PS
なんか忘れてると思ったらアレだ、そういえば作者最近ブルアカも陰実も書いてないんだそういえば……やべぇ、どうしよう…。
サンサンっと太陽が照りつける青空の下、夏の暑さが徐々に薄れ始め段々と服装が薄くなってくるような…そんな気持ちの良い天気と昼寝日和とも言うべき気温の中で、向かい合う六対六の男女(一部パンダ)は決戦の地へと赴くが如き表情を浮かべていた…何が起きているのかをまるで理解出来ていない虎杖と三輪を除いて。
簡易的な挨拶、宜しくお願いしますという言葉と共に下げられる一礼、それを終えて各々がルールに従って其々の場所へと小走りで向かっていく…その前に、各陣営はチーム全員で円陣を組んでいた。
絶対に勝つぞという気概の表明、絶対に渡してなるものかと言う気概の発露、それら全てを一緒くたに乗せて、彼らは叫ぶ…勝つぞと。
気合の入った声が木霊するベースの中…そして、その中心地というか原因そのものとも言うべき禪院廻は、それらの光景を青春だなぁ…と、ニコニコとした笑顔で見つめていた…因みに、五条も夏油もニコニコである。
各々が陣地へと辿り着く…先攻は東京校陣営、守備側は京都校陣営…東京校側の監督要員として夜蛾正道と夏油傑を、京都校側の監督要員として庵歌姫と楽巌寺嘉伸を…そして、それらを二陣営を統括する審判係を五条悟と禪院廻の特級コンビが担当する。
コンコンと金属製のバットが地面を軽く叩き、バットを構える…1番打者『伏黒恵*1』…自らのそこへと立候補したその男の瞳は影の底に沈み込むような暗さを持つその男は、しかし確かな熱をその瞳に携えていた。
それを見据えるのは投手『三輪霞*2』…正直、本人としては何故皆してそんな
「───んじゃあ…プレイボールッ!!」
カキンッと子気味の良い音が響き渡る、ファールという声が響くその中で伏黒恵は汗を拭った。
これにて通算三球目のファール、既にストライクを二つ取られている伏黒はここが粘りどころだと言わんばかりに大きくバットを構えた…何が彼にそこまでさせると言うのか。
三輪が投げる、地面を踏み締めてからの全力投球、回転を交えた所謂『ジャイロボール』と呼ばれた投法で以て狙いを穿たんと三輪霞はボールを投げる。
ドリルのように突き進む三輪の投球、呪力を交えず放たれたその一投はしかし、伏黒恵の目から見てみればあまりに速い速度で直進してくるボールの形をした銃弾である…今までの投法とは違う初対面、ファールボールと化した今までを嘲笑うかのように直進してきたその球へと伏黒は半ば感覚頼りにバットを振るい…盛大にスカ振った。
「───ストラァァイクッ!! バッターアウトッ!!!」
五条の言葉が耳に届く、何処かノリの乗ったその言葉に伏黒は悔しさに歯を噛み締めながらベンチへと戻っていく…そんな伏黒の肩を叩きながら、パンダはバットを担いだ。
対して三輪霞は流れる汗を拭いながらベンチに腰掛ける恋人へと笑顔を向ける、足が動かないが故に『別の手段』によって試合へ出場することとなっている与幸吉は照れながらも手を振り返した。
カキンッと音が響く、パンダ*3の振り抜いたバットが三輪の投球を捉える。
奥へ奥へと転がって行くボール、セカンド方面へと転がっていったそのボールを何とか『メカ丸・野球形態*4』が拾い上げるが、その時には既にパンダは塁の上に居た。
続く三人目は釘崎野薔薇*5、自信満々そうにバットを構えるその姿からは一種の強者のような気配を感じさせた。
「───ストライクッ!! バッタぁぁアウトォッ!!!!」
しかし現実は無情である。
空振り三振、見事までの綺麗な空振りを三連続共に見せつけてくれた釘崎の姿に西宮と真依は爆笑した、バットを空振ってくるくると綺麗に二回転決めたその姿がとあるゲームにそっくりだったらしい…釘崎はキレたが、虎杖の必死の制止によりなんとか惨劇は免れたのだった。
続けて入場する禪院真希*6…単純な身体能力であればこの団体の中でもトップクラスに位置する彼女は、自信満々な表情で三輪を見据えて…口を開いた。
「───来いよ、こっちでも叩きのめしてやる」
バットを構えながらそう言う真希、そういえば交流戦の時は散々にやられたなと今更ながらに思い出した三輪の頬には汗が流れる…暑いからじゃない、単純明確に強敵の出現に知らず知らずに冷や汗を掻いていたに過ぎない。
ボールを握る、息を吐く…深呼吸をしながら瞳を閉じて、思い浮かべるのは愛しい恋人の姿…最近になって押してみると可愛い反応をすることに気がついたその時、胸がとても高鳴ったことを三輪は良く覚えている…その映像を思い浮かべたその瞬間、三輪の感覚が鋭利なモノと化す。
三輪霞は京都校の中でも唯一、『黒閃』を放たず意図的に『ゾーン』の状態に入ることの出来る人間であった…その能力の上がり幅は三輪霞が東堂葵を相手に術式を使わせる間も与えず昏倒させたという事例を見れば良く分かるというものである。
三輪の瞳に真希が息を飲む…増大した圧力に頬から冷や汗を流し、しかしてその口に現れる笑みが途絶えることは無く寧ろ笑みをより一層に深めてみせた。
ボールが投げられる…フォークだった、真正面からやってくるはずの球が突如として真下へと下がっていったその方向へと真希は咄嗟に合わせるようにバットを振るう…ファールだった。
投げる、ボールが横へと逸れてそこから一気にストライクゾーンへと入り込んでくる、あまりに急速な進行方向の変化に真希はうげっ…!? と悲鳴のような声を上げながらバットを振るう…ボールが弾かれ真後ろへと飛んでいく、ボールが虎杖*7へと直撃した。
突然の強襲、顔面へと突き刺さるボールに悲痛な悲鳴を上げながら虎杖は地面へと倒れ込む…そんな虎杖のことなぞ知ったことかと言わんばかりに真希は荒く息を吐き出しながら呟く。
「───良い球投げるじゃねぇかッ…!!」
好戦的に表情を歪める真希、そんな真希を表情を崩さずただひたすらに真希を見つめている、握り締めたボールからギシギシっと鳴り響く悲鳴は今の三輪の内心を表しているかのようだった。
腕を振りかぶる…ギシリっと上げた腕が筋肉に震える、上げた脚から舞い散る砂埃にそこへと全力で踏み込んだ三輪の足、ダンッと音を立てるような強い踏み込みと共に振り抜かれた腕がボールをミットへと射出する。
放たれた渾身の一投、ジャイロもクソも無い何処までも純粋な渾身のストレートがミット目掛けて突き進み…そして、禪院真希はその放たれた投球へと思い切りバットを叩きつけた。
ガキンっとぶつかる球と棒、ほんの一瞬の邂逅ではあったが確かに芯を捉えたと確信した真希はその勢いのままにバットを振り抜き───
───スパンッ…!!!
そのまま、スパンッとバットによって切断されたボールがボトリッと虚しい音を立てて、地面へと力無く落下した。
「───…はっ?」
「───………えっ?…」
両者から漏れ出る困惑の言葉、一体何が起きたと混乱する両者は目の前で起きた事態に思考が追いついていなかった…何だったら、ベンチに居たメンバーですら気付いていなかった。
意味が分からない、何が起きた? 一体全体何が起きた? …あまりに突飛なその光景に真希の思考は混沌へと誘われる、何だったら三輪も訳の分からない光景を前に思考が完全に宇宙へと飛んでいた。
騒然である、遂に刀無しでも斬れるようになったんですかと詰め寄られる真希…そして、それを見ていた五条は密かに思った…あぁ、真希が引いたか…と。
ボールの切断の原因…それは真希の持っていたバット…否、正確に言えばバット型の呪具が原因であった。
一定の速度と一定の衝撃…これら二つの限定的な条件が揃ったその際にのみ真剣の刀とほぼ同等の斬れ味を得るという意味の分からない、使い所の良く分からない効果を持ったその呪具…通称『山本のバット』と呼ばれた呪具は五条が密かにこのベースへと持ってきていた謂わばドッキリの為の道具だった。
普通に振るう分にはただのバットと変わらない、しかし虎杖や真希や三輪と言った人間が振るえばその時点で真剣となり、見事ボールを真っ二つにして場を騒然とさせてくれるかもしれないというノリと勢いのみで実行されたこのドッキリは、一応の成功を仕掛け人に見せていた。
配置はランダムで最早五条本人も何処に置いたかなぞ覚えてはいないが、よりにもよって此方側の生徒がそれを引いた事実に、五条は笑いを堪えるので一杯だった。
面白くて堪らないとでも言ったような表情を浮かべる五条…そして、ボール切断事件の際の五条の反応から騒動の犯人に当たりを付けた廻は、そんな五条の頭へと拳骨を叩き付けたのだった。
そして、その光景を見て宿儺は思った…自分もこの場をしっちゃかめっちゃかにしたら廻と戦えるだろうか? …と。
場は、混沌と化し始めていた。
…因みに、東堂はちゃっかり切断されたボールをミットで拾ってから真希へタッチしていた…スリーアウト、チェンジである。
最後のスリーアウト判定は夏油が許した、その間に廻は五条にプロレス技を仕掛けていた。