久し振りに一人称視点で書いてみた…久し振り過ぎてどう書けば良いのか分からなかったのはここだけの話である…因みに、よしんばサブタイトルが付くなら『伏黒恵、暴走』になる。
今更ながらに対魔忍RPGを始めた男…この小説内にやっつけ的な感じで対魔忍RPGの話ぶち込んでも良いのかなこれ? 他のところで思い切りやってた作品とかあったけど。
カキーンッ! …という小気味の良い音と共に、放たれたボールが天高くへと昇っていく。
隣で大声をおっしゃーっ!! と、まだそうであると決まった訳でもないのに歓声を上げている歌姫先輩、その横で身を乗り出している楽巌寺学長の更にその横で、俺は呑気にお〜…っと飛んでいくボールの軌跡を眺めていた。
高く昇り、放物線を描きながら見えない場所へと飛んでいくボール、反射液に背後を振り向いている真希ちゃんと飛んでいっているボールをとんでもない剣幕で追いかけている恵くん…しかし、最早届かないと察したのか、徐々にその足並みは減速していった。
「───ホーームランッ!!」
悟の威勢の良い声が響き渡る、無駄にビシィッ!! とキレの良いポーズを取ってのその宣言に今度こそと言わんばかりの歓声が横から響いてくる。
9回裏、京都校の手番…無数の激闘を繰り広げた東京校VS京都校は真希ちゃんの放ったボールを見事に打ち抜いて見せた三輪ちゃんのサヨナラホームランにより、終わりを迎えた。
と…言うわけで、どうぞ皆さんお久しぶり、転生者こと禪院廻に御座います…相変わらず誰に言ってるのか分からない挨拶ではあるが、何故だが言っておかなければいけないような気がするのは何故だろうか?
実際にこうして喋るのも、数々の青春を繰り広げながらも終わりを迎えたこの野球戦に関しても何故だか嫌に久しぶりな気がしてならないが…何はともあれ、この度の交流戦は我等が京都校が勝利を納めた…ということで、身内各員は思い思いにその喜びを分かち合っていた。
珍しくガッツポーズを取りながら雄叫びを上げている楽巌寺学長、勝った喜びからか悟目掛けて良い笑顔で何やら騒ぎ立てている歌姫先輩にその側で推しアイドル高田ちゃん関連のチケットにキスをしている東堂とそんな東堂を引き気味に見ている加茂と真衣ちゃん。
…そして───
「…負けた……負けた……」
「ちくしょう…ちくしょう……」
何故かorz…と、ズーンっとした様子で項垂れる恵くんと夜蛾学長、その背後に圧倒的暗闇を背負いながら両手両膝を床に付く彼等の姿は、さながら有り金を全部スッた社会人そのものである。
…いや、本当に何があった? 何がどうしてそうなった? 相談になら乗るよ二人共?
あまりにも暗くどんよりとした様子の恵くんに虎杖くんが駆け寄って肩をポンポンと叩いている、学長の方はパンダくんが汗汗と学長の周辺をウロウロしていた…お父さんのあまりの落ち込み様にどうして良いのか分からないらしい…なんか可愛いな。
ワタワタとした様子のパンダくん、シュビシュビと身振り手振りを加えながら何やら言っているパンダくんの様子に学長も持ち直したのだろう、立ち上がってパンダくんの頭を撫で出した…と思ったらそれに便乗して周囲の…主に釘崎さんがパンダくんの背中に突撃してボヨンっと跳ね返されていた、尻を打ったのか悶絶していた。
何やってんの…とか思わなくもないが、気持ちは良く分かるのだ…だって俺も平安の頃に白叡のモフモフな身体に突っ込んだことあるし、身体沈めたことあるし…因みに、今それをやるとほぼ確実に獅子王が乱入してきて構え構えとアピールしてくる…まぁ、悪くはないよ。
…まぁ、そんなことはさておいてだ───
「…どしたの恵くん? 負けたのがそんなに悔しかった?」
未だにどんよりと闇を背負っている恵くんへと、俺は声を掛けた。
未だ立ち直らぬ俺の甥っ子、虎杖くんも普段見ない恵くんのレアなその姿にどうして良いのか分からずに困惑し、頻りに悟やサマーオイル、そして俺の方へと視線が動き回っていた。
そんなことをされては流石に助けない訳にはいかない、放っておくにしてはちょっと傷が深そうだし、多少助けても楽巌寺学長も歌姫先輩もは何も言っては来ないだろう。
そんな感じで声を掛けた俺に恵くんの身体がピクリっと動く、顔を上げて俺の方を見る恵くんの瞳は酷く絶望に塗れているように見えた。
…いや、なんでそんな目してるのさ…たかが悟のハッチャケから始まっただけの野球戦やぞ、個人戦とか関係無しの単なる青春的なイベントやぞ。
「…えっと…本当に大丈夫? 悩み事あるなら相談乗るよ?」
思わずそんな言葉を投げ掛けてしまう、今にも写〇眼にでも目覚めてしまいそうな闇を背負った瞳を俺へと向ける恵くんは、そんな俺の言葉に少しこの目を伏せた後に、思い切ったように口を開いた。
「じゃあ東京に赴任してください」
「いや、無理だよ」
突如として放たれたその言葉に俺は半ば反射的にそう答えていた、否が応とでも言わんばかりの即答であった。
いや、実際問題無理なのである…京都校側に在籍している特級は今のところ俺だけである、そんな俺が東京側に赴任したらただでさえ危ないバランスが更に危ない方向に崩れ落ちる…具体的に言うと上のおじさま方が非常に煩くなるし、京都側に出没した特級相手にも直ぐに対応出来なくなる。
ただでさえ東京高側には個人最強の悟に物量最強のサマーオイル、将来有望な乙骨くんと言った特級三人が在籍していると言うのに、そんな所に俺まで入ったらそれはもう過剰戦力以外の何者でもないのである、パワーバランスが完全に崩壊してしまうのである。
…そういう意味を込めての言葉ではあったのだが、そんな俺の言葉に恵くんはズドッと腹部に何かを打ち付けられたかのような体勢になり、次の瞬間には両手両膝を床へと付いていた、先程の焼き直しである。
「……えぇ…」
思わずそんな声を出してしまう…そこまで落ち込むことかと、そこまで俺に東京側に来てほしいものかと、そう思ってしまう。
どうすれば良いんだろう、どんな反応すれば良いんだろう…そんか考えが俺の頭を過ぎり始めた時、突如として恵くんがバッっと勢い良く起き上がってきた。
「じゃあウチの五条先生渡すから東京来てください」
「ねぇ、大分無茶言ってるよ恵くん?」
起き上がって直ぐにとんでもないことを言ってくる恵くん、何処かギラギラとした輝きを放つその瞳は、絶対にこれは譲らんと言わんばかりの頑固さのようなモノを感じさせた。
…いや、無理だよ? 絶対に無理だよ? 俺は良くても絶対に学長とか歌姫先輩が許可出さないよ? そこら辺分かってるよね恵くん?
言ってて考えてみたがどうやっても無理があるのである…いやまぁ、性能的に俺よりも悟の方が良いってのはあるとは思うけど…単にそれ以上に学長も先輩も悟との相性が悪過ぎて考慮に値しないと言うか…下手に京都校に悟置いたら学長憤死するんじゃないかな? なんて失礼な考えが頭の中にあるわけで…うん、やっぱり無理だと思うんだ。
そんな俺に…俺の反応に無理だと悟ったのだろう、仕方がないとでも言うように一つ息を吐き出した恵くんは一度目を閉じて俺へと再び目線を向けて───
「じゃあ夏油先生を渡すので東京に赴任してください」
「何言ってんの君…?」
いや、待ってほしい…いや、本当に待ってほしい。
恵くん? 大丈夫なの恵くん? 普段なら言わないような滅茶苦茶なこと言ってるよ恵くん? というか悟が駄目ならサマーオイルって、なんでそれでいけると思ったの恵くん?
あまりの押しの強さと勢いにたじろぐ、熱烈なスカウト…スカウト? に一歩思わず後退る…あまりにも強硬な恵くんの様子にさしもの虎杖くんも若干引き気味である…何がそこまでさせるのかと困惑している様子だった。
「何だったら五条先生と夏油先生の二人共でも良いです…京都校にあの二人で、東京校に乙骨先輩と廻さんの二人なら配分も丁度良いと思います」
何が何でも絶対に引かない…そう言わんばかりの態度、二人同時に持って行っても良いと誰に許可を取った上でそんなことを言っているのかと、そう言いたくなるほどの爆弾発言。
一応言っておくが、絶対に無理である…何度でも言うが無理である、来ようものなら先輩と学長の二人の血管が毎日のようにキレる未来が嫌というほど良く見える。
そうこうして思った…これはもう駄目だ…と…これ、絶対に引こうとしないタイプのやつだ…と。
だから───
「───…そういえば恵くん、帳は使えるの?」
もう、無理矢理にでも話を切り替えようと思った。
唐突に挟み込まれた俺の言葉に恵くんがえっ…と反応する、本当に突然やってきたその質問に対して意識が追いついていないようだった…そこに、俺は更に畳み掛ける。
「だから帳だよ、帳…恵くんは使えるの?」
「…いや…まぁ、使えませんけど」
突然の質問に何処か戸惑いながらもそう答える恵くん、先程までずいずい踏み込んでいたのは自分なのに、何故だが何時の間にか立場が逆転しているかのような…そんな感覚に戸惑っている様にも見えた。
そんな恵くんにそっかそっかと俺は言葉を溢し、出来る限り自然に見えるような笑みを浮かべて、その言葉を吐き出す。
「───じゃあ覚えようか?」
「……はいっ…?」
困惑の声を上げた恵くんへと、俺は更にその上から言葉を重ねる。
「だから、覚えてもらうんだよ帳をね…使えるのと使えないのとでは意味が違ってくるから、使えて損は無いと思うんだよ俺は」
「…いや、確かに使えたら便利ですけど…それよりも俺は術式の方が知りたいんですが───」
「───それよりも……だと…?」
俺の急な帳推しに戸惑いながら自分の意見を言おうとした恵くん、恐らく術式関連のことを俺に聞こうとしていたのだろうが…そこに挟み込むように、切り込むようにその声が俺達の耳へと届く。
圧のある声、何処か殺意が籠っているような気さえするその言葉の主は、虎杖くんの頬に現れたその口元から怒気のようなモノを放ちながらその言葉を吐き出した。
「結界もまともに展開出来ないお前が、領域を不完全な状態で維持することしか出来ない基礎のきの字も出来ていないお前が…それよりも…だと…?……」
ズゴゴゴゴッ…と言うような擬音が聞こえてきそうなほどの威圧感、口元で現れただけだと言うのに周囲一帯の空気が重くなったように感じられた…冷や汗を流す虎杖くんと恵くんの様子なぞまるで気にかけた様子も無く、呪いの王はその言葉を続けた。
「…取り消せ、
ギリギリと、歯を噛み鳴らしながらそう言葉を吐き出す宿儺、不機嫌そうに舌打ちを打ちながら引っ込むように消えていく頬に引っ付いていた口元が完全に消えたのを認識した俺は…ふと思った。
───…いや…なんで俺よりお前の方が怒ってんの?
あまりにも露骨に不機嫌と言わんばかりの態度に俺は呆気に取られた…そんな風に喋ったりするんだお前…と、そんな何処か失礼なことを考えながら。
珍しい呪いの王の一面、それがより良く見えた瞬間だった。
宿儺
平安での決戦時に廻に帷を使った方法で二、三回くらいは殺されかけた男…なんか出来損ないがまともに帷を使えない癖に意見してたのを見て若干キレていた男。
因みに、以下の方法で廻に殺されかけた。
その①:帷を利用した不意打ち領域展開
その②:帷を使用した密閉空間全域への白叡による最大出力の呪力砲…実質宿儺の『竈』と同じようなことを。
その③:領域の外殻と帷による押し潰し。