宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 話が、話が伸びる…キャラが勝手に喋る…!


三途②

 

 

 夏油が三途を攻め立てる、無数の呪霊と呪具を介した自身からの攻撃、それらを複雑に絡み合わせながら夏油を三途へと致命の一撃を叩き込もうと邁進する。

 

 手数を重視したが故に重用される低級呪霊、特級を使ってしまえばどうしてもそこを起点としてしまうが故に夏油は敢えて呪霊の使用を扱いの容易い低級呪霊に絞っていた…そして、それが幸を奉じているのか、今のところ三途は手数に押されて動きらしい動きを見せていない。

 

 三途の簡易領域が剥がれ落ちるまで残り数秒そこら…それが剥がれ落ちれば待っているのは夏油の呪霊操術による必中攻撃、当たればまず致命の一撃と成ることは間違いない必殺に限りなく近い一撃が叩き込まれる。

 

 そうなってしまえば低級呪霊だろうが何だろうが関係無い、先の人面蝶のようにはもういかない、今度は防ぎようの無い何処までも純粋な数の暴力の必中によってその肉体を削り取るだけだ…少なくとも、夏油の狙いを簡潔に言ってしまえばそうなる。

 

 そして三途もまた、夏油の狙いを当たり前のように看破していた、同じ術式を持つが故の理解力とも言うべき共感が三途に夏油の狙いを開け透けに教えていたとも言える。

 

 単純明快な物量によるゴリ押し…呪霊操術の特性を最大限に活かしたその戦法を自分自身の攻撃も交えながら自身へと叩き込んでくる夏油…簡易領域が剥がれると同時にそれが必中と化して襲いかかってくる、その恐ろしさを三途は誰よりも理解している。

 

 

 

 理解しているが故に…三途は薄く嗤った、夏油の認識の甘さに。

 

 

 

 簡易領域が剥がれ落ちる、必中から身を護る術がその効力を失ってしまう…瞬間、雪崩のように呪霊の大群が三途へと群がった。

 

 牙を突き立てる、毒針を突き刺す、鋏で身体を傷つける…多種多様な方法で眼前の餌を喰らおうと群がる有象無象の呪霊共、四方八方から張り付かれた状態で最早外側からは三途の姿は見えない…そこへと、夏油は自身の奥義を構えた。

 

 特級呪霊を使用したうずまき、先の極小のソレではなく正真正銘相手を消し飛ばすことに執心した威力重視の極ノ番、必中効果によって必ず当たる必殺の一撃と化したうずまきを夏油は有象に群がられた三途へと撃ち込もうとその手を翻した…その直後のことだった。

 

 

 

「───領域展開」

 

 

 薄く呟かれたその声が、夏油の領域内に響き渡った。

 

 展開される領域、突如として始まった必中術式の押し合いに夏油はうずまきの使用を中断、瞬時に押し込まれかけた領域の維持へと思考を切り替える…その隙を突くように、三途は自身へと群がっていた低級呪霊の全てを弾き飛ばしながら、夏油へと突撃を敢行した。

 

 領域の維持に割かれた意識、僅かな時間の間にあまりに大きく動き出した展開の早さに夏油の思考回路が僅かに反応に遅れる、突撃を敢行した三途の飛び蹴りが夏油の腹部を撃ち抜き吹き飛ばす。

 

 ゴロゴロと転がる身体、瞬時に体勢を整え身体を上げたその瞬間には凄惨な笑みを浮かべた三途が先程のお返しと言わんばかりに拳を振り被っていた。

 

 全身血だらけ、くっきり残った歯型に針の跡、指の一部は欠けて無くなり足に至っては指先がごっそりと消えている、それだけのダメージを与えていたという証明が夏油の視界へと映り込んだ。

 

 どうやって領域を展開した、まさか予想に反して自身の領域を使用したのか…そんな思考を広げながら迫る拳を咄嗟に両腕で受け止める…が、しかし、それがいけなかった。

 

 

 

───黒閃

 

 

 黒い火花が飛び散る、三途の全身を全能感が巡る、弾けた火花と共に浮かんだ愉し気な笑みが三途のボルテージの上昇を提示しているかのように思えた。

 

 腕から嫌な音が鳴る、軋むような音ではなく思い切り圧し折れ砕けたかのような音が夏油の腕からは鳴り響く、激痛と共に身体の芯へと届いたその感覚に夏油の動きが硬直する。

 

 弾け飛ぶ夏油の肉体、防いだ両腕ごとその肉体を殴り飛ばした三途は携えた愉悦のままに呪霊操術を駆動、倍返しと言わんばかりに出現させた大量の呪霊を砲弾のように夏油を射出する。

 

 領域の押し合いは未だに続いている、夏油の領域は破られておらずその術式もまだまだ生きている、必中効果は発動しない。

 

 森を突き抜ける、木々を押し倒しては木々を粉砕し、森中に存在した大きな岩に激突する形で夏油の肉体の勢いは止まる、カハッと強制的に吐き出させられた息が酷く苦しいものに感じられた。

 

 地面へと落ちながら咳き込む、ゲホゲホっと切らした息を補填するように何度も吐き出し息を整えようとする…が、そんな隙間なぞ与えぬと言わんばかりに呪霊の砲弾が夏油の元へと降り注ぐ。

 

 爆音が響く、無数の砲弾による爆音、木々を吹き飛ばし森の一角を容赦無く燃やす、まるで戦争か何かのような光景が眼前に広がる中で三途は木片を潰しながら隠しきれない喜悦を浮かべて歩いてくる。

 

 

「───天使からさ、僕の領域のことを聞いてきたんでしょ?」

 

 

 誰に話しかけているのか、燃える森の中を歩きながら独り言のように三途が口を開く、その内にある愉悦と喜悦を隠しもせずに。

 

 

「だから使わないって思った…いや、使えないって思ったのかな? 僕の目的の関係上、呪霊を大量に消費するってわけにはいかなかったから」

 

 歌うように言葉を溢す、炎の音を耳に捉えながら迷い無く惑い無く真っ直ぐと目的地へと向けて歩を進める。

 

 憶測を交えながらの言葉、大して間違ってもいないその推測をただ独り言のように吐き出すその姿は巻き上がる炎の波の中にあるが故か、酷く不気味に思えてならない。

 

 パキリと木片を潰す、炎の中を突き進みながら鼻歌すら歌ってみせる三途の姿を見た者がいたのならば、きっと三途を人間とは認識しなかったであろう。

 

 

「───駄目だよ、夏油さん…そんな固定概念に縛られちゃ」

 

 

 バキリッと木片を踏み潰しながら、三途は歩を止めた。

 

 視界の向こう側、三途の見据える先に居たのは衣服をボロボロにした夏油の姿…所々から血を垂れ流し、傷が見え隠れするような状況の中でもその瞳に宿る殺意に一片の陰りも無かった。

 

 一触即発…僅かでも動きがあればそれだけで殺し合いが始まってしまいそうな空間の中で三途は教師が生徒に説教でもするかのように言葉を紡いだ。

 

 

「廻さんの領域を見たり聞いたりして学ばなかった? 必中必殺だけが領域じゃない、術式の能力をひたすらに引き出す為の領域だってあるんだから、必中を打ち消す為だけの領域もあるって思わなくちゃ」

 

 

 僕の領域みたいにさ…そう言ってのけた三途は、まるで大人が子供を諭すかのような声色で更なる夏油へと言い放つ。

 

 

「僕の領域は儀式場なんだよ…何の為のかは言わないけど、儀式をする為の場所なんだよ…だから、それを邪魔させない為に僕の領域は必中効果を全力で邪魔するように設計してある」

 

 懇切丁寧に教えるように言葉を放つ三途、燃え盛る森の中とは思えないほどに軽く呑気な声色と言い回し、その瞳に映る殺意はまるで消えていない癖に何処か馴染みやすさすら感じさせるその雰囲気に夏油は不機嫌そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

 

「…だから何だ」

 

「…分からない?」

 

 放たれた疑問の言葉に更なる疑問で返される、何で分からないのか分からないと言いたげな三途の顔に夏油は青筋を浮かべた。

 

 夏油は反転術式を実戦レベルでは使えない、故に傷の治癒はあり得ない程に遅いしその出力も不合格を平気で下回る…どうしようもなく苦手なのだ。

 

 だからこそ、この会話の最中に傷を再生させる等と言う芸当は当然出来ない、先程から四苦八苦と苦心しながらどうこうしようとしているが、三途の目線から言ってしまえば何をやっているだろう? と素で疑問を持たれるレベルで反転術式として機能して居ない辺りで全てを察してしまえるだろう。

 

 そこに透過された先の一連の流れ…苛つかない道理は無かった。

 

 そんな夏油の様子にまるで仕方がないと言いたげな様子で首を振った三途はさも当たり前のことのようにその答えを吐き出した。

 

「要するに僕の領域は儀式場さえ動かさなければただの大っきな簡易領域と変わらないんだよ、術式発動=必中術式の発動じゃないから夏油さんの推測は根底から外れてるんだよ…どう、分かった?」

 

 

 子供が友達に自身の説明したいことを目一杯説明したかのような言い草に夏油は思わずと言ったようにその瞳を見開いた。

 

 言っていることは理解出来る、要するに三途のやっていることは発動条件を極端に縛ることだ。

 

 儀式場の駆動…それを使用して何をするのかは知らないが、それでも儀式場の駆動という一工程を置くことで必中効果に対する耐性を著しく上昇させた…それが三途の領域なのだと夏油は理解した。

 

 なるほど、これならば確かに術式の発動と必中効果の発動はイコールではない、天使の言っていた万単位の呪霊の消費は引き起こされないだろう…だが、しかし───

 

 

「何故それを敵である私に言う、何故それを隠さない?」

 

 

 さも当たり前のように自身の奥義、その情報を言ってのける三途に対して夏油は訝しむような表情を向けた、向けざるを得なかった。

 

 当たり前だろう、何処の誰が自身の切り札の情報を簡単に教えると言うのか、それが例え情報開示による能力上昇の為であったのだとしても領域の情報を知られるというのはそれたけでデメリットであるはずなのだ。

 

 故に夏油は理解出来ない、眼前の存在が何をどうしてそのような行動を取ったのかをまるで理解出来ない…そんなことを思考する夏油に対して、何処かキョトンとした表情を浮かべた三途はあぁ、と一言手を叩き───

 

 

「敵に対して好意を持っちゃいけないなんて決まり、この世には無いでしょ?」

 

 

 三途はそう言って、綺羅びやかな純粋な笑顔を浮かべてみせた。

 

 

 三途の極ノ番発動まで、残り───

 

 

 

 

 





三途

 戦うのは好き、殺し合うのも好き、話すのも好きだし言い合うのも好き…姿のモチーフは例のクソガキだけど中身のモチーフはまた別なキャラクター。


 ネタバレ同然に言っておくと、極ノ番は実質無惨様。
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