宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

173 / 187
 
なんか…色々何書きたいかなぁ、他の小説色々止まってるけどそんなの関係無しにゼンゼロの小説でも書こうかなぁ…とか考えてたら…何か書いてた…そんな話です。




番外編 平安編 『魔虚羅・調伏 ①』

 

 

「───うしっ……始めるか」

 

 

 時は平安…呪術最盛期、呪いと呪いが殺し殺され奪い奪われをさも当然のように繰り返す竜戦虎争の時代の真っ只中…そんな時代の片隅で、後に歴代十種最強の術師と呼ばれるに至る一人の男が、そんな軽い言葉と共に印を組んだ。

 

 周囲は何も無い、強いて挙げるならば枯れた草木に今ここで生まれようとしている草花、木々の一本も存在しないさながら荒野とも呼ぶべきその場に於いて男は…禪院廻は自身の定義した最後の関門へと足を踏み入れようとしていた。

 

 頬を冷や汗が伝う、夥しい程の速度で跳ねる心臓はまるで廻自身の心境を現しているかのように思えた。

 

 浅く息を吐いて、吸って、また吐く…これら一連の動作を数度と繰り返しながら何とか緊張を抑えようとするも…思いの外上手くいってくれない。

 

 それも当然の話だろうと廻は思う…何せ自分が今から行おうとしていること、挑もうとしている関門はそれほどまでに高く険しいものなのだから。

 

 正直挑まずに済むならそれに越したことなど無い、生きるか死ぬかを確率で言うのなら断然死ぬ確率の方が高いのだからそれもまた当然のこと……だが、それは許されない、禪院廻にその選択肢を取ることは許されない。

 

 何故なら、それに勝つどころか挑むことすら出来ないのであれば…それはもう、何れ訪れるであろう彼の呪いの王を相手に何も出来ないのと変わりないのだから。

 

 ギリッと握り締めた拳から音が鳴る、緊張と恐れを抱く己の身体を無理矢理動かすように歯を強く噛み締めながら、禪院廻は遂にその言の葉を唱える。

 

 

「───布瑠部」

 

 

───由良由良

 

 

 静寂が響く、世界が黒く染まる。

 

 耳に届く獣の遠吠え、視界に映るまるで影絵を無理矢理立体的にしたような姿をした無数の蛙と犬…そして、その奥にまるで座すように、崇め立てられているかのように存在する…白い繭。

 

 縛り付けてられているように、ぐるぐる巻きの簀巻き状態にされているかのような形状で静かに存在しているソレ…廻自身も、前世の一度見ただけのその姿に、人知れず息を呑んだ。

 

 それが合図であったのだろうか、それとも単なる偶然立ったのだろうか…恐らく後者であろうその息を呑んだ音とほぼ同時に……閉じられていた、封じられていたその白い繭が…割れる。

 

 

 

───ガコンッ

 

 

 まるで砂粒のようにヒビ割れ消えていく白い繭、響く音が何の音であったのかを理解する者はきっといない。

 

 サラサラ消えていく拘束着、動かし慣れていない身体を久方振りに動かすようにソレは未だに残っていた白い繭を無理矢理に引き千切る…その姿に廻は声を発せない、漫画やアニメでしか見たことの無いその存在を前に言葉を失っていたのだ。

 

 

 ソレは十種最強の式神、歴代の十種影法術を保有した全ての術師…その誰一人を以ってしても調伏することの叶わなかった破壊の化身、禪院廻が自身の目標の一つとして定義した最難関。

 

 

 

───『八握剣異戒神将魔虚羅』

 

 

 白い異形…限りなく人に近く、限りなく人から遠いその怪物が…今ここにその面を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───これが…魔虚羅。

 

 

 

 現れた異形、十種影法術、その虎の子…モニターの向こう側、紙に記された空想上の存在であったはずのもの……それが今、目の前にいる……その事実に何を感じれば良いのか、廻には分からなかった。

 

 高揚か、恐怖か…かつての愛読書に登場した存在に生で出会えたことを喜ぶべきか、それとも目の前から感じる威圧感と気配に恐怖を覚えるべきなのか…何処かふわふわと浮ついた感覚が拭えない中で、はてさてどうしたものかと何処か他人事のように廻の思考回路は回っていた。

 

 …まぁ、もっとも…それも、ほんの一瞬のことであったのだが。

 

 

 言うが否や、問答無用…そう言わんばかりに、目覚めたての魔虚羅は眼前の廻へと瞬時に接近し、その右腕に備え付けられた剣を全力で廻へと振り下ろした。

 

 瞬間、廻の意識もまた完全に戦闘時のモノへと切り替わる。

 

 振り下ろされた一撃、剣を用いたその一撃を廻を両腕を重ねて受け止める、火花を散らして激突したその様相はさながら盾と矛である。

 

 

 

───重たっ…!?

 

 

 受け止めた一撃から感じる重さに廻が内心で驚愕を吐露する、こんなヤバいのをあんな軽々と受け止めていたのかあの男は…と、内心で呪いの王への評価が馬鹿みたいに上がっていくのを尻目に、これは堪らんと弾くように廻は剣先をズラした。

 

 ズガンッと音を立てて地面へと沈む退魔の剣、簡単に地面を砕き割ってみせるその一撃にマトモに喰らえばただでは済まないなと、何となしにそう考える…そんな廻の視界に迫る白い影、魔虚羅の拳による一撃。

 

 

「───チィッ!!」

 

 

 蹴りにより魔虚羅の拳を打ち上げる、標的を見失った拳は空を切り、ならばこれだと言わんばかりにそこからその腕はアームハンマーが如く振り下ろされる…が、それを廻はさも散歩にでも出かけるような手軽さでパシンッと横へと叩いてズラす。

 

 再び地面へと激突する魔虚羅の一撃、そこから間髪を入れずに顔面目掛けて突き刺さる廻の蹴り、手番飛ばしが如き素早さで以って突き刺さった蹴りの一撃が魔虚羅の巨体を後方へと弾き飛ばす。

 

 地面を踏み砕きながら勢いを殺す、両手を地面へと突きつけブレーキ代わりとし身体の勢いを止める…時間にして二秒以下、吹き飛ばされてから静止するまでの時間、そうして顔を上へと上げた魔虚羅の視界に映り込んだのは───

 

 

「ッッッ!!!」

 

 

 歯を食い縛りながら大きくその腕を振り被った、敵の姿。

 

 振り抜かれた一撃を飛び退いて躱す、空振った廻の拳が地面を大きく砕く、黒い火花を打ち鳴らしながら地面へと衝突した拳を廻はまるでまどろっこしいと言わんばかりに半ば無理矢理引き摺るようにして、下から上へと振り抜いていく。

 

 ズガガガッッッとまるで重機のような音を立てて地面を抉り抜きながら振り抜かれた下から上へのアッパーカット、砂埃に塗れながら振るわれたその一撃を、魔虚羅は同じく拳をぶつけ合わせることで相殺する。

 

 激突した両者の拳、地面に衝撃が奔り両者の足場が互いに沈み込む、バガンッと音を立てて割れる地面がその一撃の重さを如実に現していた。

 

 一撃を防がれた、ならばどうするか当然次だ…思考するまでも無いと言わんばかりの速度で叩きつけられた圧倒的物理推し、割れた地面の上で更に足を叩きつけながら両者は共に再びその拳を振り抜いた。

 

 ズガンッ、ズガンッ、ズガガガンッ…打ち鳴らされる拳と拳、何度も何度も相殺して打ち付けて相殺して打ち付けてをひたすらに繰り返す。

 

 機銃が如く繰り広げられる手数勝負、廻が打てば魔虚羅がそれを防ぎ、逆に魔虚羅が打てば廻がそれを防ぐ…拮抗勝負、何方かが一つ間違えればそれだけで大勢が崩れかねないほどの危うい均衡…そして───

 

 

 

───ガゴンッ!!

 

 

 

 それが崩れるのは、一瞬だった。

 

 

 ガシッと魔虚羅が廻の腕を掴み取る、拳を放ち戻そうとしたその瞬間を見切った末の行動、廻の瞳が見開かれる。

 

 そこへと叩きつけられる白玉の拳、ベシンっと虫でも潰すように上から下への振り下ろし…というより、何方かと言うと拳骨にも近い振り下ろしの一撃が廻目掛けて迫り来る。

 

 やってくる一撃、まともに喰らえばどうなるかなぞ目を瞑っていても分かる…そんな一撃を廻は片腕を掲げて防いだ。

 

 ガツンッとやってくる一撃の重さ、沈み込んだ足が思わずガクッと折れてしまいそうになるのを歯を食いしばりながら耐える…そんな廻の腹部へと唐突に突き刺さる、魔虚羅の蹴り。

 

 深く突き刺さった白い異形の蹴り、何処となく自身の打ち方に似ているように見えるソレがモロに腹部へと突き刺さる…当然、その威力たるや尋常のものではない。

 

 ゲボっと息を吐き出しながら地面を転がる廻、肺にあった息の全てを無理矢理吐き出させられたかのような感覚さえするソレに、こうも重いかと廻は認識を改めた。

 

 魔虚羅が一歩を踏み出す、距離としてそこまで離れていないのだ、魔虚羅の能力ならばほんの少し踏み出せばそれだけで届くような距離…事実、一歩を踏み出した魔虚羅はただそれだけで廻の眼前へとその身を躍らせるに至った。

 

 あとは踏み込み、また一撃を叩き込むだけ……しかし、そうして廻へと追撃を仕掛けようとした魔虚羅の肉体は、突如としてそのバランスを崩すに至る。

 

 バチャリッと片足の沈み込む感覚を魔虚羅は覚える…目を向けてみればそこにあるのは影の奥深くに沈んだ自身の片足、まるで沼に嵌ったかのようなずっしりとした感覚が絡みつくように魔虚羅の片足へとへばり付く…そして、その隙間を見逃す廻ではない。

 

 

「───仕返しだ」

 

 

 握り締められた拳、万力の拳が魔虚羅の顔面を穿ち抜く。

 

 飛び散る黒い火花、轟音と共に吹き飛ばされた魔虚羅の身体が二転三転と地面を転がっていき、最後には大きな砂煙を上げながら停止した。

 

 ペッと血を吐き捨てる廻、それと共にのそりと起き上が白い異形、まるで対して聞いちゃいませんよと言わんばかりに何の気兼ねもなくのそりのそりと歩いてくるその姿に、廻は深いため息を吐き出した。

 

 

 

「やっぱりズルいなお前、生態的に」

 

 

 適応前に一撃にて屠る…魔虚羅の唯一無二の攻略法、それ以外の全ての攻撃はほぼ無意味に等しい、それどころか攻撃すればするだけ適応していって最終的に何も効かなくなるまである…少なくとも、廻はそう思っている。

 

 殴っても殴っても感じない手応え、実際に殴ってみればどのように感じるのだろう、本当にダメージが入らないのだろうか…そんな考えの元に近接戦を徹底してみたが、どうにも本当に一撃に屠らねば意味が無いらしい。

 

 ならば、どうするか……答えは一つ。

 

 

「───『獅子王』」

 

 

 禪院廻が誇るオリジナルが一体、圧倒的膂力による暴力と破壊を得手とする近接戦最強の式神…加減が効かず、周囲の建物やら何やらを壊してしまうのが玉に瑕。

 

 主の呼び声に応え、影よりその巨体をズシンっと現した紫電の獣、無数の瞳をギロリっと魔虚羅へと向けバチリッバチリッと帯電させる紫色の雷はその気性の荒さと手綱を握る難解さを現しているかのように思えた。

 

 トントンッと軽く跳ぶ、ゆらりゆらりっと服を揺らしながらまるで鳴らすように廻はコキリっと手首をぶらぶらと揺らし…口を開く。

 

 

「…んじゃまぁ…改めまして、やりますか…!!」

 

 

 

 そんな主の言葉と共に、獅子王の咆哮が轟いた。

 

 

 

 

 

 




 悲報 作者、書くのが割と久しぶりなせいでどんな風に書けば良いのか分からない…の巻。

 割と真面目に久しぶりに書いた気がするけど…こんな感じだったかなぁって内心思ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。