宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 実はパパ黒がいないと起こらなかった事件その①:呪詛師が天内ちゃんを殺しに来ねぇ、黒井さんも攫われねぇ。

 つまり、沖縄に行けねぇ。


めんそーれは何処の言葉?

 

 

 さざなみと人の喧騒が耳に届く、視界の中に広がる一面の青は呪霊を殺しまくって荒みきった俺の心を癒やすようだった。

 

 空を見上げてみれば雲がプカプカと微睡むように浮いていて、そこを鳥やらサマーオイルの虹龍やらが飛び交っている、視界に差し込む日の光がとても眩しい。

 

 ぐびりとドリンクを飲む、爽やかな味の冷たさが身体に染みて心地が良い、幸せを感じられる。

 

 一面の海、絶好の晴天日、旅行するのにこれ以上の良天候はないと言っても過言ではないだろう。

 

 そんな中で笑みを溢しながら、俺はふと思った……なんで? と。

 

 視線を右へと向ける、そこでは悟と天内ちゃんがギャハハギャハハと笑いこけながらナマコを弄くっていた、キモいのじゃーとかキモーとかそんな笑い声が耳にキンキンと届いてくる。

 

 サマーオイルはなんか黒井さんと話してる、その二人の目ははしゃぎまわる子供を見守る親のソレだ、傍から見ても年の離れた夫婦かナニカと勘違いされるんじゃなかろうか、二人共美人だし。

 

 

 

 

 

 

 ………うん、なんで?

 

 

 

 

 

 あっれれー? おっかしいゾー? なーんで俺達はこんな所に来てるんだろうなぁー?

 

 場所は沖縄、沖縄と言えば海、海と言えば海水浴とか日光浴とか飲み物片手におダラダラ…うん、分かるよ? 凄く分かるよ? でもね、それと俺達が今ここに入る理由とはまるで関係無いはずなんだよね。

 

 いやだって、黒井さん誘拐されなかったもの、俺が常時張り付いて誘拐されないようにしたんだもの、寄ってきた呪詛師も盤星教の奴等もみんな全員叩きのめしたもの。

 

 そもそも天内ちゃんに懸賞金自体が掛けられてなかったからそこら辺のこと警戒する必要とか無いし、襲ってきたのは変な服着た奴らの残党だったしで、沖縄に来る理由とか全くないはずなのだ。

 

 じゃあなんで俺達は沖縄なんかに居るのか…それは強いて言うなら悟のワガママのせいだ。

 

 沖縄行こうぜーという軽口から始まり、サマーオイルがいとも簡単に了承し、天内ちゃんが悟とサマーオイルに何やら耳打ちされたと思ったら意気揚々と沖縄行こうと言い出した。

 

 当然何も知らない俺と黒井さんは全力で抗議した…いやまぁ黒井さんは天内ちゃんが乗り気も乗り気だったから一応って感じだったけど、とにかく俺は反対した、危ないからと。

 

 そしたら、悟が沖縄の方が呪詛師少ないからとか言い出してそこから淡々と沖縄に行くメリットを話されて何も言えなくなった。

 

 トドメに、当の天内ちゃん自身が目をキラキラさせながら沖縄行きたい! と凄い笑顔で言うもんだからもう無理だった。

 

 天元の命令で天内ちゃんの要望には全て答えるように言われてたのもあるけど、それ以上にあの輝かんばかりの笑顔を曇らせるのは幾ら何でも無理だった。

 

 

「おーい廻ー! こっち来いよ凄いぞナマコー!!」

 

 まぁ、そんなわけで、こうなってる。

 

 はしゃぎながらナマコをぶんぶんと振って俺のことを大声で呼ぶ悟に、呆れが滲んだ笑みが浮かぶ…こんな状況で、何をどうしたら沖縄に行こうなんて思いつくのか…流石にこればっかは幾ら考えても分かりようがない。

 

 アイツなりに天内ちゃんのことを考えての行動なのか、それとも単にアイツが行きたかったからここに来ただけなのか…理由は何方にせよ天内ちゃんが楽しそうで結構ですとも。

 

 悟達の方へと歩いていく、悟と天内ちゃんは水掛けあったりナマコぶん投げられて転んだり、とにかく楽しそうだ、同化前とは思えないし思いたくもないくらい良い笑顔をしている。

 

 

 …残酷だよなぁ、世界って…こんなん柄でもないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …滞在期間を増やす。

 

 

 

 その言葉を聞いたのは、いざ東京に帰ろうと意気込んでいた直後のことだった、じゃあ帰ろうかと着替えを手に更衣室に行こうとした時にサマーオイルから唐突に伝えられた。

 

 多分俺は間抜け面を晒していたことだろう、だって滞在時間を伸ばす意味が無いんだから。

 

 そう言った俺に対してサマーオイルは言った。

 

 悟曰く、術式の移動で帰るから飛行機に乗る必要が無いってことらしい。

 

 それを聞いた時、思わず笑ってしまった…何時の間に出来るようになったんだとか、どうして教えてくれないんだとかそんなのを抜きにして、五条悟が五条悟である由縁を遺憾なく見せつけられた気がして、ついつい笑ってしまった。

 

 だから、じゃあ良いかと受け入れた。

 

 だって悟がそう言うんだから、だったら大丈夫だろうと滞在時間の引き伸ばしを受け入れた。

 

 泊まる場所を決めて、そこではしゃぎまわる天内ちゃんと悟を見て笑って、夜空に感動してみたりして、最後には部屋で遊んだ。

 

 妙にギャーギャーと遊べ遊べと群がってくる悟と天内ちゃんに最後まで付き合って、その後ろで困った顔してる黒井さんにジェスチャーで大丈夫と伝えたりした後にサマーオイルをけしかけたりもした。

 

 そして、最後には普通に寝た。

 

 意外だったのは、悟もサマーオイルも普通に寝たことだった、アイツらは徹夜でもするんだろうなぁって思ってたから絞め落とそうと思ってたのに、そんなの必要ないレベルで爆睡してた。

 

 それを確認した後に、俺も寝た。

 

 本当なら俺が徹夜する気だったんだけど…何故かその時だけはそういう気にはならなかった。

 

 天内ちゃんはもう大丈夫だと、心の底からそう思えた……何でかは、知らないけど…そう思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、覗き魔」

 

 砂浜を踏みしめ、眼前の存在へと不遠慮に声を掛ける。

 

 廻は寝ている、傑も天内も黒井さんも皆寝ている…ここには、俺しか居ない。

 

 だからこいつは出てきたんだろう、だからこそコイツはこんなにもアッサリと姿を現した…何せ、狙いが俺一人だったから。

 

 

「…酷いね、覗き魔なんて…初対面だろう?」

 

「あぁ、確かに初対面だ…けど知ってはいるだろ? ずっと俺達のことを覗いてたんだから」

 

 最初は高専側の人間が見てるんだと思ってた、高専側がそういった術式持ちを監視ないしお目付役的な感じで派遣したんだと思っていた。

 

 悪意も敵意も殺意だって感じられない、何も感じられなかったから、最初はそうなんだと勘違いした。

 

 だけど、それは違った…何せ時間が経てば経つだけ俺に対する殺意が増していったから。

 

 俺へと視線が向く度に、他の奴等に向けていたものとは違うモノを向けられた、ドス黒くてザラザラとしていて、それでいてドロドロと気味の悪い感触のする、あの視線を。

 

 その時点で嫌でも分かった、こいつの狙いは天内じゃなくて俺個人なんだと…最初は、そう思った。

 

 

 視界の先でそいつが…女が振り返る。

 

 白く艷やかな長い髪の毛、淡く薄い菫色のメッシュが月の光に照らされてこの世のものとは思えないような雰囲気を醸し出す。

 

 整った顔立ちに菫色に光る瞳、白いワンピースを着ているその姿は道行く人間が見たなら十人中十人が振り向くであろう神秘性を醸し出していた。

 

 そいつが、笑顔で、手を後ろ手に組みながら喋り始める。

 

 

 

「最初はね、我慢しようと思ったんだ」

 

「君達が彼の側にいることも、私がそこに居ないことも、全部我慢しようって…そう思ってたんだよ?」

 

「けど…駄目だった」

 

()()()が…お前が、アイツの側にいるという事実が、私にはどうしても我慢ならないんだよ」

 

「私の全てが、アイツの側にお前がいることがどうしようもないくらいに…憎たらしいんだよ」

 

 

 淡々と言葉を紡ぎ出し、最後には全部私の勝手だけどなと、女はそう言って俺へと微笑みかけた。

 

 そこには先程まで浮かべていた嘘臭い笑顔は無い、あるのはただ只管に煮詰めて煮詰めて煮詰め続けたようなドロドロとした感情を隠そうともしない、狂気的なまでに美しい笑顔。

 

 それを見て、その言葉を聞いて…俺は確信した。

 

 

「狙いは…廻か」

 

「そうだよ?」

 

 女は即答した、狂気に満ちた笑顔で、呆気ないほどに自身の狙いを肯定した。

 

「お前を殺して、連れて帰るんだ…その後のことは、まだそこまで決めてないけどね」

 

 女はそう言って、まるで愛おしいものを見つめるように俺達の宿泊場所へと視線を向ける…いや、正確に言えばそこにいる廻に対して……か。

 

 ………気に入らないな。

 

 

「そうか…だったら一つ言っといてやる」

 

 俺の言葉に、女は頭に?マークでも出てきそうな疑問顔で小首を傾げる、その顔からはなんだなんだ? という疑問符が大量に出てきているように感じた。

 

 

「アイツは、廻は()()親友だ、お前のじゃねぇよ」

 

 その言葉を吐いた直後、眼前の女の気配が露骨に変わるが…知ったことじゃない。

 

 何度でも言ってやろう、お前のじゃない、俺の親友だ…断じて、お前のなんかじゃない。

 

 昔から、ガキの頃から、アイツの親友は俺だ、アイツの最強は俺だけだ、そこだけは絶対に譲らない。

 

 連れて帰る? 我慢ならない? 憎たらしい? 知ったことじゃないしどうでもいいんだよ。

 

 俺のだ、俺の親友だ、俺のマブダチだ、そこにお前なんかの付け入る隙間なんてあるもんか。

 

 分かるぞ、お前も廻に連れ出してもらった類の人間だろ? 全ての始まりの中心に廻がいるんだろ? 分かるよ俺もそうだったから。

 

 だからこそ、尚更お前にはくれてやれない、血の一滴だってお前に明け渡して堪るものか。

 

 俺が見つけたんだ、俺が先に見つけて唾つけたんだ、それを横から出てきて盗もうなんて盗人猛々しいんだよ泥棒猫。

 

 消えろよ害虫、お前の居場所はここには無い。

 

 

 

 

「………そうか…やっぱりそうか」

 

 女が呟く、その声には熱は無い、あるのは海の底かと錯覚してしまうほどの冷たさだけ。

 

 海が揺れる、砂粒が浮かぶ、月に照らされただ一人暗い夜闇の中で輝くそいつの姿は、酷く不気味なものだった。

 

 菫色の瞳が、妖しく輝く。

 

 白雪のように白く、細く靭やかな手が、悠然と動いて俺へと標準を合わせるように上げられる。

 

 …呪力が、膨れ上がる。

 

「やっぱりお前は…ここで死ね」

 

 その言葉と共に、隠されていたかもどうかも怪しい殺意の本流が、容赦無く俺へと叩きつけられる。

 

 ただ死ねと、明確な意志の下にそれは動き出し、指向性すら持って俺へと降りかかる。

 

 帳は既に降ろされている、ここに来るまでに潜った感じからして、特に特殊な効果の乗っていない純粋な帳だ。

 

 それで充分と判断したのか、それとも出来なかったのかは分からない…けどまぁ、それはそれとして───

 

 

「お前が死ねよ…クソ女」

 

 静かに呟いて、呪力を解放する。

 

 とりあえず殺そう、廻達が起きる前に、アイツらが幸せなままで終われるように。

 

 タイムリミットは大凡数時間、それだけあれば充分だろうと俺は判断する、その間に終わらせると今決めた。

 

 殺す、眼の前のクソ女を、誰にも気づかれないように…跡形も無く、殺す。

 

 

「──九網 偏光」

 

「──烏と声明 表裏の間」

 

 

 女と俺の詠唱が、重なる。

 

 それに特段驚くでもなく、考えるでもなく、ただただ俺達は、眼前の存在へと向けて、一つの感情を放つ。

 

 即ち…死ね。

 

 

 

「「虚式」」

 

 

 

───『茈』

 

 

 世界が…白で覆われた。

 

 

 





Q:紫が衝突したらどうなりますか

A:多分対消滅(威力が消滅しない方の)みたいなことが起きて辺りが吹き飛んだ挙げ句に地震が起きる、つまり気づかれないとか無理っす。

 作者の友人の言葉です。
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