超絶駆け足&適当。
良い展開が全く思い浮かばなかったからかなりの駆け足で書いた…というか宿儺戦を最後にネタを全部吐き出して切ってしまった感がある…もうちょいネタを残せば良かったと後悔。
というか幾ら考えてもこの三人相手に三途が太刀打ち出来る未来が思い浮かばなかった、ごめんなさい。
呟くように、囁くように、嗤う。
背中の骨が揺れる、蜘蛛のような鋭さを持った八本の骨がギチギチとその感覚を鳴らすかなように揺れ動く。
嗤う、怪物は嗤う…ただ、自らの愉悦を噛み締めて。
爆ぜる、踏み込みの音…動きは一瞬、動作は一瞬、ただ地面に踏み締め前へと踏み出す…ただそれだけの動作で、三途は夏油の眼前へと躍り出た。
埒外の速度、先程までものと比べてみても段違い、圧倒的とも言えるその速度と共に三途は夏油の目の前へとその姿を現した。
───速っ…
あまりの速さ、先程までとは比べ物にならないその速さに夏油の認識が僅かに遅れる…認識していたソレよりも遥かに速いその動き、元々認識していたソレとの差異に夏油傑の反応は遅れた。
動き出す手元、骨の大鎌が夏油の首を刈り取らんと迫る、振るわれるその刃の動きでさえも先と比べて別格の動き、本当に同一の生物かと疑問詞してしまうソレを放たれる。
「───チィッ」
防がれる刃、甚爾の游雲が三途の刃とぶつかる、火花を散らしてミシリっと音を鳴らす游雲が夏油の認識を急速に現実へと近づけた。
───さっきの倍は速い。
冷静に冷徹に甚爾は現状を認識する、先程のうずまき以降露骨に三途の動きが変わったその事実に、甚爾は心中に於いても舌打ちを打つ。
馴染んできているのだ…変質した己の身体、呪霊となった己の身体、人間であった頃とは比べ物にならない程の身体能力と呪力を手に入れたことで四苦八苦していたその肉体の使い方を、三途はこと此処に至って遂に理解し始めたのだ。
三途の動きが加速する、背中に生えた八本の骨が一斉に動き出し甚爾の肉体を付け狙う、槍の如く突き出された鋭く太い背部の肋骨が不可思議な軌道を描きながらその命を奪わんとする。
それらを躱し防ぎながら甚爾は夏油の体を蹴り飛ばす、護りながらでは厳しいと判断したが故の行動だった。
ガヒュッ、ガヒュッ、ガヒュッ…空間を削り取るかのような音、真横を通り抜ける異形の刃と刺突が甚爾の身体を抉ろうとする。
防ぐ、躱す…繰り返し行ったその行動、一通りやった後に見つけた僅かな隙間、その隙間を抉じ開けながら攻め込み再び打撃を叩き込む…それが、段々と難しくなっていく実感が甚爾にはあった。
速くなっていく…次から次へと、一撃を打ち込む度に三途の動きが最適化されていく…無駄を削ぎ、隙間を消し、一手一手の僅かな遅れすら修正していく、自らの一撃一撃を次から次へと最速へと導かんとしている。
刃が甚爾の頰を掠める、自らの防御を抜いてきた三途の攻撃、修正に修正を重ねた一撃が遂に天与の暴君の肉体を捉える…その事実に、三途の頰が悍ましく歪み……その横面に、五条の一撃が叩き込まれた。
何時の間に踏み込んでいたのか、何時の間にそこにいたのか、認識の真横をすり抜けてきた最強の存在に三途の思考は混乱する、猛烈に動き出す思考がどうやったとその方法を探り出そうとする…が、それら全てを無駄だと三途自身が切り捨てた。
そんなことよりも反撃をしろ、コイツを近くに置いたままにするな…そんな本能からの叫びに従うように三途の身体は動き出し……それを見た。
「───領域展開」
───『無量空処』
五条悟…現代最強の術師、その領域が三途の肉体を呑み込んだ。
何故、今になってと三途は思考した。
五条悟の領域…知覚と伝達を無限に強制される領域、あまりに膨大な量の情報を脳へと送り込みダメージを与えた上でその行動をも縛る五条悟の奥義…三途が漏瑚により齎された情報を羅列するのならばこうなる。
聞いた時はどうしようかと思った、そんな化物染みた効果を相手に自分はどう戦えば良いのかと考えて…真っ先に思いついたのは極ノ番を使用することだった。
領域のぶつかり合いになれば負けるのは目に見えていた、必中効果を打ち消すことのみに効力を割いた己の領域であれば押し負けることは恐らくないだろう…しかし、その間にダメージを与えられればその均衡は容易く崩れ去る、そうなれば己の負けは必定のものとなる。
ならば極ノ番を使用して呪力量や出力を底上げし、領域展延等で防いだ方がまだ勝算があると三途は考えた…だがしかし、そもそも極ノ番を使用するという状況にはなってはいけないのだと一時期は思い直したし、実際つべこべ言っている場合では無くなるその時まで、三途は極ノ番を使用する気はなかった。
それでも使用したのはそれどころでは無くなったから、五条悟や夏油傑に加えて天与の暴君までもが参戦してしまったことを切っ掛けに、三途は極ノ番を使用せざるを得ない状況にまで追い込まれてしまった。
最悪だと思った、よりにもよって今放っている呪霊を除いた全ての備蓄を消費せざるを得なくなったその現状に、三途はくじ引きの大凶を引いたような気分だった。
それ故に三途は思考する…何故今になって五条悟は領域を展開したのだろう?…と。
別にそう難しい話というわけでもないのだ、ただただ単純明快な疑問だった…何故、よりにもよって己が極ノ番を発動した後に領域を展開したのか…これに尽きるのだから。
呪力量が上がったのは傍目から見ても明らかだった、出力も同様でありただの人間であった頃に比べれば遥かに厄介な存在になったであろうことは三途自身も理解している。
故に疑問が残った…何故、厄介な状態になる前に領域を展開しなかったのか、何故極ノ番を発動し厄介な状態になった後の己に自身の奥義を発動したのか…そんな単純な疑問が三途の頭の中にあった…そして、それに対する答えもまた至極単純明快なものだった。
後顧の憂いを絶ちたかったから…これに尽きた。
天使は恐れていた、三途が自身が死んだ際の予備作を持っていることを、自らの望みが果たせなくなった際に起こすであろう最後の足掻きと呼ばれるものを。
どんな風に、どのように…それら一切が不明、そもそも存在するかどうかすら分からないソレを天使は過敏に恐れていた、それだけは駄目だと五条に念押しする程度には恐れていた。
だから待った、絶対に次が無いと思えるような状況を。
だから追い込んだ…何十何百万と備蓄を使用する三途の極ノ番を発動させる為に、後の呪霊放出を確実に潰す為に。
そして…その時はやってきた。
───九綱 偏光 烏と声明 表裏の間
奥義の詠唱、五条家秘伝『虚式』の起こり…それを前に三途は動き出した。
食らって生き残れないわけではない、先の際とは違って今の三途には余るほどの呪力があるのだ、回復そのものは容易いと言わざるを得ない。
しかし…その隙間を突かれる可能性は捨てきれなかった、その回復の合間を五条悟や天与の暴君に突かれて生き延びられると豪語出来る程、三途は驕ってもいなかった。
駆ける、全力の疾走、今の状態であれば五条悟が虚式を発動する前に三途は五条の元へと辿り着ける、その発動を阻止することが出来る。
領域展延は既に発動している、必中効果は三途に対して効果を発揮しない。
やれる、間に合う、何とかなる……そんな思考を重ねた三途の姿を嘲笑うかのように、魔王はその口元を歪める。
───九綱 偏光 烏と声明 表裏の間
二度目の詠唱、片側へと用意されたもう一つの虚式の起こり…その光景を前に三途の思考が今度こそ渋滞を引き起こす。
何故、何をやっている、詠唱二回目、もう一つの虚式の起こり……それら羅列された事実を前にした三途の脳裏に甦る呪いの王の最終奥義の姿。
滅式…その単語が頭に浮かんだその瞬間、三途の本能が悲鳴を上げる…が、既に遅い。
五条悟は本家本元の無下限呪術の使い手、その能力使用や技の発動速度は両面宿儺を凌駕する。
更にそれに加えて二つの虚式の発現によるほんの僅かな動きの停止、それによって空いた時間の隙間によって五条悟は二つの虚式の発動、そしてそれら二つをぶつけ合わせるに至る。
手本は既に見た、呪いの王の実演という最高の手本を…ならば、五条悟がそれを再現出来ない等と言う訳も無し。
効果範囲を自らの領域内のみへと限定、虚式をぶつけ合わせたことによる空間の揺れが三途の妨害全てを無へと帰す、領域内のみを限定とした発動により外側へと被害を零に等しい段階へと落とし込む。
久方ぶりに頰を伝う脂汗、大量に流れ出るソレにしかし、五条悟は先に向こう側へと逝った呪いの王を煽るかのような満面の笑みを浮かべてみせた。
空間が歪む、色が収束する…領域を結界で閉じているが故に逃げようにも逃げられない三途はその収束していく虚無が如き白に対して、何処か乾いたような笑みを浮かべた。
「───やっぱりズルいや、それ」
───滅式『白』
発現した白が、領域内を埋め尽くした。
次回 三途戦終了