宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ようやく…三途戦、おしまい……長かったぁ。


三途 ⑥

 

 

 

「───久しぶりだね、三途」

 

「───…うん…久しぶり、薫くん」

 

 

 曇天の下、今にも雨が降り出しそうなその天気の中で、二者は再び邂逅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…怒らないの?」

 

 

 暗い雲が太陽を覆った空の下、薄ら冷たい空気が肌に触れる中で三途はふとしたようにそう溢した。

 

 自分が何をやったのかは分かっている、それが到底許されないことであったことも、それがかつての仲間を裏切るような行いであったことも重々承知している。

 

 故に分からない、三途は此方側に来れば怒られると思っていた、激怒され顔面を殴打され、鼻や歯の一つ二つ三つ程度は圧し折られると思っていただけに…何もされていないという事実を前に、三途は心底から困惑していた。

 

 そんな三途の心中が察してしまえたのだろう、心底から困惑しているであろう友の姿を前に薫はクスリッと笑みを浮かべる…怒りも嘆きも呆れも何も乗せない、ただただ純粋な微笑みを浮かべる。

 

 

「───怒ってほしいの?」

 

「───それが普通でしょ?」

 

 

 薫の言葉に三途が返す、怒って欲しいのかと微笑みを浮かべながら放たれたその言葉に三途は自らの常識を鑑みながら言葉を返した。

 

 そうだ、それが当たり前なのだ…現代で引き起こした事変と引き起こそうとした事変、後者は未達成でこそあったが引き起こされれば天変地異が如き被害を叩き出していたのは間違いない。

 

 激怒が当然の話なのだ、罵詈雑言が飛んだ来るのが普通の話なのだ、今この場でもう一度死を経験していても可笑しくもない事柄なのだ…そのはずなのに、禪院薫という人間はそのような感情を表に出さない、見せもしない。

 

 分からない、理解出来ない、自分の知る禪院薫であれば早々に斬り捨てられていても可笑しくないようなことを連発したはずなのに、何故未だに己の身には何も起きていないのかと、三途はその困惑をより一層に深めることしか出来ない…そんな三途の心情が分かっているかのように薫は口を開いた。

 

 

「此処が何処か、覚えてる?」

 

 

 問いかけられたその言葉に、三途は自然と周囲を見渡した、ぽつりとぽつりと雨がゆったりと降り出すその中で一際目立つ箇所が一つだけあった。

 

 それは、石の積み重ねられただけの簡素な墓…無数に積み上げられ、幾多の数を作られた名前も刻まれていない何処までも簡素な墓が、そこにはあった。

 

 ぽつりぽつりと雨が降り出す、空からやってくる無数の水滴が積み上げられた石の上をチビチビと叩き出す…視線の先に存在する積み上げれた石の存在に、三途の顔から表情が消えた。

 

 

「そうだよ…此処は、君が作った墓場だ」

 

 

 そんな三途へと、薫は言の葉を紡ぐ…微笑みも消え失せた顔で、何かを思い出すように積み立てられた墓へと視線を投げかけながら、薫は更に言葉を紡ぐ。

 

「怒ってないのか…って言ってたよね……正直に言うよ───」

 

 

 

───怒ってる。

 

 

 そう告げた薫の表情が悲しげに歪む、ぽつりとぽつりと降り注いでいた雨の勢いが徐々に増していく中で薫はふとしたように身体を屈めて、その積み上げられただけの石の墓を撫でた。

 

「君は僕達を裏切った…無数に殺して無数に奪い、その災厄を関係の無い千年先の未来にまで持ち込もうとした…怒ってないわけがない、怒らずにいられるわけがない」

 

 淡々と紡がれる言葉、ザラリとした感触の石墓を撫でながら薫は今の今まで吐き出せてこなかった言葉の全てを吐き出してやると言わんばかりに更に言葉を紡ぐ。

 

 

「動機を理解しないわけじゃない、そうしても仕方が無いだけの理由があったことは知っているし、僕自身だって同じことが起きた時に君と同じことをしないとは言い切れない…でも、それでも僕は君を許せない」

 

 

 怨嗟、友情、憎悪、愛情…負と正の感情の全てが一緒くたに混ざり合ったような声色…与えられ、共に過ごした日々の記憶と奪われ壊された日々の記憶、愛憎入り混じったその感情の発露を三途はただ黙して聞いていた。

 

 

「君を止めようと何人も死んだ、君を阻もうと何人も死んだ…ただ君に戻ってきて欲しいと願っていたあの人も、ただ君のことを理解しようとしていただけのあの人も…みんなみんなただ死んだ、よりにもよって君の手で」

 

 

 分かっているはずだと薫の背中がそう語る、ゆらりと身体を立ち上がらせながら放たれる呪いの圧に、燃え盛る地獄の炎のようなその様相を、三途はただジッと見つめている。

 

「本当はこの手で殺したかった、本当はこの手で焼き尽くしてやりたかった…君が君であると知る僕が、三途という術師を知っていたはずの僕が…君を殺さなきゃならなかったんだ」

 

 

 薫が振り向く、何時の間にやら土砂降りと化していた曇天の雨、雷すら鳴り響いているその中で見えたその瞳は何処までも空虚に歪み、ただただその瞳から涙を流していた。

 

 恨みもあろう、憎しみもあろう、自らに渦巻く負の感情全てをぶつけてようやくと言ったような有様であろうその心中はしかし…今はどうしようもなく、悲しみが勝っていた。

 

 

「…ごめんね」

 

 唐突な謝罪、意味の分からないその言葉に三途はその瞳を見開く、涙と憎しみを垂れ流しながら三途の方向へと歩を進めながらも薫は更に言葉を吐き出す。

 

 

「あの時に殺してやれれば良かった、あの時に止めてやれれば良かった、あの時に全部終わらせてやれれば良かった」

 

 淡々と紡ぐ、感情を込めないようにただ言葉を紡ぎながら歩を進める、涙を垂れ流しながら必死に流れ出る感情を堰き止めるようにただ淡々と…しかし、その溢れ出る感情を抑えようもないのか、言葉の端々からはソレは感じ取れてしまう。

  

 ソレは涙と共に垂れ流している憎しみではない…ソレは後悔、ソレは悔い、それは遠い日々に残してしまった最後の最後のやり残しへの強い執着。

 

 

「けど出来なかった…僕が迷ったから、僕が躊躇ったから、僕が…僕が、それでも殺したくないと思ってしまったから」

 

 

 その言葉に三途は何時かの日のことを思い出す…武具をぶつけて呪いをぶつけ、自らの出し得る殺意という殺意の全てを出し切ったあの死闘、自らの首が刈り取られる寸前まで行ったあの激戦の日が三途の脳裏に浮び上がる。

 

 片や憎しみを、片やどうしょうもない憤りと誰にぶつけて良いのかも分からない不規則な感情、互いに抱いた全てを吐き出しながら殺し合ったあの鮮烈な光景は、今でも三途の脳裏に刻み込まれている。

 

 薫は未だに泣いていた、その涙から憎しみを垂れ流しながら、その言葉から悔いを垂れ流しながら、真っ直ぐと三途を見つめるその瞳には光が存在しなかった…そんな光景を前に、三途はどうすれば良いのか分からなかった。

 

 激怒されるでもなく、怨嗟をぶつけられるでもない…自らの予想した全てを通り過ぎた上で己へとぶつけられたのがよりにもよって憎しみの入り混じった謝罪だったのだ、こうもなろうと三途は思う。

 

 何と返せば良いのだろう、何と返事を返せば良いのだろう…謝るべきは己なのに、薫が行っていることをやらねばならぬのは己であるはずなのに…何故に己はこうもボケっとしながら眼前の友であった人間の懺悔を聞く立場に立っていると言うのか。

 

 

「…なんで、謝るの?」

 

 

 気が付けば、声に出ていた。

 

 

「なんで君が謝るの? それは僕がやらなきゃいけないことなのに」

 

「なんでもっと僕を憎まないの? それだけのことをしたのに、それだけのモノを奪ってきたのに、それだけのモノを壊してきたのに」

 

「なんで君は…君達は、もっと僕のことを呪ってくれない」

 

 

 

 脳内で繰り返した言葉が口を出る、声という媒介を通して外へと吐き出される、降り注ぐ雨の音に掻き消されそうな程にか弱いその声は、しかし禪院薫の元に確かに届いていた。

 

 届いたその声に薫が笑う、涙を流して憎しみを流して、堪えきれない後悔と懺悔の感情を纏めて吐き出すように、絞り出すようにその口を動かした。

 

 

「だって君は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 満天の青空が、広がっていた。

 

 夢から覚めるように、現実へと引き戻されるように、強い陽の光が三途の目元へと突き刺さり、身体中に走る焼けるような痛みが三途の意識を叩き起こしていた。

 

 

「……何時も肝心な所で、都合の悪い…」

 

 

 呟かれたその言葉には様々な感情が乗っていた…どうしてよりにもよってあのタイミングなのか、どうしてよりにもよって最後の最後のタイミングで覚めてしまうのか…最後の薫の言葉を聞き取れなかったことが恨めしくて恨めしくて仕方が無い。

 

 しかし───

 

 

「…まぁ……それでも良いか…」

 

 

 足と腕の感覚…否、肉体全ての感覚が最早無い、ただ痛みだけがそこにはある…終わりが近いのだと、本能で悟った。

 

 回復も再生もままならない、先の白で貯蔵全てを吹き飛ばされてしまったのだろう、己の中にあるはずのモノ全てが消失しているその様に三途は呆れたような表情を浮かべることしか出来なかった…どうしてこう、自身の知る無下限使いには化物しかいないのかと、三途は辟易とするような思いだった。

 

 まぁ…だがしかし───

 

 

「末路としては…これ以上無いか」

 

 

 好きに生きた、好きにやった…その果てにあるのが自業自得の死であるならば、それはもう至極当たり前で当然の帰結と言えるだろう。

 

 後悔も悔いもやり残しことも山程あるが、それでも己の旅路は此処で終わりだ…その事実を前に、三途はふと再び青空へと視線を投げて…ふと呟いた。

 

 

 

「…相変わらず、憎らしいくらい……青い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───特級呪霊『三途』…消滅。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





千年前の薫対三途について

 千年前に起こった死闘、薫が勝ったけど薫が途中で躊躇ってしまったせいで三途が逃げる隙が生まれて逃げられた。



薫について

三途と初めてあった時の一人称は僕で成長してから私になった、今回は感情がどうしても抑えきれなかったせいで口調が昔のモノに戻っていた。



 
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