遠い。
餓者髑髏
強い、獣狩りの斧を持ったワイト・キングのイメージ。
素の状態でも五条先生が厄介な奴が居るとか認識する程度には強い。