宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ホロライブを引退した皆様って小説に出しても良いのだろうか…配信全部見たとかじゃなくて切り抜きとか一部の配信とかしか見てないけど…それでも楽しかったなと思う今日この頃。


三途 ①

 

 

 森が、広がっていた。

 

 瑞々しい碧が広がる森の中…小鳥が鳴き、木々が風に揺れてざわめき、新鮮で気持ちの良い空気が三途の鼻を擽った。

 

 開けた土地、それを囲うようにして存在する無数の木々に無数の自然、色とりどりの花さえも存在するその中心の内には所々が草や花に塗れた大きな仏像が存在していた。

 

 穏やかな領域だと誰もが認識するだろう、害らしい害も脅威らしい脅威も何一つとして感じられない…美しい光景を前に誰もが一度は立ち止まる…そんな光景が、目の前にあった。

 

 毒気を抜かれる…最大限の警戒を抱いていた三途の意識がその光景を前にして一瞬だけ緩む、決して気を抜いてはいけないソレを前にして尚、張り詰めていたはずの糸が一瞬だけ緩んでしまう…そしてそれを、夏油の領域は見逃さない。

 

 

 蝶が、腕へと止まる…何の脈絡も無しに、ただふよふよと飛んできた蝶が三途の腕へと止まり、特に時間も掛けずに直ぐに飛び立っていく…それを三途は何気無く目で追い───

 

 

「───」

 

 

 

 醜悪な呪いの、その顔を見た。

 

 蝶…それは間違いない、確かに蝶の羽根を持ち森を舞ったそれは蝶と呼ばれる存在ではあった…が、しかし、その全容はあまりにも従来のソレとは懸け離れていた。

 

 蜂のように生えた鋭く細い針、刺されたところで痛みに慣れている人間からすれば痛みすら感じさせない程に細い針…そして、その奥に存在する…人面の貌。

 

 刺されたことに気付かぬ者を嘲笑うかのように醜悪な笑みに歪んだその顔が、三途の瞳に焼き付くように映り込んだ。

 

 瞬間、反射的に三途は自らの腕を…蝶の止まった腕を切り落とし、そのまま流れるように舞っていた蝶すらも斬り落とした。

 

 知っていたから…数多の虫の呪霊、それを取り扱ってきた三途は刺されるという行為の後には大概碌でもない結末が待っていることを知っていたからこその行動だった…そして、それは正しかった。

 

 三途の腕、その刺された箇所を起点として広がるボコリとしたデコボコの形、無数に膨らみ泡立つように蠢いていたソレはそう時間が経つことも無く急速に大人しくなり、次の瞬間には爆ぜるようにその内側から飛び出してくる。

 

 飛び出してくるのは無数の蝶、先程斬り落としたものと同種の蝶が一斉にそこから飛び出して…次の瞬間には、その全てが三途の身体へとその身を止めていた。

 

 

 

 

 夏油傑の領域は、従来の領域とそう変わらない。

 

 必中必殺…必ず当たり必ず殺す、現代に普及した領域のオーソドックスな形として存在する夏油の領域の効果は至ってシンプルだった。

 

 即ち、夏油が呪霊で攻撃したその瞬間には既に攻撃は当たっているという、非常に分かり易くシンプルな効果…廻や秤、日車と言った特殊な領域とは真逆の正道の領域。

 

 故に、脅威極まりない。

 

 

 反射的に反転術式をフルで回す、身体中を蠢く感覚のするソレがもしも卵であったとするのならばその中身も当然呪霊、であるのならば反転術式を回すだけでその中身は疎か触れている蝶達すらも死に絶える…そう考えての行動だった。

 

 事実それは正しい、三途の身体へと止まった人面蝶は人間の体内へと卵を植え付けることでその存在を繁殖させる、時間としてもそこまで掛からず植えた数秒後には卵は帰り、内側から宿主を殺し、悠々と空へと飛び出していく。

 

 そんな性質故に反転術式を持つ人間に対しての相性と言うものは最悪の一言と言える、掠り傷を癒すような出力の反転術式ですら即死してしまうような耐久性しか持たないこの人面蝶はそれ故に三途への有効策とは成り得ない…しかし、それで良いのだと夏油は考える。

 

 何せ、肝心なのはそこではないのだから。

 

 

 反転術式の使用、それによって地面へと落ち身体の内側でその命を散らす卵であったはずの存在、それを見下ろすことも意識することも許さずに、これまた次がやってくる。

 

 それは魚だった、人の手足を持った魚…何故だか切り落とされた魚の頭のように上を向いた状態で現れたそれはしかし、その瞳だけをぎょろりと三途へと向けた。

 

 三途の背中に悪寒が走る。

 

 

 

───シン・陰流『簡易領域』

 

 

 領域から身を護る術、簡易領域の展開…その一連の動作にやはり…と、夏油は天使との会話を頭の中に反芻させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐らく三途は、今回の戦いで自分の領域を使用して来ることはないと思う」

 

 

 三途への対策を練る中で、天使はふとしたようにそう言い放った。

 

 あまりの突然、唐突にぶち込んでくるようなタイミングで吐き出されたその言葉に皆の意識が集中する、その大凡は何言ってんだコイツという胡乱気な表情ではあったものの、その中から食いつくように夏油はその言葉へと反応した。

 

 

「何故、そう思うのですか?」

 

「三途の目的を考えるならそうせざるを得ないからだよ」

 

 純粋な疑問に返された単純な返答、目的の為に領域を展開する事が出来ないというその言葉に誰もしもが頭の上に?のマークを浮かべた。

 

 直結しないからだ…領域を展開しないことと自らの目的を達成する事、それらを=で結びつけることがどうしても出来ない、最終的に己等全員に打ち勝つ必要があるというのに領域を展開しないとはどういうことなのかと全員の意識が天使へと向く。

  

 

「どうしてですか? 目的を達成するのに私達を倒す必要があるなら領域使った方が楽だと思うんですが」

 

 

 否、一人だけ…三輪霞だけがド直球に聞きに言っていた、何処となくそういう空気に成りかけていた所に差し込むように放たれたド直球な質問にガクリと一部の人間が椅子から落ちかける。

 

 間違ったことはしていない、分からないから聞いてその答えを求めるという至極真っ当なことをしているだけに過ぎない…過ぎないのだが、如何せん空気が重くなり始めた所に唐突にお出しされたお馬鹿な雰囲気に全員のギャップが著しく刺激されていた。

 

 そんな三輪の姿にクスリと笑みを浮かべた天使は顎に手をやりながら、何かを考えるような動作と共に言葉を紡ぐ。

 

「これは単なる私の推測だ、間違ってないとは言えないし確実に当てているとも言えない、本当に単なる予測と推測だ…それを念頭に置いた上で聞いてほしい」

 

 そんな天使の言葉にコクリコクリと頭を上下させた三輪に対して…そしてそんな三輪に便乗するかのように聞きの姿勢に入った周囲を見渡して、天使はコホンと咳を一つ吐いた後に自らの推測を語り出した。

 

「───恐らくではあるが、まず三途の最終的な目的の着地点は現在の日本を平安の頃の混沌とした状況に巻き戻す事だと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中から夏油が飛び出す、森の木々の内からヌッと突然その姿を現すかのように出現した夏油の気配に三途の意識がそちらへと逸れる…その瞬間を逃さず、パンッと人体魚は音を立てて掌を合わせた。

 

 瞬間、やってくる重力、身体に伸し掛かる突然の重みに三途の身体が地面へと沈む。

 

 『簡易領域』を使用した上で尚も当たる…その事から三途は現在の術式は純粋な広範囲型、必中を使うまでもなく高確率で命中する類なものであると仮定した。

 

 夏油が来る…己とは違い重力に苦しめられた様子の無い夏油の姿に効果範囲を絞れるのかと思考を重ねた三途の元へと夏油は拳を叩き付けた。

 

 『簡易領域』を使用している以上は呪霊操術は使えない、呪霊操術を使えないということは呪霊を呼び出しての領域は使用出来ないということだ…攻めるならば今しかないと、夏油は直感した。

 

 天使との会話が、反芻する。

 

 

 

 

『仮定の話として、もしも三途が私達に勝利した場合、真っ先に三途がやることは恐らく現政府の破壊だ』

 

『政府…この国の生活の根幹に位置する物を壊すことでこの国を混乱の渦中に陥れる、陥れたその上で自らの持つ呪霊を解き放つことで更に混乱に拍車を掛ける…そして、今度の被害はコロニー内のみなんてことにはならない』

 

『全てだ…日本全域で被害が爆増する、無差別に格差無く兎にも角にも数だと言わんばかりに襲わせるはずだ…そうして、生き残った誰かに舵を取らせる』

 

『天元には興味が無いはずだ…何せ平安の頃と同様の状況下に戻すのが目的なんだ、その頃から天元は居たはずだから天元が狙われるということは無いと思ってくれていい』

 

 

 

 会話を反芻させながら打撃を打ち込む、剥がれかけの『簡易領域』を維持しながらも此方の攻撃を捌き続ける三途、そんな三途に夏油は陰の内から無数以上の烏合の呪霊共を召喚し、向かわせる。

 

 手数だ、何はともあれ手数だ、呪霊を決して召喚させない。

 

 呪霊を召喚されればそこから呪霊の領域を展開される、先の際に三途が呪霊に領域を展開させなかったのはそれをするよりも先に自分の命を刈り取られる可能性があるからだと判断したことが、夏油には理解出来ていた。

 

 だから攻める、とにかく攻める、隙間なんて一切与えない呪霊操術本来の使い方で兎にも角にも物量で圧殺する…それこそが、一番安い勝ち筋であることを夏油は理解していた。

 

 天使の会話が反芻する。

 

 

『領域の話に戻るが、私もあの子の領域の詳細は知らない…知らないが、その大筋は知っている』

 

『どんな形であるかは私も知らない、どんな効果でどんな結果になるのかも私は知らない…それでも、これだけは知っている』

 

『三途の領域は万単位の呪霊を一息の間に消費する』

 

『それこそ当然ではあるが、三途の目的の為には大量の呪霊が必要不可欠だ、それを悪戯に消費するという選択肢を三途は取ることが出来ない…ましてや君達と戦うんだ、その消費量は並大抵では済むまい』

 

『だから、馬鹿みたいに呪霊を消費する術をあの子は使わない、目的を達成出来なくなってしまうからね』

 

『…まぁ…長々と話してしまったが、これら全ては単なる私個人の推測に過ぎない…だから、どうかこれを正解とは思わないで欲しい』

 

『あの子は相手に、警戒し過ぎるということはないからな』

 

 

 

 

 

 

 

 天使の推測は、その大筋を間違えてはいなかった。

 

 三途は確かに天使の言う事を行おうとしていた…そんなことはないだろうと、流石に別の目的があるだろうと推測していた自分の考えなんて容易に飛び越して。

 

 精々が違いがあったとするなら、それは範囲の違いだろう…三途は、世界単位で日本平安時期の混沌とした状況を作り出そうとしていたのだから。

 

 手段だと思いたかった、その先に何かがあるのだと思いたかった…しかし、そんなことはなかった。

 

 何処まで行ってもそれこそが目的、ただ混乱の渦中に落とし込むだけ落とし込んで後は知るかと投げ捨てる…そんなことをやろうとしているのだと、夏油は三途との会話でようやくそれを理解した。

 

 天使は正しかった…その言葉もその推測も全てが概ね当たっていた、生かしておけないというその言葉もその目的を語ったその言葉も、その大半が当たってしまっていたのだ。

 

 殺さなければならない、生かしておいてはならない、この男は夏油自身がそう悟ったのと同じように、正真正銘の厄災と化しかねないのだから。

 

 

 

 攻める、攻める、攻める、攻める、攻める、攻める、攻める、攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める。

 

 隙間なんて与えない、呪霊でタイミングを潰し術式を発動するタイミングを与えない、剥がれかけの『簡易領域』を壊す勢いで攻撃を捲し立てながら夏油は冷徹にその命に手を伸ばす。

 

 そんな夏油の姿に三途は薄ら寒さを覚えるような笑みを浮かべてみせた…まるで小馬鹿にするかのように。

 

 そんな姿に夏油は更に攻撃の手を速めた…呪霊で埋めた隙間の合間に特級を呼び出しぶつけながら、自身の感じる悪寒から目を逸らすように。

 

 

 そして三途は、そんな夏油の姿に…やはり小馬鹿にかのように、舌を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、約数分後…三途の極ノ番が()()()()

 

 

 

 

 

 

 





天使

 三途の目的の大半を理解してしまっている人、ただしその規模だけは外していた人。

三途

 万単為で呪霊を消費しないとそもそも機能しないタイプの領域持ち、何方かと言うと儀式としての側面が強い。
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