宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 ゼンゼロの照を見たのと、オリジナルの小説を書いてたら唐突にドアホな話を書きたくなったので書きました、反省はしてます。


番外編 十種の巻・脱兎 『脱兎の一日 その一』

 

 

 十種影法術…その式神が一つ、『脱兎』の朝は早い。

 

 

 ぴょこりっと耳をピンっと立てて影の中からよじよじと脱兎は起き上がる…時刻は夜中の三時、時期が時期であればまだまだお月様が綺麗に見える時間帯だ。

 

 式神である脱兎には寒さを感じるという器官が無い、どれだけ寒かろうとが暑かろうがそんなの関係無しに動きまわれるという得手を持ち合わせている…なお、そんなの関係無しに勝手にそこら辺の機能に手を加えた個体は別とする。

 

 ぴょんぴょんっと軽やかに移動する脱兎、その行先は自らの主の居処…即ち主のベットの上だ。

 

 布団に包まってむにゃむにゃと眠っている主の姿…式神という使い捨てに等しい自分達に自我と拒否権を与えるという大変な可笑しなことをしたらしいこの主は、この世界に於いては最たる変人であると言えよう。

 

 ボフボフと頭を足で小突く…若干幸せそうな表情を浮かべた主の姿に何を感じたのかは知らないが…何処となく満足そうにむふ〜っと鼻を鳴らした脱兎はぴょんっとベットの上から飛び降りると、次は窓へと近づき、そのまま窓鍵へと跳躍した。

 

 ぴょんっと鍵の部分…いわゆるクレセント錠と呼ばれる形状の物へと飛びつき一回転、上部分へと綺麗に着地を果たして脱兎はそのままペイっと錠の部分へと蹴りを放った。

 

 絶妙な力加減の元に衝撃を与えられた窓鍵、衝撃を加えられた窓鍵は慣性に従い下部分へと落下、カチャリっと小さな音を立ててその錠を開いた。

 

 これで外に出るための準備は済んだ…しかし、このまま行ってしまえば窓の鍵は開きっぱなしになってしまう…それはいけないと脱兎は考える、幾ら自らの主が強かろうとも寝ている間は無防備なのだから。

 

 例え…そう…例え学生時代の時分、悪戯として主の顔に落書きを行おうとした主の親友が寝ぼけた主に蹴り飛ばされるという事件が起きていようと、眠りについていた主に同じく悪戯を仕掛けようとしていた元六眼の所有者が寝ぼけた主に足技で絞め落とされるという事件が起きていようとも、危ないものは危ないのである。

 

 ……まぁ…そんなことしなくても主には最強の末っ子が居るのだから大丈夫かと思わなくもないが…そんなことは脱兎のプライドが許さないのである、主に先に調伏された式神として。

    

 むんっと何に対して威張っているのか分からないようなポーズを取りながらも脱兎は窓を開ける…外から流れ込んでくる穏やかな風、モゾモゾと風に晒された主が寒そうにしている為、現在の気候は寒いよりなのだろうと、脱兎はなんとなくそう思った。

 

 早く閉めてあげよう…そんなことを考えながら脱兎は自身の特質を使用する…ポンッと現れるもう一匹の脱兎、自分とは違い紋様を持たないソレは限りなく自分に近い分身のようなものだった。

 

 分身を中へと残し、素早く外に出て窓を閉める…中に居るもう一匹の白兎…自身の分身に脱兎はシュビッと手を上げ、敬礼を行った…それを見てか、同じく脱兎の分身体はシュビッと手を上げて敬礼を行った。

 

 後は任せる…了解したであります隊長っ!! …そんなやり取りが何処から伴く聞こえてくるような気さえするそのやり取りの後に、脱兎は窓からぴょんっと外へと飛び降りた…後ろでカチャンっと音がしたので分身はしっかり窓を閉めてくれたのだろうと、脱兎はそう思った。

 

 

 ぴょんぴょんっと夜空の下を跳ねる脱兎…月は見えないが、その代わりと言わんばかりに満天に煌めく星々を時折見上げながら、ぴょんぴょんぴょんぴょんと脱兎は可愛らしい音を立てて跳ねていくのである。

 

 ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょん…誰もいない道をただ真っ直ぐと突き進む脱兎、夜中の住宅街を白兎が散歩しているなんてことが一般市民に知られようものなら確実に保護されるか動画に撮られるかの二択ではあるが、そんなことになろうものなら全速力で逃げ切れる自信が脱兎にはあった…なお、あのフィジギフゴリラは除くものとする。

 

 

 因みに、今更ではあるが何故に脱兎がこうして夜道を散歩しているのかと疑問に思う誰かの為に説明しておくと……特に意味はない、強いて言うなら動き回りたいから動き回っているだけである。

 

 

 そうして続く脱兎の散歩…あっちへこっちへと動き回り、時に歩き時に駆け出し、兎にも角にも動き回る、特に意味もなく星々が照らす夜道の中をただひたすらに疾走する…雪原であれば尚のこと良し…というのは、脱兎の持論である。

 

 

 

 

 

 ある程度散歩して満足したのか、脱兎は主の元へと戻ってきていた…ぴょんっと家から家へと跳び移り、時折目算誤って落ちかけよじよじと登り直す…そう言ったことを繰り返しながらヒョコヒョコと外へと飛び出した窓へと戻ってきた脱兎は中にいるであろう自身の分身へと開けてくれぇと言う様にコンコンッと窓を叩いた。

 

 その音にモゾモゾと何処からか這いずり出してきたらしい脱兎の分身個体はシュビッと敬礼のポーズを取ったことを視認した脱兎は同じシュビッと素晴らしい敬礼を行った。

 

 おかえりなさいであります隊長、異常はありませんでしたっ!! …うむ、ご苦労…そんな会話が聞こえてきそうで聞こえてこない中で中にいる個体が鍵を開け、その音を聞いた脱兎が窓を開けて閉めた…同じくそれを確認した個体がカチャリっと鍵を閉める。

 

 ぴょんっと脱兎の側へと降り立った分身個体、何処で覚えたのか降りてきた分身個体とハイタッチを交わした脱兎はさぁ戻れと言わんばかりにキュ…と一声鳴いた。

 

 そんな脱兎の指令…指令? に分身個体は脱兎の中へと戻っていく…ことはなく、何ならそんな脱兎のことをガン無視して分身個体はぴょんと窓から飛び降り駆け出した。

 

 あら? 何処へ向かおうとしているのかしらん? とでも言いたげに首を傾げた脱兎…そんな脱兎の目の前で、自身のオリジナルが見ていることなぞ知らんっ! とでも言う様に…分身個体はモゾモゾと、主の眠る布団の中へと潜り込んでいった。

 

 ピシッ…と、脱兎の中で何かが凍ったような気がした…目の前で未だにモゾモゾ、モゾモゾと何やら布団の中で動き回っている分身個体、何かを探すように動き回っていたその個体は目当てのモノを見つけたのか、その場所へと一直線に向かっていった。

 

 ぷはっと分身個体が布団から顔を出し、周囲を見渡す…そして、自分の目指していた場所であると確信したのか、満足そうにむふ〜っとした様相を浮かべると、すやすやと眠り出した……自らの主、その顔の真横で。

 

 

───ブチィッ!!!

 

 

 瞬間、脱兎の中で何かキレてはいけないモノがキレたような気がした。

 

 ぴょんっとベットの上へと降り立つ脱兎…そこから自らの主を踏まないように注意しながら脱兎は自分から生まれた分身個体の元へと到着した。

 

 スヤスヤと眠りこける自身の分身、鼻から提灯まで出しているソレの頭を、脱兎は全力で引っ叩いた。

 

 スパァーンッと素晴らしく小気味良く響くその音、そこまで大きな音を出してしまえば肝心の主が起きてしまいそうではあるが…どうにも起きる気配の無い主のことはガン無視して、脱兎は突然引っ叩かれたことで混乱しながら起き上がってきた分身個体の頭をムンズッ噛み掴み、ズルズルっと主の元から引き離した。

 

 

 えっ? なに? 何なの!?…そう言いたげな様子でジタバタジタバタと身体をあっちこっちへと動かす分身個体…そんな分身個体をペイッとベットの外へと放り出した脱兎は、凍える程に冷たい瞳を分身個体へと向けていた。

 

 自分が何をされたのかに気が付いたのだろう、自分を放り投げた己の本体に向けてぷんぷんっと煙を上げながら分身個体は怒りの様相を顕にする…そんな分身個体へと、脱兎は凍てつくような気配を捻出していた。

 

 不機嫌、紛れもない不機嫌…主の守りの一端を任せたというのにこの体たらく、主の側にあるだけならまだしもその温もりに包まれながら眠ろうなどうらやm…ねたまs…ゲフンゲフン…怠けるにも程がある。

 

 そんな言葉成らざる言葉が圧と共に放たれていることに気が付いたのだろう、分身個体はキュキュッと鳴き声を上げながら何かを訴えているようだった。

 

 隊長だって結構な頻度でお父様の側で寝てるじゃないですか! 自分だって偶にはお父様に包まれたって良いじゃないですか!! 兎は寂しいと死んじゃうんすよっ!!! …そう言いたげに鳴き声を上げる分身個体に脱兎は静かに鳴き声を上げた。

 

 我々は寂しさなどでは死なん、何故なら我々は式神であって兎等ではないからだ…意味の分からん常套句を理由にするんじゃない……そう言いたげに低く唸り声のような声を上げる脱兎に分身個体は更に大きく鳴き声を上げる。

 

 

 嘘だっ!! だって名前に兎ってついてるじゃないっすかっ!!

 

 揚げ足を取ろうとするんじゃないっ!!

 

 

 

 ヒートアップする鳴き声の応酬、キュキュッと響き渡るウサギの鳴き声に段々と主の目尻が上がっていくのにも気が付かず、脱兎と分身個体はギリギリと歯ぎしりのような音を掻き鳴らす。

 

 

 こうなったら革命っす、下剋上っす…今日からアタシがみんなのリーダーだぁっ!!

 

 良いだろう掛かってこい、この脱兎の名がどれほどの重さを持つのかお前に思い知らせてやるっ!!!

 

 

 ギリギリ鳴り響く歯軋りの音、互いが互いに低く唸り合いながら地面を蹴って飛び上がろうとした……そんな時だった。

 

 

 

 

───ガコンッ

 

 

 重々しく響き渡る、法陣の音…影の中からのっそりと現れた我等が末っ子の登場に脱兎と分身個体の動きが止まる。

 

 おとうちゃんの眠りを妨げるのは誰だ…そう言いたげにズゴゴゴゴゴッと擬音が付きそうな程の圧力を放つ末っ子の登場に、脱兎と分身個体はペタリっと平伏した。

 

 それを確認してか、圧力だけはそのままにのっそりのっそりと末っ子…魔虚羅は影の中へと戻っていく…そんな姿をぺたりと平伏したまま見送った分身個体と脱兎は、示し合わせたように顔を見合わせた。

 

 

 

 

 …一緒に寝るか。

 

 そうっすね。

 

 

 

 

 二匹揃ってぴょんっと布団の上へと飛び乗りもぞもぞもと自らの主を目指す二匹の兎は、この先二度喧嘩事を起こさなかったのだそうな…まる。

 

 

 

 





脱兎について

 一匹一匹に微妙に差異のある自我がある、その為か一匹一匹ごとに撫でられて嬉しい場所が違ったりする…因みに、廻はこの全てを見分けられものとする。

 本当はイメージ翻訳的な文章を入れようと思ったけど、求められてないと思って止めた。

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